AD物語II 第12話 「ビッグ・エスケープ」



〜松村邦洋のオールナイトニッポンの想い出〜
 ニッポン放送が誇る(?)深夜放送の最高峰、  オールナイトニッポン(以下、ANN)。  25時〜27時放送の第1部は、全国35局ネット。  日本国内で聞けない地域はない、といっていいでしょう。  ・・・でもね。  あなたの聞いているANNは、他の地域の人たちが聞いてるANNと、  必ずしも一緒ではないんだな。これが。  どーゆーことかって?  今回は、それを解明していきましょう。
 ANNは、98年5月現在、35局ネットです。  どーでもいい話ですが、  僕が初めてADになった頃は、32局ネットでした。  さて、AMラジオには、大きく分けて、  「NRN(ナショナル・ラジオ・ネットワーク)」と、  「JRN(ジャパン・ラジオ・ネットワーク)」という、  2つのネットラインがあります。  前者は、ニッポン放送、文化放送がキー局。  後者は、TBSラジオがキー局になってるんですね。  ANNの35局ネットは、この「NRN」という、ラインを使って、  全国に送られてるわけですわ。  ANNは、この「NRN」を使うがゆえの、  特殊なコマーシャル送出方法がとられています。  25時〜27時オンエアのANN1部では、  CMゾーンが全部で12ヶ所有りまして。  そのうち、25時台の最初の3つのCM、および、  26時台の最初のCMが、「VIVA=CM」。  そして、25時台、26時台後半の3つのCMが、  「NRN=CM」と呼称されています(表1:参照)。
<表1:一般的なオールナイトニッポン(1部)のキューシート(番組進行表)>
25時台
番組オープニング 

26時台
コーナー

<VIVA CM 1>
<VIVA CM 4>

フリートーク


コーナー

<VIVA CM 2>
<VIVA CM 5>

コーナー


コーナー

<VIVA CM 3>
<VIVA CM 6>

コーナー


コーナー

<NRN CM 1>
<NRN CM 4>

コーナー


コーナー

<NRN CM 2>
<NRN CM 5>

コーナー


コーナー

<NRN CM 3>
<NRN CM 6>


番組エンディング

 この「VIVA=CM」と「NRN=CM」、  どー違うかっていいますと・・・・、  「VIVA=CM」は、ニッポン放送の第2スタジオから送出される、  「全国35局共通CM」です。  ここのCMゾーンは、35局、どこを聞いてもおんなじ。  ちなみになんで、「VIVA=CM」って呼ばれてるのかってぇと、  昔、ANNは「VIVAヤング・オールナイトニッポン」っていうのが、  正式名称だったらしいんですわ。  ジングルとかでも、  「♪VIVAぁヤング〜パヤパヤ〜」  ・・・なんてのがありましたな。  でも、普通の生活してたら、  ビバ。  なんて言葉、まず使わないよな。  ま、そんなこんなで、全国共通CMは、  「VIVA=CM」と呼ばれてます。  では、「NRN=CM」ってのは何でしょう。  「NRN=CM」というのは、「35局、各放送局のCM」なのです。  ANNで、「NRN=CM」の時間がやってくると、  第2スタジオの調整卓から、主調整室を通じて、全国に、  「Q1(キューワン)信号」というものが送出されます。  ANNをネットしている各局は、「Q1信号」を受信してから、  1分20秒の間(20秒CM×4本)、  自局の営業がとってきたスポンサーのCMを流せるって訳です。  さあ、これを読んだあなた!  「あれ? ボクの聞いてるところじゃ、CMなんか流れてないよ。」  「私の聞いてるラジオ局じゃ、1分30秒間、音楽が流れてるわ。」  ・・・なんて、思ってませんか?  そう!  ここが、今回の話の目玉なんです!  ニッポン放送でANNを聞いている場合、パーソナリティが、  「それじゃ、このへんで、CM!」  なんて言った時は、100パーセントCMが流れますが、  地方局の場合、必ずしもCMが流れるわけじゃないんですよね。  さっきも言ったとおり「NRN=CM」というのは、  「35局、各放送局のCM」を流すゾーンなんです。  放送局によっては、営業がスポンサーをとってこられないこともあるでしょう。  ニッポン放送から送られてきた「Q1信号」で、  「はーい、ここから1分20秒間、各局でCM流してちょうだーい。」  ・・・なんて言われたって、スポンサーがついてなきゃ、  流すCMなんかあるわけないやね。  かといって、CMのゾーンをまるっきり空白なんかにできないですよね。  そんなことしちゃったら、放送事故です。  スポンサーを見つけられなかった放送局はいったいどうしたらいいんでしょうか。  そんな放送局のために考え出されたのが、  NRN=BGM戦法。  ANNの最中、ニッポン放送からネット各局に「Q1信号」が送出された3秒後に、  スタジオからは、1分30秒の曲が流れ始めるんです。  全くスポンサーを見つけられなかった放送局は、  1分30秒の間、ずっと、このBGMが流れてます。  40秒のCMを流す局は、  CMのあと50秒間BGMが流れます。  ニッポン放送のように、1分20秒のCMが流れる局は、  CMのあと、10秒間だけ、BGMが流れるんです。  ニッポン放送でANNを聞いてる人は、  「何で、CMのあとに、10秒ぐらい変なBGMが流れてんだろ。」  って、思う人が多いようですが、  実は、あのBGM、ネット局の放送事故を防ぐために、流れてるんですね。  このBGMは、「NRNのBGM」もしくは、 「NのBG(えぬのびぃじぃ)」  と呼ばれてたりします。  ディレクターさんの中には、この「NのBG」にまでこだわりをもって、  きっちり選曲する人もいますが、ここ数年は、  ADが自分の好きな曲をかけてたりします。  ただ「NのBG」は、  『「洋楽」か「歌のないインストゥルメンタル」が望ましい』と  されてますんで、あんまり極端な選曲はできないんですけどね。
 ・・・とは言ったものの、  「じゃあ、どんな曲が『NのBG』にふさわしくないんだろうか?」  ・・・と思うのが人情ってもんです(そうか?)。  この「NのBG」の限界に挑戦したのが、  水曜ANN1部の「松村邦洋のANN(98年5月末現在火曜1部担当)」でした。  パーソナリティの松村さんが、大のアイドル好き、ドラマ好きということもあって、  「おニャン子クラブ特集」  「スケバン刑事特集」  「懐かしのアニメ特集」  「大映テレビのドラマ主題歌特集」  「金八先生の主題歌特集」  ・・・などなど、まさに「NのBG」の限界に大挑戦。  なにせ「NRN=CM」は、2時間の間に、6回。  毎週毎週、自分の好きな曲を勝手に6曲かけられるんですから、  こんなにうれしいことはありません。  結局、半年くらい、毎週、毎週、  「NのBG」を変えてましたが(普通のANNでは1年ぐらいずっと同じ曲)、  1回も怒られませんでした。  むしろ、地方局なんかで聞いてるリスナーの方からは、  「懐かしい曲がかかって、うれしい。」  なんていうお葉書も来てましたゼ。  してやったり(^_^;)
続く  1998/05/30

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