AD物語II 第9話 「ミス・マクロス」



〜中居正広のオールナイトニッポンの想い出〜
 今、これを読んでいるあなた。  「バレンタイン・デー」とか「クリスマス」とか「誕生日」という日、好きですか?  ボクは大嫌いです。  何故かって?  女の子からプレゼントもらった記憶がほとんどないから。  ところが、世の中にはもてる男というモノがいるわけで。
 毎年2月になると、TVに、ジャニーズ事務所のタレントさんが出てきて、  「今年もバレンタインのチョコレートありがとう!」  ・・・みたいなコメントとともに、テロップで、  「今年○○クンの元に届いたチョコレートは、4トントラックで○台分!」  ・・・的なモノが流れてたりしますよね。  1つもチョコをもらえない男がいるようなこの世の中。  ホントにそんなにもらえるなんてことがあるわけ?  だって、チョコの数を表現するのには、  「○○個」とか「××ケ」っていう単位を使うのが普通でしょ?  それが、あーた、 「トン」だぜ。  えーごで書いちゃうと、 「t」だよ。  言っとくけど「トン」は、「個数」の単位じゃなくて、 「重さ」の単位だよ。  そんなの、にわかに信じられないよね。  ていうか、想像できないでしょ?  と・こ・ろ・が・・・・、  ボクが甘かったです。  甘ちゃんでした。  甘々でした。  「中居正広のオールナイトニッポン(以下、ANN)」のADを担当して、  それが事実だと知ったのです・・・。
 その日、ボクはいつもと同じように、ANNの準備室の扉を開けました。  「おっはよーございまーす!」  「おそいよ、小林君。」 「な・・・なんすか、これ?」  会議室の机の上には、おびただしい数の封筒やら、小包が置かれています。  イヤ、置かれてるなんて生やさしいもんじゃないです。  積まれている・・・うーん、これでも、たんないな・・・。  そびえてる。  あ、これ、いいかもしんない。  そんな感じ。  だって、机の向こう側に座ってる人の顔が見えないくらいだもん。  あ、ちなみに、この当時ANNの準備室に使っていたのは、  有楽町時代、1番大きな会議室だった、第1会議室。  その机の大きさは、横3メートル、縦10メートルぐらい。  その机が全部、封筒やら小包で見えなくなっちゃってるんです。  いったいどれほどの数があるのか分かりません。  「小林クン、今日が何の日か知ってる?」  「いや・・・あ!」  「そうなんだよ。」 「中居の誕生日!」 「正解。」  「・・・油断してましたね。」  「・・・油断してたね。」  「・・・こんなにくるなんてね。」  「・・・ああ。」  「で、何してるんですか?」  「このままじゃ、かさばってしょうがないから・・・。」  「中身だけ抜いて、箱や封筒だけでも処分しようと・・・。」  「そーゆーことだね。」  「その方が、事務所の人も持って帰りやすいですしね。」  「よく分かってるじゃない。じゃ・・・はい。」  「なんですか、これ?」 「ハサミ。」  「・・・・・。」  小包とかって、家に届くとウキウキしますよね。  中から何が出てくるのか、お楽しみだったりしますよね。  このSMAP・中居クンあてのプレゼントの開封作業も、  最初はおもしろかったんですよ。  ・・・最初は・・・ね。  「お。見ろ。腕時計! これ結構高いんじゃねーの?」  「こっちは手編みのセーターね。」  「テレフォンカード・・・と。」  「これは、酒。」  「こっちも酒だ。」  「いいなー。欲しいなー。」  「あとで、中居に頼んでみよっか。」  ・・・なんて、かんじで、ゴキゲンな感じで始まったんですが・・・、  「はぁ、また、時計だよ。これで何個目だ?」  「タバコ、1年ぐらい買わなくてもいいくらいあるぜ。」  「この酒みんな飲んだら、間違いなく肝硬変になるよ。」  開封作業を始めて1時間。机の上のプレゼントはいっこうに減っていきません。  やばいです。  本番の準備を始めなくちゃいけません。  ここで、ディレクターさんの英断。  スタッフが2つの部隊に分けられました。  1つは、オンエア部隊。今日の放送の準備をいつもと同じようにする部隊です。  そしてもう一つの部隊が、開封部隊。  オンエア終了までに、この机の上のプレゼントを開封。  ジャニーズ事務所のスタッフが持って帰れるように、まとめ上げるのがその任務。
 午前3時。ANN終了。  さあ、あれから、5時間。  さすがにこれだけ時間があったのですから、第1会議室も片付いてることでしょう。  ・・・・・・。  ボクが甘かったです。  甘ちゃんでした。  甘々でした。  机の上には、まだまだ、未開封のプレゼントが残っていました。  どーなってんだよ。  結局、全部のプレゼントを開封し、荷物をまとめ上げ、  ジャニーズ事務所の手配した車に積み込んだのは、午前5時近くでした。  ニッポン放送だけでもこれだけの量です。  ほかの放送局や、直接事務所に届くプレゼントの量を考えると、  そりゃもう、背筋が冷たくなりますな。 「あまりモテモテ君なのも考えモノ」  そんな教訓を学んだのが、中居クンのANNの想い出。
 続く  1998/04/05

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