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2020年12月7日

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◆停戦!

 コロナ、コロナで明け暮れたまま、今年もはや12月。今年のハイライトの一つであるアメリカ大統領選挙は実質的には決着済みなんだけど形式上はまだモメたまま12月に突入、あとは今月中の選挙人投票を待つしかないか、という状態だ。
 そして今頃になって書いてしまうが、9月末にいきなり激化した、アルメニアとアゼルバイジャン両国のナゴルノ・カラバフ自治州とその周辺をめぐる武力衝突、何度か停戦合意しては破られるを繰り返したが、11月10日にロシアの仲介で成立し停戦合意は幸いちゃんと機能し、11月30日までにアルメニア側が占領地をアゼルバイジャンに返還、12月1日にアゼルバイジャン軍がそれらの土地へ進駐してアゼルバイジャン国旗を掲げて「奪還」を内外に示した。アゼルバイジャンのアリエフ大統領は国民に向けて「占領地の解放」を誇らしげに演説、実質的にこの紛争がアゼルバイジャンの「勝利」に終わったことを宣言した。

 一方のアルメニアはといえば、やはり実質的な「敗北」と受け止める者が多く、国会議場や政府官邸前で武装した男たちが政府を「売国奴!」「これは降伏だ!」と騒いでいる映像も見かけた。確かに領土的なことでいえばナゴルノ・カラバフ州の大部分はアルメニア側がおさえているとはいえ、その周辺の占領地は返さなきゃいけなくなったのだから「負け」と思うのも無理はない。この手の紛争では珍しく、各種マスコミもこの紛争が「アゼルバイジャンの勝利、アルメニアの敗北」とくっきりした色分けで報じている。

 なんでそんな結果になったのか、についてはいろいろ解説を読んだのだが、総じて言えばやはり軍事的にアゼルバイジャン軍がかなり優勢になっていて、紛争拡大を懸念するロシアがアルメニア政府を説き伏せて停戦させた、ということらしい。日米同盟みたいに安保条約でアルメニアを守る立場のロシアだが、石油で経済発展しているアゼルバイジャンと対立する気もなく、面倒なことにならないうちにかなり強引に「手打ち」をさせた、ということだ。一部ではアメリカやフランス(ここは特にアルメニアを支持している)が介入してこないうちに旧ソ連の親分として話をまとめる必要があった、という見方も出ていたな。
 占領地を返還させたとはいえ、両国の領土問題については「先送り」であることはプーチン大統領も認めている。領土問題ってのはたいてい決着がつかないものだが、明白な先送りでもとっととやめさせる必要があったということだ。あるいはここの紛争がソ連崩壊の前触れだったことが悪夢の記憶となっているのだろうか。


 この紛争の陰の主役がトルコだった――という話もある、アルメニアとトルコは歴史問題も含めて長らく対立関係にあり、一方でアゼルバイジャンは同じイスラム教徒で民族的にも近いことからトルコと仲が良く同盟関係にある、という話は以前も書いた。今回の紛争にトルコがどれほど関りを持ったのかは分からないが、アルメニアはトルコ空軍が攻撃してきたとしきりに主張していた。今のところ出てきている話では、アゼルバイジャン軍は「自爆ドローン兵器」を有効に使って「制空権」を押さえたといい、そのドローンはトルコが開発したものだった、ということらしい。

 このトルコと、ウクライナが軍事用ドローンの共同開発をしている、という話まで飛び出してきた。これを口にしたのがウクライナの駐日大使で、それも日本記者クラブの記者会見の場であったというのがまた面白い。今年四月に駐日大使に任命されながらコロナ禍のために10月まで着任が遅れたというコルスンスキー氏は、以前駐トルコ大使を務めていたことがあり、それもロシアによるクリミア併合が行われた時期だったので、トルコとの協力の話は本当なんだろう。
 で、このコルスンスキー駐日大使、今度の紛争でアゼルバイジャンが「勝利」して占領地を奪還したことを「歓迎」と明言し、ロシアに奪われたクリミアやロシア系住民による分離独立の動きがあるウクライ東部を「奪還」することに期待をにじませていた。アゼルバイジャンが「勝利」したことについては、「武力で領土を奪回するという悪い前例になる」と警戒してる専門家もいたっけ。

