KSKの!! 今夜もGO-GO SWING〜デュワッ・デュワ〜

第5回 ★蘇える不屈のGO-GO・・・SAY WHAT!★



 1987年夏、某日。
 オレが眠りから覚めたのはもう昼近い時間だった。二日酔いの頭痛は免れたようだ。だだ、口の中が苦く、無性に喉が渇いていて、体の節々が痛かった。シャワーの湯を火傷しそうなほど熱くし、長い事それを浴びた。肌がヒリヒリしてきた。ついで、冷たい水をかぶって毛穴をひきしめると、関節の痛みは薄らいできた。
 今日は購入しなければならない物がある。TROUBLE FUNK86年ロンドンでのライヴを収めたアルバム「SAY WHAT!」だ。

 ここ数ヶ月はGO-GOの12inchを貪り聴いている。おかげで今年の夏はさらに熱く感じる。GO-GOは12inchと比べるとアルバムの数はそれほど多くない。「TROUBLE OVER THERE〜」は発売とほぼ同時に買って聴いたが、それ以外のアルバムはここ1〜2年の間に出た物ばかりで気が向いた時に買おうと思っていた。「SAY WHAT!」は比較的良く目にするし、いつでも買えると思っていたので手を出していなかった。その事はオレにとって良かったかもしれない。何故ならこのライヴ盤は最強だからだ!

 遅い朝食として卵を5個取り出して生で胃に収めた。手早く準備を済ませて部屋を出る。足元は説明不要のナイキのダンク、頭上にはギラつく太陽、そして目指すは渋谷のCSVだ。
 嬉しい事にそのレコ屋には、2階まで吹き抜けになっている広々としたフロアの片隅にGO-GOの「仕切り」がある。ずいぶんとお世話になっているレコ屋だ。公園通りを渋公の方へ登って行く途中にあって、数件となりのビルには中古専門レコ屋のハンターもある。
 しかし今日は中古漁りはやめて「SAY WHAT!」1枚のみと決めていた。GO-GO漬けのオレの毎日にトドメを刺してくれと願うかの様に・・・。

 後々分った事なのだが、このレコードには最低で3種類の物がある。 原盤はUK盤だが、その初回分には86年モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ2曲が収められた12inchが付いていた。そして日本盤はその12inchも含めて収録されている。オレがこの時買ったのはボーナストラックのないUK通常盤だった。にもかかわらず息苦しい程の興奮を覚えてそれを手にしたオレは、 急いでレジへと向かった。もちろん警察に番号が控えられてて自由に使うことが出来ない熱い札ではなく、クールな札での精算だ。レジの女性がひときわ美しく見えたのは気のせいか。
 家へ帰る時の耐えがたい喉の渇きは、ただ気温が高かったからだけのものではないだろう。アパートへの道を急ぎながら続けざまに吸う煙草も、いつもの味とは違った。

 家に着くと、額に浮かんだ汗を拭う事もせずに早速レコードに針を落とす。1曲目の“GILLY INTRO”でその凄さでぶっ飛ぶ。ライヴのオープニングはいつもこんな感じなのかと思うと、胸が熱くなってくる。そして一気にA面・B面を駆け抜ける。もう一度A面を聴く。そう、特にこのA面がフェードアウト無しNON-STOPで興奮させてくれた。
 GO-GOのライヴはNON-STOPと言っても、そこに必ず区切りは存在する。それが1曲毎では無く、3〜4曲毎だったり5〜6曲毎だったり、つまり15〜30分、いやそれ以上の時間を演奏し続ける事になるのだが、「SAY WHAT!」のA面は、オープニングから最初の区切りまでが完全収録されているのだ!
 もしかして上手く編集されていると言う事も考えられるが、そうであっても文句など無い。TROUBLE FUNKというバンドの底力がこれほど聴ける物が他にあろうか!
 A面の最後“PUMP ME UP”が始まる瞬間の興奮! そしてそこから絶頂に向けて畳み込んでくる。聴き終わった時には放心状態・・・。

 

 オレは完全にトドメを刺された。生涯GO-GOと付き合って行くというアイデンティティーはここに確立されたのだった。 現世における法に基づく社会復帰なんてものは、オレにとってもう遠い過去の産物になってしまったのだ! 更にGO-GOを求める旅がここから始まったのだった・・・。


 今回はハードボイルドGO-GOでやってみました(笑)。KSK GORDON LEWISです。
 今回紹介した「SAY WHAT!」は未CD化(2002年現在)のGO-GOとして真っ先に浮かぶ名ライヴ盤です。もしCD化される際は完全版の3枚組ぐらいで発売されて欲しいものです。ISLANDレコードさん、ナンとかしてくんないかな〜。

 ここで日本盤ライナーから、FISHBONEのメンバーが語ったGO-GO論を紹介します。

 「モロにP-ファンクの影響を受けているような、そっくりそのままだろ。エレクトロニクスを使ったのが多い最近のファンクにみんな飽き飽きしているから、その反動なのさ。ファンクがルーツに戻って新たに出直す第一段階、そうアフリカン・リズムの再確認と言ったところ。ディスコなんかじゃない本物の音楽さ、あんなの聴いたら俺達もウカウカして いられないぜ」

 GO-GOを脅威として感じている様子が分かりますね。そう、そうだったんで すよ!! そしてワタクシは今の音楽シーンにあってもGO-GOは脅威であり続けていると思っています。そして、そのライヴが見事に録音されているのが「SAY WHAT!」なのです。
 もはや存在していないかもしれなく、来日も望めないTROUBLE FUNKの妙味を存分に味わえるこのレコードを、まだ聴いた事の無い方は探してみる価値はオオ有りです! GO-GOのドス黒さにドップリ浸かれる事を保証します!

 そして、そのライヴを実際に観る事が出来るとは・・・!

 こんな流れから、次回は“TROUBLE FUNK 初来日”の模様をお伝えする予定です。ご期待くださいませ。

 TOKYO NO.1 GO-GO FREAK MEETING “HOTT-LAB”、 東京・恵比寿ENJOY HOUSEにて開催しております。GO-GOは過去の物・・・と思ったら大間違い! 現在のシーンも聴ける貴重なPARTYです。興味を持ったら来なきゃソンでっせ!

 またこのコラムでのご意見・御希望等ありましたらこちらまでメール下さい。
 hottlab@hotmail.co.jp
 では次回まで。



第6回へGO!

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