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協議会だよりは、『日本の学童ほいく』のコーナーの1つです。国の動き、全国学童保育連絡協議会の活動、情報などを毎月載せています。2020年3月号以降は、掲載記事一覧の協議会だより〔PDF〕をごらんください。
2018年4月号〜2019年3月号
2017年4月号〜2018年3月号 2016年4月号〜2017年3月号
2015年4月等〜2016年3月号 2014年4月号〜2015年3月号
2013年4月号〜2014年3月号 2012年4月号〜2013年3月号
2011年4月号〜2012年3月号 2010年4月号〜2011年3月号
2009年1月号〜2010年3月号 2008年1月号〜2008年12月号
2007年1月号〜2007年12月号 2006年1月号〜2006年12月号
2005年1月号〜2005年12月号 2004年1月号〜2004年12月号
2003年1月号〜2003年12月号 2002年1月号〜2002年12月号
2019年12月19日、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、「公的責任による学童保育の拡充と財政措置の大幅増額を求める要望書」を、厚生労働省子ども家庭局子育て支援課健全育成推進室、内閣府子ども・子育て本部に届けました。
当日は、全国各地の連絡協議会および全国連協から計22名が参加し、地域の現状、要望内容を伝えるとともに、厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「設備運営基準」)の「従うべき基準」が参酌化されたことによる、各地域の条例改定の動き、懸念されることを訴えました。
また、文部科学省地域学習推進課、内閣府地方分権改革推進室、内閣府規制改革推進室、総務省公務員課、総務省財政課に要望書を提出し、地方六団体や国会議員の方々にも資料を届けました。
厚生労働省に重点をおいて要望した点はつぎのとおりです。
[要望項目〈抜粋〉]
1 学童保育の国の制度の拡充を図ってください。
・「第九次地方分権一括法」の附則に見直し規定が設けられたこと、「第九次地方分権一括法」に付された附帯決議のうち、学童保育の質に関係する内容が衆参ともにそれぞれ四つの項目にわたって取り上げられていること、全国学童保育連絡協議会が取り組んだ「学童保育の拡充を求める請願書」が衆参ともに採択されたことを受け止め、「全国的な一定水準の質」を確保するための方策を図ってください。
2 学童保育の量的拡大、質の向上が図られるよう、国として十分な財政措置をはじめとする対策を進めてください。
・〈施設整備に関する財政措置について〉運営形態にかかわらず、市町村が施設の確保を支援するよう国として働きかけてください。
・〈障害のある子どもの保育に関する財政措置について〉希望する障害のある子どもが入所できるよう、財政措置を行ってください。
3 子どもの命と安全を守る上で欠かせない「学童保育の『全国的な一定水準の質』」を確保してください。
・これまでどおり厚生労働省が定めた基準をもとに実施されるよう、市町村に働きかけてください。そのために、学童保育指導員の資格と人員配置に関する条例の内容を変更し、基準を後退させた市町村については、質の確保と向上の方策についても調査をし、公表してください。
4 学童保育指導員の処遇の改善、保育内容の向上が図られるよう必要な措置を講じてください。
・「放課後児童支援員等処遇改善等事業」について、確実に学童保育指導員の処遇改善につながる明快な仕組みの事業としてください。
・「放課後児童支援員等処遇改善等事業」「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」の予算単価を増額するとともに、両事業の積極的な活用を市町村に働きかけてください。
・「会計年度任用職員制度」の創設に伴い、市町村で働く学童保育指導員の処遇改善の状況や運営形態の変更などについて調査し、その結果を公表してください。総務省と連携し、学童保育指導員の処遇改善および学童保育の質の維持・向上が図れるよう手立てを講じてください。
5 学童保育指導員の公的責任による全国一律の資格制度を検討してください。「放課後児童支援員認定資格研修」については「全国的な一定水準の質」が図られるようにしてください。
・〈「経過措置」後の資格の取り扱いについて〉「設備運営基準」に示された「経過措置」後に現場に従事した学童保育指導員のうち、「放課後児童支援員」の基礎要件を満たしている者については、採用後すみやかに「認定資格研修」を修了すること前提として、有資格者として見なしてください。
6 学童保育の省令基準の改善・拡充を図ってください。
7 「新・放課後子ども総合プラン」において、学童保育と「放課後子供教室」とはそれぞれの事業として実施する方針を堅持し、都道府県および市町村に周知・徹底してください。
・児童館や放課後等デイサービス事業などの放課後の施策に置き換えることなく、学童保育を必要とする子どもたちが入所できるよう、学童保育を整備してください。
・学童保育と「放課後子供教室」は、それぞれの目的・役割が異なります。二つの事業をひとつにした運営(同じ場所、同じ職員が対応する)では、「就労などにより保育を必要とする子どもたちの毎日の生活の場を保障する」という学童保育の目的・役割は果たせません。それぞれの事業の目的・役割が果たせるよう、引き続き、都道府県および市町村に周知・徹底してください。
・「一体型」や「連携して実施」などの表現は、市町村や現場でも混乱の原因となっています。学童保育を「全児童対策事業」に一体化するなどの動きを生み出す懸念があるため、適切な表現にあらためてください(例えば「一体型」は「学校内設置型」にあらためるなど)。
・「新・放課後子ども総合プラン」にある「共通プログラム」の実施にあたっては、子どもが参加を選択できること、学童保育固有の生活を守ることが優先される旨、周知・徹底するとともに、プログラムの内容が学習やスポーツに偏らないようにしてください。
8 自然災害で被災した地域の学童保育の復旧・復興、学童保育を必要とする家庭・子どもが安心して利用できるよう、国としての支援を行ってください。
・学童保育の防災・安全対策についての国としての指針を定めるとともに、それにもとついた補助制度を創設してください。
・〈国としての指針に盛り込んでほしいこと〉専門家による施設の耐震診断/施設が使用できなくなった場合の、代替の施設の即座な確保/学童保育の早急な再開が難しい場合は、子どもの送迎など必要な手立て/ライフラインが復旧するまでの間、子どもたちの昼食やおやつの確保/被災地域の保育料の減免/自然災害が原因の臨時休室による補助金減額の防止。
市町村が独自の判断で安易な「見なし規定」を設けることになどにより、「全国一定水準の質」が担保された「放課後児童支援員」と、その市町村内でしか通用しない「放課後児童支援員」が混在する事態も起こり得ます。
また、「放課後児童支援員」の資格や配置基準の切り下げが各地で広がることは、改定された児童福祉法の「施行後三年の見直し」に向けて、私たちが「従うべき基準」に戻すための運動を進めるうえで障害となることも考えられます。
「放課後児童支援員」の資格や配置基準を切り下げようとする動きは最小限に留めなければなりません。
新たな市町村格差が生まれないよう、「『全国一定水準の質』を守る」という私たちの要望を伝えて、今後も強く働きかけていきます。
2019年11月15日、「共同会派ジェンダー平等推進本部・男女共同参画推進本部合同会議」にて、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)に税制改正要望についてのヒアリングがありました(参加した団体は9団体)。全国連協が要望した内容の趣旨はつぎのとおりです。
・子どもの命と安全を守るうえで欠かせない「学童保育の『全国的な一定水準の質』」を確保するために、「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」策定時の趣旨を十分にふまえ、「従.うべき基準」として定められた基準を堅持し、有資格者の原則2名以上配置を実現するための財政措置が必要不可欠であること
・現在、放課後児童健全育成事業の運営費などは、企業等からの事業主拠出金である「年金特別会計子ども・子育て支援勘定」から、職員の処遇改善は「消費税」を財源としてまかなわれている。保育所や学校と同等の、安定的な財源確保のための税制改正を要望する
当日は、2019年5月30日の参議院内閣委員会で、学童保育の「従うべき基準」の参酌化について質問された矢田わか子・参議院議員(国民民主党男女共同参画推進本部事務局長・比例)や、第54回全国学童保育研究集会in京都に来賓として参加された山本わか子・衆議院議員(立憲民主党・比例北陸信越)ほかが出席されていました。
第198回通常国会に提出した「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」の請願は審査未了に終わりましたが、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」の謂願は採択され、採択された請願は内閣に送付され、内閣はそれを誠実に処理し、その経過を国会に報告することになっています。
