- 11月 1日
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突然、天啓のように昨日の自分が勘違いしていたことに気づく。「13F」の原作はフランク・グルーバー「13階の女」"The Thirteenth Floor"ではなく、ダニエル・F・ガロイ(ギャルイ)だ。ああ、なんでこんなミスをしたんだか。というわけで、昨日僕が喋った原作の話は、すべて間違いなので注意して下さい。 > all
昼休みにブロードウェイで、SWボトルキャップのシングル売りをしている店を見かける。お値段は、200円〜2000円。「2000円出してまでクイーン・アミダラキャップを手に入れる必要がどこにあるのか」という思いは捨て切れないが、「2000円だしてまでゲームには使わないシングルカードを買う必要がどこにあるのか」と問われると一言も返せないので、言わないようにしよう。
明日も仕事だというのに、つい昨日届いた雑誌を眺めてしまったりする。「SFイズム」にしろ、「SFの本」にしろ、1号を読むと全体にどうしようもなくファンジン色が漂っていて時代を感じさせる。こういうものでも許される時代という奴があったんですね。そんななか、「SFワールド」だけは明らかにプロが作ったという雰囲気が漂っていたのはさすが双葉社。ただ、いちばん内容がつまらないのはワールドなんだけど。
京大・細井さんのたぶん読書日記によると、京フェスで本当にイーガンのパネルをやるらしい。すばらしいことですね。こういうマニア受けする作家は貴重だから、大事に盛り上げていきたいものです。ああ、でもどうせなら合宿企画も欲しいな。「菊池先生の『宇宙消失』講座」とか。
しかし、あれだね。するってーと、12月"Distress"刊行説もあながち冗談じゃ……。< 無理です
- 11月 2日
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例によって金が無いといいながら、ロイヤルホストで遅い夕飯を食う。別に取りたてて旨いわけでもない飯に千数百円も払うのは、ひとえに読書時間を確保するため。いや、最近部屋だと進まなくて。
まあ、なんとか投資した甲斐はあり、『重力の虹』の上巻をやっと読み終える。なんだかんだでここまで10日はかかっているだろうか。すでにはじめの方のエピソードは忘れ始めているような。メインストーリーはかろうじて把握しているつもりだが、油断した瞬間にサブストーリーに埋もれてしまうのが辛いところ。本当に読み終える事が出来るんだろうか。
- 11月 3日
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SFマガジンベストの投票のため、SFマガジン12月号を読了。
アサロ「四声のオーロラ」は、イラストで予断を持ってしまったのがまずかったか、どうしてもアニメとしか思えなかった。だってほら、ジャトの服ってアムロのノーマル・スーツにしか見えないし、ソズの服はアスカのプラグ・スーツにしか見えないじゃん。いや、ソズのキャラクターはこれっぽっちもアスカじゃないんですが。でも、ジャトは割とアムロかも。
物語としては、よく出来たボーイ・ミーツ・ガールもの。道具立ての出来もそれなりで「良いんじゃない」って感じでしょうか。でも記憶には残らない気も。
高野「慈悲深く慈愛あまねきアッラーの御名において」はまあまあ。それなりに楽しくは読んだが、イスラム教の使い方がいまいち納得いかない。父の宗教であるキリスト教と対比するものが欲しかったのはわかるけど、さらに父権的なイスラム教を女性の宗教として使うのは無理があるだろう。まだしも、ケルトあたりの方が良かったんじゃあ、って、ケルトだと失われた知の保存者というイメージが出しづらいんだよなあ。
小説外では、瀬名秀明の『順列都市』評が興味深かった。そうなんだよ、小説としてバランスが崩れるのが気になるんだよ。そりゃイーガンの長篇に期待しているのはそんな部分じゃないけどさ。
#たかが2作しか読んでいないのに聞いた風な口をきくんじゃない。>おれ
縁あってトランスフォーマーの最新シリーズを見てしまう。……すげえ。前の完全CGの時も最後はかなり声優が暴走していたけど、今回はさらに暴走しまくり。もう、メインの客層(10歳以下でしょ?多分)は置いてきぼりにしているとしか思えない。どこに受けるつもりで作ってんだろう、これ。
- 11月 4日
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そんなこんなで、SFMは読み終わったので、投票作品を検討する。
