15時、5階にあがり、今回のSF大会で実は私が最も楽しみにしていた企画を見にいく。それは、「SFは楽しい!」と題した、本の雑誌SF大会殴りこみ企画である!!シーナさんには講演会などで何度もお話を伺ったことがあるのだが、目黒さんにお会いするのは初めてなのである!わくわく!!しかもこの二人に加えて、大森望氏が司会役で加わるという、本の雑誌ファンにとっては超うれしい企画!いったいこの三人のSF話、果たしてどんな展開に?
図々しくも前から2番目に陣取るワタシ。お三方は、向かって右からシーナさん、目黒さん、大森さんの順。目黒さんの第一印象、「色が白い!」やはり年中、本ばかり読んでるせいか?いや、隣のシーナさんが黒すぎるからか?(笑)あまりに対照的なおふたりでした。目黒さんはもっと無口な方かと思いきや、本の話になると止まらないご様子で、「この本はこうでこうで、こう面白いんだよ!!」と熱く語っておりました。シーナさんとの掛け合いがまたおんもしろくって!(笑)ま、以下のレポで雰囲気だけでも味わってみてくださいな。
大森「『アド・バード』でSF大賞を受賞した椎名誠さんと、最近『ひとりが三人』という本を出されたばかりの北上次郎さんにお越しいただきました。これって、ミステリ評論のときのペンネームが北上次郎、競馬関係の文章の時は藤代三郎、それ以外が目黒考二というおひとりで3つの名を持つところからなんですよね」
目黒「SFについてはオレ書いたことないよ。こないだ本屋で『アド・バード』みかけてね、誰が解説書いてるんだろうと思ってみたらオレでさ、びっくりしちゃった。最近全然SF読んでないんで、オレがここに来るのはとても不適任なんだけど、大森が「いいから来い来い」っていうもんで義理で来ました。昔はSFは楽しかったけどねー」
椎名「オレも最近読んでない。最近のは面白くないね!」
目黒「でもシーナ、『ハイぺリオン』絶賛してたじゃん」
椎名「ああ、あれは面白かったねえ!!!」
目黒「オレも読んでみたけど、30ページで挫折した。シーナってすごいなと思ったね。オレにはムズカシくて。SFって、独特のリズムみたいのがあるのよ。オレは昔、時代小説が読めなくてね。読んでないジャンルがあるのってクヤシイじゃん。菊地っていう先輩にオススメリストを作ってもらって読み始めたけどダメだったのね。でもそれから25年後に、隆慶一郎という偉大な作家が出て、これがすごく面白かったのよ。で、全部読んでたんだけど、5年で死んじゃったんで、あわててその昔のリスト引っ張り出して読んだの。そしたらどれも面白くてさあ!このオレの25年は何だったんだ!って後悔したねえ。とにかく昔はダメだったんだよ。今は面白いけど」
目黒「シーナと知り合ったのもSFが縁だったんだよ。あの頃、SFなんか読んでるともう奇人扱いでさ。本の雑誌も、オレが作ってた「SF通信」っていうのがそもそもの始まりなんだよな。いわゆるSFの名作は全部読んでた。あのニューウェーヴ騒動で挫折したんだ。あれ以来SFが読めなくなった。トマス・ディッシュの『リスの檻』はわかったんだけど、それ以外のものがぜんぜんわかんなくてね。その頃、伊藤典夫がSFマガジンにエッセイを連載してて、オレは彼のこのエッセイが大好きだったのね。で、彼もこのニューウェーヴがわかんないっていって、休載したの。「このひといい人だなー」ってオレは親近感を持ったね(笑)。でもその後、何ヶ月かあとに、SFマガジンの海の特集かなんかで復活してね。すごくさみしかったなあ」(一同笑)
椎名「オレはサラリーマンの頃、よくSF読んでたね。あの頃銀背っていうの?あれが月1回、給料出てすぐくらいに1冊でて、SFマガジンがやっぱり同じ頃でて、毎月月末にこれを買うのが楽しみだったね。SF読まなくなったのは、やっぱりニューウェーヴから。難しくなっちゃって」
目黒「あの頃はすごくマジメに読んでんですよ。山野浩一の評論とかは面白いって書いてあるのに、自分にそのニューウェーヴの面白さがわかんないと、もうSF読む資格がないんじゃないかと思ってね。オレはあそこでやめちゃったけど、シーナはあれからもまだ読んでたよね」
