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瀕死の白鳥:イヴェット・ショヴィレ     (2008.1.12)

草刈民代さんが、2007年の大晦日の夜、とても魅力的な「瀕死の白鳥」を踊りました。 このとき彼女は、自分にはフランスの白鳥が合っていると思い、パリ・オペラ座へ行き、ギレーヌ・テスマーに1週間レッスンを受けてきたそうです。 なぜパリ・オペなのか、この答えが、彼女のホームページにありました。 「『瀕死の白鳥』は、厳密に言えば、一人一人振り付けが違う程、パーソナルな作品なのです。 ビデオで見比べると、ロシアの大バレリーナ、ガリーナ・ウラノワと、マイヤ・プリセツカヤも個々の長所を活かして踊っていますし、フランスの大バレリーナ、イヴェット・ショヴィレは、その二人とは全く違ったスタイルで踊っています。 以前、『瀕死の白鳥』を踊るとき、いろいろとビデオを見ながら研究をしたのですが、中でも、イヴェット・ショヴィレの映像には、感銘を受けました。静かに、ひっそりと白鳥が息絶えるところが本当にドラマティックで、圧巻なのです。 たった3分しかない作品で、しかも、フィルムで収められているものなのに。プリセツカヤの演技も素晴らしいものがありますが、あのように『瀕死』を踊っていた、ショヴィレの演技力は特別なものなのだと知りました」。 草刈民代さんは、イヴェット・ショヴィレの教えを引き継ぐ、パリオペラ座の教師ギレーヌ・テスマーに「瀕死の白鳥」を学んできたのです。
 
イヴェット・ショヴィレの「瀕死の白鳥」はどんなものだろう、 また、草刈さんが見せた、思わず、ゾクッとした、ピクッ、ピクッと体を震わせた艶かしい振りの原点がここにあるのではないのだろうか、と思って、 私の映像コレクションを探したら、ありました。 「エトワールの肖像」というビデオで、パリ・オペラ座の元エトワールだったショヴィレが当時のエトワール達にご指導しているドキュメント・タッチの映像です。 指導されているダンサーは、シルビー・ギエムをはじめ、モニク・ルディエール、イザベル・ゲラン、フローランス・クレール、マリ=クロード・ピエトラガラ、そしてドミニク・カルフーニ。ドミニク・カルフーニに「瀕死の白鳥」を教えています。 エトワール達一人ひとりに自分の踊ってきた作品を伝授していく・・。 表現や振りのひとつひとつを心をこめて後輩に伝えてゆくその姿は、年齢を超えて美しいものだと思いました。 そして最後に、ショヴィレ自身の「瀕死の白鳥」が収録されていました。ショヴィレの踊りは、何て滑らかなのでしょう。 明らかに、プリセッカヤのような、ロシアの「瀕死」と違います。プリセッカヤには、骨がないようにしなる腕には驚かせられましたが、 何となくわざとらしくて鼻についてしまいます。ショヴィレのそれは、あくまで自然で、ほんわかとした温かみを感じます。 おそらく、草刈さんが求めたのは、この滑らかさと温かみなのでしょう。 映像は古く不鮮明でしたが、「静かに、ひっそりと白鳥が息絶えるところが本当にドラマティックで、圧巻なのです。」 と草刈民代さんが言われたショヴィレの演技力を知ることができました。 ただ、目当ての、草刈さんが、ピクッ、ピクッと体を震わせた独特の振りは見られませんでした。 となると、この振りは、草刈民代さんのオリジナルということになります。 渡仏して技を研き、更に試行錯誤した結果、こんな、ゾクゾクするほどに魅力的な振りを編み出したのでしょう。 自分の技に溺れず、一層の努力を惜しまず、結果、多くの観客を魅力した、草刈さんを、一層好きになりました。

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