海外は、飛びぬけた作品が少なく難しかったが、とりあえず「人間の血液に蠢く蛇―その実在に関する3つの聴聞会」(ガードナー、4月)に投票してみる。やや軽すぎるきらいはあるが、この手の歴史の流れを一瞬で見せる話は好きなので、まあ良しだ。他では、絶妙の違和感が素晴らしい「墓読み」(スタージョン、2月)、異界の描写に圧倒される「タクラマカン」(スターリング、6月)、いかにも50年代な社会風刺に心安らぐ「大いなる飢え」(ミラー、2月)などが面白かった。
国内はダントツで「太陽の纂奪者」(野尻、9月増)。技巧の面ではより優れた作品もあるかもしれないが、SF的感動の面で追随する作品が無い。他では、その大胆な設定に驚かされた『ロミオとロミオは永遠に』(恩田、3月〜)の第1回、静かなユーモアが心地よい「請け負った仕事、再現不能」(神林、7月)、まさかこんなベタな作品を気に入るとはと自分を疑った「パラム氏の多忙な日常」(草上、10月)などが面白かったが、野尻と比べると1段落ちる。
イラストは例年の如く北見隆。別に今年際立った作品があったわけではない、というより作品があったかどうかも定かではないが、好きなものは仕方が無いのである。
アンケートの99年ベストはとりあえず海外のみを記入。国内作品は明らかに読む必要がある作品が2作あるので、読み終わってから記入する事にする。
海外ベストはこんな。
- 『宇宙消失』イーガン
- 『順列都市』イーガン
- 『フェアリイ・ランド』マコーリイ
- 『エンディミオン』シモンズ
- 『DISCO 2000』チャンピオン編
3位が趣味に走り過ぎている外は、こんなものだろう。あとは『キリンヤガ』、『星ぼしの荒野から』、『スタープレックス』あたりを含めて順位争いをするくらいではないだろうか。現時点で振り返ってみても収穫の多かった年である事だよ。
で、SFM読者賞の結果予想はこんな感じ。
- 海外:「四声のオーロラ」(アサロ、12月)
- 国内:「太陽の纂奪者」(野尻、9月増)
- 挿絵:山下しゅんや
海外は若干狙い過ぎかもしれない。勢いで「誘拐」(イーガン)という線もあるだろう。例年に比べてもやや予想しづらい。
国内はこれで決まりだろう。対抗など考えるまでもないといったところだ。強いてあげるとすれば、光瀬の追悼特集掲載作か。
イラストレーターも難しいところだが、山下しゅんやの活躍が比較的目立っていたように思う。ただ、人気投票の性格も強いので、鶴田謙二が一気にかっさらうという可能性も否定できない。
長くなったが以上が今年の投票予定&予想。予想の方は、95年だかの2勝を最後にこのところ成績ががた落ちなので、今年は一発当てたいところではある。
- 11月 5日
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今月2日以来止ってしまっているわっちりんく(す) SF 編の代わりに、細井さんがSF系日記更新時刻(暫定版)を作って下さっている。実にありがたい事である。
だが、わっちSFが使えなくなっているという事実には少し考えさせられた。ふだん、所与のものとして便利に使っているサイト/ページもいつ無くなるかわからないのだな。情報を「外部記憶」に頼り過ぎていると、いつなんどき破綻するかわからないという事ですね。とりあえず、必要な情報はキャッシュに保存してバックアップだ。(わっちの場合、それじゃ解決しないけど。)
会社帰りにどうしてもカレーが、しかもインド料理屋のカレーでも、蕎麦屋のカレーでもなく、カレー・ショップのカレーが食べたくなったので、早稲田に出てCoCo壱番屋で夕食。そこまではいいとして、つい油断してそのまま早稲田に向かって歩き、あまつさえアユミブックスに入ってしまったのは失敗だった。この店に入ると、つい、ふだん読まないエッセイ集なぞを買ってしまうので、ずっとと避けていたのだが、入ってしまうと抑えが利かない。案の定、宮沢章夫のエッセイ集を手に持っている自分に気づいてしまったり。
しかたがないので、宮沢章夫『茫然とする技術』(筑摩書房)読了。雑誌掲載時にはさぞや面白かったのだろうが、まとめて読むと今一つ。ネタは悪くないし、文章も下手じゃないのに、感心しないのはきっと相性が悪いという事なのだろう。
- 11月 6日
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一念発起してCD-ROMドライブを探し出し、深上さんに戴いた「美女DE野獣」を見る、っつーか聴くっつーか。なるほど。CDドラマの類を聞くのは久しぶりだが、実に良い感じに力が抜けている。個人的には、「がんばれ、遠藤やよい!」がツボでした。ワードナ……。