椎名「スペースオペラじゃないヤツね。あれはオレダメなの」
大森「じゃ最近のSFで一番よかったのは?」
椎名「やっぱり『ハイペリオン』だね」
大森「あれはスペースオペラとも言えるでしょう」
椎名「ああ、そうかな。シェクリィとかも好きだったな。でもやっぱり、昔ほどは読んだ後、あちこち電話掛けまくったりしなくなった(笑)」>ああこの気持ちわかるなあ。傑作を読んだ後って誰かに言いたくなるのよね。私の場合は、この「電話」が現在ネットなわけっす。
椎名「オレは大森さんの書評を信じて読んでるの。今、『パヴァーヌ』読んでるんだけど、挫折しそう。表紙のイラストがよくないねー。あれは違うでしょう。本文読んでないな、と思って。ナウシカみたいな質感はあるけど」
大森「あの面白さは、改変世界のリアリティなんですよ」
椎名「ああ、改変世界っていうテーマは興味あるな。そういうSFってどのくらいある?」
大森「そうですねえ…急には出ないな…『ドラキュラ紀元』とか、『高い城の男』ディックとか、『ディファレンス・エンジン』とか」
目黒「オレはタイムトラベルものが大好きなんだ。これは今でも読む。あと近未来も大好き。ただ、天使が出てくるとダメなんだな(笑)『ウィーンの血』っていう最近出た新刊が2025年が舞台なのね」
大森「2010年、あたりがタイトルについてると読むのね(笑)」
椎名「オレはスペースオペラとドラキュラがダメ。あと妖精」
大森「ドラキュラでも、理屈で書いてるひともいますよ。自分で理路整然とした理屈を作って書いてるの。これはもうSFなんですよ。ぼくは前に本の雑誌でも突っ込んだことがあると思うんだけど、とかく「SFのようなものを書きました」という作家が多いんだけど、これはちゃんと「SFを書いた」とはっきり言って欲しい。シーナさんも、『アド・バード』を「SFのようなもの」じゃなく、「SFを書いてる」と意識してください!(笑)」
椎名「でも科学知識ゼロだから、自信ないの。やっぱそういう知識ないとまずいんじゃないかと。終るかもしれない擬似世界、みたいのを書くのが好きなんだ。今、「新潮」にときどき書いてるんだけど、ここって文芸誌だから、何書いてもいいんだよね。オチがなくてもいい。読まれなくてもいい(笑)。でもそういう世界って、よっぽど自分の世界に近くないと読んでくれない(笑)」
椎名「オレは普通小説や恋愛小説やミステリには全然興味ないの。『熱海温泉全裸殺人事件』とかね(笑)。小説の一番のポイントは、どれくらいウソをつけるか、または逆にどれだけホントを書けるかだと思うの。オレはストーリーってのはかけないかもしれないなあ」
目黒「オレね、シーナの『アド・バード』は大好きだけど、作品としては『武装島田倉庫』のほうが上かもしれないと思う。ああいう短編のほうがいいかも」>ワタシも目黒さんに一票!シーナさんの『水域』とかの短編は非常に面白いと思います。まさにアイデアの勝利でしょう。設定だけ投げつけて、主人公が困り果てて、そのままふっと終っちゃう、その余韻もいいと思います。なんだっけ、あの砂に自分のトラックがずぶずぶもぐりこんじゃうの。短編映画になったヤツ(タイトル失念)。あんなのとか。
大森「SFってのはストーリーなくてもいいんですよ!シーナさんのお好きな『地球の長い午後』もそうでしょ。ああいう、世界を書くだけの小説でもオッケーなんですよ」
椎名「ああそうか」
目黒「さっき普通小説っていってたけど、僕も『熱海温泉全裸殺人事件』みたいなのは読んでないですよ(笑)。とほうもないウソね、うーん。前に読んだ小説で、アメリカの全郵便物が、アメリカの田舎の小さい郵便局にいったん集まるみたいな話を読んだのね。面白そうでしょ?最初の100ページがこれだったの。でも、2部に入っていきなり天使が出てきたのね(一同笑)。これでもうやめた」
大森「それは『不滅の愛』クライヴ・パーカーですね。ファンタジーがダメなんですね」