また、衆議院地方創生に関する特別委員会・参議院内閣委員会で議論され、付された附帯決議にある、「実態調査の実施結果等について、適切な情報闘示を行い、説明責任を果たすこと(衆)」「実態調査については、法令上に規定された基準等に基づく調査を行うとともに、実施結果等について、適切な情報開示を行い、説明責任を果たすこと(参)」を実現させるうえでも、国会議員の方々の協力が必要です。
全国連協では今後も、厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下、省令基準)における「従事する者及びその員数」を、「従うべき基準」に戻すこと、そのほかの「参酌基準」も順次「従うべき基準」とするなど、厚生労働省をはじめとして関係省庁や国会議員などに対して働きかけを強めます。
各地域でも、地元で懇談の機会を持つなどをはじめ、学童保育についての理解を深のてもらうための働きかけをぜひ行っていきましょう。
学童保育の「従うべき基準」の参酌化に関わって、内閣府地方分権改革推進室から2019年10月3日付で、提案団体である全国知事会、全国市長会、全国町村会宛てに「放課後児童健全育成事業に従事する者及びその員数の基準の見直しに伴う留意事項について」という事務連絡が発出されました。
これを受けて、全国知事会の「地方分権改革推進本部」から2019年10月4日付で、各都道府県地方分権担当課宛てに、放課後児童クラブ担当課との情報共有とともに、管内市町村担当課への周知をうながすための事務連絡「放課後児童クラブに係る『従うべき基準』の参酌基準化に伴う留意事項について」が発出されています。
内閣府地方分権改革推進室が発出した通知には、つぎの2点に留意するように書かれています。
・引き続き「みなし支援員」制度が必要であるという場合には、国基準が参酌すべき基準に見直されたことに伴い、各市区町村の責任と判断のもと、その期間を延長すること等も可能となっていること。
・「みなし支援員」について、期間の延長等国基準と異なる取扱いをされる場合には、各市町村の基準を定める条例の適切な見直し等を行っていく必要があること。
内閣府に全国連協が問い合わせたところ、「省令基準の附則に定められた職員の経過措置が2020年3月31日で終了するが、自治体から今後、どのようになるのか質問や意見がつづいたので、あらためて周知するために事務連絡を発出した」とのことです。
全国連協は、省令基準に定められた「経過措置」終了後の資格の取り扱いについては、「『経過措置』後に現場に従事した学童保育指導員のうち、『放課後児童支援員』の基礎要件を満たしている者については、採用後すみやかに『認定資格研修』を修了することを前提として、有資格者としてみなす」ことを、厚生労働大臣に要望しています。
実際に各地域からは、「12月議会で、『3年延長』の経過措置を条例の附則にする」と判断した市町村がある一方で、「子どもの安全を脅かすようなことはしたくないので、条例を変更することはしない。指導員体制も整っているので、経過借置の延長もなし」と判断した市町村もあるとの情報が寄せられています。
2020年4月以降、「従うべき基準」は参酌基準となりますが、市町村は現行の条例を、改定しなければならないわけではありません。また現行の条例の内容を変更する際には、住民・利用者への説明、子ども・子育て会議での議論、市町村議会での議決が必要です。
ひきつづき、「条例について地方議会で議論されることになった場合にも、質の確保を担保すること」を求めていきましょう。
全国連協では、学童保育の「従うべき基準」の参酌化を含む児童福祉法改悪にともなって、「連絡協議会からの市町村や議会への働きかけ」「市町村の見解や動き」「市議会での動向」「条例改定の動きがある場合は、具体的にどの部分を変更する予定なのか」について情報を収集したいと考えています。
皆さんの地域での動きについて、ぜひ情報をお寄せくださいますようお願い申しあげます。
『日本の学童ほいく』2019年12月号「協議会だより」でお伝えしたように、2019年10月19日・20日に京都で開催した「第54回全国学童保育研究集会」では、参加者に災害支援募金への協力を呼びかけました。
集会終了後、皆さんからお預かりした「2019年台風15号・19号災害学童保育支援募金」は、学童保育の被害状況や当該地域の学童保育連絡協議会の意向を確認したうえで、各県の学童保育連絡協議会にお届けしました。床上浸水し、トイレが温れる、エアコンが壊れるなどの被害があった学童保育では、水に浸かった家具や備品の修復、床下の消毒などが必要だということです。
全国連協では現在、台風被害のあった地域への支援募金の口座開設に向けて準備を進めています。口座を開設しましたら、あらためて、お知らせします。
2019年10月18日、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は京都府長岡京市内で2019年度(2019年10月から2020年10月まで)の定期総会を開催しました。
総会では、2018年度の活動報告、決算報告が行われ、会計監査報告を受けたのち、いずれも承認されました。
また、第55回全国学童保育研究集会を、2020年秋に山形県で開催することが決定しました。
総会で選出された今年度の全国連協役員はつぎのとおりです。
◆会 長 西田隆良(埼玉・保護者・新)
◆副会長 出射雅子(京都・保護者・再)、
小野さとみ(三多摩・指導員・再)、
角野いずみ(岡山・指導員・再)、
嘉村祐之(岩手・指導員・再)、
賀屋哲男(愛知・専従職員・再)、
川崎みゆき(大阪・指導員・再)、
木村美登里(神奈川・指導員・再)、
佐藤正美(埼玉・指導員・再)、
戸塚丈夫(三多摩・保護者・新)、
中野明彦(奈良・保護者・再)、
早川雅代(石川・指導員・再)、
平野良徳(兵庫・保護者・再)、
山崎善明(神奈川・保護者・再)
◆事務局長 高橋誠(東京・指導員・再)
◆事務局次長 佐藤愛子(職員・再)、干葉智生(職員・再)
学童保育の「従うべき基準」の参酌化にかかわって、2019年10月3日付厚生労働省子ども家庭局長通知「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令の施行について」と、2019年10月3
日付子育て支援課長通知「放課後児童健全育成事業の質の確保及び向上に向けた取組の推進について」が発出されています。
厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」の内容そのものは変わるものではありませんが、放課後児童支援員の資格と配置基準の位置づけが「従うべき基準」から「参酌すべき基準」に変更されます。それにともない、これまでの基準第一条の一、第一条の二が、以下のように変更されます。
「第一条 この省令は、児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)第34条の8の2第2項の放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準(以下「設備運営基準」という。)を市町村(特別区を含む。以下同じ。)が条例で定めるに当たって参酌すべき基準を定めるものとする」。
局長通知の「留意事項」には、「事業に従事する者及びその員数に係る基準が『従うべき基準』から『参酌すべき基準』とされたが、その基準の内容は変わるものではない」との記述があります。そのうえで、「市町村が、地域の実情に応じ条例で設備運営基準と異なる基準を定める場合については、児童の安全や事業の質が確保されることが前提であり、設備運営基準の内容を十分参酌した上で、責任を持って判断しなければならない。また、条例制定過程において、利用者の保護者や関係者、関係団体等から広く意見を求めるとともに、その内容について、十分説明責任を果たすことが必要である」と述べられています。
また、課長通知には「条例で設備運営基準と異なる基準を定めることが可能となるが、放課後児童支援員としての全国共通の認定資格を付与するためには、設備運営基準第10条第3項に規定する要件を満たす必要がある」という記述があります。
* 一部改定された省令と二つの通知は、全国連協が2019年10月に刊行した冊子『学童保育情報2019-2020』に収録されています。
地方公共団体の議会は、地方自治法第99条にもとづき、意見書を国会または関係行政庁に提出することができます(本誌2019年2月号、3月号、4月号、5月号、6月号、7月号参照)。
この間、地域連絡協議会とともに、「基準の維持」「質の確保」を求める意見書採択に向けて取り組み、2019年10月1日現在、12道県、50市町の議会で採択されています。
『日本の学童ほいく』2019年7月号の「協議会だより」で紹介した以外にも、岩手県花巻市議会、宮城県塩竃市議会、多賀城市議会、埼玉県桶川市議会、久喜市議会、幸手市議会、吉川市議会、福岡県行橋市議会、鹿児島県霧島市議会で、また、2019年9月には長野県議会で「放課後児童クラブの運営に関する一層の支援を求める意見書」が採択されました。
「従うべき基準」は参酌化されましたが、市町村は現行の条例を、改定しなければならないわけではありません。また現行の条例の内容を変更する際には、住民・利用者への説明、子ども・子育て会議での議論、市町村議会での議決が必要です。
ひきつづき、「条例について地方議会で議論されることになった場合にも、質の確保を担保すること」を求めていきましょう。