 ウクライナが期待するほどトルコがロシアに対抗してくるかは未知数だが、今度の紛争をさっさと終えさせたロシアの本音が実はトルコへの警戒にあった、という指摘をしている人は実際にいた。そしてトルコも実はクリミアについては強い関心を持っている、という話もある。思い返せばかつてのオスマン帝国はこのクリミア半島を押さえていて、ロシアと争奪戦をした歴史もある。
 さすがに現代においてトルコがかつての帝国よろしくクリミアを得ようとは考えてないだろうが(ただシリア問題などで周辺からはオスマン帝国復活のつもりか、と疑われてはいる)、クリミアにいる「クリミア・タタール人」の存在は気になるらしい。かつてのモンゴル系国家「クリミア・ハン国」に仕えたトルコ系の人々の子孫、つまりは今のトルコ人とはいわば同胞ということで親近感があり、彼らを心配してロシアのクリミア併合にトルコが反発したこともある。まぁ現地のクリミア・タタール人としては自分たちが迫害されない限りはウクライナ領だろうとロシア領だろうとかまわないのかもしれないが。とりあえず現在クリミア・タタール人の大半はロシア国籍意をとってしまっているらしい。
 現在のトルコ政府とロシア政府は一時よりは悪くない関係なので、ウクライナが期待するほどトルコがクリミア奪還に前のめりになるようには思えないんだけど、トルコ製ドローンなんてものがこの地域の軍事外交に影響を与えそうな、というのも興味深いところ。「自爆」ってあたりがイスラム的とか言ったら怒られちゃうかな(笑)。

 なお、アルメニアを支援していたフランスの上院では、11月末にナゴルノ・カラバフ州のアルメニア人の宗教・文化の保護や、紛争時の戦争犯罪の追及など、基本的にアルメニア側に大きく寄った決議を圧倒的多数(賛成305、反対1、棄権30だそうで)で可決している。しかもこの決議には地域住民が勝手に樹立してアルメニア政府も承認いていない「ナゴルノ・カラバフ共和国」を承認するようフランス政府に求める内容も含まれていた。これで承認決定ってことではないだろうし、さすがにフランス政府は二の足を踏むと思うが、改めてアルメニア人のフランスにおける影響力を思い知らされた。アゼルバイジャン政府が即座に抗議したのは言うまでもない。



◆消失!

 チャールズ=ダーウィンといえば、イギリスが生んだ偉大な科学者。なんといっても生物が環境に応じて次第に変化してゆくとする「進化論」を提唱したことで科学史上のみならず人類史上においても重大な足跡を残した。今日、日本ではNHKの動物番組のおかげで科学者当人は知らなくても子供でもその名を知ってるくらい。NHK総合の日曜夜はこのダーウィンに続いて麒麟まで来る始末(笑)。
 一方でこのダーウィン、進化論を提唱したことで保守的なキリスト教徒からは猛烈な反発を受けてもいる。現在でもアメリカ人の保守層の多くが進化論を否定し、そのために公立学校教育を受けさせない人たちがいるくらい。母国イギリスはじめヨーロッパではそれほど進化論アレルギーはないみたいだが、アメリカは本当に強固に存在していて、先日の大統領選にだって隠れた要素になっていたりもする。ダーウィン生誕200周年で製作された伝記映画がアメリカでは公開されなかった、という例もあったな。
 
 そのダーウィンが「進化論」にいたるアイデアのきっかけを得たのは、1837年、彼がまだ28歳の若者だったときのビーグル号での大航海のときだった。特にガラパゴス諸島での様々な生物の調査が発想の原点になったとされている。若き日のダーウィンはこの時のメモを二冊の革張りのノートに書き留めていて、そのメモの中にはのちに「生物の系統樹」と呼ばれる、生物の進化・分化をモデル化したスケッチも含まれていた。この大変貴重なノート2冊はダーウィンの母校であるケンブリッジ大学に保管されていた。

