仏法の守護神


 仏教公伝後、日本の古くから信仰されてきた神も、仏教の「仏の姿」に合わせるかのように神となって 出現(垂迹)した本地垂迹思想の教理は平安末期頃と推察されている。特に鎌倉期に入ると空海も最澄も、 宗教活動の拠点となる高野山や比叡山に、以前から崇拝されていた土地を守護する神々を”地主神”とし て尊崇し、仏法の護法神(守護神)として本地仏と垂迹神が確立され曼陀羅垂迹画 が多く描かれていく。
 日本における神仏習合の始まりである。



寺院には鎮守堂
     神社には神宮寺
 が造られる

 春日曼陀羅に垂迹神がみえる
式内社・草岡神社の鳥居をくぐり神の領域へどうぞ。



平安時代、二つの密教
1、天台宗:赤山明神画/長寿院蔵 1、真言宗:丹生明神画像/金剛峯寺蔵 2、真言宗:狩場明神画像/金剛峯蔵 3、真言宗:清流権現画像 鎌倉期/畠山記念館蔵
最澄の天台宗(比叡山) 空海の真言宗(高野山): 上記は土地を守る地主神 




 天台宗の護法神  山王権現(比叡山延暦寺)と曼陀羅の世界

   [年代] 南北朝時代
   [法量] 縦115.5 横55.0cm
   [作者] 不詳
   [所蔵] 東京 霊雲寺蔵
   [解説] 山王本地仏曼陀羅 垂迹画:神仏習合 重文
         此の図は、神域の全容を丁寧に描いた自然表現がすばらしい。
         自然景を正面から捉えている。


    仏教では仏・菩薩が衆生を救うためにこの世に現れた仮の姿を権現と言う。
  1. 春日権現    春日山(奈良)
  2. 山王権現    比叡山(滋賀)
  3. 蔵王権現    吉野山(奈良)
  4. 熊野権現    熊野三山(和歌山)
  5. 白山権現    白山(石川)
  6. 羽黒権現    羽黒山(山形)
  7. 立山権現    立山(富山)
  8. 霊場の権現 清滝、日光、箱根、伊豆山、愛宕、富士、金毘羅、熱田、秋葉〜権現
      明治の神仏分離で権現号・修験道は廃止された。

絵図:日本の美術274/垂迹画より

 真言宗の護法神  丹生明神(高野山金剛峯寺)と曼陀羅の世界

   [年代] 鎌倉時代
   [法量] 
   [作者] 不詳
   [所蔵] 和歌山 金剛寺蔵
   [解説] 高野山四社明神図 垂迹画:神仏習合
         仏法の守護神として尊ばれた画像である。高野山に金剛峯寺を建立
         するときの地主神である丹生明神とその御子神の三神を描く。
         四社の他、十二王子社(廃)、若宮社(廃)、エビス社(廃)が並んでい
         たが明治の神仏分離で棄却された。


    空海を高野山に導いた神聖な場所に、丹生・高野明神がすでに崇拝されていた。
  1. 丹生明神(上右)  紀北一帯で大きな勢力を誇っていた丹生一族の祭神
  2. 高野明神(上左)  紀北一帯の狩猟神である狩場明神の変化した姿。
  3. 気比明神       鎌倉時代になって天野社(現丹生社)に祀られた祭神。
  4. 厳島明神      鎌倉時代になって天野社(現丹生社)に祀られた祭神。

絵図:日本の美術274/垂迹画より

 春日大社の護法神(守護神)  春日権現(春日神社・興福寺)と曼陀羅の世界

   [年代] 鎌倉時代
   [法量] 
   [作者] 不詳
   [所蔵] 静嘉堂蔵
   [解説] 春日本迹曼陀羅 垂迹画:神仏習合
         下図は、春日信仰において、春日四所明神・若宮のほか 五つの末社祭神
         十体(番号1〜10)の神像を描き、その神像から湧き出るような雲に乗っ
         て”各本地仏
         (10体)”が添えられている。
         日本において古くから信仰されていた姿のない神を描き、それを守護す
         る神が仏となって出現(垂迹)した。仏教側からの着想であると考えられ
         てます。

