ホーム>WEB版協議会だより>2004年の協議会だより
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11月1日、2日の両日、第38回全国学童保育研究集会を栃木県で開催しました。44都道府県から4005名の保護者・指導員などが参加し、2日間、学童保育や働きながらの子育てについて学習や交流をしました。
開催地・栃木県内のすべての市町村から後援をいただくなど、栃木県の学童保育の発展にとっても大きな意義がある全国研究集会となりました。
本誌2月号特集で、記念講演・特別報告など集会内容や参加者の声を紹介します。
*全国連絡協議会の基調報告は、本号の72ページに一部を掲載しています。
全国学童保育連絡協議会の2003年度総会を、10月30日、宇都宮市で開催しました。総会では、2002年度の活動報告、決算報告、会計監査、2003年度の活動方針、予算を討議し決定しました。さらに全国事務局役員を選出しました。
また総会では、第39回全国学童保育研究集会を大阪で開催することを決定しました。また、月刊『日本の学童ほいく』を、運動や実践の向上のためにおおいに活用しながら広く普及していくこと確認しました。
総会で決定した2003年度の全国事務局役員は次の通りです。
会 長 片山恵子(指導員・再)
副会長 池谷 潤(保護者・再)小神長次(保護者・新)・木越保聡(保護 者・新)・坂口正軌(保護者・再)・佐藤益雄(保護者・新)・下浦忠治(指導員・再)・瀧口隆志(保護者・再)・前田美子(大阪専従・再)・牧 浩二(指導員・新)・松井信也(京都専従・再)・山本博美(指導員・再)・渡辺千代(指導員・新)
事務局長 木田保男(保護者・再)
事務局次長 卯城ひさゑ(職員・再)・真田 祐(職員・再)
11月11日に川崎市のわくわくプラザで、児童が頭蓋骨骨折で重傷を負うという重大な事故が発生しました。また、川崎市の報告によると、4月から11月まで7か月間で、合計174件の事故・怪我が発生し、そのうち頭蓋骨骨折、骨折、裂傷など2週間以上通院した重大事故が17件にも及んでいるとのことです。
学童保育を廃止して始めた「全児童対策事業」のわくわくプラザは、「安全で安心できる生活の場を保障する」という「学童保育機能の継承」ばかりか、すべての児童を対象にした健全育成事業としても、最低限の「児童の安全」すら保障していないといわざるを得ません。
今後、こうした事故を一刻も早くなくするために、川崎市の学童保育関係者とともに川崎市に、学童保育の再生と安全なわくわくプラザの実施を要望していきたいと思います。
あわせて、児童の安全で健全な育成の責任を担っている厚生労働省にも次の点を申し入れました。
@ 厚生労働省として、川崎市のわくわくプラザの学童保育機能部分が、「放課後児童」の安全が確保された「遊び及び生活の場」となっているのかどうかの実態を調査し、学童保育としての役割が果たせるよう、少なくとも厚生労働省の示した八要件を名実ともに実施する体制・内容とすることを大至急、指導してください。
A あわせて、児童の健全育成を推進する監督官庁として、わくわくプラザが、全児童を対象とした健全育成事業として子どもたちの安全が確保されたものとなるよう指導してください。
11月に発行した『父母会ハンドブック』が好評です。
このハンドブックは、昨年5月に開催した全国合宿研究会(テーマは「父母会の必要性と課題」)の成果や各地の経験をもとにまとめたものです。
いま学童保育が急増していますが、条件整備や事業内容に問題や課題もたくさん抱えています。これらを解決していくカギは、父母会・保護者会をつくり、活発にしていくことです。
このハンドブックには、父母会の必要性や役割、活性化のポイント、指導員の役割と関わりなどをわかりやすく解説しています。
好評につき増刷しました。ぜひ読んでみてください。一部300円です。
12月19日、2004年度の厚生労働省予算案(政府原案)が発表されました。学童保育に関わる予算案について紹介します。政府原案は来年の通常国会で審議され決定されます。
*昨年8月に厚生労働省等が財務省に要求した概算要求は、本誌10月号および11月号「協議会だより」を参照してください。
下にあるように、来年度の学童保育予算は、総額は前年と比べて約17%も伸びているものの補助単価は、人事院勧告で国家公務員の給与を1.07%マイナスとする勧告を出していることを受けて減額されています。総額が伸びているのは大規模な学童保育が増えているためです。
新規事業の「放課後特別事業」(本誌12月号「協議会だより」参照)については予算は認められたものの、内容については、現在、担当課で検討中で、3月に開かれる全国児童福祉主管課長会議で明らかになります。
また、障害保健福祉部から概算要求があった障害児との交流スペースの整備費は認められませんでした。(2003年度予算でも要求されていましたが認められていません)
2004年度予算 | 2003年度から削減された金額 | ||||
年間開設日数 | 年間開設日数 | ||||
281日以上 | 280日〜200日 | 281日以上 | 280日〜200日 | ||
基本分 | 児童数(注1)10人〜19人 | 956,000 | ―― | -7,000 | ―― |
児童数 20人〜35人 | 1,508,000 | 1,163,000 | -7,000 | -6,000 | |
児童数 36人〜70人 | 2,465,000 | 1,957,000 | -14,000 | -11,000 | |
児童数 71人以上 | 3,422,000 | 2,751,000 | -21,000 | -17,000 | |
加算分 | 長時間加算(注2) | 310,000 | 296,000 | -1,000 | -2,000 |
土日祝日加算(注3) | 219,000 | ―― | -1,000 | ―― | |
障害児受入加算(注4) | 689,000 | ―― | -7,000 | ―― | |
市町村分 | 放課後児童等の衛生及び安全対策(注5) | 指導員一人当たり 4,200 | 0 | ||
都道府県等分 | 500,000 | 0 |
(注1) この場合の児童数は、年間の平均入所児童数(見込み)であり、平均出席児童数ではない。
(注2) 長時間加算は、1日6時間を超え、かつ18時を超えて開設する場合に加算。(ただし、子どもが実際に帰って来てからの保育時間ではない)
(注3) 土日祝日加算は、原則として全土曜日(祝日等は含まない)に相当する日数(291日以上)を開設している場合に加算。
(注4) 障害児受入加算は、2人以上の障害児を受け入れる場合に加算。
(注5) 放課後児童等の衛生及び安全対策は、民間学童保育の指導員の健康診断への補助。
(注6) 職員資質向上費は、都道府県・政令市・中核市が主催する学童保育指導員対象の研修会への補助。
◆新規事業 放課後特別事業(総額約6300万円、1市町村当たり年間44万1000円)
文部科学省の予算案では、文部科学省が「子どもの居場所づくり新プラン」の目玉事業として125億円を要求していた「地域子ども教室推進事業」は、当初内示では31億円となったと新聞報道されていましたが、復活折衝で70億円となりました。
