要求の多い、仕事を突きつけられ、ミスがあると容赦なく叱られます。それで、別の部署に、配置転換されるところだったのです。ですから、彼は、新しい上役も、同じだろうと決め込み、落ち着きをなくしていました。

　ところが、今度の上役は、前の上役と全然違うということが、彼に分かったのです。
　円滑に、しかも、効果的に、仕事を任せてくれます。その上、○○君を始め、部下の意見を聞くために、わざわざ時間まで割いて呉れます。会議はいつも短く、決議は良くまとまります。仕事の全般を励ましながら、仕事がうまくいったときは、はっきりと、賛同を表してくれています。しかも、うまくいかないときは、怒りを爆発させるようなことはありません。

　それから暫くして彼は、知らず知らずのうちに、体裁が悪くないように、服を買おうとしている自分に気がつきました。
　一生懸命に仕事をする事の素晴らしさや、楽しさを発見したのです。情緒や感受性を取り戻しのでしょう。上役に、アイデアとか、提案を、もっていっても、怪しげな変な目で見られないことも、ハッキリ理解できたのです。しかも、新分野を勉強するために、夜間の講習までを受けるように向上心が動き出しました。

　一人前に仕事が出来ることを悟った彼は、朝早く、熱心に職場に通勤しています。部内の職場雰囲気も、目に見えて良くなり、自然に彼の影響が表れました。前の上役がいたころよりも、遥かに仕事の効率が上がるようになったのです。

「理解できたでしょうか。このような例もたくさんあります。新しい上役は、○○君の知らぬ間に、自分（○○君）を嫌いにさせず、賛意（好意）を仕向けるようにしたのです」彼○○君は、昇進の機会がきたとき、もちろん逃しません。見事に昇進をはたしました。 　　　　　　　　　　　　　　つづく