第7日目
9月16日(木)晴れ 朝5時、寒さで目が覚める。 ここはニセコの山の中。 確かに標高が高いこともあるのだが、 どうやら放射冷却現象で、急速に気温が下がっているらしい。 しっかし、冬の寒さだよ。 寝袋1枚じゃ、サブいサブい。 バッグの中から、フリースのトレーナーを引っ張り出して着る。 念のために持ってきたものだが、 東京なら10月以降に着るもんでしょ。 どうなってんでしょ。 来た時は、毎日30度をこえる、真夏だったのに、 この一週間で、あっという間に秋・・・っていうか、 ボク的には、初冬の気分まで味わってしまった。 朝8時。凍死せずに起床(笑)。 ラジオをつけると、網走や釧路の方では、 朝の最低気温が2度だってよ。 おーさむ。真冬ですな。 日中も20度ちょいしか上がらないらしいですな。 いやー、いまだに猛暑が続いているという関東には帰りたくないですなあ。 てなことで、9時に行動開始。 今日最大の任務は、片栗粉を探すこと。 なんでも、洞爺湖から支笏湖にかけての、 どこかのパーキングエリア(「道の駅」のような)か、 もしくはお土産屋さんで売っているらしい。 北海道産のジャガイモ100%使用のいいものらしい。 ていうか、これだけの情報で探し出すのは無理ですよ、野々川さん。 どこどこに売ってる、○○の銘柄の〜・・・ って、ちゃんと指示してくださいよ。 頼みますよ。 みたいな。

