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〜怪盗ルパンを愛した日本人〜
-アルセーヌ・ルパンシリーズ翻訳の歴史-
<2>



☆読む上での注意☆

●基本的に年代順に並べています。しかしシリーズや全集が出た場合、読みやすさを優先して発行年代順にこだわらずシリーズ番号順に並べ替えたり、やや後の年に刊行されたものもまとめて掲載している場合があります。
●ルパンシリーズ以外のルブラン作品がシリーズに組み込まれていることがしばしばなので、いちいち分けずにルブラン作品もそのまま加えています。
●ルブラン原作と称して実は翻訳者の創作物であったというケースもままあり、それも資料と考えてそのまま加えています。これにともないルブラン以外の作家によるパスティーシュ類も可能な限り加えることにしました。
●邦題の異同については偕成社版全集を基準に説明しています。



●敗戦からの復興とともに<昭和20年代>
戦争のため一時途絶えたルパンシリーズ新規刊行だったが、戦後間もなく娯楽に飢えた日本人の前にルパンは華麗に再登場。ルブラン没後に世界初の「ルパン全集」を出したのは、なんと日本なのだ!


邦題(書籍名)
訳者/執筆者
発行年
出版社
頁数
補足情報
ルパン怪奇探偵:813
保篠龍緒
1946(昭和21)
大衆文庫

詳細は不明だが戦前の訳本を安価な文庫版にしたものか。とりあえずここに挙げた4編のみ存在を確認。
ルパン怪奇探偵:怪紳士
保篠龍緒
1946(昭和21)
大衆文庫


「怪盗紳士ルパン」。
ルパン怪奇探偵:真紅の肩掛
保篠龍緒
1947(昭和22)
大衆文庫

「赤い絹のスカーフ」ほか。
ルパン怪奇探偵:妖魔の呪
保篠龍緒
1948(昭和23)
大衆文庫

「カリオストロ伯爵夫人」。
赤い輪:ルパン怪奇探偵譚外伝保篠龍緒1947(昭和22)

古本屋で見かけたもの。
水晶の栓ルパン怪奇探偵譚
保篠龍緒
1947(昭和22)
三木書房

大衆文庫版と同時並行で出ていた?三木書房の文庫版ルパンシリーズ。こちらは「怪奇探偵譚」とコピーを打っている。そういえば両者はタイトルがかぶってない。
怪人対巨人:ルパン怪奇探偵譚
保篠龍緒
1947(昭和22)
三木書房

「ルパン対ホームズ」。
三十棺桶島
保篠龍緒
1947(昭和22)
三木書房

未確認だが恐らく「ルパン怪奇探偵譚」というサブタイトルがついていたかと思われる。
虎の牙:ルパン怪奇探偵
保篠龍緒
1948(昭和23)
三木書房

これも察するに「譚」ってついてたんじゃなかろうか。
八點鐘:怪奇探偵アルセーヌ・ルパン
保篠龍緒
1948(昭和23)
愛翠書房
200p

ルパンの告白
保篠龍緒
1948(昭和23)
教育社
202p

ルパンノート
保篠龍緒
1948(昭和23)
教育社
177p
原作が確認できないルパンもの「空の防御」「青色型録」と、非ルパンものの「プチグリの歯」「旅行用金庫」「三つの目」を収録。このうち「旅行用金庫」はルパンものに改変されているとのこと。
妖女変化保篠龍緒1948(昭和23)雑誌「読物時事」
『カリオストロの復讐』の初訳と思われる。中島河太郎「モーリス・ルブラン翻訳年表」に紹介があり、保篠自身が『復讐』を「妖女変化」の題で訳したと日本出版共同版全集に書いているとのこと。
黄金魔保篠龍緒1948(昭和23)雑誌「Gメン」
のちに保篠版全集では「セーヌ河の秘密」と題された『バール・イ・ヴァ荘』の本邦初訳とみられる。
怪人ルパン
保篠龍緒
1949(昭和24)
大泉書店「新選世界大衆文学集」6
328p
「怪盗紳士ルパン」か?
ソニアノ宝冠保篠龍緒1949(昭和24)雑誌「西日本」
『ルパンの冒険』
怪紳士
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」1

戦後復興もいよいよ進展してきたためか、ここで「全集」とまではいかないが「傑作集」の刊行がなされた。
水晶の栓
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」2


虎の牙
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」3

「虎の牙(上)」
呪の狼
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」4

「虎の牙(下)」
三十棺桶島
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」5


仮面の女
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」6

「二つの微笑をもつ女」。
怪人対巨人
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」7
「ルパン対ホームズ」
奇巌城
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」8


813
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」9


黒衣怪魔
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」10

「続813」
青い眼の女
保篠龍緒 1950(昭和25) 青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」11
「緑の目の令嬢」
妖魔の呪
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」12
「カリオストロ伯爵夫人」
バルネ探偵局
保篠龍緒
1950(昭和25)
青葉書房「ルパン怪奇探偵傑作集」13
「バーネット探偵社」
刺青人生
保篠龍緒
1950(昭和25)
岩谷書店「宝石」2月号掲載

「バルタザールのとっぴな生活」の初訳。ただしジム=バルネことルパンが途中から乱入する改造が加えられている。
水晶の栓
保篠龍緒
1950(昭和25)
岩谷書店「岩谷選書」
365p

