2.喀痰の排出困難

 痰の粘稠度を下げる工夫をする必要があります.まず粘稠な痰に湿度を与え,粘稠度を下げることにより痰を出し易くします.そのためには,
 @水分を多めにとるようにします.
 A部屋の湿度を加湿器で上げます.
 B蒸気吸入を行います.もし吸入器がなければ,湯の湿気を嗅ぐだけでも効果があります.
 体位ドレナ−ジは重力の助けを借りて痰を外に導きだす方法です.つまり体の向きをいろいろ変えることにより,気道に貯まっている痰を口側に移動させて外に排出し易くする方法です.
 まず痰がどこに貯まっているかを把握しましょう.
 @聴診器がある場合は使用しましょう.
 A聴診器がない場合は軽く胸に手を当てることで確認することができます.
 痰が右側(右肺)に貯まっている感じがあれば,右肺が上になるように横を向く(右側臥位)と出やすくなります.左肺の時は左側が上になるようにしましょう.

  右肺に痰が貯まっている時の体位


  痰が両肺の下部に貯まっている時の体位

 体位ドレナ−ジは胃内容物が逆流する恐れがある食前,食後2時間を避けて,1回20〜30分,1日2〜3回を目安に行いましょう.
 体位ドレナ−ジ中は必ず誰か側に居て,出てきた痰を取ったり,患者さんの様子を観察するようにしましょう.

 タッピング(手の指をそろえて使う)やカッピング(手を丸める)も胸部・背部を軽打する事により気管支の壁に付着した痰を排出する方法です.
 @手を丸めるような形にして胸や背中を下から上へ,両サイドから中央へ,又は上部へポンポンとリズミカルに叩きます

 A患者さんの呼気に合わせて胸を押してみましょう.バイブレ−タ−やあんま器を使って振動を与えるとさらに効果が上がります.
体位ドレナ−ジを行いながらこれらを行うとより効果的です.
 痰が出た時は痰の色,量,性状を観察して下さい.痰が多い時は,痰を貯めないために最低でも2時間毎に体位変換をして下さい.痰を出した後は,必ずうがいをして,口の中を清潔に保ちましょう.
(津田 倫代)

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