 ところが、である。
 ダーウィンが進化論を提唱した名著「種の起源」の出版日で、「進化の日」と呼ばれている11月24日、ケンブリッジ大学図書館はこのダーウィンのノート二冊が紛失しており、盗難の疑いが強いとして地元警察に通報したことを公表、図書館の司書がビデオメッセージで市民に情報提供を呼びかけもした。インターポール(ICPO)の盗難被害文化遺産データベースにもすでに登録されているとのこと。

 ただ、ちょっとこの話、変なところもあって、実はこのノート二冊の紛失は2001年、つまり19年も前に判明、報告されていたという。その時に徹底的に探したりしなかったんかいな、と思うばかりだが、なんと「最大規模の調査」を行ったのは今年になってからだった。まぁこういう古い大学の図書館はどこに何があるか分かんなくなっちゃったり貴重なものが埋もれたりしてしまうこともあるからなぁ。
 とにかく今年の大調査でノート二冊がないことは改めて確認され、これはもう盗難にあったとしか思えない、ということで今回の動きになったわけだ。20年近くもどうにかなんなかったのかい、と思うしかないが、今となっては盗難の実態をつかむことすら難しいんじゃないかと。

 盗んだ方の動機も気になるところ。歴史的なノートを自分だけのものにしてひそかに楽しんでるのか、あるいは名画盗難と同じようにどこかへ売り飛ばそうとでもしたのか。ケンブリッジ図書館でもウン億の価値があると言ってるそうだが、価値のあり方が美術品とは異なるのでそこまでカネ出して買う人がいるのかどうか。
 まさかとは思うが、進化論否定論者による隠滅工作だったりして…。「ダヴィンチ・コード」ならぬ「ダーウィン・ノート」とか言う陰謀論ネタが…



◆暗殺!

 歴史上、「暗殺」の例は多々ある。この現代においても、「ゴルゴ13」みたいに日常茶飯ではないものの、当欄で取り上げてきたようにチラホラと暗殺事件は起きている。最近では金正男暗殺事件にかなり驚かされたものだが、その時だって「いまどきそんなことが」という感じの驚き方だったものだ。アラファトカストロみたいにギネスブック級の暗殺計画をしかけられて無事に一生を終えた人たちもいるけどね。
 そして今、イラン国内で一人の科学者が暗殺された。それもイランで「核開発の父」とまで呼ばれる重要人物。その暗殺をめぐって中東の年末は緊張を高めている。

 イランの核物理学者・モフデン=ファクリザデ氏がイランの首都テヘランの郊外で襲撃されたのは11月27日の午後のこと。すぐに病院に運びこまれたが死亡してしまった。襲撃の状況については情報が錯綜していて、待ち伏せによる銃撃だとか、日産製トラックに積まれた爆弾が爆発したとか、いろんな殺害方法が報じられたが、イラン革命防衛隊による今のところ有力とされる見解は、「遠隔操作による複雑な狙撃」であるという。人工衛星による監視システムを使ったとか、えらく大掛かりな話も出てるようだが、そこまではいかなくてもかなり周到に準備された暗殺作戦であったのは間違いないようだ。

 ファグリザデ氏は核物理学者で、しかもイラン革命防衛隊幹部。21世紀初頭からイランの核開発の中心人物であったとされる。そんな人物を暗殺したのは何者か、という話になると、イラン当局はもちろん、世界中で多くの人が「それはイスラエルだろう」と考えている。イラン側の主張ではあるが、イランの核開発関係者はすでに四人も暗殺され、担当の長官が暗殺されかかったことがあったとされ、いずれもイスラエルの関与が疑われている。

 なにせここはそれまでの「実績」が数多くある。イスラエルの情報機関モサドといえば昔から手段を択ばないことでは有名で、古くは南米に逃亡していたナチス幹部を、その国の主権を犯して拉致したし、ミュンヘン五輪でイスラム過激派に自国選手を殺害された時には「報復」として各地で暗殺作戦を実行した(この辺の話はスピルバーグ映画「ミュンヘン」で描かれた)。イスラエルは自国の核兵器保有について皇帝も否定もしない立場を貫いているが、実際に核開発に関わった人物が国外でそれを暴露したら、やはり他国の主権を無視して拉致した例もある。それでいて周辺の敵対国が核兵器を保有するのは絶対に許さず、イラクの核施設をいきなり空爆した例もある。