八点鐘
保篠龍緒
1950(昭和25)
岩谷書店「岩谷選書」


赤い蜘蛛
保篠龍緒
1950(昭和25)〜1951(昭和26)
共栄社「探偵倶楽部」連載

「赤い数珠」の初訳だが、原作にはないジム=バルネ(バーネット)が乱入、推理してしまう改造がなされている。
怪紳士
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」1
243p
戦後初、そして原作者ルブラン没後、なんと世界初で編纂された「ルパン全集」。全25巻、ルパン以外も含めたまさに「全集」で、以後、これをベースに様々な保篠版ルパン全集が刊行される事になる。当時の出版事情からか「全集」といってもB6型の薄型スタイルである。
奇巌城
保篠龍緒
1951(昭和26)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」2
235p

水晶の栓
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」3
264p

虎の牙
保篠龍緒
1951(昭和26)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」4
249p

呪の狼
保篠龍緒
1951(昭和26)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」5
224p
「虎の牙(下)」。
三十棺桶島
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」6
284p

真紅の肩掛け/ソニアの宝冠
保篠龍緒
1953(昭和28)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」7
290p
表題作は「赤い絹のスカーフ」と「ルパンの冒険」。このほか「ルパン・ノート」として短編「陰影の符合」(影の合図)「地獄の罠」を収録。
怪人対巨人
保篠龍緒
1951(昭和26)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」8
275p
「ルパン対ホームズ」
バルネ探偵局/刺青人生
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」9
280p
「バーネット探偵社」および「バルタザールのとっぴな生活」ただし「バルタザール〜」は完訳ではなく、途中からジム=バルネ(バーネット)ことルパンが乱入する改造がなされている。この事実はかなり後まで明らかにならなかった。
八点鐘
保篠龍緒
1951(昭和26)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」10
258p

妖魔の呪
保篠龍緒
1951(昭和26)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」11
239p
「カリオストロ伯爵夫人」。
金三角
保篠龍緒
1951(昭和26)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」12
308p

青い眼の女
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」13
251p
「緑の目の令嬢」。
813
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」14
253p

続813
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」15
259p

怪屋
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」16
236p
「謎の家」。
ルパン再現/ルパンノート3
保篠龍緒
1953(昭和28)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」17

「ルパン再現」は「特捜班ビクトール」の初訳。「ルパンノート3」「日光の手品」(太陽のたわむれ)「結婚の指環」(結婚指輪)の2編。
二つの靨の女
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」18
240p
「二つの微笑をもつ女」。
カリオストロの復讐/三つの眼
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」19
290p
「カリオストロの復讐」は当初広告段階では「復讐女」というタイトルの予定だった。「三つの眼」は非ルパンものSF小説だが、ここでもしっかり「全集」入りした。
セーヌ河の秘密/ルパンノート1
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」20
250p
「セーヌ河の秘密」は「バール・イ・ヴァ荘」の翻訳。「ルパンノート1」には「青色カタログ」「空の防御」の2編があるが、いずれもルブランの原作が確認できないルパンもので、保篠龍緒自身の創作物の疑いが濃い。いずれも第一次大戦期にドイツスパイ団と戦うルパンの活躍を描き、柔道の達人の日本人将校が登場したりする。さらに気になるのがこの本の末尾の広告がフランス空軍関連本と柔道関連本で、この2編の内容と見事に対応していることだが…
ドロテ/プチグリの歯
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」21
260p
準ルパンもの「女探偵ドロテ」と非ルパンもの「プチグリの歯」はなぜかよく同じ巻に収録されている。
赤い蜘蛛/ルパンノート2
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」22
256p
「赤い蜘蛛」は準ルパンもの「赤い数珠」の初訳だが、ジム=バルネことルパンが乱入する改造がほどこされている。「ルパンノート2」「神秘の闇」(白鳥の首のエディス)「謎の家」(うろつく死神)「アルセーヌ・ルパンの結婚」「見えざる捕虜」(麦わらのストロー)「第三の男」(山羊皮服を着た男)を収録。
ゼリコ公爵
保篠龍緒
1952(昭和27)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」
222p
「ジェリコ公爵」。
赤い輪
保篠龍緒
1953(昭和28)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」別巻
245p