補助内容については、概算要求した内容と変更になる可能性もあります。1月に開かれる生涯学習主管課長会議で明らかになります。
小泉首相が進めている三位一体改革(補助金廃止、地方交付税見直し、税源移譲)として、来年度予算案では公立保育所運営費1661億円を含む1兆円が削減されました。保育所に対する国の予算(国庫負担金、補助金)は2003年度4850億円だったものが3450億円となりました。
全国保育団体連絡会は、「一般財源化はしないでください」「保育水準は絶対に低下させないください」「次世代育成支援にふさわしい保育の財源保障を行ってください」と政府に要望しています。
1月21日、厚生労働省主催で全国厚生労働部局長会議(都道府県・政令市・中核市の部局長が対象)が開かれ、今後の国の厚生労働行政の方針や来年度予算の説明がありました。
学童保育等の所管局である雇用・均等児童家庭局では、次世代育成支援対策を重点課題として次のような方針で取り組むことの説明がありました。
● 次世代育成支援対策では、すべての市町村が、2004年9月までに特定14事業の数値目標を国に報告し、国は12月に新たなエンゼルプランを策定する。
● 1月開会の今国会で、児童福祉法を一部改正し、昨年末に与党で合意した税制改正による児童手当の対象年齢引き上げ、児童虐待防止対策を強化するとともに、公立保育所の国庫負担金廃止に伴い関係条文はなくす。
● 2004年5月をめどに、少子化社会対策基本法に基づく「大綱」を策定する。
(全国連協事務局注)現在、この大綱策定に当たって内閣府ではホームページで、「少子化対策」に関する意見を募集しています。私たちも積極的に意見をあげていきましょう。
http://www.iijnet.or.jp/cao/kourei/opinion-shoushi.html
● 保育所と幼稚園を統合した総合施設について、2004年度中にあり方を検討し、2005年度に試行事業を先行実施し、2006年度に本格実施を検討する。あり方の検討は現在、社会保障審議会児童部会で検討されている。
(全国連協事務局注)一部の新聞では、「新施設では、共働き世帯の小学生在学中の児童を預かる」との報道もあります。
この会議では、厚生労働省が各市町村の次世代育成支援対策の取り組みの進捗状況についてすべての市町村に、昨年10月現在で問い合わせた結果が発表されました。
調査結果の概要は次の通りです。
・ニーズ調査は、85.3%で「アンケート方式」で実施。
・ニーズ調査の外部委託は、「業務のすべてを委託」(24.7%)「業務の一部を委託」(52.4%)「すべてを直営で実施」(13.9%)。
(全国連協事務局注)厚生労働省は「調査の内容等の重要事項を含め全面的に委託先に任せることなく、庁内検討組織や次世代育成支援対策地域協議会等において十分検討することが必要である」と注意を喚起しています。
・目標事業量の設定方法は、「(国が作成した)『手引き』に示された方法で設定」(71.4%)「独自の方法で設定」(1.0%)で、ほとんどの市町村が国が示したアンケート調査の内容で設定している。
・「地域協議会」の設置状況では、「すでに設置済み」は2.2%で、「今後、設置を予定」が83.4%で、ほとんどがこれから(2003年10月時点)設置するとしている。
「地域協議会」の設置をこれから始めるところも多いので、引き続き、ニーズ調査に質的拡充のニーズが把握できるよう、また、「地域協議会」に学童保育の関係者が参加できるよう働きかけていく必要があります。
学童保育の担当課である育成環境課が調べた2003年5月現在の学童保育の実態調査の結果も資料の中で報告されています。厚生労働省が把握した学童保育数は13698か所(私たちの調査では13797か所)となっています。今回の調査で初めて指導員の雇用形態別の人数も調査しています。また、昨年から調査をしている「登録できなかった児童数」(「待機児童」)も今回も調査しており、256市町村で6180人になっているとしています。
学童保育関係で新しく「放課後特別事業」が予算化されますが、具体的な内容は3月に開かれる全国児童福祉主管課長会議で説明される予定です。
全国学童保育連絡協議会は、1月25日、本誌の「普及拡大推進会議」を初めて開催しました。
今年度の活動方針では「一人ひとりの保護者と指導員に読んでもらうことの意義をしっかり伝えながら、全員購読をめざして」本誌の普及拡大を重点的な活動として取り組むことを決めています。
新しい児童が入所する4月から7月にかけて購読の呼びかけていくための準備をしっかりとするためにも各連絡協議会で「普及拡大の取り組み計画」を立てて積極的に推進していくことを確認し、各地の活動を交流しました。
「読むと共感して泣けてしまうような記事が必ずある。どう手にとってもらうかを工夫している」など、あらためて本誌の持つ魅力や大切さ、意識的に普及拡大に取り組むことの大切さを確認することができました。
全国事務局でも、見本誌とチラシの作成と活用、各地の取り組みをニュースで紹介する、『普及拡大の手引き」改訂版の作成、地域での読者会の開催などに取り組んでいきたいと思います。
全国連絡協議会は各都道府県の担当課に問い合わせ、2003年度の「学童保育の都道府県の単独事業」について調査しました。結果の概要を紹介します。
●小規模補助は「国の補助の対象外」や「児童数5名以上」が増加
国の補助対象が「児童数10人〜19人」にも広がった2001年度から、県独自としては補助対象を「児童数5人〜9人」に広げる県が急増しましたが、2003年度も17県あり、さらに島根県では「5人未満」にも対象を広げています。一方、大阪府は小規模補助を廃止しました。
国の小規模補助が、開設日数281日以上を補助要件としているため、280日以下の学童保育に補助する県も増えています。
●障害児受け入れ加算は増加
1988年度以降、急速に障害児受け入れ加算が増えています。2003年度では新たに宮崎県が増えて31都道府県で補助制度ができています。補助対象も、国の補助要件が2002年度から「障害児2名以上」に緩和されていますが、27の都道府県は「障害児1人」から補助を受けることができます。一方、国庫補助が2人以上になっために、千葉県では、県単独補助の「2人以上」の障害児加算がなくなり、「1人」のみが対象となりました。
●施設整備費について
学童保育の施設整備費は2000年度には15県が補助していましたが、その後、国の「社会福祉施設整備費」を活用できるようなり、2002年度は10県、2003年度は8県と減ってきています。
●その他のメニューは増加
これまで、賠償責任保険負担分や長時間加算、開設日数が少ないなどの理由で国の補助対象にならなかった小規模への補助、初年度開設促進、季節児童クラブ、長期休業中の開設、特別活動費、ボランティア指導員配置、高学年受け入れ促進、母子父子家庭保育料減免などがありましたが、新たに放課後パーソン事業・送迎事業(島根県)や国庫補助対象にならなかった学童保育への補助などが増えています。
