「離脱しての滑空は素晴らしい縦安定であり、左右の傾き修正も良好だ。島飛行士による懸命の回復操作に係わらずロールは止まらず、ロールしたまま接地、「機首を下にもんどりうって転覆し、両翼、胴体とも大破してしまった」と島氏は回想しています。
滑空比が1:55くらいの時、突然、方向の修正に疑問を生じた。これまで、低空におけるテストでは十分の効きがあったのに、左方向に修正しようと左ペダルを静かに踏むと、左に急速に機種を向け、機体は右方向に横すべりしてしまうのである。
急いで反操作のため右ペダルを踏むと、今度は機種だけを右に、機体は尻を左に振って横滑りする。その修正に精一杯努めたが、状況はますます悪化した。つまり、修正不可能のダッチロールに入ったのである。 動的不安定(舵によるコントロールの難易度)の疑問が現実のものとなって、私は悟った。これはスポイラーを翼面から少し出すと、その効きはいきなり最高となる。ペダルを大きく踏んでスポイラーが翼面から高く上がると、下に風が吹き抜けて効きが最小になるのだ。と。この風圧降下は低空では測定できなかった。スポイラー による操舵の効きと向きを換えることは、逆になってしまうのである。」
期間 | 場所 | 飛行方法 | 回数 | 備考 |
S16.2.11 〜 16.2.19 | 羽田 | ウインチ曳航 | 43 | 慣熟飛行。安定性、操縦性良好、方向操縦性やや不良。横安定性非常によし。地上滑走中の重心位置不良。 |
S16.2.24 〜 16.2.27 | 柏 | ウインチ曳航 | 24 | 各テストとも良好。尚、27日の最終飛行でダッチロールに入り、ロールを残したまま着陸、左翼を大破。 |
使用/参考文献
・航空技術 No.149(67-8),152(67-11),154(68-1)、萱場資郎、日本航空技術協会
・航空70年史−1、、1970、朝日新聞社
・日野熊蔵伝、渋谷 敦、1977、図書出版 青潮社
・WINGED WONDERS THE Story of Flying Wings、1983、 National Air & Space MuseumE. T. Wooldridge
・昭和の日本航空意外史、鈴木五郎、1993、グリーンアロー出版社
・日本軍用航空戦全史(第五巻)、秋元 実、1995、グリーンアロー出版社
使用した写真は、『航空技術』からのものです。