Page-Galwaliear-ユウロスの憂鬱 第二話

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ユウロスの憂鬱
第二話 出発

 ・・・あ さて あんなことがありまして 後日
 屋根裏部屋にユーリティアの悲鳴が・・・
「ひぃーー 全然分からなぁーい」
 嘆くユーリティア
「そうかなぁー」
 困るユウロス
「物理学に対する知識を詰めておかないと 後々困るよ」
「はぁーーー」分かってはいるんだけども だけども・・・
(人生について)深くため息をつくユーリティア
「今日はこの辺りにするかな」
と ユウロスは鬼のように複雑体系化した究極物理体系の分厚い本を閉じた
「やったぁー」
 心の底から喜ぶユーリティア
「じゃあ 何か昼飯作ってよ」
 ユウロスは分厚い物理の本を本棚に戻し屋根に上がりながら言い捨てた
「げっ・・・」はぁー 私料理苦手なのよね・・・
 階段を降り台所へと足取りの重いユーリティア

 ユウロスは屋根の上の大木の陰の木漏れ日で日なたぼっこ
「ユウロスさん 郵便です」
 ユウロスは屋根の上に立ち上がり郵便配達人を見るなり 飛び降りた
「わぁあああああっ」
 驚く郵便配達人を尻目に 地面すれすれでピタッと止まるユウロス
「サインだったね」
「・・・ いえ料金不足なので20ルーいただきます」
「あるかなぁー」
 ポケットに手を突っ込んで取り出す小銭
「18・19・20・21と あった」
 20ルー渡すユウロス
「どうも」
と 手続きを終え去って行く郵便配達人を見送り小包を開けた 手紙としっかりとした木箱が入っている その手紙を読むユウロス
「ええと ・・・ ・・・ 」
 そのまま足元のしっかりした木箱を応接間兼居間実質倉庫兼作業場に入れ クギを抜き蓋を開けた
「何の本ですか?」
 箱の中をのぞき込んだユーリティアが尋ねた
 ユウロスはユーリティアに手紙を渡し箱の中の分厚い本を取り出した
 がっかりした声で「はぁーーーーーー・・・ああああっ あーーーーーーーっ・・・」
と まあ 唸るようにして本を持って屋根裏に上がるユウロス
 絶句のユーリティア「・・・・。」は台所へ・・・
 しかしすぐにユウロスの前に現れ
「ユウロス 材料がほとんどないよ」
「えっ・・・」しまったぁーーーー買い物に行くの忘れたぁーーーーー
 呆然自失のユウロス
「仕方ない・・・ ユーリティア何が無い?」
「肉魚類全てと調味料が多々」
「おいおい・・・」と言いつつ台所に入り調味料の棚を調べ「ひぃょえぇーーーー」叫ぶユウロス
 ほとんど全ての調味料が空に・・・
「ユーリティア お前の料理はどこで習った」
「カムシアスパイス専門店にいるいとこに・・・」
 ユウロスは幻滅の顔を覆って台所を後にした

 数分後ユウロスとユーリティアはスイシの町へ向かっていたのだった
「どうしてそんなもので町へ?」
 ユーリティアはユウロスの引く自転車を見て言った
「どうしてとは?」
「飛んで行けば速いじゃないですか それにわざわざ体力を使うことなんてないんじゃないですか?」
「お前 毎朝それで来てるんじゃぁー・・・」とユウロスはユーリティアの足元を見た
 数センチ程地面から離れた足が不気味だ・・・
「そうです」
と そっけなく答えるユーリティア
「世の中動いてんだな」
 この言葉を最後にユウロスはこれについて考えるのをやめた

 しばらくして緩やかな丘の頂上を越えた二人にスイシの町並みが目に写った
 ゆるやかな長い下り坂をゆっくりと下るやがて辺りは畑が広がり目の前にスイシの町の検問所が現れる
 ユウロスは検問所に自転車を預け町の中へ
 そのまま噴水のある広場を通り過ぎ市場へと足を進める
「ところで ユーリティアもう帰ってもいいんだが・・・」
「はぁ でわまた明日」
「はいな」
 ユーリティアは市場の奥へと姿を消した それを見届けユウロスは香辛料の店パムへと足を進める  香辛料の店パムは市場の少し奥まった所にある間取りの小さな店だ 中は細長い店内に数十種の調味料や香辛料が一種類ずつガラス製の入れ物に入っている ユウロスは店員にほしい調味料を片っ端から述べ袋詰めにしてもらい 料金を払って香辛料の店パムを出た
「ユウロス・ノジールさんですね」
 ユウロスの後ろで一人の男が・・・
「いかにも 私がユウロス・ノジールだが 何か御用かな」
 調味料のたくさん入った紙袋を片手に抱えその男の方へ振り向こうとする
「おっと お互いを知らない方がよろしいのでは?」
「そうかもしれんな」ユウロスは振り向くのをやめ「何のようだ」
「この手紙を・・・」ユウロスは顔の横に突き出された手紙を空いていた手に受け取った
「でわ また御会いしよう」男はユウロスから離れて行った
 ユウロスはその手紙を紙袋に突っ込み市場を通り抜け 小さな橋を渡った所の例のいきつけの喫茶店に入った
「よう」ユウロスはマスターにあいさつをする
「よう じゃないぜユウロス」
「はぁ?」
「とりあえず 何にする?」
「いつもの」
「はいよ ・・・ ところでユウロスうちの娘は?」
「まだ帰ってないか?」
「ああ」
「うーん 市場で別れたのだが」などと言いつつユウロスは紙袋の中のさっきの手紙を取り出した
「そうか・・・」
「まあ 心配することは無いよ」その手紙の封を切り読み始めるユウロス
「あいよ」マスターはユウロスの前にいつものメニューを置いた
 しばらく読んでいたユウロスは次第に怒りの感情を抱き始め・・・
「マスター しばらくこの町を離れるよ」言い終え無糖の紅茶を啜るユウロス
「ほう 娘の教育はどうなるんだ」
 パンを飲み込み「いい機会だ 二人で世界旅行と洒落込もうかな」
「お前なぁー」
「行き先は?」ユーリティアの声が二人の耳に入った
「ここから西北西の方向7000キロぐらいの所」答えるユウロス
「と言う事は 海の向こうね 一度言ってみたかったんだぁー」と空想に浸るユーリティア
「許さん許さん許さん許さん 断じて許さん」
 大声を出して言い切るジム・ストラフィーネ それに対抗するユーリティア
「ケチ」
 そそくさとユウロスは食べ終えこの店を出 一路サス付きの自転車を置いた検問所へ

