第7章 緊急時対応
1.緊急事態が発生した時の心構え
病院であれ,自宅であれ,また旅行先であれ,呼吸器の補助を受けながら生活している患者さんは,常に危機状態と背中合わせにいると言っても過言ではありません.HMV患者さんや家族の方にはこのことを肝に銘じていただきたいと思います.病院で療養している場合,危機状態に対する処置が手早く開始されるので危機状態から脱却する可能性が高いのです.
緊急事態の発生を目の当たりにして,びっくりしたり,あわてたりしない人はおそらくいないでしょう.ましてや自身の最も愛する人が危険に晒されている場合はなおさらです.
まず,救急隊に直ちに患者さんの急変を伝え,出動を要請して下さい.そして,気を取り直して患者さんの状態をできるだけ詳細に観て下さい.意識はあるか,呼吸をしているか,口唇や爪にチアノーゼが現れていないか,脈は触れるか,心音は聴診器で聴くことができるか,嘔吐していないか,口内に唾液や喀痰,吐物はないか,熱はないか,痙攣していないか,などバイタルサイン(生命徴候)を中心に素早くチェックします.呼吸器の作動状態もチェックします.
救急隊が到着したら,落ち着いて観察事項を救急隊員に要領よく説明し,緊急時の対応を依頼している医療機関への搬送を依頼して下さい.救急車内でも救命救急士が病状変化に対する手当をします.普段の様子を聞かれた時,心臓の状態,呼吸器条件,動脈血ガス分析値などを説明して下さい.この冊子に記載されている患者さんの検査結果を見せながら説明すると良いでしょう.
基本的なことですが,おかしいな,いつもと違うと思ったら,患者さんは,できるだけ早く家族の方に伝え,病院に連絡を取って貰って下さい.早期発見,早期治療が危機状態を避ける,最も良い方法です.主治医と緊急時の連絡について相談しておいて下さい.
(姜 進)