今日、リーダー等の人材育成は、大企業、社会事業、人材養成機関などあらゆる分野で、盛んに行われております。
しかし、養成の目的は、主として技術的な習得と管理職によく慣れて上達することに重点がおかれ、人を動かし、影響を及ぼすという、本来の意味は軽視されているように思われます。
確かに、小集団活動のリーダー、工場長、あるいは、看護師長等になるには、それぞれ元々もっている技術が必要であることは理解できます。
けれども、全てに共通しているリーダーシップの基本とは「リードされる人々の欲求と、心の動きを一つにして、これに活力という生命を与える」ことが、最も大切なことであるのです。
現在の人材の育成法には、この点において、まだまだ改善の余地が沢山あります。
リーダーシップの養成を目的にするためには、つぎの事柄が、大切になります。
一、リーダーシップとは、人間の心の動きに働きかけるものですから、『人間性に通じる』必要があります。
二、長所も欠点も含めて、『自分の欠点』をよく知ることも大切です。
三、『人の正しい扱い方』をしっかりと掌握します。
四、組織の目標に向かって、『エネルギーと熱意を結集させる能力』を身につけます。
五、『人格と教養を高める』ために努力します。
しかし、ここにあげた項目について、広く理解させるためには、先ず、「養成訓練などの組織」を作らなければならないでしょう。
「人材の養成は有能な養成指導者のもと」に、リーダーの養成組織を作ることを心がけます。
全員からの尊敬と愛情を受けられるような優秀な指導者に、養成を委ねることの出来る組織は、幸運かもしれません。もし、正式な人材養成のポストが創設できない場合は、組織の大小を問わず、トップ管理者の一人が、リーダー養成の最終責任者になるべきであると思います。
ここで注意しなければならないことは、優れた養成者は、必ずしも管理職のリーダーとしての器量の持ち主ではないということです。また、その必要となる理由も特にありません。
もっとも大事なことは、何をどのように教えるかを知っていることです。芸術のすぐれた教師が、すべて、巨匠であると限りませんが、才能のある生徒が、その才能を開花するように、導く達人であるのと同じであればよいのです。
その次に大事なのは、リーダー希望者を慎重に、いい人を選び分けるため、ある基準(きじゆん)で、人・ものごとを選び分け「一定水準に達しないものを除く」ことです。
従来までは、リーダーの地位に昇進するものは、その部下の仕事ぶりで仕事の成績によるということが多くなっています。しかし、今日では「この候補者は将来はたして良いリーダーになり得るか」ということを、先ず、養成者は考えております。
この答は、組織に必要な義務と、要求される個人の才能という二つの面から、分析して見なければなりません。
全く異なる資質を持ったと人々が、同じ分野でリーダーとして、等しく成功を収めている例は少なくありません。言い換えれば、ある地位に必要な個人の才能とは、特定のものではないということになります。
一般的な知能テストを施すことも大切です。しかし、本当に知能が低い者が、良いリーダーになれる見込みは、まずないということです。しかし、リーダーとして成功するために必要な知能水準は、それほど厳格なものではありません。
大事なのは、むしろ経験の積み重ねです。知能は、ほんの一要因に過ぎませんから、少々劣っていても、他の有益な素質を伸ばすことによって充分にカバーが出来ます。
知能テストの他に、情緒安定度、外向性か内向性か、あるいは、命令型か服従型か、性格、特性、使命感の諸テストを行って、候補者の資質をよく掴んで参考にします。それによって候補者は、自分の欠点を知り、養成者には養成のポイントを何処におくべきかを知ることが出来ます。しかし、これらのテスト形式は、リーダーシップの適性を見るために作られたものではありません。これを予め知っておく必要があります。
長所も欠点も本当に明らかにされるのは、なんといってもリーダーシップを実際に経験するときになります。最良の方法の一つは、リーダー訓練中に適当に身につけることですが、スポーツの世界で、コーチが選手の練習ぶりを観察してその選手に必要な自覚と改善の方法を指示するように、養成指導者は、細かい注意や「指導を親しく与える」ことによって指導しなければならないのです。
しかし、なんといってもリーダー養成に絶対必要なのは、「一対一の賢明な忠告」です。その際、養成者にとって候補者の長所や欠点を知る参考になるものが、先に示した様々なテストであるということになります
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