支笏湖。阿寒湖と同じように、
ここで食べるべきは「ヒメマス」。

まずは、支笏湖からあたってみよう。 ここは、湖のすぐそばにお土産屋さんがたくさんあるので、 何らかの情報が得られるはずだ。 ほら、早速、おばちゃんが声かけてきた。 「はい、おにいさん、今日は何? ジャガイモ? ヒメマス?」 ・・・新宿の歌舞伎町あたりでよく聞くセリフと同じである。 歌舞伎町は「ジャガイモ」の部分が「イメクラ」であり、 「ヒメマス」の部分が「ソープ」になるのだが。 「あのー、この辺りって、片栗粉とか有名なんですか?」 「? 片栗粉? さあ、聞いたことないねえ。」 「なんでも、ジャガイモ100%のモノらしいんですが。」 「あ、そう。んじゃ、ちょっとあっちのおじさんに聞いてみるかイ?」 北海道独自のイントネーションで、おばちゃんは、 奥でトウキビ焼いているおじちゃんに呼びかける。 「ヤスさん、ジャガイモ100%の片栗粉って知ってるかイ?」 「はあ?」 「このあたりで、ジャガイモ100%の片栗粉探してるんだって。」 「片栗粉っつったら、ジャガイモ100%っしょう。」 「ええ?」 「ジャガイモ以外でできてる片栗粉なんてあるのかイ?」 「あ、そうね。おにいさん、片栗粉はもともとジャガイモでできてるんでないかイ?」 「・・・・そうなんですか?」 「あたしも、バカじゃないかイ? 片栗粉はジャガイモだもなー。」 「・・・・そうなんですか?」 「ジャガイモの片栗粉なんて、普通だから、お土産にならないっしょ。」 「・・・・そうなんですか?」 「おにいさん、うちのソフトクリーム、北海道産の牛乳100%だべさ。」 「・・・・そうなんですか?」 「片栗粉は入ってないけどね。食べてくかイ? はっはっはっは。」 豪快に笑うおばちゃん。 おばちゃん。確か、片栗粉は、 片栗の「根っこ」だか「地下茎」だかを粉末にしたモノじゃなかったっけか? ここはダメだ。 取りあえず、お風呂に入って考えなおそう。 支笏湖のほとりにある温泉宿にお風呂に入りに。 ここの温泉はちょっと変わっていて、 露天風呂がそのまま支笏湖につながっている。 これすなわち、温泉の熱いお湯を、支笏湖の水で埋めているのだ。 かっちょいー! ダイナミック温泉! 片栗粉のことはすっかり忘れて、温泉で極楽気分だぁ。 番台でお金を払い、 番台のオヤジの、 「今日は、露天風呂、お湯たっぷりですよー。」という、 いまいち意味の分からないギャグをかわしつつ、 奥へと進んでいく。 服を脱ぎ、内湯はまるで無視で、露天風呂へ。 ここへ来たら露天風呂だろ。 がっはっはっはっは。 ザブ。 お、ちょうどいい湯加減じゃん。 ザブ、ザブ。 階段状になった湯舟を下りていく・・・・と。 ドボン!! 「おわあああああああああああ!!」 なんだよ、なんだよ。 最後の一段が突然深くなってるじゃないの。 立ってみると、お湯は、ボクのミゾオチくらいの位置まである。 温泉としては、異常に深い。 なんか、看板が立ってる。 なになに。 「最近、支笏湖の水位が上がっていますので、湯舟が深くなっています。ご注意ください。」 今更、遅いっちゅうの。 溺れかけたっちゅうの。 あ。 『今日は、露天風呂、お湯たっぷりですよー。』 さっきのオヤジのセリフは、ギャグじゃなくて、警告だったんだ。 なんて分かりづらい・・・・・。 ま、そんなことはさておき、 お風呂から出たら、またまた片栗粉探し。 どうすっかな。 洞爺湖に行ってみるかな。 車で走り始めると、しばらく行ったところに、「道の駅」があった。 ダメ元で、よってみよう。 ほほう、この辺は、キノコが有名なのね。 キノコ天丼や、キノコ汁が、売っている。 もちろん、美味しくいただく。 お店を出て、キノコ入りのフランクフルトを買って、かじっていると、 野菜の即売会をやっていた。 ま、カボチャやジャガイモ、玉ねぎ・・・・といった、 北海道ではどこでも売っている野菜達なのだが、 そのすみっこのほうに、なにやら、山のように積まれた白い粉。 脳裏に「槇原敬之」という単語が浮かびつつ、 粉を指で押してみると、「ギシギシ」って独特の触感。 うーむ、どうみても、片栗粉なんだが。 ぶら下がった札には、「デンプン」って書いてある。 「すんませーん、これ、片栗粉ですよねぇ?」 「そうですよ。倶知安のジャガイモ100%。」 これだ。間違いなし。 いや、予想外にあっけなく見つかって助かった。 なるほど、 「片栗」で作った粉が「片栗粉」で、 ジャガイモで作った粉は「デンプン」なんだ。 ま、両方とも「デンプンの粉」なんだろうけど。 北海道って、内地と違う呼び名のモノがあるよね。 僕が好きな言葉は、「ザンギ」。 「鳥の唐揚げ」のことなんだけど、市場で、 「ザンギ・100グラム・○○円」 ・・・なんて書かれていても、いまいちピンとこない。 「ザンギ」ってなんだよ。みたいな。 そこが、すごくいい。 さ、これで、今日の任務は終了。 いやー、肩の荷がおりて、ホッと一息。 んじゃ、今日泊まる旅館がある、洞爺湖に向かおう。 片栗粉が意外に早く見つかってしまったので、 昭和新山なんかに寄ったりしつつ、 「熊牧場」なんてとこに行って、 ヒグマの巨大さにビビリまくる。 野宿してる間、襲われなくって、本当に良かった。

昭和にできたから「昭和新山」。
いまだに煙がモクモク出てて、ちょっとこわひ。

そうこうしているうちに、 午後の4時半。さ、旅館に行くか。 あー、久しぶりに、手足を伸ばして寝られるぅ。 あー、ベッドって、こんなに広かったんだ−。 さすが、寝具として開発されたものは、その用途に向いてますな。 なにせこの1週間、走行するものとして開発された物体に寝てたわけで。 寝返りをうてるのが、しあわせー。 さ、明日は、いよいよ最終日、 そろそろ仕事しないと、ヤバイんで。
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