このように新しくメニューを増やしたり、障害児加算を広げたりする県がある一方、国の補助金が出るようになったメニューで単独事業をなくする動きがあることもこの二年間の特徴です。また、単独の補助事業ではありませんが、埼玉県がこのほど「埼玉県放課後児童クラブ運営基準」をまとめました(本誌6月号で紹介予定)。昨年も静岡県などが『指導員のガイドブック』を作成しています。ガイドブックづくりは他の県でも同様の動きがあります。また、都道府県主催の指導員研修会も増えています。
まだまだ不十分な国の補助制度を補うというだけでなく、地方分権の時代に都道府県が市町村をリードして学童保育の拡充をすすめていくという役割は、さらに大きくなっています。都道府県にも私たちの願い・要望を届け、よりよい学童保育づくりに取り組んでいきましょう。
今年度も全国指導員学校を全国五会場で開催します。西日本会場・東日本会場・四国会場は本誌5月号で内容を紹介します。九州会場・東北会場は7月号で内容を紹介します。
会場 | 開催日 | 開催地 | (参考) 昨年の受講者数 |
西日本会場 | 6月13日(日) | 石川・金沢市 | 19府県 1091人 |
東日本会場 | 6月13日(日) 予定 |
未定 | 17都県 1189人 |
四国会場 | 7月4日(日) | 香川・高松市 | 8県 320人 |
九州会場 | 9月19日(日) | 福岡・春日市 | 11県 780人 |
東北会場 | 9月12日(日) 予定 |
福島・福島市 | 7道県 397人 |
合 計 | 47都道府県 3777人 |
ぜひ新年度の予定に入れて誘い合ってご参加ください。
くわしい内容は本誌7月号にリーフレットを綴じ込みます。
2004年10月23日(土) 全体会 午後1時〜午後4時30分
10月24日(日) 分科会 午前9時30分〜午後4時
本誌をより多くの学童保育関係者に読んでいただくために、見本誌・チラシ・ポスター・「普及拡大の手引き」を作成しました。必要な方は、地域の連絡協議会または全国学童保育連絡協議会までご連絡ください。
厚生労働省は、3月1日に開いた全国児童福祉主管課長会議で、2004年度の放課後児童健全育成事業のなかで新たに「ボランティア派遣事業」を創設することを明らかにしました。具体的な事業内容は、下記の通りです。
この事業は、個々の学童保育に対する補助金ではなく、市町村に対する補助金です。市町村が学童保育(運営主体や国庫補助対象かどうかは問わない)にボランティアを派遣する際の経費(謝礼等)を補助するものです。
* *
「6 その他」で、文部科学省が2004年度から推進する「地域子ども教室推進事業」との連携を図るとしています。同じ学校敷地内で行われている場合、この事業に指導員の協力も得て、学童保育の子どもたちも参加するなどの連携を図ることで、学童保育の内容充実への期待もされています。
ボランテイア派遣事業について
1 趣旨
児童が地域の伝承遊びや自然とふれあうことや様々な人と関わることは、児童の成長・発達において重要である。
そのため、放課後児童クラブに伝統的技術や自然体験の技術などボランティアを派遣することにより、児童の健全育成を促進することを目的とする。
2 実施主体
市町村(指定都市、中核市、特別区を含む。以下同じ。)
3 事業の対象経費
ボランティアを放課後児童クラブヘ派遣するために要する経費
4 ボランティア派遣事業の事業内容
市町村は、登録されたボランティアの名簿を作成し、放課後児童クラブおいて実施する次の特別な事業ヘボランティアを派遣する。
※ボランティア……伝統的技術や自然体験の技術などを持つ地域の人材をいう
(1) 伝承遊び等事業
伝承的な遊び(お手玉・けん玉・あやとりなど)、伝統芸能(民謡・三味線 ・祭りなど)、囲碁、将棋、カルタ遊び、工作、折り紙など
(2) 自然等体験事業
田植え、畑づくり、お店体験(地域のお祭りへの参加)、草木や野鳥や昆 虫などの自然観察など
5 費用
補助基準額
1市町村あたり 年額30万円
6 その他
異年齢交流や地域のボランティアなどの効果的な活用を図る観点から、同じ学校で放課後児童クラブと文部科学省の「地域子ども教室推進事業」を実施する場合は、両事業の連携を図ること。
「地域子ども教室推進事業」も含めて文部科学省が2004年度から推進する「子どもの居場所づくり新プラン」では、国・都道府県・市町村レベルで教育や児童福祉にかかわる団体が連携していくことが期待されています。
全国学童保育連絡協議会は、厚生労働省から依頼があり、国レベルの「子どもの居場所づくり推進関係連絡会」の構成団体となりました。関係省庁・関係団体と連携を図っていきたいと思います。
いま、川崎市などいくつかの自治体で、余裕教室を活用した「すべての児童を対象とした遊び場づくり」を実施することで学童保育を廃止する動きがあります。こうした関係団体との連絡の場を、「すべての児童の地域で豊かな生活を保障する」ことと「学童保育事業の拡充」の両方がともに必要だという理解を広げていく機会としても位置づけて、都道府県や市町村レベルの運営会議や実行委員会に学童保育関係者も参加して連携を図っていきましょう。
子どもたちの毎日の生活の場として大切な学童保育施設の整備を図るための手引きを2001年に発行した手引きの改訂版を発行しました。
これは最新の学童保育の実態調査の結果、私たちが昨年6月に出した提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」の中での示した施設・設備の基準、国の施設整備費の内容を加えて、大幅に加筆したものです。
ぜひ、行政担当者の皆さんにも読んでいただき、学童保育が「毎日の生活の場にふさわしい施設・設備」となるよう活用していただきたいと願っています。
『日本の学童ほいく』5月号巻末とじこみに今年の全国指導員学校の西日本会場・東日本会場・四国会場の要項を掲載しています。また、次号で九州会場と東北会場の要項を掲載します。ぜひ受講ください。
●九州会場 9月19日(日) 福岡県春日市・クローバープラザ
●東北会場 9月19日(日) 福島県福島市・全体会は桜の聖母短期大学
講座は福島市市民会館
学童保育の適正規模は
「30人が望ましい」と国の委託研究報告書
学童保育の適正規模について、厚生労働省の外郭団体である(財)こども未来財団が、「平成15年度
児童環境づくり等総合調査研究事業」の一環として調査研究を実施しましたが、その報告書が3月末に公表されました。
その調査研究のまとめでは、「本研究における結果では、指導員が指導上望ましいとする規模は、ほぼ30人である。この人数は指導員の経験から割り出された、実感をともなうものである。そして、この数字は保護者や児童の意見とも方向性を同じくしている」として、30人程度が望ましいという結論が出されています。
近年、学童保育の「大規模化」が指導員から大きな悩みとして出されていました。全国学童保育連絡協議会の調査でも、表1のように近年、急激に学童保育数が増えていると同時に入所児童数も増え、各地で「大規模化」がすすんでいる深刻な実態が明らかになりました。(表2参照)
表1 学童保育数・入所児童数
学童保育数 | 入所児童数 | 1施設平均入所児童数 | |
1993年調査 | 7516か所 | 約23万1000人 | 30.8人 |
