マルタの遺跡


ハジャーイム
イムナイドラ
ミスア貯水タンク
タルシーン
ハイポジウム
聖パウロのカタコンベ
ジィガンティーヤ
タハージュラ
スコルバ
カートラッツ

マルタは地中海に浮かぶ小さな島国です。温暖な気候と、きれいな海のリゾート地として有名ですが、中世の要塞都市や、更に古い先史時代の巨石神殿の点在する遺跡の島でもあります。多くの文献や伝承の残る古代ギリシャやローマの遺跡とは異なり、マルタの古代遺跡は歴史の途切れた謎の多い世界最古の巨石文明の遺跡です。巨石神殿を築いた人達はどこから来てどこへ行ってしまったのか、謎の答えを探しにマルタへ行ってみましょう。

ハジャーイム

ハジャーイムは紀元前3600年〜3200年頃に築かれたと言われる巨石神殿の遺跡です。
使われている巨石は大きなもので幅6.4m、高いものは5.2mにもなると言われます。遺跡の正面から左手の外壁は浸食が激しく、荒々しい自然の巨石を利用したようにも見えますが、右手の入口付近の整然と積み重ねられた石組からは巨石をきれいなブロック状に切り出して組み立てている様子がよく分かります。神殿内部に入ると巨石をくりぬいて造られた入口や装飾された壁の跡も見ることができます。
マルタではハジャーイムのような巨石神殿がいくつか発見されていますが、建設方法は不明な部分が多く、小さな島でこれだけのものを造れる文明がどのように発達したのかも謎のままです。
遺跡の見学は普通に見るだけなら20分もあれば十分ですが、観光客も多く立ち寄る場所なので静かな遺跡を楽しみたければ、もう少しゆっくりと時間をとったほうが良いかも知れません。
ハジャーイムへはバレッタのバスターミナルから38番のバスに乗って30分程で到着します。海岸の景勝地ブルーグロットを訪れるならその手前で降りて、見学後1.5km程歩いて来る事も可能です。

(06年5月)

イムナイドラ

ハジャーイム神殿から、海上に浮かぶ小さなフィルフラ島を眺めながら緩やかな遊歩道を下って500mほど行くとイムナイドラ神殿があります。
神殿は紀元前3600年〜2500年の間に別々に建造されたと言われる3つの神殿から構成されています。海側にある神殿は特に注目したいところで、太陽の動きに合わせて春分の日と秋分の日に朝日が神殿の正面から昇るように造られています。 印象的な細かいドットパターンの装飾も保存状態が良く、神殿の内側の巨石で組まれた門の辺りにはっきりと見ることができます。
真ん中に造られた神殿は3つのうちで一番最後に造られたものと言われ、入口の前面にテラスがあるのが特徴です。神殿の奥に向かって進んで行くと、2番目の門の左側の壁に小さな神殿のレリーフを見ることができます。このレリーフには現存する遺跡では見れない分厚い屋根のようなものが描かれているのでチェックしておきましょう。

(06年5月)

ミスア貯水タンク

ハジャーイムとイムナイドラを結ぶ遊歩道を中程まで来た辺りで外れて、丘の上の方へ登って行くと、岩にいくつも穴があけられた貯水タンクがあります。
ここは、2つの神殿で使われる水を溜めておく場所だったと考えられているところです。岩の表面には意味有り気な溝も刻まれていて、この場所でも何か儀式のようなものが行われていたのかも知れません。
貯水タンクへ行くには、遊歩道の途中にある案内板では解りにくく、普通に探しても見つからないので、こちらの写真を参考に探してみて下さい。中央のこんもりとした木を目指して石積みの壁の所まで歩き、壁伝いに左手の方に数十メートル行くと見つける事が出来ます。

(06年5月)

タルシーン

タルシーン神殿は町の中にあるので、ロケーションはいまひとつですが、他の遺跡では見れない渦巻き模様のレリーフや女神像を見る事が出来ます。
オリジナルはバレッタの考古学博物館に展示されていますが、発掘された当時の場所に変わらない状態で再現されているので、言われなければレプリカとは気が付かないかも知れません。中には雄牛のレリーフのようにオリジナルの物もあるのでしっかりと見ておきましょう。
タルシーン神殿へはバレッタから8番や11番、12番など複数の路線バスが通っています。パオラの町の大きな教会の前辺りで降りて5分程歩けば遺跡にたどり着きます。空港からバレッタ市内へ向かうバスもパオラの町を通ります。近くのハイポジウムの見学と合わせて訪れたい所です。
(06年5月)

