「腹立ちまぎれに”ガンと一発”どなりつけることは、組織にとっても良いことですし、自分がどんなに怒っているように見えても本心は冷静なのだ」という考えのリーダーは多いのです。
ただし、この方法には、一、二つ、つけ加えることを忘れてはなりません。
腹を立てて見せることによって、グループの力を強め、仕事のピッチをあげることが出来ると思っているリーダーは、人々の恐れを利用しようとしているのです。これは、彼らの創造を高めることもしませんし、共通の目標に向かって、力を結集させる効果もないのです。
また、リーダーが立腹を、いくら上手に見せた積もりでも、人々はリーダーの意図通りには、受け取らないのです。彼らの目には、リーダーが失策のため自制心を無くしただけだとうつります。自制心を欠くリーダーは、信頼を失っていくのです。
ことに、そんなことが度重なれば、なおさらのことです。怒りの感情に我を忘れてしまうと、リーダーは失策の要因を見いだす力を失ってしまいます。公正に相手の立場を考え、真に教育的であることは、腹を立てているときには、まず、難しいものです。
リーダーの立腹とは、ブーメランのようなものです。投げた当人に戻ってきて、他の人々に効果を及ぼすどころか、リーダー自身を傷つけることになるのです。
また、たとえ初めのうちは装われていた腹立ちでも、だんだん本当の怒りになってくるのです。自分の演じている役に溺れてしまわないでいるには、よほどの役者でなければならないのです。初めは演技のつもりだったにしても、やっている間に本気になってしまうのです。
なるべく腹を立てないようにするには、「怒りを促すような状況を避ける」ことです。そのためには、リーダーは健康に留意して、疲れや、体の変調、心労などに陥らないようにすべきです。お粗末な企画、不注意な指示、不信などは、間違いなく失策の原因になります。そのため、腹立ちの原因とならぬよう心を配ることが大切です。
リーダーと、メンバーの間に感情的なこじれがある場合があります。「彼はとてもカンにさわる」「そばにいると我慢がならない」このような感情は、容易に感情を爆発させます。ですから、賢明なリーダーは、そういう人物の配置替えを計ったり、逆に親しくしようと努力することによって、出来る限りの摩擦を避けるようにします。
また、「怒りは両刃の剣」ということも忘れてはなりません。それは、瞬間的には仕事に拍車をかけ、リーダーの強い意志を人々の肝に刻む働きはするのですが、半面、その激しさのために、破壊的になります。ですから、度重なる毎に効果は薄れて、メンバーは、やがて、リーダーの自制心を失う様を見るのを面白がるようになり、さてはあざけり笑いをするようになるのです。
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