1998年調査 | 9627か所 | 約33万3000人 | 34.6人 |
2003年調査 | 13797か所 | 約53万8000人 | 39.0人 |
*いずれも2003年5月1日現在。全国学童保育連絡協議会調べ。
表2 入所児童数の規模
1998年調査 | 2003年調査 | 増 減 | |
〜19人 | 15.9% | 16.1% | + 0.2 |
20人〜39人 | 50.1% | 40.1% | − 10.0 |
40人〜70人 | 30.9% | 35.4% | + 4.5 |
71人〜89人 | 2.4% | 5.9% | + 3.5 |
90人〜 | 0.7% | 2.5% | + 1.8 |
合 計 | 100.0% | 100.0% |
*いずれも2003年5月1日現在。全国学童保育連絡協議会調べ。
昨年6月に全国学童保育連絡協議会としてまとめた提言『私たちが求める学童保育の設置・運営基準』では、「1学童保育の規模の上限は40人までとする。41人以上は2学童保育とする」とし、厚生労働省にも大規模化を解消するよう補助制度の見直し等を要望していました。
こうした背景のもと、厚生労働省は大規模化の問題をテーマに(財)こども未来財団に調査研究を依頼しました。
具体的には「放課後児童クラブ研究会」(主任研究者・太郎良信 文教大学教授)が、全国各地の大規模学童保育への聞き取り調査(ヒヤリング)や指導員・保護者へのアンケート調査などを行いました。
報告書は、「本研究は、放課後児童クラブ登録児童数の急増の背景や放課後児童クラブの実態を調査し、その適正規模を明らかに」することを目的として調査研究を行ったと述べ、「研究のまとめ」として前述のように指導員・保護者・児童ともにほぼ「30人」が望ましい規模だと結論づけ、現行の厚生労働省の補助基準(表3)の見直しを求めています。
具体的には、1998年度以前の国の補助金の補助規準が「35人までを1組織」として、35人ごとに「2組織」「3組織」としてきたことの積極性を評価しています。
表3 国の補助基準(2004年度) 単位:円
児童数 | 年間開設日数 280日以下 | 281日以上 |
|
基本分 | 10人〜19人 20人〜35人 |
なし | 956,000 1,163,000 | 1,508,000 |
大規模加算 | 36人〜70人 71人以上 |
1,957,000 | 2,465,000 2,751,000 | 3,422,000 |
全国学童保育連絡協議会では、今年度の運動課題の重点項目として、大規模化を解消し、必要な地域すべてに適正な規模の学童保育ができるよう、大規模学童保育の分離・増設、1小学校区複数設置をあげています。
そのために、引き続き国や地方自治体に適正規模の設置を求めていくとともに、「大規模学童保育の分離・増設事例集」を秋頃に刊行する計画です
*この報告書が必要な方は、各地の連絡協議会または全国事務局に問い合わせください。
全国合宿研究会を開催
テーマは「学童保育の生活づくりと指導員の仕事」
全国連絡協議会は、5月15日・16日に「学童保育の生活づくりと指導員の仕事」をテーマに合宿研究会を開きました。テーマ設定の理由は、
@学童保育が急増しているなかで、学童保育の役割や生活内容、指導員の仕事について十分な理解がないまま実施されている傾向がみられること
A入所児童急増で大規模化が深刻化しているなかで、子どもたちにどのような毎日の生活を保障するのかを確かめ、適正規模の学童保育を増やしていくことが必要となっていること、
B「すべての児童の放課後の遊び場づくり(全児童対策事業)」が学童保育の代わりになりうるとして、学童保育を廃止する自治体が生まれている。私たちが長年の実践と運動の中で確かめてきた学童保育の役割、指導員の仕事、子どもに保障すべき生活内容とは何かをあらためて明確にすること
をねらいとして開催しました。
研究会では、全国事務局が『テキスト 指導員の仕事』や「学童保育の保育指針(案)」、「指導員の研修課目試案」「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」をもとに、これまで確かめてきた到達点を示し問題提起を行いました。その後、「全児童対策事業」によって学童保育が廃止された品川区、大規模化がすすむ大津市から、それぞれ問題と課題が報告されました。
討論では、働く親を持つ子どもの毎日の生活の場としての役割、安全で安心できる生活の内容、遊びと生活の関係、一人ひとりをていねいにとらえるとはどういうことか、集団の中でのと子ども同士の人間関係づくり、働く親の子育てを支える役割、などの視点から活発な意見交換が行われ、研究テーマを深めることができました。
今日の働く親の子育てや子どもの実態のなかで、学童保育に何が求められているのか、指導員にどのような仕事・役割が求められているのかを確かめ合うことができました。
全国連絡協議会は、政府の来年度の学童保育予算の大幅増額や施策改善を求めて、厚生労働省に要望書を提出しました。また、文部科学省や内閣府、政党・国会議員、地方六団体にも学童保育の拡充を求めて要請行動を行いました。
厚生労働省には、次の点を要望しました。
・国の少子化対策・次世代育成支援対策には「学童保育の量的拡充・質的拡充」を明確に位置づけて強力に推進してほしい。新たに策定される新々エンゼルプランでは、適正規模の学童保育を一小学校区に複数設置できるよう目標数を設定してほしい。また、提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」に沿って質的な拡充も盛り込んでほしい。
・法律で事業の対象と目的が明確になっている学童保育事業が、「全児童対策事業」(余裕教室を活用したすべての児童を対象とした遊び場づくり)に代替えできないことをはっきりと示し、市町村にも周知徹底してほしい。
・放課後児童健全育成事業の実施要綱および通知を、提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」に沿って改善してほしい。
・放課後児童健全育成事業の予算を大幅に増やしてほしい。(補助対象か所数を大幅に増やすとともに、適正規模の学童保育が増えるよう施策の改善を図ってほしい。すべての学童保育で専任の常勤職員が常時複数配置できる人件費を予算化してほしい。施設整備等に関する補助を創設、拡充してほしい。障害児の受け入れ補助を拡充してほしい。指導員の研修費補助を引き上げてほしい、など)
・文部科学省との連携を図って、余裕教室の学童保育への活用についての指針や、「子どもの居場所づくり新プラン」の「地域子ども教室推進事業」については、学童保育の代わりになるものではなく、それぞれの役割を明確にさせたうえで連携を図るよう、都道府県および市町村に周知徹底してほしい。
要請および懇談には、厚生労働省育成環境課から児童福祉専門官2名と健全育成係長が出席しました。学童保育の現場の実態と課題、担当課の考え方などについて率直な意見交換をしました。
厚生労働省からは、具体的な施策改善の提示はありませんでしたが、予算編成および新々エンゼルプラン策定にあたっては、「皆さんからの要望内容も含めて拡充につながるよう検討していきたい」と回答がありました。