ハイポジウム

タルシーン神殿から数百メートル離れたパオラの町なかにハイポジウムの地下遺跡の入口があります。
地下の遺跡としてはトルコのカッパドキアの地下都市が有名ですが、時代はハイポジウムの方が千年以上も古く、ハジャーイムなどの巨石神殿と同時代に造られた地下神殿と墳墓であったと考えられている遺跡です。
地下に造られたことには巨石神殿とは別の目的があったのかも知れませんが、中には巨石の石組みを模したような部屋や、ドットパターンで装飾された柱もあり、地上の巨石神殿と共通するものも見ることができます。
遺跡は石灰質の大地を掘って地下3階まであり、落とし穴のように途中で途切れている階段や、赤い顔料で描かれた渦巻き模様の天井の装飾など、他の遺跡にはない見どころも多くあります。とにかく石の加工技術は見事で、人工的に掘られた地下遺跡として世界最古のものと思われますが、既に完成の域に達しているような美しさがあります。
見学はガイドの人の案内に従って、徐々に明かりの照らされたポイントを見て行くようになっていますが、 カビやバクテリアによる遺跡の損傷を防ぐため、このツアーは1回に10人まで、1日に7回と非常に少なく制限されています。
更に内部は撮影禁止になっていて、実際に足を運ばないと限られた写真でしかその内部の様子を見ることが出来ないのが現状です。
はるばるマルタまで行くのであれば、見逃せない所なので、早めに予約してチケットを確保しておきましょう。
予約は下のアドレスの遺跡を管理するヘリテイジマルタのサイトから行う事が出来ます。
(http://www.heritagemaltashop.com/hm/index.aspx)
(06年5月)

聖パウロのカタコンベ

マルタにはハイポジウムと似たようなカタコンベとわれる地下墓地が数カ所あります。なかでもラバトにある聖パウロのカタコンベはマルタ最大のもので、広大な地下の空間にたくさんの人々を埋葬していた跡を見ることができます。
年代的にはハイポジウムよりもかなり後のローマ帝国からビザンチン帝国の時代のもので、謎とされるようなものではないのですが、見学は自分のペースで自由に出来るので、迷路のような地下空間を探検気分で見て廻れます。
見学の際に受付で借してくれるオーディオガイドは日本語には対応していませんが、数カ国語で聞けるので少しでも理解出来そうな言語のものを借りていきましょう。それぞれのポイントに書かれている番号のボタンを押すとその場所の解説が聞けるようになっています。もし解説があまり分からないとしても、歩いているだけで楽しい遺跡です。
地下墓地の内部はライトも灯っているので懐中電灯は無くても大丈夫ですが、写真撮影可なので写真を撮るなら三脚があった方が便利です。
(06年5月)

ジィガンティーヤ

ジィガンティーヤ神殿はマルタ島のとなりのゴゾ島にある巨石神殿です。石積みは他の神殿より粗雑な感じで、巨石神殿のなかでも比較的古い時代のものと考えられています。壁は他の遺跡よりも高く積まれていて、石の組み方も見る場所によって違った組み方がされているので神殿の内部や前面を見た後は、ぐるっと神殿の周りも歩いてみてください。背面の方に廻って見ると、いくつもの巨石とその間を埋めるように小さな石が組まれている壁の様子もよくわかります。
ジィガンティーヤ神殿のあるゴゾ島へは、バレッタからは45番のバスに乗ってフェリーの出るチェルケウアまで行き、そこから島へ渡ります。遺跡に行くには更に港から島の中心都市ビクトリアまで行き、そこから遺跡のあるシャーラの町へ行く事になります。交通の乗り継ぎが何度かあるので距離の割には移動に時間がかかります。
ジィガンティーヤ神殿のみの見学であれば30分くらいあればひと通り見ることは出来ますが、ゴゾ島には他にも見どころが沢山あるので、いろいろ見ようと思うと最低でも1日は必要です。
(06年5月)