  1. 春日宮曼陀羅   春日信仰(春日大社)
  2. 八幡宮曼陀羅   八幡信仰(宇佐八幡宮)
  3. 山王宮曼陀羅   山王信仰(比叡山:日吉神社〜修験道) 
  4. 熊野曼陀羅     熊野信仰(熊野三山:本宮大社・速玉大社・那智大社〜修験道)
  5. 生駒曼陀羅     生駒信仰(生駒神社〜修験道)
  6. 伝柿本宮曼陀羅  東大寺山麓(柿本寺)
  7. 吉野曼陀羅     吉野信仰(吉野山:吉野八社明神〜修験道)
  8. 熱田宮曼陀羅    熱田神宮
  9. 富士曼陀羅     富士山信仰(霊場 富士山〜修験道)
  10. 白山曼陀羅     白山信仰(霊場 白山〜修験道)
  11. 牛頭天皇曼陀羅
  12. 立山曼陀羅     立山信仰(霊場 立山〜修験道)

絵図:日本の美術274/垂迹画より

 吉野山の護法神(守護神)  蔵王権現と曼陀羅の世界

   [年代] 鎌倉時代
   [法量] 
   [作者] 不詳
   [所蔵] 奈良 如意輪寺蔵
   [解説] 吉野曼荼羅 垂迹画:神仏習合
         この垂迹画は、役小角が約千三百年昔大峰山に於いて金剛蔵王権現を感
         得された様子を、下方には吉野山の神社、佛閣を描く。当時の密教と修
         験道の中心となる吉野山の社寺風俗が偲ばれる貴重な資料。上方に巨大
         な蔵王権現が印象的である。 
蔵王権現拡大

絵図:日本の美術274/垂迹画より

 吉野八社明神の護法神(守護神)  蔵王権現(金峯山支脈)と曼陀羅の世界

   [年代] 鎌倉時代
   [法量] 絹本著色 縦94.2cm 横40.0cm
   [作者] 不詳
   [所蔵] 奈良 西大寺蔵
   [解説] 吉野曼荼羅 垂迹画:神仏習合
         吉野曼荼羅は大峯修験道に基づく垂迹画で、西大寺本は現存最古の作品
         である。蔵王権現を中心に、役行者や吉野八所明神等を規則的に配置す
         る。画面上部には大峯山の山並みの中に大峯八大童子(おおみねはちだ
         いどうじ)を描き、画面全体で吉野から大峯に至る霊場空間と神々の体
         系を表している。丁寧な筆致と繊細な文様描写など優れた作風を示し、
         中世の山岳信仰の成熟を窺わせる垂迹画の遺例として重要である。蔵王
         権現は弥勒菩薩の化身とされる。
 

    神々は古事記・日本書紀・新選姓氏録に記載
  1. 金精明神    金峯神社(吉野山の地主神祭る)
  2. 牛頭天王社   (廃絶)
  3. 子守明神     吉野水分神社(明治の神仏分離によって金峯山寺より独立)
  4. 芝明神      八大竜王社
  5. 勝手明神    吉野山口神社(江戸期、天満宮と称された)
  6. 井光明神    井光神社八幡宮
  7. 威徳天満宮 
  8. 速秋津比売神!幣掛神社

絵図:日本の美術274/垂迹画より



宮曼陀羅垂迹画にみる仏法の護法神(守護神)
春日宮曼陀羅(仏)1 春日宮曼陀羅(梵)2 春日宮曼陀羅(鹿)3 春日曼陀羅(本地仏)4 吉野曼陀羅(権)1
吉野曼陀羅(権)2 高野山四社明神 石清水八幡宮曼陀羅 山王仏曼陀羅1 山王仏曼陀羅2
伊勢参拝曼陀羅1 伊勢参拝曼陀羅2 那智参拝曼陀羅1 那智参拝曼陀羅2 多賀参拝曼陀羅
春日宮曼陀羅5 宮曼陀羅の鏡像




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