 家に着いたユウロスは家の中を片付け応接間兼居間実質倉庫兼作業場の中を引っ掻き回し工具を取り出し 屋根裏部屋で白いコートを着てそのポケットの中に着替えなどを手当たり次第にほうり込み 応接間兼居間実質倉庫兼作業場に降りて反対のポケットに工具や材料を入れ 台所の床下の収納庫をスライドさせ地下室に降りた 暗く広い地下室でユウロスはレトロでオールドで翼の長い飛行機の点検に移る
「ユウロス ・・・ ユウロス」
 ユーリティアの声が頭上に聞こえる
 飛行機の点検を終え弾倉に弾丸を詰め込むユウロス
 ユーリティアが階段を上がり屋根裏部屋に入った頃
 ユウロスは外の広葉樹の大木の前にしばらく無言で立ち 静かに「行ってくるよ」告げる すると 目の前の広葉樹の大木は風にざわめいた ユウロスはゆっくりと家の中に入り地下室へ その地下室の壁にあるハンドルを回すとゆっくりと地下室の天井が端の天井がスロープの様に降りる ゆっくりと
 差し込んだ光が迷彩色に塗った飛行機を照らし出す
 ユーリティアが屋根裏からこの様子を発見し 屋根にへばり付いてじっと見ている

 降り切った地下室の天井のスロープを利用してユウロスは飛行機を表に出し また地下室に戻り急いで天井を閉め家に鍵を掛けて 飛行機に乗った ベルトを締めエンジンを始動させスロットルを・・・

 舞い上がった飛行機はあの広葉樹の大木の上空を2回旋回して空のかなたに消えた

「しかし ・・・ 何か旋回終了時に機体が滑るなぁー」 ・・・ !
 ユウロスは宙返りを行うべく操縦桿を引く 一気に機体は翻り宙返りを終え自由落下を・・・
「ぎゃぁー」
と ユウロスのシートの後ろのトランクで耳をつんざく悲鳴が聞こえる
「やっぱり・・・」
 ユウロスは飛行機を安定させ
「ユーリティア これで・・・」
と ロープをポケットから取り出しトランクへ入れた
「すみません・・・」
 ユーリティアの情けない返事が帰って来た
 その日は始め進路上にあるニラム市を迂回する形で飛行し そのままニラム市の西のある町の近くに夕暮れとともに降り立った ユウロスはその時に ずっとポケットに入っていた昔ナッキャの着ていたパイロットスーツをユーリティアに渡し 後部座席を取り付け燃料の点検をして エンジンキーを抜き 主翼にシートを張って簡易テントにし夜を過ごした


  第二話 出発

  解説
 これといって特にない あえて言うならば《泥沼への序曲》

  余談
 ああ このまま行けば本編のごとく長く長くなってしまふ なんて事書きつつ泥沼にはまって行く私
 くそう いい下弦で区切りをつけてやる
 たぶん
 いや
 しかし・・・《絶句》

どういう訳か普段の冷めている精神が高揚したとき私はとても冷静になるらしい
大学受験の試験のときも問題を解きながら自分の精神状態を自分なりに逐一分析していた
なかなか凄まじいものである ただし精神が極度の緊張状態に陥ると自己精神分析は行われない

おまけ
しまぷうの・・・
一つ 己の行動の及ぼす結果を考えで行動する
一つ 怯まないこと
一つ 常に冷静な判断をすること
一つ 自分の座標は把握すること
一つ 謙虚でいること
一つ 闘争心を捨て去ること
一つ 優越感を捨て去ること
一つ 明るさを保つこと
一つ 宗教に関与しないこと
一つ 以上の事項をできるだけ実行すること


続き(第三話へ)


Ende