2019年の台風第15号・第19号により、東海地方から東北地方などにかけた広い地域で記録的な大雨となり、川の氾濫、堤防決壊、土砂崩れ、床上浸水、断水、停電など、各地に甚大な被害をもたらしました。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
今回の台風の影響で、鉄道の計画運休、工場や店舗・商業施設の休業も相次ぎ、学童保育を休所した地域もありました。
2019年10月19日、20日に京都市で開催した第54回全国学童保育研究集会では、参加者に募金の協力を呼びかけました。期間中に、寄せられた募金は、
@2分の1を『令和元年台風第15号・19号災害 学童保育支援募金』
A2分の1を「東日本大震災学童保育募金」「平成30年7月豪雨学童保育支援募金」「北海道胆振東部地震学童保育支援募金」
としてお預かりしました。なお、@について残金が生じた場合は、必要に応じてAの対象地域にお届けします。
全国連協では現在、「令和元年台風第15号・第19号」で被災した地域における学童保育の被害状況について情報収集に努めています。状況はあらためてご報告させていただくとともに、今後の支援の方法などについては、後日、お知らせする予定です。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は毎年、5月1日現在の学童保育の実施状況について調査しています。この調査は、全国すべての市町村(特別区を含む。以下同)、1741市町村を対象とする悉皆調査です。今年度の調査結果はつぎのとおりです。報道発表資料は、全国連協のホームページでごらんになることができます。
◆「支援の単位」数……3万2654でした(表1)。2014年4月に策定された厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「設備運営基準」)で学童保育の基礎的な単位(支援の単位)が「おおむね40人以下とする」と定められたことにもとづいて、多くの市町村では最低基準となる条例を定めました。全国連協は、「支援の単位」を学童保育の基礎的な単位と考え、2015年以降、「支援の単位」数を集計しています。
今年度の調査結果を見ると、「支援の単位」数は年々増えてきているものの、か所数の伸びは、2014年の2万2096か所と比較して、5年間で1624増にとどまります。
「支援の単位」とは、「子どもと指導員の独立した集団」そのものをさします。全国連協は大規模化した学童保育を分割して複数の「支援の単位」を設ける場合や学童保育を新設する際には、「基礎的な生活単位」「生活をおくる空間・場所、施設・設備」を継続的に分け、それぞれの単位ごとに指導員が複数人配置されることが必要と提言しています。
しかし、分割の方法や日々の保育のあり方をめぐっては、「支援の単位は複数とされているが、実際には子どもも指導員も大規模な状態のままで生活している」などの実態も見られ、分割の方法や日々の保育のあり方が、子どもに安全で安定した生活を保障できるものになっているのかが問われています。
年 | 学童保育数 | 「支援の単位」数 | 入所児童数 |
---|---|---|---|
2010年 | 19,744 | - | 804,309人 |
2011年 | 20,204 | - | 819,622人 |
2012年 | 20,846 | - | 846,967人 |
2013年 | 21,635 | - | 888,753人 |
2014年 | 22,096 | - | 933,535人 |
2015年 | - | 25,541 | 1,017,429人 |
2016年 | - | 27,638 | 1,076,571人 |
2017年 | - | 29,287 | 1,148,318人 |
2018年 | 23,315 | 31,265 | 1,211,522人 |
2019年 | 23,720 | 32,654 | 1,269,739人 |
◆入所児童数……126万9,739人でした(表2)。どの学年でも児童数が前年比で増加しています。入所児童数の合計は前年比で、5万8217人増加していますが、後述するように、学童保育に入所できずにこまっている家庭がある、大規模な学童保育で過ごしている子どもがいるなど、40人以下の学童保育の供給が需要に追いついていないのが現状です。
国は、2018年9月に「新・放課後子ども総合プラン」を策定し、放課後児童クラブの受入児童数を2019年度からの3年間で25万人、その後さらに5万人分を整備し、5年間で約30万人分(2023年度末までに122万人を152万人に)新たに整備する目標を掲げています。
2018年 | 2019年 | 前年比 | |
---|---|---|---|
1年生 | 381,184人(31.5%) | 394,152人(31.0%) | 103.4% |
2年生 | 340,377人(28.1%) | 352,332人(27.7%) | 103.5% |
3年生 | 263,498人(21.7%) | 275,937人(21.7%) | 104.7% |
4年生 | 133,983人(11.1%) | 144,710人(11.4%) | 108.0% |
5年生 | 61,389人(5.1%) | 67,755人(5.3%) | 110.4% |
6年生 | 30,500人(2.5%) | 34,253人(2.7%) | 112.3% |
その他 | 591人(0.0%) | 600人(0.0%) | 101.5% |
1,211,522人 | 1,269,739人 |
注)「その他」は、幼児も対象としている学童保育があるため。
注)割合は項目ごとに四捨五入しているため、合計は100%にならない。
◆把握できた待機児童数……1万8176人でした。学童保育にはこれまで「定員」「人数規模」などについての国の墓準がなかったため、入所に制限を設けていない施設や自治体もありました(この場合、「待機児童」は「ゼロ」とカウントされます)。そのため、市町村が実態を正確に把握できていないことも推測されます。
なお、「待機児童ゼロ」は、必ずしも、「学童保育が充足している」ことを表しているとはかぎりません。市町村のなかには、「全児童対策事業」や「放課後子供教室」などの事業を、学童保育の待機児童の受け皿として利用し、その結果、「待機児童ゼロ」としている場合もあります。目的の異なる事業では、学童保育の役割を果たすことは不可能です。
◆集団の規模……集団の規模の現状は表3のとおりです。これまで学童保育については「定員」「人数規模」が定められておらず、児童数が非常に多い大規模な学童保育が生まれて、子どもたちに過酷な状況で過ごすことを強いてきました。「設備運営基準」で基礎的な単位(支援単位)を「おおむね40人以下とする」と定められたのは、「子どもが相互に関係性を構築したり、一つの集団としてまとまりをもって共に生活したり、放課後児童支援員等が個々の子どもと信頼関係を築いたりできる規模」を実現するためです。
子どもが負担に思うことなく学童保育に通いつづけるためには、一時的な「受入児童数拡大」などによる「待機児童解消」ではなく、「人数規模の上限を守りながら必要な数だけ学童保育を増やすこと」「支援の単位ごとに、子どもの所属を明確に区分し、それぞれに施設を整備し、二人以上の適切な指導員数を配置すること」が不可欠です。
児童数 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1人-19人 | 2,560(8.7%) | 2,733(8.7%) | 2,649(8.1%) | 96.9% |
20人-30人 | 5,657(19.3%) | 6,406(20.5%) | 6,788(20.8%) | 106.0% |
31人-35人 | 4,132(14.1%) | 4,579(14.6%) | 4,810(14.7%) | 105.0% |
36人-40人 | 4,826(16.5%) | 5,706(18.3%) | 5,991(18.3%) | 105.0% |
41人-45人 | 3,653(12.5%) | 4,161(13.3%) | 4,248(13.0%) | 102.1% |
46人-55人 | 4,165(14.2%) | 3,908(12.5%) | 4,396(13.5%) | 112.5% |
56人-70人 | 2,691(9.2%) | 2,548(8.1%) | 2,607(8.0%) | 102.3% |
71人-100人 | 1,205(4.1%) | 962(3.1%) | 937(2.9%) | 97.4% |
101人以上 | 398(1.4%) | 262(0.8%) | 228(0.7%) | 87.0% |
29,287 | 31,265 | 32,654 |
◆運営主体……全体に占める割合として、公立公営が減少し、NPO法人、民間企業による運営が増えています。これまで公立公営だった学童保育が、指定管理者制度の導入、民闇委託、民営化されるなど、運営主体が変更されたものと考えられます。また、民間企業が運営している学童保育も増えています。この多くは、市町村の委託事業、指定管理者制度を受託して運営されているところです。公営の学童保育が民間委託されるほか、地域運営委員会や父母会・保護者会運営の学童保育が、企業による運営に切り替えるところも出てきています。
そして、自治体で働く非正規職員の職のあり方についての新たな制度である「会計年度任用職員」制度への移行にともなって、「事業に係る負担の軽減」を理由に、すでに外部委託を進めている地域もあります。