驚天動地
保篠龍緒
1953(昭和28)
日本出版協同「アルセーヌ・ルパン全集」別巻
232p
「ノーマンズ・ランド」。
怪盗ルパン
江口清訳
武部本一郎絵

1951(昭和26)
講談社「少年少女世界名作全集」24
318p
未確認。児童向け文学全集に収録されたのはこれが初?
少年探偵トルレ
1952(昭和27)カバヤ児童文庫第2巻4号
カバヤ食品が同社のキャラメルの景品として刊行していた児童書シリーズ。このうち以下5冊が「少年探偵イシドル・トルレ」を主人公とするルパンの翻案もの(「トルレ」の名前は保篠龍緒が児童向けに使った先例がある)。作者は不明で国史学者の西田直二郎が「はしがき」を担当。この第一作は「奇岩城」が原作。
少年探偵トルレの追跡
1954(昭和29)カバヤ児童文庫第8巻15号
「怪盗紳士」を原作に、「トルレ」が活躍する物語に翻案されている。「船中の怪紳士」「マラキ城の怪事件」「ルパンの脱獄」「トルレ対ルパン」(「遅かりしホームズ」のホームズをトルレに変更したもの)を収録。はしがきを児童文学者の金子欣哉が担当。
名探偵トルレ危うし!
1953(昭和28)カバヤ児童文庫第9巻15号
「バール・イ・ヴァ荘」の翻案。原作のベシュが全てトルレに変更されているが、大筋で原作どおりの展開。なお、ここまでの3作は岡山県立図書館のデジタルライブラリーで全文の閲覧が可能。
探偵トルレ対怪人
1953(昭和28)カバヤ児童文庫第10巻14号
内容未確認。
少年探偵トルレの逆襲
1953(昭和28)カバヤ児童文庫第12巻
内容未確認。
少年ルパン保篠龍緒1953(昭和28)ヤマト出版社
「仙花紙本」と呼ばれるもので、「ルパン対ホームズ」から「青色ダイヤの秘密」(金髪の美女)を収録。
怪盗ルパン1
保篠龍緒著
高畠華宵絵
1952(昭和27)
講談社「世界名作全集」26
324p
「奇岩城」を収録。このころから児童向け文学全集にルパンシリーズの収録が目立ち始める。保篠龍緒訳だが、子供向けにリライトされており、ボートルレが「イシドル・トルレ」となっているなど、登場人物の名前が一部変更されている。
怪盗ルパン2
保篠龍緒著
高畠華宵絵
1952(昭和27)
講談社「世界名作全集」47
326p
「水晶の栓」を収録。
怪盗ルパン3
保篠龍緒著
高畠華宵絵
1953(昭和28)
講談社「世界名作全集」64
370p
「813」を収録。
怪盗ルパン4
保篠龍緒著
高畠華宵絵
1954(昭和29」)
講談社「世界名作全集」87
329p
「怪人対巨人」のタイトルで「ルパン対ホームズ」の「金髪美人」「ユダヤの古燈」を収録。
怪盗ルパン5
保篠龍緒著
高畠華宵絵
1955(昭和30)
講談社「世界名作全集」112
341p
「サレク島(とう)の秘密」のタイトルで「三十棺桶島」を収録。
怪紳士
保篠龍緒訳
荻山春雄絵
1955(昭和30)
ポプラ社「世界名作探偵文庫」
280p
未確認だが、これも恐らく児童向けリライトか。ポプラ社が「怪盗ルパン」と関わった最初と思われる。
金三角
保篠龍緒訳
荻山春雄絵
1954(昭和29)
ポプラ社「世界名作探偵文庫」
290p

三十棺桶島
保篠龍緒訳
荻山春雄絵
1955(昭和30)
ポプラ社「世界名作探偵文庫」
288p

虎の牙
保篠龍緒訳
荻山春雄絵
1955(昭和30)
ポプラ社「世界名作探偵文庫」
295p

バルネ探偵局:怪盗ルパン
保篠龍緒
1954(昭和29)
朋文堂「旅窓新書」

「バーネット探偵社」。現物は未確認だが、「旅装新書」はこの時期だけ発行され絶版となった新書シリーズ。「旅の一冊」としてルパンシリーズから「バーネット」が選ばれたあたりが興味深い。


●「ルパン大国」ニッポン!<昭和30年代>
高度経済成長と歩調をあわせるかのように、日本におけるルパンシリーズ出版業界が急成長!?保篠龍緒版の全集の刊行がなぜか各社から相次ぎ、初の原典に忠実な全訳全集である東京創元社版、大文豪・堀口大学の完訳も登場。
さらに児童向けの真打ち・南洋一郎版ポプラ社「ルパン全集」までが登場して、日本は子どもから大人までがルパン中毒に!?

邦題(書籍名)
訳者/執筆者
発行年
出版社
頁数
補足情報
奇巌城
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1955(昭和30)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」1
234p
この時期相次いだ保篠龍緒版ルパンの少年向けリライト全集の決定版。のちの南洋一郎版以前はこちらが子供向けの定番だったみたい。
八点鐘の秘密
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1955(昭和30)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」2

242p
「八点鐘」。
怪人対巨人
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1955(昭和30)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」3
250p
「ルパン対ホームズ」。
妖魔ののろい
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1955(昭和30)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」4
227p
「カリオストロ伯爵夫人」。
謎の金三角
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1955(昭和30)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」
244p
「金三角」。
813の秘密
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1955(昭和30)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」
253p
「813」「続813」。
虎のきば
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1956(昭和31)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」
232p
「虎の牙」。
バルネ探偵局
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1956(昭和31)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」
230p
「バーネット探偵社」。
水晶の栓
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1956(昭和31)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」
260p

青色暗号ノート
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1956(昭和31)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」10
226p
表題作は以前「ルパンノート」に収録していた保篠氏自身の創作と疑われる短編「青色カタログ」の児童向け改作。「空の防御」も同様に収録している。その他に「赤い絹のショール」(赤い絹のスカーフ)「なぞの家」(うろつく死神)「壁布紛失事件」(白鳥の首のエディス)を収録しているとのこと。
湖底の宮殿
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1956(昭和31)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」11
233p
「緑の目の令嬢」。
三十棺桶島
保篠龍緒訳
牧村史朗絵
1956(昭和31)
講談社「探偵名作少年ルパン全集」12
257p