 イランの核開発は、イラン政府は「平和利用のみ」としているものの、核兵器開発の疑惑はどうしても否めず、イスラエルがイラクの時と同様にいつかいきなり空爆するんじゃないかと懸念もされている。イスラエルおよびアメリカに対する敵意をぶち上げ続けていたイランだが、2013年に就任した穏健なロウハニ大統領はアメリカ・EUとの対話姿勢をとり、核開発の縮小と引き換えに経済制裁を緩和する「イラン核合意」を成立させるのだが、トランプ大統領が例によって脱退してしまう。このトランプさんが歴代アメリカ大統領のなかでもかなりのイスラエル寄り姿勢で、あれこれイスラエルにサービスしていたのもよく知られるところ。

 今度の暗殺も、トランプ大統領の落選(まだ当人は敗北宣言してないけどね)が引き起こしたのでは、との見方もある。次期大統領のバイデン氏だとイラン核合意への復帰の可能性が高く、イスラエルとしては今のうちにと焦ってやったんじゃないか、という見方だ。米大統領選の前からイラン国内では核関連施設への破壊工作が相次いでいたことが報じられていて、どっちにしてもトランプ不利とみての動きだったのかも。
 と、書きつつ、イスラエルの犯行という明確な証拠は今のところない。イランでの報道では、暗殺現場で見つかった武器類の中にイスラエル製と思われるものが見つかっているとはいうのだが…イランでもイスラエルを一番有力視してるけど、イスラエルの指示を受けた国内反政府勢力も視野には入れているという。
 イスラエルの方は例によって例のごとく否定も肯定もしない態度。表向きはイランの非難をかわしつつ、裏ではアメリカの有力紙の取材にイスラエル高官が「世界はイスラエルに感謝すべき」というニュアンスの発言をして暗殺実行をほのめかしてもいる。事前にアメリカに連絡したのかどうかについても憶測はあるけど、明らかになることはないだろうな。

 先日、トランプ大統領の仲介でアラブ首長国連邦などアラブ諸国がイスラエルと国交を結ぶことが明らかになって注目されたが、アラブ諸国の中心的存在であるサウジアラビアもイスラエルとの関係改善に前向きの気配が報じられていた。そしてそれを裏付けるように、イスラエルのネタニヤフ首相がサウジアラビアを極秘訪問し、サウジの実力者とされるムハンマド皇太子と会談を行ったと、11月23日にイスラエルのメディアが一斉に報じて世界を驚かせた。日本でいえば「小泉訪朝」を電撃・極秘にやったようなものだ。サウジ側はこれを否定しているが、イスラエル側は明確にはしないものの事実と認めるような発言を出していて、訪問自体は事実と考えてよさそう。ネタニヤフさんも随分思い切ったことを、と思うが、そこにもやはりアメリカの次期政権をにらんでのイスラエル・サウジ双方の思惑があったんだろう。
 同じイスラム教徒でも、イランはアラブとは民族が異なるし宗派もシーア派主体であるため、アラブ諸国からするとともすればイスラエル以上に警戒対象になっている、という話は聞くんだが、イランに核兵器を持たせたくないという考えはイスラエルだけでなくアラブ諸国だって抱いているはず。そういやサウジの皇太子はジャーナリスト暗殺の指示者と疑われてるしなぁ…。

 ファクリザデ氏の暗殺を受けて、イランのロウハニ大統領は「適切な時期に報復」とコメントしたが、この「適切な時期」という言い回しは微妙に逃げをうっている。こちらもアメリカの次期政権をにらんで慎重に行動しようと考えているのだろう。とにかく年明けから中東もいろいろ大変そうである。



◆発見!

