Page - Mr Hajime Haruka does not have a family. Eploge
事
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Eploge.
月曜日、放課後。オカ研。
その奥の小部屋で、芹香と会長の二人がテーブルを囲んでいた。
「…私も彼も、もう少しはっきりとしていたなら、あの子も苦労しなかったのかもしれませんね」
「あの子っていうのは 兼部している希亜ね」
「ええ」
「良いんじゃない、若い頃の苦労は買ってでもしろって言うじゃない」
「そうですね」
「知ってる? あの子、今回の事、話に纏めてるわよ」
「出来上がったら拝見させてもらいましょうか」
「そうね。 ……結局、元の鞘に収まった訳か」
「そうでもありません。彼はまだ選択しなければなりませんから」
「もう決まっているんじゃないかな。少なくとも陰陽師への道は既に歩み始めているんでしょう?」
「一応手は打ってあります、上手くいけば今日中には分かると思います」
「楽しそうね」
「休みの間に、綾香と相談して計画しましたから」
同放課後。情報特捜部、部室。
今日の部会を前に、窓際の席で空を見上げながら先週の事を思い出していた。
「それにしても、この学園に無い物は無いと思っていたが…」
「いませんでしたね陰陽師は。それに二刀剣士にしても、部長ただ一人ですよね」
「言うな、分かってるからさー」
辟易しながらそう返事をし、これからの事を考えようとした矢先、シッポから一枚の用紙を渡される
「はい、これが今日の主な記事です」
シッポから渡された記事に目を通す。
一項目目の見出しには「学園の魔女、悠朔の所有権を主張」とある。
「何だこれは?」
「今日の記事です」
シッポの指摘に記事を読み始める。タイピングを急いだのか、妙なところで行を折り返してある記事には、朔以外の実名はなく。朔に起きたここ数日の事が淡
々と書かれていた。
記事の最後に書かれている内容に、思わず言葉を返す。
「最終的にはあいつから芹香先輩に戻ったはずなのだが…」
「あれ、そうなんですか?」
「ああ。芹香先輩なら、差し引きゼロと言うところだろう、問題はないはずだが?」
「なるほど」
朔はもう一度記事に視線を走らせる。だが記事を上げた人物名の記載もなく、怪しいと思って問い正そうとして顔を上げるとシッポの姿はなかった。
「どこ行ったんだ? もう会議が始まるというのに」
会議が始まり資料を手渡される。そこには朔の事を扱った見出しは無かった。
この記事はシッポのリークした隠し玉なのかと思い、朔は注意して会議の進行を見守る事にした。
オカ研、奥の小部屋。
「入るわよ」
「おじゃまします」
綾香とシッポが部屋に入ると、芹香が独りゆったりと紅茶を飲んでいるところだった。
「上手く行きました、まずは聞いてください」
そう言ってシッポが小さな機械のスイッチを入れる。
『はい、これが今日の主な記事です』
気にならない程度にノイズが混じったシッポの声が聞こえてきた。
『何だこれは?』
『今日の記事です』
一度の朔とシッポの受け答えの後、しばらくの間他の生徒の会話が入るが、おもむろに朔の声が入った。
『最終的にはあいつから芹香先輩に戻ったはずなのだが…』
『あれ、そうなんですか?』
『ああ。芹香先輩なら、差し引きゼロと言うところだろう、問題はないはずだが?』
『なるほど』
流れてくるやりとりに、シッポに親指を立てて答える芹香。
「これで、姉さんの元に悠朔の身柄が戻った訳ね」
こくこく。
「え? 悠朔に伝言? これからもよろしくお願いします?」
コクコク。
「分かったわ」
「少し質問良いッスか?」
「何?」
「そんなに魔女の礼儀って重要な物なんですか? そっち方面は素人なんで…」
「少なくとも、姉さんにとっては重要なんじゃない?」
「え? 人それぞれ重きを置く物が違いますから?」
コクコク。
「そう言われちゃあ、そうなんですけどね。何か釈然としなくて」
「そうよね、シッポは頼み込んで王手を行ってもらっただけだものね」
「ただ働きでしたけどね」
「え? この件ではあの子、シッポさんには音速の箒乗りと言えば分かる思いますが。
あの子が本を出すので、それを譲ってもらえれば、大筋は分かると思います?」
コクコク。
「……流石漫件部員、なんでしょうかね」
呆れたように呟くシッポに芹香は楽しそうに頷いて返す。
「さて、悠朔の所へ行くわよ」
「うぃーす」
綾香とシッポが出て行き、再び部屋の中が静かになる。
「取りあえず上手く行ったわね」
会長が芹香へ視線を戻すと、芹香は仄かに不機嫌な表情を浮かべていた。
別段、彼女はどこかへ行っていたわけではなく。綾香とシッポには見えなかっただけで、ずっと芹香と向かい合うようにしてテーブルに着いていた。
「どうしたの? 不機嫌そうな顔して」
「結局、あの子も私も、今回は何もできませんでした」
「それだけ。 …じゃないわよね?」
「あの子は目的を果たしました、それが少し羨ましい」
「嫉妬してるの?」
「少し」
「…そんな、楽しそうな顔して言われても説得力無いわよ」
呆れる会長を前に、芹香は紅茶を口にする。
人格が安定した現在、悠朔の件で芹香が必要になるとはあまり思えない。
今回の件は彼女にしてみれば完全なイレギュラーな出来事なだけに、一段落着いて安心しているのも事実だった。
同放課後。格闘研究部、道場内。
目の前で行われる異種間組み手の練習、壁際でそれらの様子を見る希亜と綾芽の姿があった。
希亜はスケッチブックの上に鉛筆を走らせながら、綾芽は組み手の順番を待ちながら、今行われている柔道と空手の動きを追かけている。
「パパの事だけど。結局、元に戻っただけ… なんだよね?」
「まぁ、そですね」
「本当にそうなのかな?」
「厳密には元に戻った訳ではありませんよ。悠朔君の事は、悠朔君の気の持ち方次第です」
「本当にそうなの?」
「ええ。人の在り様は、その人の心次第ですから」
「本当に?」
「それが。どんな罪人、聖人であってもねぇ」
視線は組み手に向けられたままの、綾芽の一連の問いかけに、希亜はスケッチブックに鉛筆を走らせながら、いつもどおりのほほんと答えた。
程なくあらかじめ設けられた制限時間に達し、審判役が組み手をしていた二人に伝える。
次はいよいよ綾芽の番らしく、彼女は面をかぶりその紐を結んで行く。
「ねー」
「なんでしょう?」
「どうして、がんばったの?」
「あなたの日常を、乱したくなかったからですよ」
希亜ののほほんとした答えを受け取った直後、審判役が綾芽を呼んだ。
「行ってらっしゃい」
立ち上がった綾芽に声をかける希亜。
「うん、行って来る」
そう答えて練習用の長刀を手に、綾芽がこの場から躍り出て行く。
始められる剣道と長刀の取り組み。その中での綾芽は、希亜の目にはいつもより軽やかに舞っているように見えた。
終わり
おあとに
はい 実の所見切り投下です
「をいをい…」
悠朔の性格をうまく表現的なかった私の敗退ですから
「あ〜、リテイクして一年遅れたからね〜」
リテイク中に息抜きで一本あげましたからね
「それで遅れたと?」
他にも別の方の作業とかありました
仮にこっちのみにかかっていたら半年は早くあげられたと思います
「終わったことを言っても言い訳にしか聞こえないよ?」
言い訳ですから
「まったく」
次にこっちに書くのは 問いつめです
「あぁ〜、忘れてなかったんだ」
いつ書くかは分からないけどね
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Ende