夕方からユタ。参加者は、SF人妻、大森望、小浜徹也、さいとうよしこ、雑破業、志村弘之、添野知生、高橋良平、林、福井健太、藤元直樹、みなとみらい子、三村美衣、山本和人(あいうえお順、敬称略)。Zero-CONの企画の話、京フェスの企画の話、イーガンの話などが割とメインかな。『順列都市』は読みづらいという人が多いようだ。なるほど、セルオートマトンへの興味だけで引っ張られる人というのは思ったより少ないのね。オートヴァースの説明を延々としているあたりだけで、「良し」って感じだったんだけどなあ。
でも最も注目を集めた話題は、志村さんが持ってきた電子書籍コンソーシアムの携帯端末。ハードカバーより若干重いという重さといい、本を1冊読みおわる直前で切れるバッテリーといい、ユーザの利便性は考慮しないコピープロテクト法といい、それはもう、「痒いところに手が届いて掻かない」というような、実に行き届いて使いづらい端末であった。電子出版である事のメリットを一切感じさせないソフトのラインナップとあわせて、完璧なまでに使えないシステムになっている。誰が使うんだこんなもん。
帰宅後、一時の気の迷いで「Britannia」のソロプレイを始める。「Britannia」は故Avalon Hillの傑作マルチ。ローマ軍のイングランド侵略からノルマンコンクェストまでを実にシンプルなルールで、驚くほどヒストリカルに再現している。また、ゲーム性もかなり高く、勢力間のバランスさえもう少し良ければ、完璧といいたくなるゲームだ。
とはいえ、いかに傑作とはいえマルチはマルチなので、ソロでプレイする意義はない。ないのだが、Game Journalの記事を読み、やってみたくなっていたものは仕方が無いのだよ。ローマが楽々と58VPを叩き出し、サクソンが苦闘しつつも中南部イングランドを固め、デーンが奇跡的にクヌートの戴冠を実現し、ウィリアムがハロルドを討ち果たすまで延々とゲームをしてしまった。まあ、しかし、とりあえずゲーム勘を取り戻す事はできた。これで、いつ対戦があっても大丈夫、とゲームを片づけて、ふと時計を見て凍りついた。午前6時。そういや、4時間以上かかるゲームだったよ。いや、記憶通りだね。と、落ち着いている場合ではない。明日は10時に起きようと思っていたのだ。昨晩もまともに寝てないというのに、ちゃんと起きられるのか、そこはとない不安を感じながらとりあえず寝てみる……。
- 11月 7日
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はたと目が覚めたのは、午前10時。予定通りである。これも日頃の努力の賜物であろう。
余裕の気持ちで家を出て、12時待ち合わせの茗荷谷駅改札にたどり着いたのは、本当に余裕の11時59分。うーむ、どこがおかしかったのか。まあ、少なくとも間に合った事だけは確かなんで、これ以上詮索しない事にする。
てなわけで、志村弘之さん、森太郎さん、田中香織さん、野田令子さんと合流し、お茶大の学園祭(徽音祭)を見に行く。もちろん、SF研に直行してそのままというパターンである。
いや、本当にいただけなんでお茶大SF研の方の邪魔になっていなかったか心配、って確実に邪魔になっていたよなあ。本当に申し訳ない事だよ。結局、お茶大SF研の方とはまともに話をしなかったし。一体何をしに行ったんだか。とりあえずSRWの話はしましたが。
その代わり、というと語弊があるが、田中さんからは色々と面白い話を聞けた。静岡以西の都市の並び順が無茶苦茶なのは、田中克(11)や中尾(14)の楽しい日本地図をさんざん見てきた僕には、あまり目新しいものではなかったが、細かなミスを繋ぎあわせて第2の紀伊半島を作り上げる幻想力はさすがダブルクラウンのSFファン。「京都は名古屋の西」「奈良は京都の南」「奈良は紀伊半島の中央」という正しい知識に、「名古屋は紀伊半島の"西"岸」という一つのミスを付け加えるだけで、これほど世界が歪むとは。おそるべし。
おそるべし、と言えば、志村さんの邪悪さも忘れてはならない。田中さんは地理が苦手だという話題から、中国地方の県のリストアップを始めたまさにその時に、「じゃあ、九州は"九つ"言える?」と質問するその切れ味。タイミング、表現、内容とどれをとっても完璧な質問。これには、本当に愕然とさせられた。
僕は、頭の回転が遅いので、ついつい法螺で相手を煙に巻くという安易な方向に流れてしまうのだが、志村さんのような技術があれば、事実だけでも充分当惑を生み出す事が出来るのだな。思えば、森さんの話芸も事実だけで相手を眩惑する芸だし、大森さんのワルモノ芸も事実だけで相手を罠に誘い込む技術だ。ひょっとして「京大黒の系譜」の正体はそこにあるのか?