 12月4日付のCNNネット版に「アマゾン熱帯雨林で氷河時代の動物壁画発見 長さ13キロの大作」という記事が出て、僕はかなりビックリした。こりゃまた久々に先史時代の人類に関する大発見だと思ったのだ。先史時代の人類によって描かれた動物壁画自体はこれまでにもいくつも発見例があるが、南アメリカ大陸の熱帯雨林で、これほど大規模なものが見つかったというのはやはり驚きだ。

 調査にあたっているのはイギリスのエクセタ^大学の研究者チームだそうで、場所は南米はコロンビアの中部セラニア・ラ・リンドサというところ。まさしくアマゾンのジャングルの中という場所なのでこれまで発見されなかったのも無理はない…と思ったら、このあたりはつい最近まで政府軍と反政府ゲリラが戦闘をしていた地域であったため、2016年にようやく休戦協定が結ばれるまで探検なんぞできなかったのだ。研究チームによると、この地域に岩壁壁画が存在するとの情報は得ていたし、衛星写真で未確認の岩壁があることは確認済みで、休戦成立を受けて2017年と2018年に現地を調査、この壁画群を確認したとのこと。それが今頃になって公表されたのは遺跡の保存のためでもあったし、発表翌日の12月5日に放送されるドキュメンタリー番組でお披露目するためでもあった(笑)。

 とにかく今回発見された壁画群は、全長13キロにも及ぶ、南米でも最大規模のもの。3つの岩窟住居の岩壁に描かれていて、最大のものだと数千点もの絵が描かれているという。描かれているのは大小さまざまな動物、狩猟などいろいろな生活の様子をしのばせる人物像、そのほか幾何学記号のようなものなど。アフリカでも例があったが、手形をそのまま押したようなものも写真に写っていて、研究者がそれに手を挙げて挨拶ポーズをしたりしていた。

 研究チームによると、これらの壁画は1万2600万年前から1万1800年前、いわゆる氷河時代の終わりの時期に描かれたと推測している。「氷河時代」というのは現在のヨーロッパ北部の大半が氷河に埋もれていたために名付けられたもので、そのころ南アメリカのこの地域も現在よりは乾燥していてサバナや雑木林に熱帯林も混在する状態だったとされる。それを反映して現在とは異なる多種多様な陸生・水生・鳥類などなど多様な動物が描かれているのだが、これは現在アフリカのナイジェリアのサハラ砂漠のど真ん中の6000年前と推定される岩絵に砂漠化する以前の豊かな動植物が描かれていた事例を連想させる。

 壁画に描かれている動物の中には、メガテリウム(別名オオナマケモノ)やマストドン(アメリカ大陸に生息した小型ゾウ)といった、今は絶滅して見ることができない大型動物も含まれていた。これもまた大変貴重な図像記録ということになるのだが、これらの動物が絶滅したのがおよそ1万年前くらいと推定されていて、その原因がどうやら人間に狩られたためとする見解が有力なのだ。そもそも壁画に動物が多く描かれているのも、芸術的動機ではなく狩りの成功を祈るためだったと推測されていて、こうした絵で気勢を上げて狩りまくってそれら大型動物たちを絶滅させちゃった、ということにもなる。マンモスも有名だが、オーストラリアでも大型動物が人類到達から間もなく絶滅していて、人間っちゅうのは生物史上でも特異な狂暴動物、と言うこともできるだろう。

 現生人類はアフリカを7万年ほど前に出て世界に拡散、シベリアからベーリング海峡を越えてアメリカ大陸に入ったのは1万5000年前くらいと推測されていて、最近の研究ではそれから1000年くらいで南アメリカまで広がったとされている。この壁画の推定年代をどうやって出したかは知らないが、人類が南アメリカに来てからそう時間が経っていない時期のものということになる。
 アマゾンのジャングルにはこの壁画を描いた人々の子孫かもしれない、文明化されず石器時代のままの生活を続けている先住民族が今も存在しているのだが、今年はそうした人々にも新型コロナが感染して、彼らの生活様式どころか存在そのものの持続が危ないという話も聞く。日本で話題になったアマビエみたいに、絵を描いて病魔退散、ということができればいいんだけどねぇ。


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