813の怪奇
保篠龍緒
1955(昭和30)
生活百科刊行会、大仏次郎等編「世界大衆小説全集」第1期9巻
350p
「813」。これまでやたらについてまわった「怪奇」の表現はこのあたりで打ち止めとなる。
鐘楼の鳩
保篠龍緒
1955(昭和30)
「宝石」4月号掲載

ルパンがちょこっとだけ顔を出す作品で、「ルブラン原作」として掲載されているが該当する原作がなく、保篠の贋作か、他作家の原作があるのではと推測されていた。長年未確定だったが、ルパン研究者のKo-Akiraさんによりエルヴェ・ド・ペルアンの「ブルゴンドの鳩」であることが確認された。フランスでルブラン存命中の1931年に書かれたパスティシュである。
怪盗ルパン竹山のぼる1955(昭和30)講談社「ぼくら」6月号付録
「奇岩城」の漫画版だが、ボートルレは「トルレ」になっている。ルパンが太った丸鼻のオヤジで、レイモンドが少年に変えられしかも「ルパンの弟」にされてるそうで。ホームズは登場しない。
ルパン就縛
島田一男
1955(昭和30)
「宝石」12月号・海外作家贋作特集

島田一男氏によるルパン贋作短編。ルパンが美人歌手のために自ら逮捕されにいく、という内容で伝記作者「わたし」も登場する。扶桑社文庫の短編集「古墳殺人事件」に収録。
世界名作長編漫画 怪盗ルパン
木下としお画
1955(昭和30)
集英社
108p
いちおう「奇岩城」をベースにしているが、話が古代エジプトに飛ぶわ、ロボット犬は登場するわ、しまいには異星人との接触話になってしまうという自由奔放な一作。一応保篠龍緒の許可を受けて書いたと断りがある。「漫画に見る怪盗ルパン」コーナー参照。
怪紳士
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」1

「怪盗紳士ルパン」。戦後二度目の保篠龍緒版「全集」である。
水晶の栓
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」2


奇巌城
保篠龍緒
1956(昭和31) 鱒書房「ルパン全集」3
234p

怪人対巨人
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」4
240p
「ルパン対ホームズ」。
三十棺桶島
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」5
255p

虎の牙
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」6
209p
「虎の牙(上)」。
呪の狼
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」7
212p
「虎の牙(下)」
金三角(上)
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」8
226p

金三角(下)/刺青人生
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」9
202p
「刺青人生」は「バルタザールのとっぴな生活」の改作。
赤い輪
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」10
222p

女探偵ドロテ/プチグリの歯
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」11
226p
「プチグリの歯」はなぜか毎度「ドロテ」と併載される非ルパンもの。
八点鐘
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」12


813(上)
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」13


813(下)
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」14

「続813」。
妖魔の呪
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」15
229p
「カリオストロ伯爵夫人」。
怪屋
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」16
208p
「謎の家」。
青い眼の女
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」17
223p
「緑の目の令嬢」。
二つ靨の女
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」18
197p
「二つの微笑をもつ女」。
バルネ探偵局/三つの眼
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」19
237p
「バーネット探偵社」とSF「三つの眼」。
ゼリコ公爵
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」20
192p
「ジェリコ公爵」。「侯爵」から「公爵」に出世?
ルパン再現/ルパンの告白1
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」21
200p
「ルパン再現」は「特捜班ビクトール」。「告白」の邦題は保篠版では初めて使われ、「太陽の手品」(太陽の戯れ)「結婚の指輪」を収録。
セーヌ河の秘密/ルパンの告白2
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」22
216p
「セーヌ河の秘密」は「バール・イ・ヴァ荘」。「告白」は「青色カタログ」「空の防御」
赤い蜘蛛/ルパンの告白3
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」23
218p
「赤い蜘蛛」は「赤い数珠」の改作。「告白」は「神秘の闇」(白鳥の首のエディス)「謎の家」(うろつく死神)「アルセーヌ・ルパンの結婚」「見えざる捕虜」(麦わらのストロー)「第三の男」(山羊皮服を着た男)を収録。
ソニアの宝冠/ルパンの告白4
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」24
219p
「ソニアの宝冠」は「ルパンの冒険」。「告白」より陰影の符合」(影の合図)「地獄の罠」を収録。
カリオストロの復讐/真紅の肩掛け
保篠龍緒
1956(昭和31)
鱒書房「ルパン全集」25
207p
「真紅の肩掛」は「赤い絹のスカーフ」。
洞窟の魔人
南洋一郎
1956(昭和31)
ポプラ社「日本探偵文庫」19
288p
間もなく「ルパン全集」を刊行する南洋一郎の少年向け冒険小説集で、「怪盗ルパンと佐久良探偵」なる一編のなかでルパンがゲスト出演している。
世界短編傑作集1
江戸川乱歩編
1957(昭和32)
東京創元社
303p
「赤い絹のスカーフ」(中村能三訳)を収録。
奇巌城/怪盗紳士
石川湧
1957(昭和32)
東京創元社「世界大ロマン全集」30
363p
間もなくシリーズ全訳に着手する石川湧氏の最初のルパン訳か?
奇岩城藤子不二雄1957(昭和32)「少年ブック」2月号別冊付録64p藤子不二雄が雑誌の別冊付録向けに圧縮リライトした「奇岩城」。主人公が「少年探偵イシドル・トルレ」となっており、カバヤ児童文庫の「トルレ」シリーズ、もしくは保篠龍緒の少年向け訳本との関係が指摘されている。
たんていまんが ルパン「うつろ針のひみつ」
永島慎二
1957(昭和32)
集英社「りぼん」10月号付録漫画

