Page-Galwaliear-ユウロスの憂鬱 第三話

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ユウロスの憂鬱
第三話 これといって特に無いあえて言うならば《作者の新たなる作戦》

 朝方 まだ日が昇らないうちにニラム市の西のある町の付近の丘を後にした
 雲の上に出たころユーリティアがユウロスにたずねた
「どこへ行くのですか?」
 答えるユウロス
「とりあえず この大陸の西海岸にあるカレーと言う小さな港に行って君の食料を調達しなければ」
「ところで 去年この先のカレーの町近くに空軍の基地ができたの知ってます?」
「なにっ」
「・・・と言っても 飛行機の実験場なんですけどね・・・」
「まずいなぁー」
「何がですか?」
「この飛行機は はっきり言って 今のこの星のラヤーフの科学力では到底製作不可能な物だし・・・」
「そうだったんですか?」
「気がつかなかったか」
「はい」
「・・・・。」このまま雲が晴れない事を祈るか・・・
 迷彩色の飛行機はエンジン音を背に白い雲海の上を飛ぶ
 ユウロスはこのまま海まで出たいと願っているようだが
 ユーリティアは早く雲の間が開け地表を見降ろしたいと願っている
どっちの願いがかなうか 見物である・・・ !おい 考えるのは俺だよ・・・

 カレー王立空軍基地とは 名ばかりのだだっ広いなだらかな丘陵地帯にある倉庫群の事を指す・・・
 ここに来た空軍志望の将兵たちは皆がっくりとするのであった 魔法の力を利用して空へ飛び上がる事は容易いが いざ魔法と言う概念を切り離すと にっちもさっちも行かないのであった そして今日も停滞しきった飛行機に関する実験達が繰り返される・・・

 迷彩色の飛行機は雲海の上を軽快かつ静かに飛ぶ
 ユウロスは飛行機の燃料の残量を見た しっかりと残っている・・・
 しかし ユウロス一人ならともかくユーリティアと言う荷物を背負っていては海の向こうへは行けない 何せ一番の問題は生理現象と言う生物から離せない問題でありなおかつ・・・
 ユウロスはともかく一度海に出ることにした2分ほど進み雲の下へ出るため操縦桿を倒した 雲に入った瞬間ガクンと揚力が吸い取られユーリティアが驚きににた悲鳴を上げる

 雲は厚かった降りれば降りるほど辺りは暗くなりキャノピーに水滴が付き揚力が徐々にうせて行くのが分かった
 雲の下に出た雨が視界を遮り何も見えないとりあえずユウロスは高度を下げ速度を落とした 高度計に目をやり高度を確認した直後ユーリティアが短く好奇心を持って叫んだ ユウロスはキャノピーの外を見回すそこには一隻の飛行船が上昇しつつあった ユウロスは無意識に操縦桿を無い力を絞って引いた 機体が垂直になると同時にフルスロットルにし一気に雲の中へ隠れた
 その時である ユウロスの脳裏に良策が浮かび上がったと同時に ユーリティアの脳裏には悪い予感が走った  その直後ユウロスはスロットルを戻した
 そうユウロスの良策とは・・・
「ユーリティア 酔い止めの薬飲むか?・・・」ユウロスの心拍数が上がる
「何んですかそれ?」
「えっ・・・ ええと三半規管をマヒさせてだね・・・」さらに上がるユウロスの心拍数
「要するに何よ」
「気持ち悪くなって吐かないための薬だけど いる?」
「頂きます・・・」  ユーリティアはユウロスから錠剤をもらい不審に思いながらも飲み込んだ
「っ・・・・・」大成功 いぇえーーーい
 数分後・・・
「あっ なんだか 眠くなって き・・・」
 ユウロスは後ろを振り向きユーリティアが寝たのを確認し
 ガッツポーズをとるユウロス

 スロットルを少し入れ 航空図をみて進路を修正し風を切る音とエンジンの音を静かに楽しむ
 どの位飛んだだろうか辺りは背後から迫る夕焼けの赤が空を覆い尽くそうとしている・・・
「ふみゃあ・・・」
 猫を積み込んだ覚えはないと思いつつユウロスは後ろを振り向いた
「おはようです・・・」
 ユーリティアが目を擦りながらあくびをした
「もうすぐ 陸地が見えてくるころだ・・・」
「何ですか?あれは・・・」
「何が・・・」
「ゲッ」  ユウロスが前を見ると前方の大陸沿岸に何か黒煙がかなり広範囲にわたって沸き上がっていた そのまま見て見ぬ振りをするように操縦桿を引きスロットルを入れ高度を上げる
「どうしたんです?」
「いや・・ なに・・ その・・・」・・・
 そんなうちに 迷彩色の飛行機は雲の上に出るのであった・・・
「何か食べる?」
「何があるのですか?」
「さあ」  操縦桿を固定しポケットをあさるユウロス
 どんどんポケットの中深く腕を入れる
「・・・・。」絶句のユーリティア
 肩がポケットに入ったかと思うとユウロスの体はポケットに吸い込まれるように消えた
「あわわわわっ」
 慌てるユーリティア
と ポケットからゆっくりと伸びるユウロスの手
 絶叫のユーリティア
『叫び声をお届け出来ないのが残念です』
 ユーリティアの座る後部座席にユウロスの手が伸びる
 気絶するユーリティア・・・