父母会・保護者会運営は、前年の調査ではじめて数・構成比ともに減少しました。運営主体がどこであろうとも、各市町村が定めた条例を遵守し、「放課後児童クラブ運宮指針」にもとづいて運営されることが必要です。
なお、「学習塾」や「習いごと」などの事業は、「学童保育」と自称していても「放課後児童健全育成事業」には該当しないので、今回の調査対象・結果には含めていません。
◆開設場所……余裕教室活用が増えており、学校施設内が全体の半数です。国は、2014年7月に策定した「放課後子ども総合プラン」のなかで、放課後児童クラブの受入児童数を2019年度末までに約122万人に増やすために、新規開設分の八割を「学校施設を徹底活用した実施促進」で整備していく方針を決めました。
2018年9月に公表された「新・放課後子ども総合プラン」でも、「(放課後児童クラブ、放課後子供教室の)両事業を新たに整備する場合には、学校施設を徹底的に活用することとし、新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施することを目指す」という目標が掲げられています。学童保育を増やしていく際に学校施設を活用する場合も、毎日の「生活の場」にふさわしい施設としての設備を備えたものとしで、整備していくことが欠かせません。
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例年、この実施状況調登の結果を公表すると、社会の関心は、「待機児童」に集まります。ともすると「学童保育に入れるか否か」が話題になりがちですが、それとともに重要なのは、子どもが負担に思うことなく学童保育に通いつづけられることです。学童保育の質の確保、つまり「子どもの人数規模の上限を守ること」「専門的な知識と技能を身につけた専任の指導員が常時複数で配置されること」、そのためにも「指導員の処遇が働きつづけるのに見あったものに改善されること」などは、子どもを守ることそのものです。専門的な知識や技能を備えていない大人が、自分の子育て経験や「子どもとはこうあるべき」という一方的な思いだけで子どもに関わっていては、子どもを「守る」どころか、「傷つける」ことも起きかねません。
「第9次地方分権一括法」によって、これまで「従うべき基準」だった「設備運営基準」の「従事する者及びその員数」は、2020年4月1日以降、「参酌すべき基準」に改悪されてしまいます。これを「従うべき基準」に戻すこと、そのほかの「参酌基準」も順次「従うべき基準」とすることなど、「学童保育の『全国的な一定水準の質』を確保し、早期に拡充させる具体的な方策の実現をめざして、厚生労働省をはじめとした関係省庁に対して働きかけを強めていきましょう。
2019年8月6日、内閣府が、「『平成30年教育・保育施設等における事故報告集計』の公表及び事故防止対策について」を公表しました。これは、教育・保育施設などで発生した死亡事故や、治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病をともなう重篤な事故などについて、2018年1月1日から2018年12月31日の期間内にあった報告をとりまとめたものです。
学童保育における平成30年の事故の報告件数は、420件でした。死亡事故についての報告はありません。負傷等の報告420件のうち、356件が骨折によるものでした。事故の発生場所は、施設内が380件、そのうち249件が施設内の室外で起きています。
内閣府は、2015年6月から、内閣府・文部科学省・厚生労働省に報告のあった教育・保育施設等における事故の情報を、集約・データベース化し、ホームページで公表しています。
学童保育における事故の報告件数について、この間の推移を見ると、2015年は228件(うち骨折196件)、2016年は288件(うち骨折259件)、2017年は362件(うち骨折332件)でした。
国民生活センターが2008年に行った「学童保育の安全に関す多い施設では、「発生したケガ・事故による通院日数や入院日数が長くなる傾向にあること」「子ども同士がお互いの安全に気配りすることができないために起こる出会い頭の事故やケガ、トラブルが多く発生しているこど」などが指摘されています。
「子ども・子育て支援新制度一のもと、2014年9月に「教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会」が開催され(出席者は有識者や関係者など)、放課後児童クラブも含め、事故の発生やその再発を防止するための措置について検討が行われました。そして2014年11月の検討会中間とりまとめを受けて、事故報告制度の全般的な見なおしが行われ、「重大報告の対象となる施設・事業について拡大」「重大事故の範囲の明確化」「報告様式、報告方法の改正と明示」が改正されましだ。
現在、学童保育で重大事故が生じた際には、運営主体から市町村、都道府県を通じて、厚生労働省および消費者庁に報告することが求められています(平成27年3月27日雇児育発0327第一号「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)における事故の報告等について」)。
なお、2015年12月の検討会最終報告を受けて、とくに重大事故が発生しやすい場面ごとの注意事項や、事故が発生した場合の具体的な対応方法などについて各施設・事業者、地方自治体における事故発生の防止などや事故発生時の対応の参考となるよう、「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドラインについて」が発表されています。
また、2016年3月には内閣府から地方自治体に対して、重大事故の再発防止のために、死亡事故等の重大事故については、事後の検証を実施するよう「教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的な検証について」(府子本第191号)という通知が出されています。ガイドラインは、施設・事業者、地方自治体向けに出されたもので、念頭に置いている対象施設・事業に学童保育は含まれていませんが、各学童保育でも、事故防止や危機管理の際の参考にしてください。
2016年4月には、「教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議」を設置、2017年12月には、有識者会議での議論をふまえて、睡眠中の事故防止等、すみやかに注意喚起すべき事故についてとりまとめ、自治体あてに通知しています。
また、2018年7月には、事故情報データベースの分析をふまえ、有識者会議として年次報告書をとりまとめ、自治体に通知しました。この報告書には、つぎの目的があげられています。
「教育・保育においては、子どもの主体的な活動を尊重し、支援する必要があり、子どもが成長していく過程で怪我が一切発生しないということは現実的には考えられない。そうした中にあっても、死亡事故については、絶対にあってはならないことであり、死亡事故の防止は最優先課題であると考えている。また、死亡や重篤な事故とならないよう予防することが重要である」
そして、死亡事故や負傷などについての詳細が述べられています。職員配置については、学童保育では6割以上が国の基準どおり配置していたこと、それであっても、3割程度が「その子どもの動きを見ていなかった」と回答しています。
そして、死亡事故などの地方自治体への注意喚起・提言として、「保育中に起きる事故は、保育のプロセスと関連して発生している」「保育の受け入れ先拡大と.同時に『保育の質の確保』は、事故防止の上で欠かせないものである」と、「保育の質の確保」が示されました。具体的には、「職員間及び保護者と密接に連携するためのマネジメントの強化」「保育士等の確保及び処遇改善・質の向上」「情報の公表の促進」「子どもを預ける際に必要な知識を保護者が習得するための方法」について言及されています。
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全国学童保育連絡協議会は、安全対策や危機管理の充実を求める声が高まっていること、各地で地震や風水害などの自然災害が超きていることをふまえて2018年6月に、『学童保育の安全対策・危機管理-「安全対策・危機管理の指針」づくりの手引き』(頒価200円〔税込〕)を刊行しました。
「子ども集団の規模の上限を守る必要があり、子どもの人数のとても多い学童保育では安全確保に限界があること」「指導員が、一人ひとりの子どもを理解し、信頼関係を築くこと、日常的な安全指導、子どもが自ら危険を回避すことのできる力を育てる援助をすることが求められ、そのために専任の指導員を常時複数配置すい
こと」「成長過程にある子どもの遊びや生活における「危険」をう考えるか」「『安心・安全』について、子どもたちと一緒に考え、つくりあげること」など、私たが長年にわたってたしかめあってきたことを前提に、「学童保育の生活のなかでの安全(事故・ケガ対応、健康管理、食に関わってなど)」「災害に際しての備えと対応」に必要なことを、具体的に示し整理しました。
この手引きは、会発行の『改訂テキスト学童保育指導員の仕【増補版】』(頒価1000円〔税込にも収録されていますo「子どもたちの安全を守ること」について必要なことをあらためて考えあうえでも、ぜひご活用ください。