全国学童保育連絡協議会が毎年行っている学童保育数の調査で、2004年5月1日現在、14678か所あることがわかりました。
学童保育数は、昨年と比べて881か所増えています(注)。依然として学童保育は急増しているといえます。また、学童保育のある市町村の数は2428で、昨年より108増えています。
この結果、小学校に対する学童保育数の比率は62%(昨年は58%)、学童保育がある市町村の割合は78%(昨年は72%)となりました。
運営主体別でみると、昨年および5年前と比べると、公社・社会福祉協議会の運営、法人の運営の割合が増えています。また、開設場所別では昨年および5年前と比べると、児童館内、民家・アパートの割合が減少して、学校施設内およびその他の公的施設の割合が増えています。
(注)調査は、各地の連絡協議会を通じて行政に問い合わせていますが、行政から回答がない場合は連絡協議会が集計しています。
全児童対策事業と学童保育をからませて実施している市町村の扱いについては、行政と連絡協議会の集計数が異なる場合は多い方を集計しています。
川崎市は行政報告に基づきすべての全児童対策事業の実施数、大阪市は行政報告に基づき学童保育の国庫補助を受けている全児童対策事業の数も加えて集計しています。また、堺市と品川区については、連絡協議会報告に基づき全児童対策事業の実施数も加えて集計しています。
表1 運営主体別の学童保育数
運営主体 | 学童保育数 | % | 98年比 | 98年% |
公営 | 6,952 | 47.4% | -3.3 | 50.7 |
公社・社協 | 1,953 | 13.3% | 5.2 | 8.1 |
運営委員会 | 2,174 | 14.8% | -2.8 | 17.6 |
父母会 | 1,683 | 11.5% | -3.1 | 14.6 |
法人等 | 1,789 | 12.2% | 5 | 7.2 |
その他 | 127 | 0.9% | -0.9 | 1.8 |
合計 | 14,678 | 100.0% | 100.0 |
表2 開設場所別の学童保育数
開設場所 | 学童保育数 | % | 98年比 | 98年% | |
公的 | 学校施設内 | 6,615 | 45.1% | 5.6 | 39.5 |
施設 | 児童館内 | 2,529 | 17.2% | -5.1 | 22.3 |
その他の公共施設内 | 2,714 | 18.5% | 1.3 | 17.2 | |
法人施設 | 975 | 6.6% | 2.1 | 4.5 | |
民家・アパート | 1,177 | 8.0% | -5 | 13.0 | |
その他 | 668 | 4.6% | 1.1 | 3.5 | |
14,678 | 100.0% | 100.0 |
表3 都道府県別の学童保育数と設置率
都道府県 | 学童保育数 | 小学校数 | 設置率 | 学童保育の ある市町村数 |
学童保育数の 前年比 |
|
1 | 北海道 | 717 | 1468 | 48.8% | 159 | 41 |
2 | 青森県 | 229 | 429 | 53.4% | 50 | 21 |
3 | 岩手県 | 180 | 464 | 38.8% | 50 | 10 |
4 | 宮城県 | 254 | 469 | 54.2% | 52 | 0 |
5 | 秋田県 | 143 | 308 | 46.4% | 58 | 14 |
6 | 山形県 | 133 | 367 | 36.2% | 37 | 5 |
7 | 福島県 | 238 | 582 | 40.9% | 64 | 21 |
8 | 茨城県 | 367 | 584 | 62.8% | 68 | 16 |
9 | 栃木県 | 298 | 432 | 69.0% | 48 | 24 |
10 | 群馬県 | 252 | 352 | 71.6% | 57 | 25 |
11 | 埼玉県 | 751 | 836 | 89.8% | 87 | 22 |
12 | 千葉県 | 557 | 868 | 64.2% | 71 | 24 |
13 | 東京都 | 1378 | 1404 | 98.1% | 55 | 38 |
14 | 神奈川県 | 644 | 906 | 71.1% | 34 | 12 |
15 | 新潟県 | 280 | 612 | 45.8% | 81 | 15 |
16 | 富山県 | 148 | 235 | 63.0% | 26 | 5 |
17 | 石川県 | 199 | 263 | 75.7% | 34 | 17 |
18 | 福井県 | 137 | 226 | 60.6% | 30 | 15 |
19 | 山梨県 | 152 | 221 | 68.8% | 42 | 17 |
20 | 長野県 | 264 | 411 | 64.2% | 92 | 25 |
21 | 岐阜県 | 228 | 399 | 57.1% | 46 | 22 |
22 | 静岡県 | 355 | 551 | 64.4% | 57 | 19 |
23 | 愛知県 | 722 | 991 | 72.9% | 71 | 31 |
24 | 三重県 | 154 | 449 | 34.3% | 42 | 18 |
25 | 滋賀県 | 169 | 239 | 70.7% | 42 | 6 |
26 | 京都府 | 302 | 457 | 66.1% | 34 | 3 |
27 | 大阪府 | 921 | 1057 | 87.1% | 44 | 72 |
28 | 兵庫県 | 609 | 857 | 71.1% | 64 | 44 |
29 | 奈良県 | 176 | 261 | 67.4% | 31 | 7 |
30 | 和歌山県 | 106 | 339 | 31.3% | 25 | 12 |
31 | 鳥取県 | 107 | 180 | 59.4% | 36 | 22 |
32 | 島根県 | 135 | 286 | 47.2% | 47 | 11 |
33 | 岡山県 | 245 | 449 | 54.6% | 53 | 19 |
34 | 広島県 | 410 | 637 | 64.4% | 49 | 17 |
35 | 山口県 | 253 | 371 | 68.2% | 49 | 8 |
36 | 徳島県 | 101 | 281 | 35.9% | 28 | 16 |
37 | 香川県 | 152 | 217 | 70.0% | 32 | 14 |
38 | 愛媛県 | 139 | 372 | 37.4% | 22 | 8 |
39 | 高知県 | 100 | 325 | 30.8% | 30 | 7 |
40 | 福岡県 | 613 | 788 | 77.8% | 87 | 30 |
41 | 佐賀県 | 135 | 198 | 68.2% | 45 | 6 |
42 | 長崎県 | 177 | 426 | 41.5% | 46 | 5 |
43 | 熊本県 | 251 | 503 | 49.9% | 71 | 29 |
44 | 大分県 | 171 | 383 | 44.6% | 47 | 26 |
45 | 宮崎県 | 158 | 286 | 55.2% | 32 | 32 |