 ユーリティアが気がつくと迷彩色の飛行機は夜の闇を飛んでいた
 ユウロスは何事もなかったのように操縦桿を握っている
「おはようです・・・」
 ユウロスの耳に入った声は寝ぼけている
 ユーリティアはさっきのことは夢だったんだなと安心してキャノピーの外に目を向けた
 何か明るいサーチライトが多数見える そのなかから明るい点が徐々に大きくなりユーリティアのいる方向に真っすぐ突っ込んでくる ぶつかると思った瞬間 飛行機が翻り明るい光球は空のかなたに消えた
 ユウロスは高度をさらに上げる
 迷彩色の飛行機の近辺を絶え間無く光球が飛ぶ
 ユウロスはそれを正確に避けている
 しばらく飛行機は激しく回避運動を取っていたが光球が飛んで来なくなると姿勢が水平に安定した
「そろそろだな」ユウロスはつぶやいた
「何がですか?」
「それは見てのお楽しみ」
 ユウロスが前方の空を見ていると 赤い光が何か信号のように点滅している ユウロスはそれに答えるように消えていた飛行機のライトを一度点滅させた すると飛行機の彼方に滑走路の誘導灯の光が次々と灯る ユウロスはその滑走路へ降りるために高度を落とす しだいに滑走路は近く大きく見えて・・・

 キュッ
 タイヤが滑走路に触れ 振動が二人に届きユーリティアが驚きの声を上げた
 ユウロスはスロットルを逆いっぱいに入れた 青白い光がエンジンを組み込んだ主翼の上下から前方に吹き出す
 暗い滑走路の端に飛行機が止まるとすぐ側の倉庫の扉が開き そこで一人の初老の紳士らしき人物がランプをくるくると回している ユウロスはその方向へ飛行機をゆっくりと進め 倉庫の中へ飛行機を入れる
 彼は飛行機が止まるとレバーを回しキャノピーを開けはじめる
 ユーリティアはシートベルトを外して開いているキャノピーに目をやる
 キャノピーが開ききると二人は飛行機を降りた
 さっきの初老の紳士らしき人物が二人に近寄って来て
「ようこそユウロス殿 私執事のヴィルゼスと申します そちらは?・・・」
「ええと・・・」
 割り込むように「博士の弟子ですわ」ユーリティアは言った
「・・・・。」そうだったのか・・・
「お弟子さんでしたか ではこちらへ」
 執事はいい終えるなり歩きだした
 倉庫を出て暗い通路に出た 二人は執事の後をついて行く
 その執事はユウロスと一定の間隔を常に保ちながら二人の前を歩いている
 ふとユウロスがユーリティアの足元を見る
「浮いてる・・・」やっぱり何か違う 違うんだぁ・・・
 そんなことを考えつつ ユウロスは執事の後を歩く
 暗い石作りの建物の中をそれからしばらく進むと巨大な扉の前に出た 執事はその巨大な扉の横についている小さなドアを開け
「どうぞこちらへ」とそのドアの中へ入って行った
 二人はそのドアを通り抜けた
 数本のロウソクが部屋の扉付近を薄暗く照らしだしている
「本来ならば その扉を開けるべきなのだが・・・ 錆び付いていて開かなくなっているのでな  そちらの急遽設置したドアで我慢してもらうよ・・・ ユウロス・ノジール」
 低い声は暗い部屋の奥から響いてくる・・・
「まあ こちらへ美味い紅茶を入れよう」
 低い声が再び暗い部屋の奥から響いてきた
 ユウロスはその暗い部屋の奥へ闇の中にユーリティアの視界から消えた
「えっ ・・・ ちょっ ちょっと・・・」
 ユーリティアは執事の方を一度ちらっと見て ・・・ ユウロスの後を何かに追われるように走り出した

「この紅茶製法間違ってないか?」不味い・・・
 ユウロスが低い声の持ち主に話しかけているのがユーリティアの耳に入った
「そうか? 本のとうりにやってみたのだか・・・」間違ったつもりはないのだが
「その本を渡すときに言ったはずだよ これは地球での話だって・・・」この紅茶ウーロン茶かも・・・
「地球って何だ?」そうかな
「そうだな この星に良く似ている星のことさ・・・」ちゃんと発酵させた?
「ほう・・・」っ 自信が無い・・・
「気候が悪いんじゃないか?」馬鹿者
「そうかもしれんな・・・」がぁーーーん
 一瞬息を吸い込む酔うな音が聞こえた後っ
「ぎぃよえええええええーーーーーーーーーーーーーーーー・・・」
 ドサッ
 ユーリティアの絶叫が途絶え倒れ込む音が聞こえた どうやら気絶したらしい
「どうした」
「君の姿に驚いたんだよ・・・」
「そうか・・・」まっいたなぁー


第三話 これといって特に無いあえて言うならば《作者の新たなる作戦》

 解説
ユーリティアの乗っていた飛行機に乗りユウロスはザンベジ大陸へ到着した
『そのまんまやないけ』

 余談
 さて問題ですユーリティアは何に驚いたのでしょうか?
 『さぁー みんなで考えよおーー』

   謎のキャラクター名鑑 暇潰し編
 ハゥリィイーノ・メルスィディー (647685〜647769)
あだ名はフリー ユウロスの遺伝子的には姉にあたる普通の人間
ごく普通の生活をしていたが大学在学中にユウロス本人と会う
実はユウロスの初恋の相手でもある ちなみにユウロスは遺伝子的に姉だという事実を知っていた

 浦部・夢人 うらべ・ゆひと (647653〜647693)
ユウロスの精神塑像に拘わった人物 あまり女性にすかれないせいか 生涯独身で通した
遺伝子的にはコテコテの日本人だが若白髪なので見かけよりも年が若い
最後は宗教的背景により殺害された

 おまけ
《ハゥリィイーノ・メルスィディー》の名前は《急げベンツ》と言い換えることが出来たりして・・・
エネルギー・ド・バスターについて『叫びやすいからこの名にした』


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Ende