AD物語II 第21話 「ミクロ・コスモス」



〜 「完パケ番組」のシステム−上− 〜
 さて。しばらくの間、  『僕が過去に担当した「完パケ」番組の想い出話を書いていこうか。』  ・・・と思っていたのですが、  もう少し、「完パケ」番組のシステムを説明してもいいかなと思いまして、  今回は、またまた、マニアックなお話です。  カンベンしてね。  でも、これを頭の中にたたき込んで、ラジオを聴くと、  ディレクターの苦悩が見えたりして、いっそうおもしろくラジオを聴けること請け合い。
 「完パケ」番組には、いくつかのルールがあります。  まず、代表的なニッポン放送の「完パケ」の進行表、  いわゆるキューシートを、以下に書いてみましょう。  なお、これから以降お話ししていくのは、  最もわかりやすい、「30分完パケ」です。
 ニッポン放送の代表的な完パケ番組  進行表の例       
<前枠>
 
 *タイトルコール
 *前TM〜
 *オープニングのご挨拶など     
 
<前 C M 40 秒>
<コーナー1>
 
 *フリートーク
 *各コーナーなど
 
M.
<中 C M 60 秒>
<コーナー2>
 
 *企画モノのコーナーなど
 
M.
<後 C M 60 秒>
<後枠>
 
*今日の感想
*来週のお知らせ
   〜お別れのご挨拶(AN尻)
 
<S B>
 ね、こうして書いてみると、  「あ、なんとなくわかる。」  ・・・って感じでしょ?  え? そうでもないって?  しょうがないなあ。  じゃあ、もっとわかりやすく、  ここにくる確率が高いであろう「岩潤子さんファン」のために(?)、  文化放送「岩男潤子の少コミナイト」のキューシートを書いてみましょう。  なお、これは、一般的な放送を録音したカセットをもとに作ってみたもので、  必ずしもこの通りではないかもしれません。  なぜなら、僕は文化放送で、番組を作ったことがないから!
 文化放送の代表的な完パケ番組(?)  岩男潤子の「少コミナイト」進行表の例       
<C.C.40秒>
<前枠>
 
 *タイトルコール
 *前TM〜
 *オープニングのご挨拶など     
 
<前 C M 40 秒>
<コーナー1>
 
 *フリートーク
 *各種おハガキ
 
<中 C M 40 秒>
<コーナー2>
 
 *祝おうのコーナー
 *替え歌パラダイスなど
 
M.
<後 C M 20 秒>
<後枠>
 
*今日の感想
*来週のお知らせ
   〜お別れのご挨拶(AN尻)
 
<S B>
 CMの長さなどは、確かじゃないけど、まあ、こんなとこでしょう。  そうは、間違ってないと思うんだけど。  もしかすると、もう1カ所、CMゾーンがあったかもしんない。  まあ、気にするな。  じゃ、少し詳しく説明していきましょう。  <前枠>  だいたいどの番組も「前枠」は、2〜3分ぐらいですな。  ただQRの場合は、若干長めにとる傾向があるようで、  4〜5分ぐらいある場合も。  「緒方恵美の銀河にほえろ」では、オープニングテーマがなくなっちゃって、  もう1回、オープニングテーマを出してることもありましたな。  ディレクターの川口さん、オープニングテーマ、曲編集して、  ロングバージョンにしとけばよかったのに。  ちなみに、現行の「完パケ」番組で、この「前枠」が一番長いのは、  「サクラ大戦・お台場放送局」でしょう。  約9分あります。  ・・・長すぎるって。  なお、「少コミナイト」は、時報と同時に番組が始まるのではなく、  「カウ・キャッチャー」と呼ばれる「CM」から始まります。  「C.C.」と書いてある部分です。  「カウ・キャッチャー」・・・略して「C.C.」ね。  「C.C.ガールズ」のことじゃあ、ありません。  ・・・・・。  つまんね〜ギャグ!  <前CM>  多くの番組は、1本目のCM(前CM)に入る前に、  「提供クレジット(提クレ)」が入ります。  「この番組は○○○○がお送りします。」  ・・・ってヤツですね。  CMは、「前CM」「中CM」「後CM」と3本入るが通常。  QRの「銀河にほえろ」の場合は、ちょっと特殊で、  「前CM」「中CM1」「中CM2」「後CM」・・・と、  4回もCMチャンスがありました。  「同級生恋愛専科」もこの構成だったかな?  ニッポン放送の「30分間パケ」は、  「前CM」=40秒、「中CM」=60秒、「後CM」=60秒  と決められてるみたいです。  <曲>  上記の表で、「M.」って書いてるのは、「曲がかかる場所」のことです。  ま、これも番組ごとに違うので、参考程度に書いてみました。  「前枠」で、曲をかける番組もありますし、  「コーナー2」に入ったとたんに曲をかける番組もありますし、  中には、全く曲をかけない番組だってあるわけです。  ま、あくまでも参考。  <後枠>  番組のシメのゾーン。  「30分間パケ」は、「30分」と呼ばれてはいるものの、  実際には「28分20秒〜40秒で終わるのがベスト」とされています。  これは、そのあとに、「SB(ステーション・ブレイク=俗にステブレ)」という、  CMが入るためです。  「28分20秒〜40秒」に番組をきっちりおさめるため、  各ディレクターは、あれこれと考えました。  そして、ついに究極の方法を編み出したのです。  ここんとこ、ちょっとおもしろいので、詳しく説明してみましょう。  試験に出ますよ。
 番組のエンディングの構成は・・・・、  *エンディングテーマ C.I.(カットイン)〜BGM         *今日の感想など         *お知らせ事項など         *お別れのご挨拶 『〜また来週。バイバイ。』         *提供クレジット(後クレ)『この番組は○○がお送りしました。』         *エンディングテーマ UP〜F.O.(フェードアウト)         *SB(ステブレ)
 ・・・って、感じなんですよ。  何故、どの番組もこうなっているかというと、  ディレクターが、時間調整をしやすいからなんですね。  さっきも書いたとおり、「30分完パケ」は、  「28分20秒〜40秒で終わるのがベスト」なので、  それにあわせて、番組をシメなきゃいけません。  例えば、パーソナリティの「後枠」の喋りが、  「〜お送りしました。」まで3分あったとしましょう。  ここで時間計算!   28分30秒  − 3分00秒    25分30秒  すなわち、パーソナリティの「後枠」の喋りは、「25分30秒」に出せば、  「28分20秒〜40秒で終わるのがベスト」の条件をばっちり満たせるわけです。  ところが、後CMの終わる時間が、「25分00秒」だったとしたら?  30秒足りないじゃん!  そんなときは、エンディングテーマを出して30秒してから、  パーソナリティの「後枠」の喋りを出せばいいのね。   25分00秒 ←後CMの終わった時間      30秒 ←エンディングテーマ30秒聞いて  + 3分00秒 ←後枠の喋り   28分30秒  楽勝!  さてさて、  オンエア的には、29分前後にエンディングテーマは、フェィドアウトとなり、  「SB」という、CMが流れて「番組」はそこでおしまい。  ・・・となるわけですが、  「完パケ」には「30分保障」というルールがあり、  録音テープには、30分00秒まで、エンディングテーマを入れておかなければいけません。  この「30分保障」というモノがあるために、  ある「変な現象」が起こるわけです。  それは何かというと・・・、  次回の話で、解明!
続く  1998/08/21

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