なんと永島慎二がルパンを漫画化していた!?しかも「うつろ針のひみつ」といえば「奇岩城」の原題にもっとも忠実な訳題といえるのでは…
たんていまんが ルパン
小山田三六
1957(昭和32)
集英社「りぼん」12月号付録漫画

ネット上で見つけた情報。当時の定番だった月刊漫画誌の付録漫画(世界名作の漫画化が多かった)だが、少女漫画というのは…なお、内容は「ルパン対ホームズ」(金髪の美女)とのこと。
強盗紳士ルパン
中村真一郎
1958(昭和33)
早川書房「世界探偵小説全集」404
198p
「世界探偵小説全集」はのちの「ポケットミステリ」である。これにたった2編だけ入ったルパンシリーズの1冊。現在もポケットミステリで刊行されている。
水晶の栓
三輪秀彦
1959(昭和34)
早川書房「世界探偵小説全集」468
256p
これも絶版品。なんでも底本が他の訳書と異なるらしく、微妙に内容の違う幻の一本なんだとか。
巨人対怪人
小坂靖博絵 1958(昭和33)
トモブック社「ルパン全集」1
画家しか確認できず、ページ数から察するに児童向けの絵本に近いものではなかったかと思われる。全3巻まで刊行されたことが確認できる。
奇巌城
小坂靖博絵 1958(昭和33)
トモブック社「ルパン全集」2
情報提供をいただき、下の「水晶の栓」の奥付に明記されていることから刊行の事実は確認された。
水晶の栓
小坂靖博絵
1958(昭和33)
トモブック社「ルパン全集」3
95p
いただいた情報によれば内容は原作のダイジェスト版とのこと。
青色ダイヤの秘密
保篠龍緒
1958(昭和33)
小学館「中学生の友」1958年8月号付録

「ルパン対ホームズ」より「金髪の美女」。
八点鐘
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」1

鱒書房全集からわずか2年。またまた出ました保篠ルパン全集。鱒書房版とは微妙に順番を変更してるのがマニア心をくすぐる(笑)。
虎の牙
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」2

「虎の牙(上)」
呪の狼
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」3
212p
「虎の牙(下)」
奇巌城
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」4


水晶の栓
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」5


妖魔の呪
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」6
229p
「カリオストロ伯爵夫人」。
怪人対巨人
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」7
240p
「ルパン対ホームズ」。
813(上)
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」8
216p

813(下)
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」9
222p
「続813」。
三十棺桶島
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」10
255p

金三角(上)
保篠龍緒
1958(昭和33)
三笠書房「ルパン全集」11
226p

金三角(下)/刺青人生
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」12
202p
「刺青人生」は「バルタザールのとっぴな生活」をルパンものに改作したもの。
青い眼の女
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」13

「緑の目の令嬢」。
二つえくぼの女
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」14

「二つの微笑をもつ女」。ようやく「(えくぼ)」がひらがなになった(笑)。
怪紳士
保篠龍緒 1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」15

「怪盗紳士ルパン」。
バルネ探偵局/三つの眼
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」16

「バーネット探偵社」とSF「三つの眼」

赤い輪
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」17


女探偵ドロテ/プチグリの歯
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」18


ゼリコ公爵
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」19
192p
「ジェリコ公爵」。
怪屋
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」20
208p
「謎の家」。
カリオストロの復讐/真紅の肩掛け
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」21


ルパン再現/ルパンの告白1
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」22

「ルパン再現」は「特捜班ビクトール」。以下の巻に分散している「ルパンの告白」はそれぞれどれが収録されているのかは未確認。
セーヌ河の秘密/ルパンの告白2
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」23

「セーヌ河の秘密」は「バール・イ・ヴァ荘」。「青色カタログ」「空の防御」の2題も収録。
赤い蜘蛛/ルパンの告白3
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」24

「赤い蜘蛛」は「赤い数珠」のルパンもの改作。
ソニアの宝冠/ルパンの告白4
保篠龍緒
1959(昭和34)
三笠書房「ルパン全集」25

「ソニアの宝冠」は「ルパンの冒険」。
奇がん城
朝島靖之助編著
柳瀬茂絵
1958(昭和33)
偕成社「名作冒険全集」24
208p
タイトルからして小学生向けを意識したリライトか?
怪盗ルパン1
朝島靖之助編著
柳瀬茂絵
1958(昭和33)
偕成社「名作冒険全集」37
210p
「ルパンの逮捕」「獄中のルパン」「ルパンの脱走」
「おそかったホームズ」
を収録したものだが、少年探偵ピエールというオリジナルキャラが登場する翻案もの。のちに同社児童名作シリーズで再利用。
怪盗ルパン2
朝島靖之助編著
山中冬児絵
1958(昭和33)
偕成社「名作冒険全集」41
206p
「女王の首かざり」「二人のルパン」(ふしぎな旅行者)「ハートの7の秘密」「古城の怪人」(うろつく死神)を収録。
これにも少年探偵ピエールが登場する改変がくわえられている。

