AD物語II 第20話 「パラダイス・ロスト」



〜 「完パケ番組」のお話 〜
 ここんとこ「AD物語」も、「閑話休題」的な話が続いちゃいましたね。  「オールナイトニッポン」の想い出話も、尽きちゃったので、  ここからしばらく、「完パケ番組」の想い出話をしていきましょう。  ああ、安直。  で、つきまして、今回は、「完パケ番組」って何?  ってとこから、話してみましょうか。
 そもそも、「完パケ」って何?  みたいな。  そんな言葉、聞いたことねぇよ。  みたいな。  ちゃんと説明してくれよ。  みたいな。  分かんねぇもんは、分かんねぇんだよ。  みたいな。  「完パケ」っていうのは、 「完全パッケージ」の略称です。  「番組が録音され、あとは放送するだけ」・・・という状態のTAPEのことを、  「完全パッケージ」と呼称します。  すなわち、「完パケ番組」とは、ぶっちゃけて言っちゃえば、 「録音番組」のことです。  これはラジオ番組的に言うと、「生放送」の対になる言葉ですな。  「生放送」は、生用のスタジオから送出されますが、  「完パケ番組」は、主調整室のテープレコーダーから送出されます。  ま、「完パケ」って言葉は、  いろんなラジオ番組系の雑誌にも出てたりしますから、  知ってる人も多いんじゃないかな。  そーゆーことで、次に「完パケ番組」の作り方講座。
 「完パケ」番組の録り方には、いくつかのパターンがあります。  以下に、説明していってみましょう。 [1.生放送と同じように録る方法]  30分間、録音のテープをまったく止めず、  一気に「完パケ」にしてしまう方法。  文化放送等で活躍している「さとDUE」ディレクターが、  多用する方法ですな。  メリットは、この後、説明することになる、 「編集」「ダビング」という、  ディレクター泣かせの、面倒くさい行程が不必要なので、  「完パケ作業」が格段に楽なこと。  30分の番組なら30分で完成してしまうわけです。  デメリットは、基本的に「生放送」と同じなので、  喋り手(パーソナリティ)に負担がかかること。  時間調整が難しいこと。  ・・・などがあげられます。  ちなみに・・・、  オールナイトニッポンを録音(完パケ)で放送する場合などは、  ほとんどこの録り方。 [2.ちょっと長めに録る方法]  基本的に「1」の録り方と同じですが、  30分の番組なら、たとえば40分ぐらい録音しちゃうわけです。  で、面白い喋りの部分だけを残すように、  ディレクターがあとから「編集」するわけですな。  メリットは、喋り手のおもしろい話を取捨選択できること。  デメリットは、時間調整が、「1」の場合より、  さらに難しくなること・・・かな。  「St.GIGA」で放送していた「ゲーム・虎の大穴」というゲーム番組で、  僕がこの作り方をしていました。  時間計算が面倒だったので「編集」作業は、ほとんどADの高橋クンにやってもらってました。  ああ、この俺、だめディレクター。 [3.「編集」→「ダビング」方法]  ニッポン放送のほとんどの「完パケ番組」がこの録り方です。  「王道」の録り方と言っていいでしょう。  まず、タレントさんの「喋り」だけを録音してしまいます。  「それでは新曲を聞いてください。」  なんて喋ってても、TAPEには、曲は録音しません。  あくまでも最初に録るのはだけ。  (多少の音素材は入れ込んじゃったりするけど)  ディレクターさんは、その喋りのTAPEを「編集」。  そして「ダビング」するわけです。  ここでいう「ダビング」っていうのは、  皆さんごぞんじの「ダビング」とはちょっと意味が違います。  皆さんごぞんじの「ダビング」は、  「カセットからカセットへ、ダビング」「CDからカセットへ、ダビング」  ・・・的なニュアンスでしょう。  ラジオ局で言うところの「ダビング」とは、  「編集済みのTAPE」にCMやBGMを入れて「完パケ」化することを指します。  この方法のメリットは・・・、  時間調整がいかようにもなること。  喋りの下手なタレントさんの話も面白い話に作り上げることが出来るということです。  反面、デメリットは、  「完パケ」の状態にもっていくのに、やたらと時間がかかることです。  「録音」→「編集」→「ダビング」という、  3つの行程を経ねばならないので、  これすなわち、手間も3倍です。  いわゆる、三度手間。  おんなじ話を何回も聞かなくちゃいけないので、 「もーやだ。」  ・・・ってキレちゃうディレクターさんもいます。  確かに分かる気もしますな。  「人生相談」の「完パケ番組」などは、  「もう離婚しようと思ってるんだけど、慰謝料が・・・。」  みたいな話を2回も3回も聞かなきゃいけなかったり、  喋りが下手なアイドルの、  「あの〜」「え〜」「その〜」的な、話のよどみを、  片っ端から編集しなきゃいけなかったりすることを考えると、 「もーやだ。」  ・・・って叫んで逃げたくなっちゃうもんです。  よく、編集室に荷物やTAPEを置きっぱなしにして飲みに行ってしまうという、  「現実逃避ディレクター」さんも、います。  ま、手間がかかる分だけ、出来あがりもキレイなんですが・・・。
 ・・・とまあ、これが、「完パケ番組」の作り方です。  皆さんも、機会があったら、「完パケ」作りにチャレンジしてみましょう!
続く  1998/08/10

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