2019年7月4日、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、「公的責任による学童保育の拡充と財政措置の大幅増額を求める」要望を、厚生労働省子ども家庭局子育て支援課健全育成推進室に届けました。また、全国連協の「資格プロジェクト」が中心になってまとめた提言『高等教育機関における「学童保育士」養成課程について』も提出しました。
例年、この時期の要請行動は、政府・各省の来年度の予算編成に向けて、8月末に発表される概算要求をまとめる時期にあわせて行っているものです。学童保育についての国の制度の拡充と、予算増額を求めて、関係省庁、政党、
国会議員などに私たちの要望を届けるのが目的です。
今回、厚生労働省に、重点をおいて要望した点はつぎのとおりです。
[要望項目]
一 学童保育の国の制度の拡充を図ってください
ニ 量的な拡大、質の向上が図られるよう、国として十分な財政措置をはじめとする対策を進めてください
〈運営費に関する財政措置について〉常勤二名配置体制を行うために、保育の引き継ぎが可能であり、労働時間にも配慮した人員の配置ができる予算組みにしてください。
〈施設整備に関する財政措置について〉「設備運営基準」で定めた子ども一人当たり1.65u以上の広さを確保し、一つの支援の単位を構成する子どもの数の基準を守れるように、借地・借家も対象とする、増改築に対する補助制度の新設と、財政措置を強化してください。
〈障害のある子どもの保育に関する財政措置について〉希望する障害のある子どもが入所できるよう、財政措置を行ってください。
三 子どもの命と安全を守るうえで欠かせない「学童保育の『全国的な一定水準の質』を確保してください
・学童保育の「質の確保」を図る責任があることを理解し、これまでどおり厚生労働省が定めた基準をもとに学童保育を実施するよう、市町村に働きかけてください。
四 学童保育指導員の処遇の改善、保育内容の向上が図られるよう必要な措置を講じてください
・「放課後児童支援員等処遇改善等事業」については、確実に学童保育指導員の処遇改善につながる明快な仕組みの事業としてください。
・地方公務員法の改正にともない、自治体で働く学童保育指導員の処遇改善が図れるよう、総務省と連携してください。
五 学童保育指導員の公的責任による全国一律の資格制度を検討してください。「放課後児童支援員認定資格研修」については、「全国的な一定水準の質」が図られるようにしてください
・〈「経過措置」後の資格の取り扱いについて〉「設備運営基準」に示された「経過措置」後に現場に従事した学童保育指導員のうち、「放課後児童支援員」の基礎要件を満たしている者については、採用後すみやかに「認定資格研修」を修了することを前提として、有資格者としてみなしてください。
六 学童保育の省令基準の改善・拡充を図ってください
・学童保育の役割を果たすために、省令基準を以下の内容に沿ったものに改定してください。また、「参酌基準」を順次「従うべき基準」としてください。広さ/集団の規模/専用室及び専用とする設備/「支援の単位」ごとの専用室と有資格者2名以上配置/児童数が19名以下の施設でも、専任の学童保育指導員2名以上配置/「児童の数」の算定について
七 「新・放課後子ども総合プラン」において、「放課後子供教室」と学童保育はそれぞれの事業として実施する方針を堅持し、都道府県および市町村に周知・徹底してください
・「放課後子供教室」と学童保育は、それぞれの目的・役割が異なります。二つの事業をひとつにした運営(同じ場所、同じ職員が対応する)では、「就労などにより保育を必要とする子どもたちの毎日の生活の場を保障する」という学童保育の目的・役割は果たせません。それぞれの事業の目的・役割が果たせるよう、引き続き、都道府県および市町村に周知・徹底してください。
・「新・放課後子ども総合プラン」において、必要とする子どもたちが学童保育で生活できるよう、学童保育を整備してください。
「一体型」や「連携して実施」などの表現は、市町村や現場でも混乱の原因となっています。学童保育を「全児童対策事業」に一体化するなどの動きを生み出す懸念があるため、適切な表現にあらためてください。
・「新・放課後子ども総合プラン」にある「共通プログラム」の実施にあたっては、学童保育固有の生活を守ることが優先される旨、周知・徹底するとともに、プログラムの内容が学習に偏らないようにしてください。
八 自然災害で被災した地域の学童保育の復旧・復興、学童保育を必要とする家庭・子どもが安心して利用できるよう、国としての支援を行ってください
・学童保育の防災・安全対策についての国としての指針を定めるとともに、それにもとづいた補助制度を創設してください。
・〈国としての指針に盛り込んでほしいこと〉専門家による施設の耐震診断/施設が使用できなくなった場合の、代替施設の即座の確保/学童保育の早急な再開が難しい場合の、子どもの送迎など必要な手立て/ライフラインが復旧するまでの間、子どもたちの昼食やおやつの確保/被災地域の保育料の減免/自然災害による臨時休室による補助金減額の防止
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当日は、全国各地の連絡協議会および全国連協から計33名が参加し、地域の現状を報告し、要望内容を伝えました。
また、国の「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)に示された、「放課後児童クラブに期待される様々な役割を把握するための実態調査」(2019年度中に実施予定)について、「規制改革推進に関する第4次答申」に示されたシルバー人材センター会員の「支援員及び補助員として就業」についても質問し、私たちの要望を伝えました。
さらに、厚生労働省のほか、文部科学省地域学習推進課、内閣府地方分権改革推進室、総務省公務員課、総務省財政課に要望書を提出し、全国知事会、全国市長会、全国町村会、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会と懇談を行うとともに、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」の請願採択にあたってお世話になった国会議員の方々に報告とお礼にうかがいました。
第198回通常国会が閉会となる2019年6月26日、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」の請願が、衆議院厚生労働委員会、参議院内閣委員会を経て、衆・参の本会議で採択されました。「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」の請願は審査未了に終わりました。
「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」の請願署名は、衆・参あわせて62名の議員の方々を介して20万8814筆、「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」の請願署名は、132名の議員の方々を介して37万8581筆が国会で受理されました。衆・参の本会議で採択された請願は内閣に送付され、内閣はそれを誠実に処理し、その経過を国会に報告することになっています。
全国学童保育連絡協議会は、これまでも何度か国会請願署名に取り組んできました。
1973年〜1974年:8万3000余筆、採択
1975年:11万5021筆、衆のみ採択
1978年:28万5093筆、採択
1980年:37万7908筆、採択
1985年:108万3644筆、採択
2018年:20万7993筆、審査未了
(1990年と2001年は要望署名)。
私たちの請願が採択されたのは34年ぶりです。
学童保育の「従うべき基準」の参酌化を含む、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第9次地方分権一括法案)」(以下「分権一括法案」)が、2019年5月31日、参議院本会議で可決されました(当日は、内閣委員会の委員長が委員会での検討結果を報告した後、採決が行われ、賛成多数で可決)。
なお、内閣委員会では、同年5月30日に「分権一括法案」全体についての審議が4時間半行われ、和田政宗・参議院議員(自由民主党・宮城)、相原久美子・参議院議員(立憲民主党・比例)、木戸口英司・参議院議員(国民民主党・岩手)、矢田わか子・参議院議員(国民民主党・比例)、田村智子・参議院議員(日本共産党・比例)が、学童保育の「従うべき基準」の参酌化について質問しました。
◇和田議員は、基準緩和によって市町村格差が拡大し、質の確保につながらないことを危惧し、二人以上の体制が崩れた場合の緊急事態への対応について質問し、子どもたちの安全確保の重要性を指摘しました。
◇相原議員は、「職員が集まらないと言うが、理由は処遇の悪さと労働実態の過重さにある」と指摘して、職域に応じた実態調査を要望しました。また、会計年度任用職員の制度にもふれ、公営の学童保育で働く指導員の処遇の底上げを図ることが大切だと述べました。
◇木戸口議員は、「参酌化の問題を、法学、社会学、政治学を専門とする研究者で構成する地方分権改革有識者会議で議論するのは、ふさわしかったのか」とただしました。
◇矢田議員は、子どもを学童保育に通わせた経験と、お世話になった指導員が過労で倒れて亡くなったことにもふれ、「片山大臣も一年に三回でいい、ぜひ事前通告なしに、現場を見に行ってほしい」と要望しました。
