ホーム>WEB版協議会だより>2011年4月号〜2012年3月号協議会だより
2012年度の政府予算(案)では、国の学童保育への補助金総額は、307億6500万円です。そのうち、運営費に対する補助金は279億3200万円で、前年度比22億8400万円増(3.5%増)となっています。2012年1月20日に開かれた厚生労働省主催の全国厚生労働部局長会議で、運営費の補助単価が示されました(下表参照)。運営費の補助単価は、前年比2.9%増となっていまず。
2012年度(250日開設) | 前年度比 | ||
児童数区分 | 10人〜19人 | 1,096,000円 | 30,000円増 |
20人〜35人 | 1,984,000円 | 54,000円増 | |
36人〜45人 | 3,191,000円 | 90,000円増 | |
46人〜55人 | 3,027,000円 | 84,000円増 | |
56人〜70人 | 2,862,000円 | 78,000円増 | |
71人以上 | 2,698,000円 | 72,000円増 | |
開設日数加算 | 開設日数加算 | 1日14,000円 | 同額 |
長時間開設加算 | 平日分 | 1日6時間を超え、かつ18時を超えて開設する場合269,000円(1時間単価)×18時を越えた時間数 | 1時間単価9000円増 |
長期休暇等分 | 1日8時間を超えて開設する場合121,000円(1時間単価)×1日8時間を超えた時間数 | 1時間単価4000円増 | |
特例分 | 開設日数200〜249日 | 児童数20人以上1,913,000円 長時間開設加算 269,000円 |
54,000円増 長時間加算9000円増 |
市町村分 | 放課後児童クラブ支援事業 | (1)ボランティア派遣事業(4事業)1事業当たり年額478,000円×事業数 | 1事業当たり9000円増 |
(2)放課後児童等の衛生・安全対策事業 1市町村当たり年額691,000円 | 1市町村当たり78,000円増 | ||
(3)障害児受入推進事業 1クラブ当たり年額1,577,000円×か所数 | 57,000円増 | ||
都道府県分 | 放課後児童指導員等資質向上事業費 | 都道府県・指定都市・中核市 1か所当たり950,000円 |
前年比同額 |
(全国厚生労働関係部局長会議をもとに全国学童保育連絡協議会事務局が作成)
2012年1月20日、「子ども・子育て新システム検討会議」基本制度ワーキングチームが開かれ、「子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ案」が提案されました。1月中に、もう一度会議を開き、まとめる方向も示されています。2011年7月に出された「中間とりまとめ」で学童保育に関して述べられていた次の3点は、今回も同じ表現で示されました。
○小学校4年生以上も対象となることを明記し、4年生以上のニーズも踏まえた基盤整備を行う。 ○放課後児童クラブについては、市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施する旨を法定する。市町村は、市町村新システム事業計画(仮称)で需要の見込み、見込量の確保策を記載し、提供体制を計画的に確保する。 ○利用手続きは市町村が定める。ただし、確実な利用を確保するため、市町村は、利用状況を随時把握し(事業者は市町村に状況報告)、利用についてのあっぜん、調整を行うことを検討する。 |
また、「中間とりまとめ」では、この3点に加えて、国の基準と地方の裁量について、次のことが記載されていましたが、これについては、変更がありました。
【変更前】 ○質を確保する観点から、人員配置、施設、開所日数・時間などについて、国は一律の基準を設定する。 ○その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。 |
【変更後】 ○質を確保する観点から、職員の資格、員数、施設、開所日数・時間などについて、国は法令上の基準を新たに児童福祉法体系に設定する。(傍線は編集部。変更箇所) |
そのうえで、国の基準と地方の裁量の関係について、つぎの三案が示されました。
(案1)国が定める基準を踏まえ、市町村が条例で定める。国が定める基準については「参酌すべき基準」とする。 (案2)国が定める基準を踏まえ、市町村が基準を条例で定める。国が定める基準については、以下の通りとする。 ア 職員の資格、員数については「従うべき基準」とする。 イ それ以外の事項については、「参酌すべき基準」とする。 (案3)国が定める基準は、現行の事業実態を踏まえ、弾力的な基準を設定することとしつつ、職員の資格、員数等は所要の経過措置を設ける |
このように「とりまとめ案」には、「中間取りまとめ」になかった「職員の資格」についても基準を定めることが追加されています。これは、私たちが強く要望していた点です。
これまで全国学童保育連絡協議会は、「指導員の資格や配置のみならず、その他の事項も含めて最低基準を定めるべきだ」と要望してきました。「職員の資格、員数」以外の項目も含め、「参酌すべき基準」ではなく、「従うべき基準」とすることが必要です。