怪人と巨人
朝島靖之助編著
加藤敏郎絵
1959(昭和34)
偕成社「名作冒険全集」44
206p
「ルパン対ホームズ」。
奇巌城
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1958(昭和33)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」1
304p
長期にわたり児童向けの定番となる南洋一郎版「全集」がついに登場。この最初の全15巻バージョンでは南洋一郎は「編著」扱いとなっていた。確かにそれが正確で、全体に児童向けの改変がかなり多い。
怪盗紳士
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1958(昭和33)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」2
297p
「大ニュース・ルパンとらわる」(ルパン逮捕される)「悪魔男爵の盗難事件」(獄中のルパン)「ルパンの脱走」(ルパンの脱獄)「ハートの7」「大探偵ホームズとルパン」(遅かりしシャーロック・ホームズ)を収録。
8・1・3の謎
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1958(昭和33)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」3
312p
「813」「続813」を一冊に圧縮。ラストがやや改変されている。
古塔の地下牢
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1958(昭和33)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」4
282p
「水晶の栓」。どうしてこんなタイトルになっちゃったんだかシリーズ最大の謎(笑)。確かに話の途中で地下牢は出てくることは出てくるが、タイトルにするほどの重大場面ではない。なお、このバージョンではルパンは原作通りボーシュレーを直接射殺している。
八つの犯罪
南洋一郎編著
奈良葉二絵(1970版では山内秀一)
1958(昭和33)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」5
328p
「八点鐘」を原作としているが、「映画の掲示」「ジャン=ルイの場合」が抜け、「皇后のネックレス」(王妃の首飾り)「さまよう死霊」の2作が加わり、ルパンが正体を明かす改変がある。
黄金三角
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1958(昭和33)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」6
300p
「金三角」。
怪奇な家
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1958(昭和33)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」7
280p
「謎の家」。
青い目の少女
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1959(昭和34)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」8
306p
「緑の目の令嬢」。
怪盗対名探偵
南洋一郎編著
中村猛男絵
1959(昭和34)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」9
326p
「ルパン対ホームズ」。
七つの秘密
南洋一郎編著
清水勝絵
1959(昭和34)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」10
284p
「ルパンの告白」および「バーネット探偵社」からのピックアップ。「日光暗号の秘密」(太陽の戯れ)「赤い絹マフラーの秘密」(赤い絹のスカーフ)「古代壁掛けの秘密」(白鳥の首のエディス)「三枚の油絵の秘密」(影の合図)「空とぶ気球の秘密」(偶然が奇跡をもたらす)「金の入歯の秘密」(金歯の男)「怪巨人の秘密」(山羊皮服を着た男)
三十棺桶島
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1959(昭和34)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」11
294p

虎の牙
南洋一郎編著
奈良葉二絵
1960(昭和35)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」12
291p
「虎の牙(上)(下)」を圧縮。
ピラミッドの秘密
南洋一郎編著
柳瀬茂絵
1961(昭和36)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」13
251p
大問題の一冊(笑)。冒頭に「地獄の罠」「麦わらのストロー」が組み込まれていたが、エジプトのピラミッドにまで話が飛ぶ大展開はルブランの原作がまったく存在せず、南洋一郎のオリジナル創作と考えられる。後のバージョンではさらに変更が加わる。
消えた宝冠
南洋一郎編著
柳瀬茂絵
1961(昭和36)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」14
262p
「ルパンの冒険」。
魔女とルパン
南洋一郎編著
柳瀬茂絵
1961(昭和36)
ポプラ社「怪盗ルパン全集」15
242p
「カリオストロ伯爵夫人」。南洋一郎版ルパン全集の最初のバージョンはこの15巻でひとまず打ち止めとなり、10年後に新バージョンに衣替えすることになる。
怪盗紳士リュパン/リュパン対ホームズ
石川湧
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」1
370p
長い間日本の「ルパン」を独占してきた「保篠節」訳に対抗して、ついに日本初の原文に忠実な完訳全集として登場。「リュパン」という呼称にこだわるのも特徴。このときの訳文は大半が現在の創元推理文庫で読むことができる。
水晶の栓/奇巌城
石川湧
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」2
398p

三十棺桶島
石川湧
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」3
280p 当初文庫版の翻訳出版権は新潮社が独占したため、この訳文は今も文庫化されていない。
虎の牙
井上勇
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」4
329p
アシェット版を底本としたため、ルパンのモーリタニアでの活動が省略されている。現在推理文庫に収められているものはその部分を他の原書から補足したもの。
金三角
石川湧
1960(昭和35)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」5
281p