◇田村議員は、「地方分権改革有識者会議は3年をかけて議論をしたというが、学童保育の現場と運動が1960年代から積み重ね、たどり着いた資格と配置基準。たった二人配置がそれほど大変か」と指摘しました。
質疑のあと、立憲民主党・民友会・希望の会及び国民民主党・新緑風会から、「分権一括法案」から児童福祉法改定を削除する修正動議が提出されましたが、これに賛成する委員は少数で、修正案は否決されました。
その後、自由民主党・国民の声、立憲民主党・民友会・希望の会、国民民主党・新緑風会、公明党及び日本維新の会・希望の党の各派共同提案で、附帯決議案が提出されました。附帯決議のうち、学童保育に関わる内容はつぎのとおりです。
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一 放課後児童健全育成事業については、子どもの安全や同事業の質が十分に確保されるよう、地方公共団体等に周知徹底すること。また、子どもの安全等が損なわれるおそれがあると認める場合には、国は当該地方公共団体に対し、適切な助言を行うこと。
二 放課後児童健全育成事業の見直しに関する検討を行うに当たっては、市町村、同事業の従事者、保護者等の意見を幅広く聴取するとともに、市町村による条例の改正状況や同事業の運営状況等に関する実態調査を継続的に実施すること。なお、実態調査については、法令上に規定された基準等に基づく調査を行うとともに、実施結果等について、適切な情報開示を行い、説明責任を果たすこと。
三 放課後児童健全育成事業の利用者の増加に伴う待機児童の解消のため、放課後児童支援員等の処遇改善等による人材の確保や、関係施設の整備等に対し、十分な財政措置を講ずること。また同事業に係る既存の国の支援策について、その利用が促進されるよう地方公共団体に対する周知徹底を図ること。
四 放課後児童健全育成事業について、厚生労働省が同事業の従事者や保護者のための相談窓口を設けるとともに、当該窓口における意見等を踏まえ、地方公共団体に対し、報告を求めること、情報提供及び助言を行うことも含め、事業の適切な運営を確保するための措置を講ずること。
* * *
これらは、衆議院の附帯決議の項目と同様ですが、「二」に「実態調査については、法令上に規定された基準等に基づく調査を行う」とあるのは、衆議院と異なる点です。
残念ながら、「分権一括法案」が可決され、改定された児童福祉法は2020年4月1日に施行されることになりました。しかし、「施行後三年を目途として」「放課後児童健全育成事業の適切な実施並びに当該放課後児童健全育成事業の内容及び水準の向上を図る観点から検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」という附則が付されたこと、衆・参の委員会での質疑をふまえて四点の附帯決議が付されたことは、全国各地の学童保育関係者が共に、国会請願署名や地方議会からの意見書採択に取り組んだ結果だと考えます。
「従うべき基準」が参酌化されたとしても、市町村は現行の条例を、改定しなければならないわけではありません。また、現行の条例の内容を変更する際には、住民・利用者への説明、子ども・子育て会議での議論、市町村議会での議決が必要です。
ひきつづき、「条例について地方議会で議論されることになった場合にも、質の確保を担保すること」を求めていきましょう。
学童保育の「従うべき基準」の参酌化を含む、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第9次地方分権一括法案)」(以下「分権一括法案」)が、2019年5月10日、衆議院本会議で可決されました(当日は、「地方創生に関する特別委員会」の委員長が委員会での検討結果を報告した後、採決が行われ、賛成多数で可決)。
なお、「地方創生に関する特別委員会」(以下、特別委員会)ではこれまで、同年4月18日、25日の2日間、地方分権法案全体についての審議が5時間行われてきました。以下、25日の審議の様子を報告します(18日の様子については本誌2019年6月号参照)。
25日の特別委員会では、緑川貴士・衆議院議員(国民民主党・比例東北)、白石洋一・衆議院議員(国民民主党・愛媛三区)、高橋千鶴子・衆議院議員(日本共産党・比例東北)、広田一・衆議院議員(社会保障を立て直す国民会議・高知二区)が、学童保育の参酌化について質問しました。
なお、白石議員と高橋議員には全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)から、「全国連協と地域連協が、地方議会から基準の維持、質の確保を求める意見書採択に取り組んでおり、現在、11道県、36市町の議会で採択されている。ぜひ、片山さつき内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革、男女共同参画)にこのことをどう受けとめているか、認識を問うてほしい」と要望を伝えていました。
白石議員の質問に対して片山大臣は、「そのことは知っている」と答えながらも、「この提案は地方三団体が機関決定したもの」とこれまでの答弁をくり返しました。高橋議員と内閣府地方分権改革推進室次長との質疑は以下のとおりです。
高橋「具体的に(参酌化の)提案は、いくつの自治体から出たのか」
次長「二件です(提案団体と追加共同提案団体は7県、15市町)」
高橋「(基準の維持、質の確保を求める)意見書は、いくつの地方議会から出たのか」
次長「存じておりません」
*括弧内は編集部で補足。
このほかにも、緑川議員から「法改正は踏みとどまるべき」、高橋議員から「児童の権利や子どもの最善の利益について、児童福祉法第一条や『放課後児童クラブ運営指針』に書き込まれた歴史に逆行するもの」との発言がありました。
質疑のあと、立憲民主党・国民民主党の二派から、「地方分権一括法案から児童福祉法改定をはずす」(少なくともその日の特別委員会では、学童保育の「従うべき基準」の参酌化を決めない)という修正案が出されましたが、これに賛成する議員は少数で、提案は否決されました。
その後、自由民主党・公明党・立憲民主党・国民民主党・日本維新の会・社会保障を立て直す国民会議の六派から、「分権一括法案」全体に対して、附帯決議の提案があり、賛成多数で採用されました。附帯決議のなかの、学童保育に関わる内容はつぎのとおりです。
* * *
一 放課後児童健全育成事業については、子どもの安全や同事業の質が十分に確保されるよう、地方公共団体等に周知徹底すること。また、子どもの安全等が損なわれるおそれがあると認める場合には、国は当該地方公共団体に対し、適切な助言を行うこと。
二 放課後児童健全育成事業の見直しに関する検討を行うに当たっては、市町村、同事業の従事者、保護者等の意見を幅広く聴取するとともに、市町村による条例の改正状況や同事業の運営状況等に関する実態調査を継続的に実施すること。なお、実態調査の実施結果等について、適切な情報開示を行い、説明責任を果たすこと。
三 放課後児童健全育成事業の利用者の増加に伴う待機児童の解消のため、放課後児童支援員等の処遇改善等による人材の確保や、関係施設の整備等に対し、十分な財政措置を講ずること。また同事業に係る既存の国の支援策について、その利用が促進されるよう地方公共団体に対する周知徹底を図ること。
四 放課後児童健全育成事業について、厚生労働省が同事業の従事者や保護者のための相談窓口を設けるとともに、当該窓口における意見等を踏まえ、地方公共団体に対し、報告聴取、情報提供及び助言を行うことも含め、事業の適切な運営を確保するための措置を講ずること。
* * *
附帯決議の「一」「二」は、「地方分権一括法案」の附則に記されている「施行後三年を目途とする検討」について補足したものです(なお、「施行後三年を目途とする検討」について全国連協は、「実態調査の実施結果等については国会での報告を課すこと」を要望しています)。
「二」に記された「適切な情報開示を行い、説明責任を果たす」ことが、国会での報告になるのか、厚生労働省のホームページでの公開などになるのかについては、今後の私たちの働きかけが重要です。
全国連協は、子どもの命と安全を守り、安心できる「生活の場」を保障するという観点から、学童保育の質の低下や市町村格差の拡大を防ぐために、「従うべき基準」の堅持を強く求めています。
児童福祉法が改定されて「従うべき基準」が参酌化されたとしても、市町村は現行の条例を、改定しなければならないわけではありません。また、現行の条例の内容を変更する際には、住民・利用者への説明、子ども・子育て会議での議論、市町村議会での議決が必要です。
今後、「分権一括法案」の審議は、参議院内閣委員会での審議を経て、参議院本会議での検討にすすみます。全国連協は、「児童福祉法の改定に際しては国会で十分な審議を行うこと」「児童福祉法が改定され、条例について地方議会で議論されることになった場合にも、質の確保を担保すること」をひきつづき訴えていきます。
地方公共団体の議会は、地方自治法第99条にもとづき、意見書を国会または関係行政庁に提出することができます(『日本の学童ほいく』2019年2月号、3月号、4月号、5月号、6月号参照)。
この間、複数の自治体で基準の維持、質の確保を求める意見書が採択されています。『日本の学童ほいく』2019年6月号の「協議会だより」で紹介して以降、あらたに、東京都小平市、清瀬市で意見書採択の知らせが届いています(2019年5月31日現在)。