46 | 鹿児島県 | 247 | 610 | 40.5% | 72 | 33 |
47 | 沖縄県 | 221 | 284 | 77.8% | 31 | -3 |
合計 | 14,678 | 23,633 | 62.1% | 2,428 | 881 |
本誌6月号の購読数が43700部となり、過去最高となりました。全国各地の皆さんの努力の大きな成果です。ありがとうございます。学童保育の唯一の専門誌として本誌の期待が広がっています。引き続き、多くの方々にひろめていきましょう。
7月20日、総理府は、政府が推進してきた新エンゼルプランの効果についての政策評価を発表しました。
「仕事と子育ての両立にかかる負担感」は、十分とはいえないものの緩和してきたと評価する一方、「子育てに伴う経済的負担感の増大」「共働き家庭に比べて専業主婦家庭の負担感の増大」があり、その結果、出生数も合計特殊出生率も低下の一途をたどっているとしています。また、新エンゼルプランの効果を認め、引き続き推進していくことが適当だとしています。そして最終意見を次のようにまとめています。
「新々エンゼルプランの策定に際しては、現下の厳しい財政状況を踏まえつつ、子育てに伴う経済的な負担感の緩和や、子育て中の専業主婦家庭の負担感の緩和に資する施策の充実とともに、それぞれの分野内の施策について、当省のアンケート調査結果を参考に重点化を図ることが必要である」
アンケート調査は「特に充実が望まれている」分野と新エンゼルプランの分野内の施策について住民から聞き取りを行ったものです。
分野別では「教育に伴う経済的負担の軽減」(58.6%)がもっとも多く、次いで「仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備」(46.1%)、「教育費以外の経済的負担の軽減」(36.7%)、学童保育の整備も含む「保育サービス等子育て支援サービス」(33.0%)と続きます。(「教育に伴う経済的負担」は幼稚園・高校・大学の授業料などをさし、「教育費以外の経済的負担」には保育園や学童保育の保育料負担などが入っています)
また、「保育サービス等子育て支援サービス」の分野内の施策については、「低年齢児保育」(50.9%)、「延長・休日保育」(46.9%)に続いて、「放課後児童クラブ」(42.1%)が「特に充実してほしい施策」としてあげられています。
住民アンケート調査で充実を求める声が多い「放課後児童クラブ」について、新々エンゼルプランにおいても「重点化を図る」必要があるという政策評価の結果を十分に活用して、国や自治体に学童保育の量的・質的拡充の声を大きくしていきましょう。
学童保育施設の整備費に使える「子育て支援のための拠点施設整備費」「余裕教室活用促進事業」についての今年度の交付数が昨年比で大幅に減少する可能性があることがわかりました。
この補助金は、毎年2月までに申請し、5月には第1回目の交付決定がされます。2001年度からの交付総額と交付数は左の表の通りですが、今年度は昨年度の継続分約600億円が支出さているため、例年では総額2000億円程度使えるところが1400億円程度に縮小されています。そのため、申請(事前協議)しても認められなかった例が各地で出ています。
表 施設整備費の交付決定の状況
社会福祉施設 整備費交付総額 |
子育て支援の ための拠点施設 整備費のか所数 |
余裕教室活用 促進事業のか所数 |
|
2001年度 | 2262億円 | 88か所 | 126か所 |
2002年度 | 1993億円 | 106か所 | 86か所 |
2003年度 | 2699億円 | 140か所 | 108か所 |
2004年度 (第1回交付分) |
480億円 | 88か所(学82か所) | 56か所(学52か所) |
注)「子育て支援のための拠点施設整備費」「余裕教室活用促進事業」は、すべてが学童保育の施設整備費が対象ではありませんが、2004年度第1回交付決定に見るように大半は学童保育のために使われています。
(学が学童保育分)
政府は学童保育を「必要とする地域に整備する」方針を掲げるならば、そのために欠かせない施設整備費にも十分な予算をつける必要があります。
日本商工会議所は7月14日に発表した政策アピールの第一項目に、「国を挙げてのあらゆる対策による少子化問題の解決」をあげました。「出生率の低下による人口の減少」に歯止めがかからなければ、「わが国の経済社会全体に未曾有のインパクトを与え、国力の低下」をもたすとし、「少子化問題解決のための投資は、社会資本充実のための公共投資と同等か、むしろ長期的観点からはより重要なものと認識すべきである」としています。
次世代育成支援対策の政府予算の約1.1兆円に加え、小泉総理就任後の公共投資の総額1.8兆円と同額を加えて約3兆円規模とし、少子化対策に必要な社会基盤の整備に重点をおかなければならないという内容です。
「1.29ショック」について新聞各紙は、少子化対策に「本腰を入れて」取り組むことが必要だと指摘しています。これは、私たちが繰り返し政府に要求してきたことです。学童保育についても、「必要な地域すべてに整備する」ことと同時に「質的な拡充を図ること」が必要であり、現在の87億円程の学童保育予算ではなく大幅な増額が求められます。
8月号「協議会だより」の記事のなかで「本誌六月号の購読者数が四七三〇〇部となり」は、「四三七〇〇部」の誤りでした。お詫びして訂正します。
厚生労働省は来年度予算についての概算要求(財務省への要求額)を8月27日に発表されました。学童保育関係については次の通りです。
<放課後児童健全育成事業>
◆総額 97億4600万円(今年度比 10億2600万円増、11.8%増)
◆補助対象か所数 1万3300か所
(今年度比 900か所増)
◆補助単価 2004年度と同額
◆ボランティア派遣事業の充実
2004年度に創設された「ボランティア派遣事業」(詳しくは本誌五月号「協議会だより」参照)に、新たに、障害などに関する知識を有したボランティアを学童保育に派遣して、指導員に対する援助を行う事業を追加。市町村への補助で、一市町村当たり30万円。従来の事業(伝承遊び・自然体験事業等のボランティア派遣)とあわせて実施する場合は60万円となる。
◆<新規事業>障害児受け入れ環境改善事業
障害児の受け入れに必要な設備の整備や障害児用の遊具・器機等の購入などに必要な経費を補助。1か所あたり年間100万円(補助率3分の1)で運営主体は問わない。450か所分を計上。
なお、概算要求は暮れの財務省査定を経て、政府予算案となりますので、財務省査定で削られる場合もあります。
文部科学省は生涯学習政策局の概算要求として、2004年度から始めた「子どもの居場所づくり新プラン」の「地域子ども教室推進事業」補助(3年間限定)の2年目として140億円(8000校分)を計上しています。(この事業の趣旨等は本誌2003年10月号参照)
広島県福山市の学童保育(余裕教室で実施)で、8月20日、保育時間中に子ども(小3・男子)が誤って窓ガラスにぶつかり、割れたガラスが胸にささって死亡するという大変痛ましい事故が起きました。