タハージュラ

タハージュラ神殿は他の巨石神殿と比べると、かなりの部分が崩壊していて保存状態も悪く、規模も大きなものではありません。公開されている日時も限られているため訪れる人はあまりいないようです。
とは言え、マルタの巨石神殿としては初期のものであるので、マルタの巨石神殿に興味を持った人なら訪れてみたくなる場所のひとつです。
遺跡の見学ができるのは毎週火曜の9:30〜11:00ですが、門が閉じられている時でも外側から眺める事はできるので、門の部分や、部屋の跡などを判別する事ができます 。
タハージュラ神殿へはバレッタのバスターミナルから47番のバスに乗ってイムジャールの町のドームのある教会の前で下車して徒歩3分程で行く事ができます。
(06年5月)

スコルバ

スコルバ神殿も巨石神殿建設時の初期段階に建てられたも神殿の一つです。こちらの遺跡は更に崩壊が激しく、神殿らしい形も巨石もあまり残っていませんが、わずかに残る巨石が3体ほど石碑のように立っています。
見学時間は、火曜日の11:30〜13:00のみとなっていますが、外側から遺跡の概要は観察する事ができるようになっています。
また、比較的小さめの石で造られている楕円形の窪地が2つ、柵で囲まれた遺跡の外にあるのでチェックしておきましょう。もしかすると神殿本体の方も小さめの石で造られていたため、多くの石が持ち去られて原型を残せなかったのかも知れません。
スコルバ神殿へはタハージュラへバスで来た道を戻り、一つ手前のゼッビーハの町の遺跡への小さな看板が出ている所を左に曲がって数分歩いて行くと、やがて左手奥の方に見つける事ができます。2つの神殿の距離は歩いて15分程です。
(06年5月)

カートラッツ

岩に刻まれた2本のラインがカートラッツと呼ばれるものです。マルタではこのカートラッツが島の所々に残っています。たくさんの車が通って出来た轍のようにも見えますが、調べる程に謎の深まる不思議なラインです。
造られた年代もはっきりしたことは分からないのですが、一説ではマルタの古代人が神殿建設の為の石の運搬に使った道路の跡だと考えられています。
これが車輪の跡だとするとシュメール文明で車輪が発明された時代よりも前にマルタで車輪が使われていた事になりますが、タルシーン神殿からは、巨石を運ぶのに利用されたのではと考えられる丸い石が見つかっているので、この溝に丸い石を転がして巨石を運ぶのに利用したのではという説もあります。
ただ、神殿近くにカートラッツらしきものは残っておらず、溝の多くは途中で消えて無くなってしまっていたり、海へと延びて消えていたりで、どことどこを結ぶためのものであったのかということは特定する事が出来ません。
クラパムジャンクションと呼ばれる場所では、レールの軌道ポイントのように分岐したり、直角に交差したり、数本の溝が平行に延びているカートラッツ群がありますが、何かが通った道路の跡と考えるには不自然に密集しているので、何か別の目的で造られたもののように見えます。 溝の深さや幅はライン毎にばらつきがありますが、平行する2本のラインでは、ほぼ同じサイズで、溝の中心からとなりの溝の中心までの距離はどのラインのペアも130cm〜140cm程になっています。
また、クラパムジャンクションのカートラッツの近くには洞窟もあり、石積みや壁を掘って造った部屋や窓のようなもが残っています。ガイドブックではあまり紹介されていませんが、入口は大きな縦穴が空いているので探してみて下さい。
クラパムジャンクションへはバレッタから81番のバスに乗ってブスケットガーデンかもう一つ先のバス停で降りて徒歩15分程です。ちょっと分かりにくい所ですが近くの道の分岐点には看板も出ています。帰りのバスは他の道を通るので来た時と同じバスに乗ってディングル経由で帰ります。
海へと消えるカートラッツは港町ビルゼブジャの小さな入り江の岩の上で見ることができます。バレッタから11番のバスに乗って入り江が見えたらそこで下車します。ここにはいくつもの丸い穴や四角い建物が建っていたような溝も岩に刻まれていて、カートラッツとの関係も気になる所です。
いつ、誰が、何のためにといった事は謎のままですが、いろいろ考えるのが楽しくなる謎のラインです。

(06年5月)


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