目黒「前にね、講談社のあるひとが「ちょっと面白いから読んでみてください」って現物を送ってきた本があったの。この「ちょっと」ってのがなんかさりげなく曲者でしょ。これが小野不由美の「十二国記」だったん。読み始めたら止まんないの。よかったよねえ!!あれ!で、周りに言ったら、「去年、大森さんが大絶賛してますよ」って言われて(笑)。でも本の雑誌とかで言いまくったら、読んでハマったオジサンたちが、あのティーンズハートの表紙が恥ずかしいらしくて、本屋の棚とか見られないらしいの。「出たらこっそり教えてくれ!そしたら買いにいくから!」って何人ものひとに言われてるんだ(笑)」
大森「あれは今、表紙を変えて普通の講談社文庫で1冊ずつ出てますが、これが2巻が出ると、ティーンズハートの3巻がわっと売れるんだそうで(笑)。続きが待てないのね」
目黒「(シーナさんに向かって)あれは木の実から子供が生まれる世界なんだよ!面白そうだろ!」(熱っぽく語る)
椎名「…ふーん」(どこが面白いんだ?といいたげな表情)(会場、笑)
大森「あれは理屈をよく考えてて、SFっぽいですよね。ファンタジーよりではあるけど。シーナさんはファンタジーはダメですか?」
椎名「『夜の翼』までくらいかなあ」
目黒「日本SFが出た当時は、全部読んでたんだよ、オレ。あの頃ミステリは多かったけど、SFは少なかったしね。『戦国自衛隊』あたりが出るまでは全部読んでた」
椎名「なんで読まなくなっちゃったのかなあ。出すぎたのかな?わかんなくなったのかなあ?」
目黒「僕らはあの頃、SFほんっと大好きでね!「SFにあらずんば人にあらず」とまで思ってたね!!なんていうか、SFは輝いてたね!!ミステリはあの頃、通俗小説としてバカにされてたんだよね」
椎名「一時期、SF雑誌がすごく増えた時期があったでしょう。あの頃が頂点だったね。SFSFってうるさくて、辟易したというか。やっぱり、量が増えると質も落ちるしね」
大森「あれはスター・ウォーズがらみでわっと出したという、出版社の押しとかもあったんですよ」
椎名「さっき、ディーラーズ回ってて思ったんだけど、「SF宝石」なんてのがもう古書もいいとこでしょ。なんていうか、終っちゃったジャンルっていう気がする。でも最近はまた違う風が吹いてるみたいな気もするけど」
大森「本の雑誌で前に論争がありましたよね」(会場ざわめく)>当然「SFクズ論争」ですね
目黒「あれはね、SFに対するぼくらの愛だったの。SF沈下を打開するきっかけというか、応援するつもりでね」
大森「SFのひとってこわいですか?(笑)」
目黒「ぼく縁ないから(笑)」
椎名「ぼくはSFを、純粋なエンターテイメントとして楽しみたいね。この2時間を楽しませてくれるもの、として」
大森「シーナさんの『中国の鳥人』みたいなのは、方向性としてはSFに近いと思う」
目黒「オレはサラリーマンSFが大好きなのね。作家のひとって、「このネタはもう誰かに書かれてるから」ってとかく言うけど、あれは違うんだよね。読者は同じモノでも何度でも読みたいんだよね。シーなの初期の「悶絶のエビフライライス」とか、あのあたりは筒井康隆に似てるよね。ミステリなら同じモノ書いてるひとっていっぱいいるのに(会場大爆笑)、SFのひとはどうして?マジメなのかな?」
大森「SFってミステリみたいには型がはっきりしてないんですよ。巻き込まれSFってのは、日本ミステリの黄金パターンですね」
椎名「長いのは、書いてて飽きちゃうんだよなあ(笑)。ダン・シモンズとかってすごいと思うね!ひとりのひとが、こんなにすごい世界を作っちゃうんだからね!『うつろな男』もよかったな。超能力モノだけど。このテーマで僕も書いてみたいね。なんかこう、彼は文学の香りがするね」
目黒「シーナも努力すれば書けるよ」
大森「テレビも講演も出ないで!(笑)旅行も行かないで!」
椎名「今、努力するのって大変なんだよねえ。でもさ、面白い本読んでる幸せってのは、他に変えられないよね。これに生ビールがあれば言うことナシ!(笑)旅先で読んでる、面白い本のコーフンとビールの酔いってのは最高だね。オレはノンフィクションが好きで、特に漂流モノが好きなのね。こないだ、そろそろなんか新刊が出てるだろうと思ってふらっと笹塚の○○書店にいったの。そしたらやっぱりあったね!新潮文庫の新刊『敵中漂流』ってのがオレを呼んでいたんだよ!その日に読んじゃったけどね。漂流記はいいよ」
