期間 | 場所 | 飛行方法 | 回数 | 備考 |
S15.10.5 〜 15.10.19 | 津田沼 | ゴム索牽引 | 67 | 各部調整飛行テスト |
S15.10.20 〜 15.11.6 | 津田沼 | 飛行機曳航(高度500〜1000m) | 59 | 昇降舵面積を増加することに決定。 |
S15.11.12 〜 15.12.3 | 津田沼 | ゴム索牽引 | 58 | 昇降舵改修後のテスト・良好。 |
S16.1.15 〜 16.1.24 | 立川航空技研 | 飛行機曳航(高度1000〜2000m) | 57 | 本試験(安定性、旋回性、失速性、回復性等の実用テスト) |
S16.2.2 | 立川、津田沼 | 空輸曳航テスト | 4 | 操縦席小改修を決定。 |
S16.2.7 | 津田沼 | 飛行機曳航 | 5 | 操縦席小改修後のテスト。 |
S16.3.7 | 津田沼、立川 | 空輸 | 4 | 空輸テスト・良好。 |
S16.3.19 | 立川 | 飛行機曳航(高度1000〜2000m) | 3 | 急旋回、急反転宙返り、失速その他のテスト。 |
S16.3.20 | 立川 | 飛行機曳航(高度1000m) | 4 | 急反転中操縦席後方に異常音あり、胴体側桁中央に30cmの亀裂を生ず。津田沼に運び補強修理。 |
S16.5.10 | 立川 | 飛行機曳航(高度1000m) | 2 | 第1回目島飛行士操縦、各種高等飛行異常なし。2回目N少佐練習飛行、着陸に失敗破壊。 |
高度800mで急反転した時だった。突然、バリッと木の裂けるような異常音がした。『昭和の日本航空意外史』では翌3月21日は軍の納入テストで、軍にばれないよう芝浦の萱場工場にトラックで運び込まれ、徹夜で補強修理したことになっています。ただ、萱場氏の回想録での飛行記録には津田沼で修理していることになっており、 またしばらく飛行が5月までないこと、トラックで運び出して航空技研にばれなかったのかは多少疑問に残りますが、なんとか急場はしのいだようです。
「なんだ!」
と危険を察知した島は両翼や座席のまわりを見回したがわからない。ただ、なにかおかしな振動が感じられる。
「よし冷静に、とくかく静かに着地させることだ」
島は冷静にあまり操縦せずにだましだまし降下していく。まことに緩やかな緩旋回でうまく着地させた。二型機のまわりにかけよる人々−萱場の須藤技師、葉方技師、野村技師、そして陸軍からのN少佐、野田少尉。 上空でのトラブルなどつゆ知らず、みなにこにこしている。島飛行士もつとめて平静をよそおい、N少佐と野田少尉に申告した。
「いい手ごたえです。異常ありません。」
(中略)
島飛行士は一同を集めると、さりげなく声をひそめて言った。
「いや実はね、降りてくるとき座席の下あたりで、バリッといういやな音がした。どこかやられているんじゃないかね!」
「え〜そりゃ大変だ!」
葉方技師が、さっそく座席の下の床をはずしてのぞき込んでいたが、
「こりゃ遺憾。桁のまん中に亀裂が入っているぞ」
N少佐は民間の若造パイロットの注意などろくに耳に入れず、特に無尾翼機の特性たる着地直前のバルーニング現象(地面効果が大きく、浮力が増しなかなか接地しない)の注意を無視し、むりに着地せしめたための事故である。 幸い怪我はなかった。N少佐と名前を伏せてあるのは、回想執筆時、存命だったからでしょうか。
N少佐は前にも同じ原因の乱暴な操縦で一型を壊している。こんどが二度めなのである。同氏の事故報告書には原因はなにも書かず、「あんな玩具みたいなものは役に立たん」との所見だったそうである。豚に真珠とはこのことで、自分のあやまちを反省しないし、当時の不勉強で、粗暴なパイロットの悪例である。島君は今もって憤慨しているのである。 もっともなことだと思う。私も同感である。
・翼幅 | 9.8 m | |
・全長 | 3.04 m | |
・翼付根弦長 | 1.8 m | |
・翼端弦長 | 0.75 m | |
・後退角 | 25.5 ° | |
・翼面積 | 14.5 u | |
・垂直尾翼総面積 | 2.323 u | |
(内 方向安定板) | 1.380 u | |
・自重 | 124 kg | |
・翼面荷重 | 13.4 kg/u | (パイロット自重 70kg時) |
・最適滑空速度 | 75 km/h |
使用/参考文献
・航空技術 No.149(67-8),152(67-11),154(68-1)、萱場資郎、日本航空技術協会
・WINGED WONDERS THE Story of Flying Wings、1983、 National Air & Space MuseumE. T. Wooldridge
・昭和の日本航空意外史、鈴木五郎、1993、グリーンアロー出版社
・日本軍用航空戦全史(第五巻)、秋元 実、1995、グリーンアロー出版社
使用した写真は、『航空技術』からのものです。