ぜひ多くの地域で、地方議会から「従うべき基準」を守るための意見書を提出してもらうための働きかけ・取り組みをすすめましょう。また、各市町村の条例の水準を現行のものから下げないためには、議会で決議をあげる取り組みも有効です。
学童保育の「従うべき基準」の参酌化を含む、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第9次地方分権一括法案)」の審議が、2019年3月26日、衆議院「地方創生に関する特別委員会」ではじまりました。この日の委員会は、片山さつき内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革、男女共同参画)から、法案の提案理由についての説明を「聴取」して終了しました。
「地方創生に関する特別委員会」では、同年4月18日、25日の2日間で、地方分権法案全体についての審議を5時間行い、採決後に、衆議院の本会議の審議に進みます。4月18日の委員会では、佐藤明男・衆議院議員(自由民主党・比例北関東)、今井雅人・衆議院議員(立憲民主党・比例東海)、松田 功・衆議院議員(立憲民主党・比例東海)が、学童保育の「従うべき基準」の参酌化について質問しました。今井議員は、「とても不安。質の低下につながらないか」と指摘し、「そもそも、2015年に『放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準』を策定したときの総括はされているのか。厚生労働省で総括することが必要だ。精査して、慎重な議論が必要だと考える」と発言しました。
また、4月12日には「厚生労働委員会」で山井和則・衆議院議員(国民民主党・比例近畿)が質問し、「これは『児童福祉法の一部改正』なので、この厚生労働委員会で審議すべきことなのに、どうして厚生労働委員会で審議されないのか、ひきつづき、しっかりここで議論していきたい」と発言しました。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、子どもの命と安全を守り、安心できる「生活の場」を保障するという観点から、学童保育の質の低下、市町村格差の拡大を防ぐために、「従うべき基準」の堅持を強く求めています。
法が改定されて「従うべき基準」が参酌化されたとしても、市町村は現行の条例を改定しなければならないわけではありません。また、現行の条例の内容を変更する際には、住民・利用者への説明、子ども・子育て会議での議論、市町村議会での議決が必要です。
全国連協は、「児童福祉法の改定に際しては国会で十分な審議を行うこと」「万が一、児童福祉法が改定され、条例について地方議会で議論されることになった場合にも、質の確保を担保すること」をひきつづき訴えていきます。
2019年4月22日現在、地域の学童保育連絡協議会と共に全国連協が取り組んでいる、「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」を求める請願署名は25万5405筆、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」を求める請願署名は12万4216筆が集まりました。
紹介議員の依頼を進めるなかで、立憲民主党子ども子育てプロジェクトチームの岡本あき子・衆議院議員(比例東北)から、立憲民主党総務・内閣合同部会へのご紹介をいただきました。そして、衆議院「地方創生に関する特別委員会」理事でもある今井雅人議員が、後日、「さらにくわしい説明を聞きたい」と国会事務所に全国連協事務局を呼んでくださり、前述の委員会での質問につながりました。
「厚生労働委員会」で質問を行ってくださった山井和則議員には、地元の京都学童保育連絡協議会から依頼をしたことと、超党派の議員連盟である「公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟」幹事長の泉健太・衆議院議員(国民民主党・京都3区)からも声をかけていただきました。
ひきつづき、地域の連絡協議会と全国連協から、衆参の「厚生労働委員会」「内閣委員会」に所属する議員の方々に、請願の紹介議員を引き受けてくださるようお願いし、国会で十分な審議が行われるよう要望していきます。
地方公共団体の議会は、地方自治法第99条にもとづき、意見書を国会または関係行政庁に提出することができます(『日本の学童ほいく』2019年2月号、3月号、4月号参照)。この間、複数の自治体で「従うべき基準」の維持、質の確保を求める意見書が採択されています。
『日本の学童ほいく』2019年5月号の「協議会だより」で紹介した以降も、岩手県盛岡市、陸前高田市、埼玉県上里町、静岡県焼津市で意見書採択の知らせが届いています(2019年4月23日現在)。
ぜひ多くの地域で、地方議会から「従うべき基準」を守るための意見書を提出してもらうための働きかけ・取り組みを進めましょう。また、各市町村の条例の水準を現行のものから下げないためには、議会で決議をあげる取り組みも有効です。
2019年3月1日に開催された全国児童福祉主管課長会議の資料から、特徴的な内容を紹介します(資料は厚生労働省のホームページに掲載されています)。
◆ この間のいくつかの不祥事を受けて、「放課後児童支援員等の採用にあたっての留意事項について」が示されています。
◆ 2019年度(平成31年度)予算の概要は『日本の学童ほいく』82ページ以降に掲載します。
◆ 新規事業の「放課後居場所緊急対策事業」「小規模多機能・放課後児童支援事業」「放課後児童クラブ巡回アドバイザーの配置」「放課後児童クラブの人材確保支援」について新しい資料が出されました。
◆「放課後児童支援員等処遇改善等事業」「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」の実施状況について資料が出されています。平成30年度(2018年度)、「放課後児童支援員等処遇改善等事業」は310市町村で実施、「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」は332市町村で実施されました。
2019年3月8日、学童保育の国の基準である厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「設備運営基準」)の「従うべき基準」の参酌化を含む、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第9次地方分権一括法案)」(以下、法案)が閣議決定されました。
これは、児童福祉法をはじめとする13の法律を一括改定する法案で、現在、開会されている第198回通常国会で議論される見通しのものです。このなかで、学童保育に関わる「児童福祉法の一部改正」については、つぎの内容が提案されています。
「第9条 児童福祉法(昭和22年法律第164号)の一部を次のように改正する。
第34条の8の2第2項中『放課後児童健全育成事業に従事する者及びその員数については厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとし、その他の事項については』を削る」
この法案が可決されると、現行の「設備運営基準」第34条の8の2はつぎのようになります。
「市町村が前項の条例を定めるに当たつては、厚生労働省令で定める基準を参酌するものとする」
なお、法案では以下の「附則」も提案されています。
「(施行期日)第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
3 第2条、第4条、第9条及び第12条の規定並びに附則第5条及び第6条(第1号に掲げる改正規定を除く。)の規定 平成32年4月1日
(放課後児童健全育成事業に関する検討)第5条 政府は、附則第1条第3号に掲げる規定の施行後3年を目途として、第9条の規定による改正後の児童福祉法の規定の施行の状況について児童福祉法第6条の3第2項に規定する放課後児童健全育成事業の適切な実施並びに当該放課後児童健全育成事業の内容及び水準の向上を図る観点から検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」
* * *
全国学童保育連絡協議会(以下、全国通協)は、子どもの命と安全を守り、安心できる「生活の場」を保障するという観点から、学童保育の質の低下、市町村格差の拡大を防ぐために、「従うべき基準」の堅持を強く求めています。
法案が可決された場合の法律の施行日と、市町村議会が条例改定を行う場合の時期について、全国連協事務局が厚生労働省担当課に確認したところ、市町村議会では、「施行日である2020年4月1日を過ぎてから改定の議論をはじめる」あるいは2019年度中の議会で議論し、施行日を待って改定する」ことが考えられるとの説明がありました。厚生労働省としては、「設置運営基準」と異なる内容で条例を策定した自治体があれば、何らかの調査をしたいと考えているそうです。
なお、参酌化にともなって国の学童保育への補助基準額の変更があり得るか質問すると、「自治体が、どのように条例を改正するか等、現時点では不明なため補助基準額をどのようにしていくかは今後検討する。また、補助基準額については、例年と同様に交付要綱でお示しすることになると思われる」との説明がありました。