このような重大事故をひきおこすことのないよう安全対策や安全指導の徹底が求められていることは言うまでもありません。あらためて学童保育・指導員に安全対策、安全指導の徹底を図るようお願いいたします。
この事故を受けて、厚生労働省育成環境課も8月25日付で「児童の安全確保の徹底について」の通知を出しました。
通知では、「今般、広島県福山市の放課後児童クラブ(小学校の余裕教室で実施)において、児童が誤って窓ガラスに衝突し、その際に割れたガラスの破片によって負傷し、死亡するという痛ましい事故が発生しました。今回のような死亡事故に限らず、放課後児童クラブにおける児童の事故は全国どこでも発生する可能性があり、安全確保、安全点検はもとより、日常から職員の安全に対する意識が重要であります」として、
「日常の活動等における児童の安全を確保するため、施設設備、職員体制等の点検及び放課後児童指導員に対する安全管理についての研修の実施等、放課後児童クラブにおける児童の安全確保の徹底を図る」よう都道府県・市町村に通知しました。
厚生労働省は、学童保育があるすべての市町村に対して、「施設及び設備の基準」があるかどうかを初めて調査しました(表1)。これは、日本共産党の国会議員から出されていた質問趣意書で質問されていたことに回答するために実施したものです。
調査は、各市町村に「自治体独自の放課後クラブに関する施設及び設備の基準の有無」(自治体で特に定めたものがなく、国の補助基準等を準用している場合は除く)を聞き、「有」と回答した、基準を示した文書がある自治体に、「クラブ室」「静養室」「台所」「手洗い場」「トイレ」「事務室」「屋外の遊び場」「ロッカー」「その他」の各項目ごとにどのような基準があるかを調べています。
その結果、上記の項目中1つでも「基準を文書で示している」自治体は、45自治体(埼玉県と東京都と43市町村)しかありませんでした。学童保育がある自治体が、47都道府県も含めて2475自治体ありますが、その2%にも満たない数です。
さらに、「基準がある」としていても、その内容が、「ロッカーが設けられていること」や「便所を備えていること」などのみである回答も含まれています。埼玉県のように施設全般にわたって基準を示している例はほかにないようです。
私たちは昨年6月に「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」を提言し、その実現を国や地方自治体に求めています。今回の厚生労働省の調査で明らかになったように、ほとんどの自治体が基準を定めていないことを問題として、国と地方自治体にその実現をいっそう強く求めていく必要があります。
(都道府県別の自治体名の表か数の表が入ればいれるがいまの字数では入らない)
表1 放課後児童クラブの施設基準策定状況
(厚生労働省育成環境課調べ)
都道府県 | 自治体数 | 自治体名 |
北海道 | 1 | 札幌市 |
青森県 | 0 | |
岩手県 | 1 | 陸前高田市 |
宮城県 | 0 | |
秋田県 | 1 | 秋田市 |
山形県 | 0 | |
福島県 | 0 | |
茨城県 | 0 | |
栃木県 | 1 | 宇都宮市 |
群馬県 | 1 | 榛名町 |
埼玉県 | 1 | 埼玉県 |
千葉県 | 2 | 我孫子市、浦安市 |
東京都 | 8 | 東京都、江東区、大田区、板橋区、 葛飾区、八王子市、昭島市、国分寺市 |
神奈川県 | 2 | 座間市、相模原市 |
新潟県 | 0 | |
富山県 | 1 | 富山市 |
石川県 | 0 | |
福井県 | 0 | |
山梨県 | 0 | |
長野県 | 1 | 松本市 |
岐阜県 | 1 | 岐阜市 |
静岡県 | 0 | |
愛知県 | 2 | 岡崎市、春日井市 |
三重県 | 1 | 津市 |
滋賀県 | 0 | |
京都府 | 0 | |
大阪府 | 2 | 大阪市、牧方市 |
兵庫県 | 1 | 西宮市 |
奈良県 | 0 | |
和歌山県 | 0 | |
鳥取県 | 0 | |
島根県 | 2 | 出雲市、大社町 |
岡山県 | 2 | 岡山市、倉敷市 |
広島県 | 1 | 広島市 |
山口県 | 0 | |
徳島県 | 1 | 徳島市 |
香川県 | 0 | |
愛媛県 | 0 | |
高知県 | 0 | |
福岡県 | 2 | 北九州市、福岡市 |
佐賀県 | 0 | |
長崎県 | 1 | 長崎市 |
熊本県 | 1 | 熊本市 |
大分県 | 1 | 別府市 |
宮崎県 | 0 | |
鹿児島県 | 0 | |
沖縄県 | 7 | 那覇市、名護市、浦添市、豊見城市、 西原町、南風原町、恩納村 |
45 |
8月24日、地方6団体(注)は小泉総理大臣に対して「国庫補助負担金等に関する改革案」を提出しました。
これは、「三位一体改革で地方分権の推進」をという立場から、「補助金の一般財源化」「税源移譲」「地方交付税の見直し」について、地方6団体としての2009年度まで8兆円程度の税源移譲を求めると同時に、9兆円程度の国庫補助負担金の見直し(補助金・負担金を廃止して一般財源化すること)を提案したものです。
この国庫補助負担金の廃止(一般財源化)のなかには、学童保育の補助金を含む「児童育成事業費補助金 285億7800万円」も含まれています。
しかし、学童保育事業はようやく法制化されたばかりで自治体ごとに大きな格差があります。私たちは国と自治体に「設置・運営基準」をつくるよう繰り返し求めていますが、今必要なのは、国としてのナショナルミニマム(どこの地域や学童保育でも最低確保しなければならない水準)と、そのための補助制度の拡充です。
学童保育の量的・質的の拡充をはかるためには、国と自治体が公的な責任で、最低基準とそれに基く財政措置を行うことが欠かせません。この動きを学童保育を拡充する運動にかかわる重要な問題として注視していく必要があります。
(注)全国知事会・全国都道府県議会議長会・全国市長会・全国市議会議長会・全国町村会・全国町村議会議長会の6団体
厚生労働省育成環境課は、毎年、学童保育数と入所児童数などの調査を行っていますが、9月末、2004年5月現在の調査結果を次のように公表しました。
●放課後児童クラブ数 14,579か所(全国連協調査では14,678か所)
●登録児童数 594,209人(2003年調査では540,595人。全国連協の2003年調査では約538,000人)
(注)全国連協調査は、入所児童数については毎年調査しておらず、最新のデータは2003年調査分。
この1年間で、学童保育が759か所増えた一方、登録児童数は53,614人増え、一施設当たりの平均登録児童数は41.3人(前年39.0人)と大規模化がさらに進行しています。
(注)全国連協調査でも2003年5月調査では、一施設平均児童数は39.0人と厚生労働省と同じでした。
また、待機児童数(「利用申し込みをしたが利用できなかった児童」)も、9,400人(前年6,180人)と大きく増えています。
厚生労働省は、今回初めて障害児の登録児童数も調査しています。その結果、9,289人の障害児が入所していることがわかりました。(表1・表2参照)
表1 障害児受入数の状況(放課後児童クラブ数)
受入数 | 2004年度 | 2003年度 | 増減 |