大森「漂流すればいいんですからね(笑)」
椎名「死ななきゃね(笑)。あと、アシモフやクラークなんかの科学エッセイも大好きだったんだけど、今ああいうのないねえ。エンタテイメントとしての科学論みたいな本」
大森「確かにないかも。ああいうのって何でも知ってないとかけないから、そういう自信がもてないのかも」
椎名「去年だかに読んだ、『月がもしなかったら』だっけ?あれは面白かった!ifの世界ね」
大森「空想科学読本の、スター・ウォーズ版みたいなのが面白かったですよ。遊びを含んだ科学論みたいな」
椎名「(目黒さんに向かって)事実ってのは面白いよね!!!」
目黒「(さめた顔で)…そう、よかったね」(会場爆笑)
大森「ヒトゲノムとかはどうなんですか、シーナさん?」
椎名「こないだ科学者のひとと対談したよ、面白かったけど」
目黒「『リプレイ』って小説があるんだけど、ある朝目覚めたらその男が20年くらい時間が戻っちゃってるの。で、その前の記憶を持ったまま生きるのね。すごく面白くてさ、ぞくぞくしたよ!!」(熱く語る)
大森「それはそのときはじめてそういう考えに出会ったからですよ。そういうのは、ぼくなんかはいつも寝る前考えてますから」
目黒「えっ!!!そうなの!?SFのひとっていつも考えてるの、そういうこと!?」
椎名「オレはめんどくさいね、あのタイムパラドックスとかがややこしくて」(冷淡)
目黒「オレは過去に行くのが好きなの。だから未来にいきなり飛んじゃう『スキップ』なんか全然面白くない。どこが?ってカンジ」
大森「そういえば『ひとりが三人』のなかで、目黒さんが『ソリトンの悪魔』をミステリの1位にしてるんですが(会場どよめき&笑)、あれはどうして?」
目黒「もう覚えてないなあ…。読んだときはそう思ったんでしょう。クーンツと思って読んでたのかな。なんか自分で線があるんでしょう。『蒲生邸』なんかは「これはミステリじゃないと思う」とか」
大森「SFとは思わないの?」
目黒「僕はミステリを選んでたんで、SFのことは考えてないから。(シーナさんに向かって)そういや、『7回死んだ男』ってのがあってさ、ある殺人事件が起こっておじいさんが死んじゃうんだけど、また時間が戻ってその人生き返るのね。で、なんとか殺人を阻止しようって話なんだけど、これが面白いだよ!!」
椎名「ふーん・・・。まあわかんないけど、めんどくさい話だ」(会場爆笑)
目黒「あの、死ぬのがひとりだけってのがいいのよ。名探偵っていうけど、防御率最低の探偵って知ってる?金田一耕介なの。彼は「名探偵」として登場してからも、何人も死んでる。で、あとで「ワタシは全部わかっていた」。だったら最初からいえよ!っての。でもね、『人格転移の殺人』までいくとミステリじゃないんだよな。なんとなく」
椎名「でもさ、だって、過去に戻れないでしょ(会場爆笑)。光速突破もできないでしょう。どうせウソだと思っちゃうんだよね。でも『透明人間の告白』はとても面白かったね」
目黒「『タイムライン』読んだんだけど、あの過去にファックスみたいにして送るっての、できそうな気がするよ。でしょ!!!」(シーナきょとん)「やっぱクライトンはうまいね」
大森「でもあんなに何人も過去に行かなくてもいいのでは(笑)」
目黒「いいの!あれは鉄則!だって誰か死んじゃうかもしれないから。1人になったらかわいそうでしょ。だから4.5人連れてくの」
大森「シーナさんの理想のSFとは?」
椎名「やっぱ『地球の長い午後』かなあ。誰かああいうのもっと書いてくれないかなあ」
目黒「『アド・バード』はあれのオマージュだとぼくは思ってるんだけど」
椎名「そうだね。ぼくは「何か変わるとどうなっちゃうんだろう」みたいな話が好きなんだ」
大森「目黒さんの理想のSFは未来にいくなら30年までと(笑)」
目黒「あとサラリーマンSF読みたい!前読んですごく面白かったのが、“ある朝起きたら彼だけ重力が働かないカラダになっていた。そこで彼が考えたのがどうやって降りるかではなく、どうやって会社に行こうか、だったんだよね。で、いろいろ電線につかまったりしながらようやく駅前についたんだけど、そこにスクランブル交叉点があった。ここがどうしても渡れない。ここを渡れば駅なのに、彼にとってはこの何もない空間が宇宙への奈落の底につながっているんだ”ってとこで終ってるの。こういうのが読みたいなあ」