813の謎
石川湧
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」6
358p
「813」「続813」を一挙収録。この訳本も新潮文庫に独占権があったため、推理文庫入りしていない。
カリオストロ伯爵夫人/カリオストロの復讐
井上勇
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」7
458p
両「カリオストロ」が一度に読めるお得な一冊?(笑)
八点鐘/リュパンの告白
井上勇
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」8
404p
「八点鐘」も新潮文庫との兼ね合いで推理文庫入りはいまだ果たしていない。「告白」は文庫化されているが、なぜか収録作が少ない。
緑の目の令嬢/リュパンの冒険
石川湧・池田宜政
1960(昭和35)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」9
481p
「リュパンの冒険」は戯曲「アルセーヌ・ルパン」の英語小説版からの翻訳としては本邦初。この訳を担当した「池田宜政」とは「南洋一郎」の本名。現在の推理文庫版では「南洋一郎訳」となっている。
バーネット探偵社/バール・イ・ヴァ荘
石川湧
1959(昭和34)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」10
304p
この「バーネット探偵社」も新潮文庫版とかち合うため、推理文庫入りを果たしていない。
謎の家/特捜班のヴィクトール
井上勇
1960(昭和35)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」11
385p

赤い数珠/ジェリコ公爵
井上勇
1960(昭和35)
東京創元社「アルセーヌ・リュパン全集」12
364p

813
堀口大学
1959(昭和34)
新潮文庫「ルパン傑作集」1
310p
文庫本の翻訳・出版権を獲得した新潮文庫で、自らも詩人でフランス文学翻訳・訳詩の巨匠・堀口大学が「怪盗ルパン」を訳してみせた完訳シリーズ。ルパンが自分の事を「わし」と言ったり、今読むと少々文章の古臭さが気になるが(途中の版で手直しもされているが)、さすがは新潮文庫、今現在入手が一番楽なシリーズでもある。
続813
堀口大学
1959(昭和34)
新潮文庫「ルパン傑作集」2
316p

奇岩城
堀口大学
1959(昭和34)
新潮文庫「ルパン傑作集」3
293p
「岩」表記はこれが最初かな?
強盗紳士
堀口大学
1960(昭和35)
新潮文庫「ルパン傑作集」4
295p
「怪盗紳士ルパン」。「ルパン獄中の余技」「遅かったりシャーロック・ホームズ」といった独特の訳題がある。
ルパン対ホームズ
堀口大学
1960(昭和35)
新潮文庫「ルパン傑作集」5
323p

水晶栓
堀口大学
1960(昭和35)
新潮文庫「ルパン傑作集」6
360p
なぜか「の」を外した(笑)。
バーネット探偵社
堀口大学
1960(昭和35)
新潮文庫「ルパン傑作集」7
233p

八点鐘
堀口大学
1961(昭和36)
新潮文庫「ルパン傑作集」8
321p
こういうロマンチックな話だと堀口訳文は冴える。個人的には「八点鐘」訳本のベストに推してます。
ルパンの告白
堀口大学
1961(昭和36)
新潮文庫「ルパン傑作集」9
308p

棺桶島
堀口大学
1964(昭和39)
新潮文庫「ルパン傑作集」10
440p
なぜか「三十」が外れた(笑)。新潮文庫のルパンシリーズはこの十冊で打ち止めになったため、他の作品は新潮文庫から創元推理文庫に出版権を譲られる形になっている。
シャーロク・ホウムズ/怪盗アルセーヌ・ルパン
鈴木幸夫/保篠龍緒
1959(昭和34)
平凡社「世界名作全集」23
698p
いただいた情報によるとルパンものでは保篠訳の「水晶の栓」が収録されているとのこと。
怪盗ルパン

1959(昭和34)
旺文社「中学時代・二年生」6月号付録

内容不明。
推理小説傑作集 ダイジェスト版
中島河太郎訳
川瀬成一郎絵

1959(昭和34)
旺文社「高校時代」1959年7月号付録

ルパンシリーズから「赤い絹の肩掛け」を収録。他にドイル、クイーンを一作ずつ併録。
奇巌城
水谷準
1960(昭和35)
角川文庫
280p
角川文庫に初登場したルパンシリーズ。以後、角川文庫では70年代まで単発で複数の訳者によるルパンシリーズが刊行される。
奇巌城/813の謎/アルセーヌリュパンの三つの犯罪
石川湧
1960(昭和35)
東京創元社「世界名作推理小説大系」4
540p
「奇岩城」「813」「続813」をセットで収録。創元社版「全集」の訳文をそのまま収録か。
怪盗ルパン
中山光義文
小島剛夕絵

1960(昭和35)
集英社「フレンドブック」
212p
絶版漫画古書店などの情報で知った。雑誌付録か?内容は「奇岩城」で、あの小島剛夕による挿絵がふんだんに入っているのが貴重。その他漫画・絵物語など読み物も収録とのこと。
世界推理名作全集2ルルー・ルブラン
曽根元吉
1961(昭和36)
中央公論社
497p
ルブラン代表として「奇巌城」を収録。
世界短編傑作集2
江戸川乱歩編
1961(昭和36)
創元推理文庫
340p
「赤い絹の肩掛け」を収録。
なぞの紙片 内田庶文
中山正美絵
1961(昭和36)
旺文社「中学一年コース」新年特大号付録
「水晶の栓」が原作。
怪盗ルパン真樹日佐夫1961(昭和36)秋田書店「冒険王」三月号付録・冒険文庫
「金髪の美女」を原作に、日本人少年ヒロシが登場したり、ワトソンが少年助手になっていたりと改変が多いという。文を書いてる「真樹日佐夫」といえば梶原一騎の実弟で劇画原作もやってる人。
捕えられたルパン