夕方から、志村さん、森さん、田中さんと、SF研の展示を見に来ていた谷田貝さんとともに、久我山へ。SF乱学講座「スタートレックの政治学(講師:堺三保)」を聞きに行く。
スタートレックの作品世界の勢力図からクリエーターの現実世界に対する感情を読み取るという本論は、スタートレックは旧シリーズをノベライズで読んだっきりという不届き者には正直難しかったのだが、それに付随して語られた東西テレビドラマ事情は大変興味深かった。米国製TVドラマのトレンドの移り変わりを時代順に追ったところは得るところが大きかった、かもしれない。いや、米国製TVドラマって、「スタスキー&ハッチ」の次が「刑事ナッシュ」になっちゃうんで実感がわかないんすよ。国内ドラマならさすがに、「三匹が斬る」とか「大江戸捜査網」とか「江戸の黒豹」くらいはわかるんだけど。 < 全然駄目です
終了後、近くの居酒屋で2次会。20人近くいるというのに、ほぼ常に一つの話題だけで会話がなされていたというのには心底驚いた。こんなに「ちゃんとした」2次会というのは初めての体験だ。
谷田貝さんがいたこともあり、『買ってはいけない』批判の是非、あるいは『買ってはいけない』の社会的価値の有無などが話題となる。こういった、社会問題に対して真面目に議論が進む環境というのも初めての体験かも。
# いかに、歪んだ環境で生活しているかが良くわかる事実だね。
帰宅後、漫然と「お花畑でヤミナベを(はあと)」vol. 2(お茶大SF研)を眺めたりする。SRW対談にはやや違和感。F&F完結編中心の対談だから仕方が無いとはいえ、ダイターン3、コンバトラーVといった花形マシンに言及が無いとは。いくら、ガンダムネタが多いとはいえ、SRWは"スーパーロボット"大戦なんだから、スーパーロボットたちにも光を当ててやって欲しいところである。
- 11月 8日
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ぼーっとワールドビジネスサテライトを見ていると、突然つい最近見たような端末が画面に映る。未来の出版特集で電子書籍コンソーシアムが話題になっていたのであった。しかし、手に取った感想を聞かれた人がほとんど肯定的な発言をしていたのはなんだったのか。15分もいじればいくらでも不満が出てくると思うんだが。
- 11月 9日
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騙されたとおもって読み始めた藤崎慎吾『クリスタルサイレンス』(朝日ソノラマ)を読了。いや、驚きました。まさか本当に面白いとは。
入り込むには少し時間がかかった。設定量が多すぎるためか、状況説明の方法が安易になりがちで、読書の流れがしばしば中断される。これがストレスとなって、序盤はなかなか読み進まなかった。しかし、状況説明が一通り終わった第4章あたりからは、かなり物語の速度が上がり、ほとんど渋滞無く読み進む事が出来る。そして、一旦乗ってしまえば、センスの良いガジェットの数々を、壮大なアイデアを、悲しい恋物語を心行くまで楽しむ事が出来る。なるほど、これなら「凄い。凄い。凄すぎる。」という帯も納得が行くというものだ。
火星の氷冠の中に発見された古代生物、重力波天文台で観測された異常な波形、火星植民地を取り囲む奇妙な結晶、仮想空間をさまよう幽霊、自然との共棲を実現した縄文人の知恵。さまざまな断片がみごとにまとまって一つのカタストロフに結実する結末は、SFならではの爽快さをもたらしてくれる。正直、テーマの一部には納得が行かない部分もあるが、そんな些細な部分に拘泥して非難するにはもったいないと感じさせるだけのパワーを持っている。国内SFはほとんど積み残しなので、めったな事は言えないが例年との比較では文句無しの年度ベストクラスの1作。
- 11月10日
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『クリスタルサイレンス』で中断はしたが、再び『カムナビ』を読み始める。今のところ、褒めるべき事はないがとても酷くも無い。とりあえず、判断は保留中。
会社帰りに芳林堂により、『ペリペティアの福音』上中下を購入。冒頭の感触はかなり良い。「銀河最大の葬式屋」対「悪の医療法人」という設定は、それだけで褒める価値があるだろう。キャラの配置も、やや予定調和気味とは言え見事なもの。こんなに楽しくYAを読むのはえらく久しぶりなような。
とりあえず、『カムナビ』の続きを読むのはもう少し後だな。