1人 | 2,333(16.1%) | 2,175(15.9%) | 158 |
2人 | 1,199( 8.3%) | 1,057( 7.7%) | 142 |
3人 | 437( 3.0%) | 383( 2.8%) | 54 |
4人以上 | 502( 3.5%) | 448( 3.3%) | 54 |
計 | 4,471(30.9%) | 4,063(29.7%) | 408 |
注:( )内は全クラブ数に対する割合である。(厚生労働省調査)
表2 障害児の学年別登録児童の状況(初調査)
学年 | 2004年度 |
小学1年生 | 2,087(0.9%) |
小学2年生 | 2,229(1.2%) |
小学3年生 | 2,046(1.6%) |
小学4年生以上他 | 2,927(4.6%) |
9,289(1.6%) |
注:( )内は学年別登録児童数に対する割合である。(厚生労働省調査)
一方、朝日新聞社は、全国主要都市(県庁所在地など71市と東京23区)を対象に、学童保育の待機児童数と入所児童数の調査を行い、新聞の9月15日付け一面と9月18日の生活面で大きく報道しました。4年前から毎年同様の調査を実施していますが、今回は調査する都市と調査項目を増やしています。
待機児童数は、その数を把握している60市区内で、合計2,680人となっており、前年比12.6%増でした。
一方、待機児童ゼロの市区では、大規模化が目立っているとしています。調査した主要都市では、その多くで一施設当たりの在籍児童数が増えており、一か所平均の在籍児童数が50名を越える市が14市ありました。
私たちはあらためて、適正規模(私たちの提言では「一施設の児童数は40人が限度」)の学童保育を、必要に応じて小学校区ごとに複数設置し、希望するすべての児童が入所できるよう国や地方自治体に強く要望し、その内容が「地域行動計画」に盛り込まれるよう働きかけていく必要があります。
余裕教室を学童保育室に転用する際に活用できる国の補助金「余裕教室活用促進事業」は「社会福祉施設整備費」の中から出されていますが、2003年度まで、一施設あたり建設費3000万円、設備費600万円を国が全額負担する形で出していました。
しかし、2004年度は建設費と設備費をひとつの「施設整備費」として、補助単価が3290万円(その内訳は建設費2800万円、初年度設備費490万円)となっています。補助額が減っているのは、国が公共工事の建設単価を全体として切り下げているためだとしています。
なお、「子育て支援のための拠点施設整備費」も、2002年度まで「80.3u」を上限にした基準面積を決めて、それに1u当たりの建築単価をかけたものを補助額としていましたが、2002年度から一施設当たりの補助単価を決めて支給する形になっています。単価は都道府県によって1340万円から1640万円と幅があります。
いずれの補助金も国への申請時期は3月ですから、来年度の市町村の予算編成に間に合うよう、この秋から私たちの施設要求を出して、補助金獲得の働きかけを強めていきましょう。
*『学童保育 施設整備の手引き 2004年改訂版』(2004年10月刊)参照。
10月23日・24日の両日、第三九回全国学童保育研究集会を大阪で開催しました。
44都道府県から5687余名の保護者・指導員などが参加し、2日間、学童保育や働きながらの子育てについて学習や交流をしました。
集会には、自由民主党・民主党・公明党・日本共産党・社会民主党のすべての政党をはじめ、たくさんの行政・議員・団体からメッセージ・祝電をいただきました。
開催地・大阪では、府内の33市町村から後援をいただき、また地元からの参加者も2700名余りとなり、大阪の学童保育の発展にとっても大きな意義がある全国研究集会となりました。
*本誌2005年2月号特集で、内容の紹介や参加者の声を紹介します。
全国学童保育連絡協議会の2004年度総会を、10月22日、大阪市内で開催しました。
総会では、2003年度の活動報告、決算報告、会計監査、2004年度の活動方針、予算を討議し、決定しました。活動方針では、次の点を今年度の重点課題として取り組むことを確認しました。
@ 提言『私たちが求める学童保育の設置・運営基準』をもとに、学童保育施策の改善を、財政措置を含む公的責任によって進めるよう働きかける。とりわけ、新々エンゼルプランや地域行動計画に、適正規模の学童保育を必要な小学校区には複数設置するよう強く働きかける。
A 学童保育を廃止して「全児童対策事業」のみに統一する動きに反対し、学童保育の固有の役割と生活内容、指導員の仕事についての理解を広げ、学童保育を拡充する大きな流れをつくる。
B 指導員の複数・専任・常勤体制の確立、労働条件の抜本的な改善をすすめる。また、指導員の資質と保育内容の向上のための研修の拡充、市町村・都道府県の指導員会などの組織の育成、強化に取り組む。
C 父母会の活性化と父母会づくり、連絡協議会の組織づくりと組織強化に取り組む。この課題と結びつけて、『日本の学童ほいく』誌の昨年以上の増勢を目指す。
また総会では、第40回全国学童保育研究集会を神奈川で開催することを決定しました。さらに、2004年度の全国事務局役員を選出しました。
総会で決定した2004年度の全国事務局役員は次の通りです。
会 長 山本博美(指導員・新)
副会長 池谷 潤(保護者・再)
江尻 彰(保護者・新)
片山恵子(指導員・元)
木越保聡(保護者・再)
坂口正軌(保護者・再)
佐藤益雄(保護者・再)
下浦忠治(指導員・再)
志村伸之(保護者・新)
前田美子(専従・再)
牧 浩二(指導員・再)
松井信也(専従・再)
渡辺喜久代(指導員・新)
渡辺千代(指導員・再)
事務局長 木田保男(保護者・再)
事務局次長 卯城ひさゑ(職員・再)
真田 祐(職員・再)
民間学童保育の指導員で、6年間会長として奮闘してきた片山恵子さんが副会長になり、同じく民間学童保育の指導員の山本博美さんが新会長に選ばれました。
また、事務局長も含めて10年間役員として奮闘してきた瀧口隆志さん、六年間副会長として奮闘された小神長次さんが退任しました。
今年12月に、政府は次世代育成支援対策・少子化対策として「新々エンゼルプラン(仮称)」の策定を予定しています。
10月26日、厚生労働省で「新々エンゼルプラン(仮称)策定に向けての意見交換会」が持たれました。子育て支援関係団体などから約130人が参加し、策定にあたっての意見や要望を発言しました。全国学童保育連絡協議会からも事務局役員が出席し、新々エンゼルプランには学童保育の量的目標だけでなく、質的拡充も盛り込んでほしいこと、予算措置を大幅に増額してほしいことなどを要望しました。
厚生労働省少子化対策室では、「策定にあたっては、これから何をすすめるのかが目に見えてわかり、子どもを生み育てやすい環境整備がすすめられているという実感がもてるような計画づくりをしていきたい」との説明がありました。
そのためには、さまざまなメニューをきめ細かくつくるだけでなく、「社会保障費の中で、子育て支援関係費は3%程度」という状況を変えるような予算措置が必要です。
これまでのエンゼルプランの延長ではなく、学童保育の量的・質的な拡充を含む「実効力」のあるプランの策定が求められます。