1961(昭和36)
小学館「小学六年生」1961年11月号付録

詳細不明だが、「ルパン逮捕される」から「脱獄」までのパターンか。
快盗ルパン
水谷準
1962(昭和37)
角川文庫
280p
なぜか「怪盗」ではなく「快盗」。1977年に新版も出てる。内容は「怪盗紳士」だが、現在の創元推理文庫・早川ポケミスと同じ底本のため「アンベール夫人の金庫」「黒真珠」を欠き、「死神徘徊」(うろつく死神)を収録している。
アルセーヌ・ルパン
保篠龍緒訳
伊勢田邦彦絵
1962(昭和37)
小学館「少年少女世界名作文学全集」18
317p
掲示板に寄せられた情報によると、収録作は「奇巌城」「怪人対巨人」(ルパン対ホームズ)で、子供向けに書き直されたものだったとのこと。
奇巌城
曽根元吉
1962(昭和37)
中央公論社「世界推理小説名作選」
200p
前年に出た「世界推理名作全集」の再利用か?解説などは新稿とのこと。
ルパンの友情
竹淳訳
中山正美絵

1962(昭和37)
小学館「小学六年生」1962年6月号付録

「友情」なんて何の話かと思ったら、「赤い絹の肩掛け」とのこと。表紙にも「刑事に協力する怪盗ルパン!」とあるのだが、あのラストは改変してるのかな?
消えた黒真珠
竹淳訳
中山正美絵

1962(昭和37)
小学館「小学六年生」1962年7月号付録

もちろん「黒真珠」。
盗まれた名画
竹淳訳
中山正美絵
1962(昭和37)
小学館「小学六年生」1962年9月号付録

「白鳥の首のエディス」。
怪盗ルパンハートの7
小林達夫訳
山中冬児絵
1962(昭和37)
偕成社「世界推理科学名作全集」12
308p
「ハートの7」だけで300pはいかないだろうから、「怪盗紳士ルパン」からいくつか収録したか?
怪盗ルパン怪人対巨人
寒川光太郎訳
松田穣絵
1962(昭和37)
偕成社「世界推理科学名作全集」13
308p
「ルパン対ホームズ」。
怪盗ルパン水晶の栓
朝島靖之助訳
伊勢田邦彦絵
1962(昭和37)
偕成社「世界推理科学名作全集」14
306p

怪盗ルパン奇巌城
寒川光太郎訳
武部本一郎絵
1963(昭和38)
偕成社「世界推理科学名作全集」15
308p

世界推理小説大系9「ルブラン」
石川湧
1963(昭和38)
東都書房

「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」「水晶の栓」を収録。
怪盗ルパン
中山光義訳
吉田郁也絵
1963(昭和38)
少年画報社「少年画報社少年文庫」7
220p

怪盗ルパン
竹淳訳
中山正美絵
1963(昭和38)
小学館「小学六年生」1963年2月号付録

「ルパンのたいほ」「ルパンの脱獄」を収録。
だまされたルパン
竹淳訳
中山正美絵
1963(昭和38)
小学館「小学六年生」1963年4月号付録

内容不明だが、「アンベール夫人の金庫」か。
ルパンと麦わら
竹淳訳
中山正美絵
1963(昭和38)
小学館「小学六年生」1963年5月号付録

「麦わらのストロー」。
ルパンの追跡
竹淳訳
中山正美絵
1963(昭和38)
小学館「小学六年生」1963年6月号付録

「ふしぎな旅行者」。
女探偵ドロテ
白木茂訳
東光寺啓絵

1963(昭和38)
旺文社「中学時代・二年生
1963年6月号付録

内容未確認だが、「ドロテ」を児童向けに改作したものと思われる。
ルパンの危機
竹淳訳
中山正美絵
1963(昭和38)
小学館「小学六年生」1963年7月号付録

内容不明だが、「地獄の罠」かな?
中一ポケット・ミステリー ABC怪事件他一編
青山岩男訳
上西康介絵

1963(昭和38)
旺文社「中学時代・一年生」8月号増刊

「怪盗ルパン」と題して「水晶の栓」を併載とのこと。
太陽殺人事件

1963(昭和38)
小学館「小学六年生」1963年12月号付録

内容不明だが恐らく「太陽のたわむれ」。訳者・画家も不明だが恐らく同誌の一連の付録を手掛けた二人と同じかと。
アルセーヌ・ルパンの冒険:奇巌城/水晶のせんの秘密
那須辰造訳
和田誠絵
1964(昭和39)
あかね書房「少年少女世界推理文学全集」4
225p
和田誠絵、というのを見て「そういえば小さい時に読んだ妙に古い「奇岩城」本はこれだったかな?」思い出した。ルパンが潜水艦で逃げちゃうところで「ルパンはどこへ行ったのだろう?」で終わっちゃっており、ラストの悲劇はカットされている。
<補足>確認した方からの情報によると、巻末に小学生の読書感想文が掲載されており、「レイモンドが殺されるくだりではくやしくてホームズの挿絵を思いっきりなぐった」という感想文が掲載されているとのこと。訳者と解説の連絡ミスによるものらしい。

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