大森「それはなんだっけな、えっと、かんべむさしの「道程」かな。路線としては筒井康隆や岬兄吾とかですかね」
ここで質問タイム。この対談を聞いてて思ったことを、ワタクシ思い切って質問してみました。
安「あの、今の聞いてますと、目黒さんとシーナさんのおふたりって全然本の趣味が合わないように思えるんですが、それで本の話してて盛り上がれるのでしょうか?」(会場爆笑)
椎名「それはね、昔は同じSFを読んでいたのね、ふたりとも。で、映画観たあとあーだこーだ話すみたいに、話をするわけ。あの当時はそういう話ができるひとも少なかったし、本の話をするだけで楽しかったのね、うん」
目黒「趣味が違っても、無理にすすめて「どうして面白くないって言うんだコノヤロ!」みたいなことは言いませんよ。むしろ、シーナが読んでも面白がってくれそうなものを勧めてる」
椎名「僕が旅行に行く前、目黒にオススメリストを作ってもらって、それをみて本持っていくんですけど、打率はいいですよ。妖精出ないしね(笑)」
別に趣味が合わなくとも、本の話をしてれば幸せ、ということでしょうか。なんかくだらない質問しちゃってすみませんでした。お答えいただき、ありがとうございました!
あとは高野史緒さん(わー美人!)の、「最近のSFはあまり、とおっしゃってましたが、そうするとワタシのような日本の新人SF作家はダメでしょうか?」これはシーナさん、苦しそうなお答えでした。
椎名「新潮のファンタジーノベル大賞なんか、もっとなんでも書けるのに、どうして皆もっといろんなことやらないんだろう?」
目黒「最近の面白いSF作家を知らないから。だって、オレは恋愛小説も時代小説も読まないといけないから、そっちまで手がまわらないの。つまり、いい作家を教えない大森が悪い!(笑)今月はこれを読め!と言ってくれ」
大森「ぼくは本の雑誌にちゃんと書いてますよ、“これはSF読者以外にもオススメ”とか。あれは目黒さんを想定して書いてるんです」
目黒「あれがそうか!!」
大森「ひとに本を勧めるのって難しいですよね。やはり「ちょっといいです」とかいって現物を送るとか(笑)」
会場から、もひとつ質問。「今、ヒトゲノムとか、医療関係の現実がSFにどんどん近づいていますが、シーナさんはどう思われますか?」
椎名「法律でガードするしかないと思う」
大森「ウマゲノムとかあったらどうします、目黒さん?どの馬が勝つかわかるの」
目黒「全然ドキドキしない。(会場爆笑)だって皆がその馬が勝つって知ってるわけでしょ?だったら面白くも何ともない。競馬は現金です、バクチです」
ラストの質問。「クズSF論争の時、三角窓口にはほとんど反応がなかったようなんですが、あれは意図してそういうハガキを載せなかったんでしょうか?それともホントにあまりそういったハガキがこなかったんでしょうか?」
目黒「実はですね、本の雑誌って、ミステリ読者は多いですが、SF読者はほとんどいません。意図してなにかやったということはないです。だから、たぶんハガキがあまりこなかったんでしょう」>というか、目黒さんたちは、これが大論争を巻き起こしたということを全く知らないような雰囲気でしたね。え?なに?よそではそんなにナニカあったの?みたいな。
大森「本の雑誌を読んで怒った読者が、SFマガジンに投稿したと(笑)」
やー、充実した座談会でした!シーナさんと目黒さんのSF観、というかSF的嗜好がよくわかりました。彼らがどんなに本を愛してるかということ、どんなに本の話が好きかということも。しっかし、このおふたり、本の趣味、見事に違うねえ(笑)。実にオモシロ楽しい対談でした。
この企画の終った後、目黒さんに「あの、銀河通信の安田です」と話し掛ける。「あー、どうも〜!」と驚かれたご様子。ふふふ。ついでに『笹塚日記』にちゃっかりサインをおねだり(なんたって当サイトが載ってるからね!)。ありがとうございました!