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一桁>経営組織論?>『意志の伝達』

<続・送信者側の障害>

「言葉にならない意志伝達」
 言葉にならない意志伝達も注意を要します。
 誰かに何かを話すとき、その話をする状態が、言葉のもつ意味以上に、いろいろなことを物語ることがあります。
 例えば、ある管理者が「時期を見て、この仕事をやってくれ」と言った場合、彼の目や口はもとより態度までが「これは急ぎの仕事だ」と言っているように思える様な場合もあれば、或いは逆に「他のことは全部済ませてからこれをやってくれ」と言っているようにも思えるときもあります。

 意志伝達の際に起こるもう一つの障害は、送信者側にあります。
 それは、管理者自身の職務や部下に対する行動態度であって、その人間の自己主張でもあるのです。
 自分を大きく見せようとする管理者のケースでは、この感情が露骨になって、命令や情報を伝えられなくなってしまいます。部下には、彼が、常に彼らを見下ろして話しをするように見えてくるからです。
 この日常の態度が怨みを売りますから、管理者の意志伝達を、部下は怨みとして買うので、本来の意思伝達は妨げられることになります。

 メッセージを受け取るということは、受け取る者が単に、これを理解するだけではありません。自分の行動を示す元として、受け入れなければなりません。
 怨みを抱くようになると、売られた相手の話しを聞き入れなくなります。管理者の態度に怨みを持つ多忙の部下は、言われることを、まともに聞きません。自分の都合の良いように解釈するようになります。
 優れた管理者のケースでは、部下と接するときに、皮肉を言ったり「地位をひらけかす」など、傲慢な態度はとらないよう普段から心がけています。

 メッセージ情報の送信者は、常に、受信者側は、自分が伝えようとしていることを、受け入れているかどうか、気を配っていなければなりません。
 また、これらのメッセージに対する反応を、キャッチできる「内部の耳」を持つようにしたいものです。
 「内部の耳」とは、優れた意志伝達者が持っているフィードバック機能の一部で、観察機能のことです。

 管理者は、部下が指示や命令を受け取るときの様子を良くみていれば、部下の理解や受容について、どのような反応が示されるか、すぐフィードバックが得られます。
 もし、観察機能が働かないと、フィードバック機能が遮断されますから情報は一方通行となります。送信機能の方にフィードバックされないので、送信者としても、情報が確実に、受け取られるようにする措置が、とれなくなることになります。

 意志伝達を充分に行うには、フィードバック機能などの、情報循環ループを接続しなければなりません。
 ループを確実に接続すると、情報が受信者に送られるときには、その受信反応が即刻送信者の方にフィードバックされることになります。また、管理者はこのフィードバックを直接的にも間接的にも行うことが出来る。
 つまり、受信者に直接質問すれば、少なくとも部分的なフィードバックは可能です。しかし、それでは充分とは言えない性質のものです。

 管理者が「わかったか」と聞けば大抵「解りました」と言う返事が返ってくるからです。
 これだけでは部下が話しの内容を理解しているかどうか解りません。馬鹿だと言われるが厭なために、「解りません」と言うところを「解りました」と答えて、あとで話しの内容を考えようとしているのかも知れません。

 あるいは、言われたことは、全部理解したと心から信じているけれども、本当に理解しているのは、ほんの一部ということもありますし、それに、理解したと思っても、管理者が意図したこととは、全く違う受取方をしていることもあります。
 間違いないようにするには、伝えたことを、部下が「どのように受け取っているか」を、問いただして見ることです。これを行う上手なやり方としては、つぎの方法もあります。
「誤りはないと思うが、話しの要点だけは、反復した方がよいだろう」

 それでは、今私はどんな話しをしましたか?」何れにしても、話しを全部繰り返す必要はありません。
 要点を捉えた質問を幾つかすれば、メッセージをどのように受け取っているかを相手は教えてくれます。
 言葉にならない言葉は、注意深く観察すべきものだと考えます。相手の癖、表情などに注意していると、いま話していることが相手に本当に理解され、受け入れられているかどうかが解ってくるからです。          つづく  一桁