また、全国連協事務局が、附則に定められた「施行後3年を目途」とする「検討」の結果について「国会での報告を課すようにしてほしい」との要望を伝えたところ、「法案の附則においては、法案の施行後3年を目途として、放課後児童健全育成事業の適切な実施並びに当該放課後児童健全育成事業の内容及び水準の向上を図る観点から検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされており、検討結菓については、国民一般の方々にその結果が分かるよう公表することとしたい」とのことでした。
法案は、衆議院では「地方創生に関する特別委員会」で審査された後、本会議の審議にかけられ、参議院では「内閣委員会」で審査された後、本会議での審議に進みます。
法が改定されて「従うべき基準」が参酌化されたとしても、市町村は現行の条例を、かならずしも改定しなければならないわけではありません。また、現行の条例の内容を変更する際には、住民・利用者への説明、子ども・子育て会議での議論、市町村議会での議決が必要です。
全国連協は、「児童福祉法の改定に際しては国会で十分な審議を行うこと」「児童福祉法が改定され、条例について地方議会で議論される際にも、質の確保を担保すること」をひきつづき訴えていきます。
2019年3月31日現在、地域の学童保育連絡協議会と共に全国連協が取り組んでいる、「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」を求める請願署名は20万6000筆、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」を求める請願署名は10万6000筆が集まりました。
超党派の議員連盟である「公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟」会長の馳浩・衆議院議員、幹事長の泉健太・衆議院議員、「自由民主党学童保育(放課後児童クラブ)推進議員の会」副代表の河井克行・衆議院議員、事務局次長の笹川博義・衆議院議員をはじめとして、紹介議員のお願いを進めています。請願の受理は、衆参のホームページで確認することができます。
国会で受理された後、「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」は内閣委員会、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」は厚生労働委員会に付託されました。
地域の連絡協議会と全国連協から、衆参の厚生労働委員会、内閣委員会、衆議院の地方創生に関する特別委員会に所属する皆さんに紹介議員をお願いし、国会で十分な審議がされるよう要望していきます。
地方公共団体の議会は、地方自治法第99条にもとづき、国会または関係行政庁に意見書を提出することができます(本誌2019年2月号、3月号参照)。この間、複数の自治体で「従うべき基準」の維持、質の確保を求める意見書が採択されています。
本誌2019年4月号の「協議会だより」(82ページ)でお伝えして以降、あらたに、宮城県、神奈川県、三重県、長崎県、鹿児島県、岩手県久慈市、雫石町、矢巾町、西和賀町、埼玉県熊谷市、秩父市、加須市、本庄市、和光市、富士見市、寄居町、神奈川県逗子市、奈良県奈良市、橿原市、大阪府堺市、吹田市、寝屋川市、熊取町、福岡県遠賀町、大分県日田市で意見書が採択されました(2019年4月2日現在)。
ぜひともさらに多くの地域で、地方議会から「従うべき基準」を守るための意見書を提出してもらうための働きかけ・取り組みを進めましょう。
2015年4月施行の「子ども・子育て支援新制度」(以下、新制度)にあわせて、厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「省令基準」)および「放課後児童クラブ運営指針」が策定されました。「省令基準」では、職員の資格(「放課後児童支援員」)と職員の配置基準の二点が、市町村(特別区を含む)が条例を定める際の「従うべき基準」として定められました。しかし、その後も、自治体や学童保育現場によって学童保育の実施状況はさまざまで、大きな格差があるのが現状です。
ところが新制度施行からわずか4年で、人手不足の解消策を基準の緩和に求めようとする一部の地方自治体、地方三団体からの提案にもとづき、「放課後児童支援員」の資格と配置基準を、「参酌すべき基準」(参考にする基準)へと変更することが、2018年12月25日に閣議決定されました。
職員の資格と配置が「従うべき基準」であることは、児童福祉法によって定められていますので、「参酌すべき基準」に変更するには国会で審議し、児童福祉法を改定する必要があります。今後は、第198回通常国会(2019年1月28日から開催)に地方分権一括法案が提出され、議論される見込みです。
「放課後児童支援員」を原則2名以上配置することは、全国どの地域であっても子どもの生活を保障するために欠かせないものです。「参酌すべき基準」という位置づけに引き下げられてしまえば、自治体の考え方次第で、子どもと生活を共にするうえで必要な専門的な知識や技能を備えた「放課後児童支援員」をまったく配置しないことも起こり得ます。ともすれば、資格のない大人がたった一人で子どもたちを保育することも起こり得ます。これでは、安全に安心して過ごすことのできる「毎日の生活の場」を子どもに保障することはできません。
全国学童保育速絡協議会(以下、全国連協)は現在、第198回通常国会への提出を見据えて、「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」「学童保育を拡充し、子育て支援・の充実」の二つの請願署名に取り組んでいます。
2019年2月末現在、「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」は11万7000筆、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」は5万5000筆が全国連協事務所に届けられています。地域の連絡協議会と全国連協は、超党派の議員連盟「公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟」会長の馳浩・衆議院議員に署名を届けることを皮切りに、国会議員を訪問し、紹介議員の依頼を行います。
地方公共団体の議会は、地方自治法第99条にもとづき、国会または関係行政庁に意見書を提出することができます(本誌2019年3月号の80頁参照)。この間、複数の自治体で「従うべき基準」の維持を求める意見書が採択されています。
あらたに、奈良県大和郡山市議会で、「放課後児童クラブの職員配置等の堅持及び放課後児童支援員等の処遇改善を求める意見書」が、大阪市議会で「放課後児童健全育成事業の質の確保を求める意見書」が、東京都東村山市議会で「放課後児童支援員の資格と配置基準の堅持を求める意見書」が、採択されました(2019年2月25日現在)。
ぜひ各地で、「従うべき基準」を守るための意見書を提出してもらうための働きかけ・取り組みを進めましょう。
子ども・子育て支援法によって定められた「地域子ども・子育て支援事業」の一つに学童保育が位置づけられたことにともない、2015年度から、国の学童保育の補助金は内閣府所管の「子ども・子育て支援交付金」「子ども・子育て支援整備交付金」として、市町村に交付されています(指導員の認定資格研修や資質向上のための研修費などの補助金は厚生労働省から交付)。
2019年度の政府予算案の概要が発表されました。政府予算案は、8月下旬頃までに各省が示した概算要求を、年末までに財務省が査定して決められます。その後、翌年の通常国会で審議が行われて、正式な国の予算が決定されます。
・放課後児童クラブに関わる内閣府の政府予算案……887.8億円(前年度予算は799.7億円、2019年度概算要求は779.6億円+事項要求)
・放課後に関わる厚生労働省の政府予算案……19.6億円(前年度は予算化されておらず、2019年度概算要求は47.5億円の内数)
◆「新・放課後子ども総合プラン」にもとづき、2023年度末までに約30万人分の新たな受け皿の確保に向け、施設整備費の補助率嵩上げを継続し、放課後児童クラブの受入児童数の拡大を図る(内閣府予算に計上)。
◆放課後児童対策の推進を図るため、児童館、公民館等の既存の社会資源の活用や、小規模・多機能による放課後の子どもの居場所の確保を促進する。
◆放課後児童クラブの育成支援の内容の質の向上や安全確保を図るため、先進事例の普及や放課後児童クラブを巡回するアドバイザーを市区町村等に配置する事業等を実施する。
また、2018年度の二次補正予算案にて、放課後児童クラブ等におけるICT化の推進について3.5億円が計上されることになっています。2019年3月1日に全国児童福祉主管課長会議が開催されますので、次号の「協議会だより」で報告します。
2019年2月23日、全国連協は、学童保育の「従うべき基準」を守るための取り組みの一つとして、「明日の学童保育を考えるシンポジウム」を開催しました(会場・東京都文京区・文京区民センター)。あらためて「従うべき基準」を参酌化することの閻題点を明らかにし、学童保育のあるべき姿を広く世論に訴えることを目的として開催したものです。
参加者は100名。保護者・指導員・研究者それぞれの立場のシンポジストから、「従うべき基準」を参酌化することへの不安や懸念、問題点についての発言があり、会場からは、地域での「従うべき基準」の参酌化に反対する取り組みなどについて発言がつづきました。
シンポジウムの模様は、本誌2019年5月号で報告する予定です。