AD物語III 第5話 「大気圏突入」



 ニッポン放送では、一時、
 「1時間に1回、天気予報を!」
 ・・・という、いまいち分からんキャンペーンを張った時がございまして。

 天気予報って、
 そんなにしょっちゅう
 変わるんかいな?

 ・・・と、誰しも思ったものでございましたが、
 その時期に登場したのが、
 「トヨタ飛び出せ街角天気予報」というコーナーでございます。

 「トヨタ飛び出せ街角天気予報」は、  「晴れ晴れキャスターズ」と呼ばれる女性レポーター達が、  文字通りスタジオから飛び出し、  街角で見つけた季節ネタなどを織り込みつつ、天気予報を伝える。  ・・・というのが趣旨で、  この趣旨に賛同した自動車メーカー・トヨタが、  なんと、専用の中継車を提供してくださっちゃったという、  とんでもないコーナーでございます。  この「トヨタ飛び出せ街角天気予報」の中継にボクが出るようになったのが97年。  夕方の「鶴光の噂のゴールデンアワー」の中に、毎日2回ずつこのコーナーがあるのですが、  ボクが担当しているのは、その木曜日。  当初は遠藤眞希さんという方が「晴れ晴れキャスター」だったのですが、  99年の春から、ニッポン放送のアナウンサー・村上真由子さんが、  この枠の「晴れ晴れキャスター」として登場いたしました。  普段の中継は、ニッポン放送を14頃出発。  15時くらいに中継場所に着き、あれこれ取材。  それから16時くらいまで、村上アナが原稿をまとめて、  16時10分過ぎに、中継が始まります。  取材が終わっちゃって、中継が始まるまで、  ボクや、中継車ドライバー兼技術職のお兄さんはヒマなので、  原稿をまとめている村上アナを中継車に残し、  お散歩に出たり、コンビニで買い食いをして、  ブリリアントな午後を過ごすのですが・・・・、  時折、村上アナがこんなことを言い出すのです。
 「ねぇ、何で今日、『ハチ公の日』なの?」  それは、「ハチ公の日」と聞いて、渋谷駅前から中継を行うことになった日。  根本的に、中継の元ネタになった「ハチ公の日」が、  何故に「ハチ公の日」なのか分からないまま、  ボクらは中継に出てしまっていたのです。  こりゃ、大変だ。  ま、それが分からなきゃ、中継できないわなあ。  さあ、どうしよ。  しゃあない。  ニッポン放送に電話して、おてすきのスタッフに、  インターネットなんかを使ってもらって調べてもらおう。  ブリリアントな午後は、吹っ飛ぶ。
 こんなこともあった。  「ねぇ、地球上の最低気温って何度だったの?」  これは、「南極の氷が買える店」に取材に行った時のこと。  これまでの最低気温の記録は、確か南極で観測された。  ・・・というようなことは知っていたのだが、  それが何度だったのかは分からない。  でも、大丈夫。  先日の「ハチ公の日」のことがあってから、  ボクは、携帯用のコンピューターを持ち歩くようにしていましたので、  すかさずインターネットに接続。  あちこちのサイトを巡って、ネットサーフィン。  これって、「できる男」って感じじゃん。  あ。  バッテリー残りわずかのサイン。  ああ!  昨日、お家に帰って、バッテリーの充電するの忘れてた!  しまったぁ。  気分はすっかり、量産型EVAに立ち向かうアスカ。  (おいおい、またEVAネタかよ・・・は、禁句。)  ブリリアントな午後は、吹っ飛ぶ。
 こんなこともあった。  「ねぇ、オゾン層って、なんで暑いの?」  これは、特に中継ネタとは関係なく、飛び出してきた質問。  なんでも、村上アナが前日に読んだ気象の本に書いてあったらしい。  大気圏は上の方に行けば行くほど気温は下がるが、  オゾン層は例外的に、他の層より、気温が高い・・・と。  そんなこと、芸術大学出身のボクには分からないよお。  ブリリアントな午後を吹っ飛ばすわけにはいかない。  高校の時の友人で理科系大学に進んだヤツに電話をかける。  「もしもし、小林だが。」  『おう、久しぶりじゃん。どうした?』  「おまえ、ロケット○○とか宇宙××とかの学部だったよな?」  『ああ、それがどうした?』  「じゃ、分かるだろ。」  『なにが?』  「オゾン層は何で暑いんだ? 今教えろ、すぐ教えろ、直ちに教えろ。」  『・・・そんなの、分かんねー。』  「なんでだ? なぜだ? 理由を明確に答えよ。」  『俺、ロケット工学だもん。』  「・・・。」  そりゃ、そうだわな。  「ロケット工学」専攻のヤツに「気象」の話を聞いたって分からんわな。  同じ宇宙を相手にしていても・・・さ。  チッ。  しゃあない。  おなじみ、インターネットに接続してみっか。  ・・・。  うーむ。  各種ホームページでは、  酸素分子がオゾンになる反応、そして、  オゾンがフロンで壊されて、オゾンホールができる理由は書いてあるのですが、  「オゾン層は、暑い」って書いてあるだけで、  「なぜ、暑いのか?」に関して、明確に答えてくれるページはいっこうに見つからない。  そんなこんなで、中継時間がやってくる。  答えは、結局見つけられなかった。  「ねぇ、もういいよ。来週までに調べといて。」  ブリリアントな午後は、吹っ飛んだ。  村上アナにお願いされた宿題の答えは、未だに見つかっていない。  このページを読んだ誰か、  「なぜ、オゾン層は暑いのか?」。  ・・・この疑問の答えをボクに教えてください。  「残酷者達の宴」に書き込んでくれたら、これ幸い。
 続く  2000/02/10

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