症例2=成人矯正(MTM)症例(抜歯症例)
成人症例では歯周病に罹患している事が多いため、治療には細心の注意が必要になります。
患者さんの説明
この患者さんは、初診時年齢57歳2ヶ月の女性でした。半分諦めているような感じでしたが、治ったら、元気いっぱいになってます。歯並びが良くなると顔が明るくなります。
☆治療開始時(初診時)2020年11月9日
前歯部叢生+上顎左側犬歯の低位唇側転位(八重歯ちゃん)。
下顎右側第二小臼歯は抜歯済み、下顎右側中切歯は歯根露出がひどい状態です(注1)。歯周病の程度としては中程度~重度、歯磨きは悪く、舌癖も有り。
※(注1)噛み合わせとしては、下の写真の矢印①の部分(上顎右側中切歯と側切歯の間に下顎側切歯がかみ込んだ状態(=ロックされた状態)に注目してください。この噛み合わせでは下顎を横にズラして噛むことはできません。専門用語で言う臼摩運動(臼歯ですりつぶす噛み方)が不可能です。それだけでなく、噛むたびに下顎の側切歯には無理な力がかかるため、歯の周りの骨が溶けて歯根が露出してます。(歯が伸びたように見える)=写真の矢印②。 この状態の下顎側切歯は、「咬合性外傷歯」と呼びます。早く改善していれば、歯根の露出は防げたはずです。
治療計画
①まず、歯磨き指導。
②下顎右側中切歯と、上顎左側側切歯の抜歯。ただし、上顎の側切歯は下顎右側第二小臼歯部に移植する。
③マルチブラケット法で、歯列を整える。
④リテーナーを用いて保定観察。
治療結果
20222年5月28日にブラケットを撤去し、上顎右側第一大臼歯の補綴を一般歯科医にお願いした後の写真が以下です。上顎左側犬歯は形態修正してます。
前歯部叢生は改善され、全部の歯が噛めるようになってます。臼摩運動(下顎の横ずらし)もできるようになってます。
歯のデコボコが無くなっておりますので、歯磨きもしやすい形になってます。下顎前歯の間のスキマが目立つようになってますが、治療前は歯が重なっていたために見えなかっただけで、歯槽骨の高さはもともとこれぐらいでした。スキマがある程度開いていたほうが歯間ブラシが通って、清掃しやすいのです。
歯牙移植した下顎右側第二小臼歯の位置にある上顎の側切歯は、正常に機能しております。(歯根吸収を認めません。)
上のレントゲン写真が治療前、下のレントゲン写真が治療後です。下顎の第一大臼歯もアップライトしてます、
歯槽骨(歯のはえている骨)というものは、歯が無くなるとどんどん痩せてゆきます。抜けたままにしておくと噛む時の力がかかりませんので、どんどん痩せてゆきます。(人間の身体は使わないとダメになる。)=廃用退縮という医学用語があります。
治療費について
当院では、このような症例では、MTMの特別料金で治療しております。この患者さんでは技術料とブラケット代で、税込み22万円。これに月々の調節料(税込み5500円)が18回かかってます。月に1回の通院ですから1年半で治ったことになります。
顔貌の変化です。上が治療前、下が治療後。上下前歯を後ろに下げてますので、口唇が少し後退して引き締まった感じに変化しています。舌突出癖もありましたが、トレーニングをしてあります。舌のトレーニング+嚥下訓練で、むせることも減ったと喜んで頂いております。(以上)
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