この立場から、全国学童保育連絡協議会は、国としての最低基準をしっかりとつくってほしいとの要望を、再度、政府関係者に届けました。
2011年12月中旬、全国学童保育連絡協議会は、来年度の国の学童保育予算の大幅増額と制度の抜本的拡充を求めて、内閣府、厚生労働省をはじめ関係省庁、政党、国会議員、地方六団体などへ陳情・要請を行いました。また、「子ども・子育て新システム」基本制度ワーキングチームに参加している関係政務官にも陳情・要請を行いました。
12月16日には、全国各地の連絡協議会の代表が参加し、午前に厚生労働省育成環境課への陳情・要請、午後からは厚生労働大臣、文部科学大臣政務官、文部科学省「放課後子どもプラン」連携推進室、財務省、内閣府地域主権戦略室、各政党、衆議院・参議院の厚生労働委員会所属の国会議員、地方六団体などを訪問し、要望書を届けました。
厚生労働省育成環境課からは、「東日本大震災の被災地の復旧・復興に関わって、施設整備費の補助割合を3分の1から3分の2に引き上げた。運営費は、児童数が減少しているところも前年並みで補助する」「7月に出された『子ども・子育て新システム』の『中間とりまとめ』にあるように、市町村がニーズ調査をもとに実施することを法定化すること、事業計画を立てて提供体制を整備するなど、市町村の関与を強化する方向で検討している」「国としての一律の基準をつくると同時に、地方の裁量についても考える」「来年度予算については、『子ども・子育てビジョン』に基づく目標の利用児童数111万人に向けて、量的な拡大を図ることとサービスの質的拡充を図る方向で、前年度比9億円増を要求している」などの回答がありました。
参加者からは、学童保育の現状や課題を伝え、公的責任による学童保育の制度の抜本的拡充をあらためて要望しました。
厚生労働省は、2010年9月に学童保育施設(放課後児童健全育成事業実施施設)を含めた社会福祉施設の耐震化の状況調査を行いました(対象は2階建て以上の施設あるいは延べ床面積が200平方メートル以上の施設)。
2011年12月、国会議員から、学童保育施設の耐震化の状況に関する「質問主意書」が出されました。政府の回答(閣議決定されたもの)には、「調査結果はとりまとめを行っているところ」ということで具体的な調査結果は示されませんでしたが、「放課後児童クラブについては、耐震性が確保された施設において実施されるべきものと考えており、耐震化が必要な実施施設については、同省(厚生労働省)において市町村(特別区を含む。)による耐震化のための施設整備に対する支援を行っているところである。同省としては、耐震化状況調査の結果を踏まえ、耐震化の状況に関する調査対象の範囲も含め、実施施設の耐震化に関する支援の在り方について検討してまいりたい」と記されています。
調査対象が、「2階建て以上の施設あるいは延べ床面積が200平方メートル以上の施設」となっているため、少なくない学童保育施設が調査対象からはずれている可能性があり、全ての学童保育施設の調査と、耐震化を進めていくことが今後の課題です。
2011年11月24日、政府が検討している「子ども・子育て新システム」の基本制度ワーキングチームが開かれ、「費用負担のあり方」「子ども・子育て包括交付金」「こども園の給付等」などについて検討が行われました。
2011年7月29日に出された「中間とりまとめ」では、学童保育について、つぎの点があげられました。「小学校4年生以上も対象となることを明記」「市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施する旨を法定する」「人員配置、施設、開所日数・時間などについて、国は一律の基準を設定する」「その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)」。
対象児童や市町村の責務、国の一律の基準などは、児童福祉法改正や関連法規に関わる事柄とされており、どのような内容での改正になるのかが注目されます。基本制度ワーキングチームでは、12月末までに最終報告をまとめるとしています。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、内閣府や厚生労働省にこれまで提出した要望書などをもとに、野田内閣の誕生と同時に新しく就任した基本制度ワーキングチームの政務担当者(関係する省の政務官)に、「学童保育の制度の抜本的な拡充」を要望しています。
2007年度から文部科学省と厚生労働省が連携して推進してきた総合的な放課後対策(「放課後子どもプラン」)は、文部科学省の補助事業「放課後子ども教室推進事業」(以下、「放課後子ども教室」)と、厚生労働省所管の学童保育(放課後児童クラブ)の2つの事業を、すべての小学校区で「一体的あるいは連携」して推進するものでした。
しかし、「放課後子ども教室」の実施か所数は、増えてはいるものの、目標である1万5000か所の半分にとどまっています(表1参照)。また、文部科学者は「放課後子ども教室」の位置づけを変更しました。予算にもそれが反映されています。
具体的には、2009年度予算から「放課後子ども教室」は「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」のなかのメニューの一つとされ、市町村の実情に応じて選択して実施できる事業とされました。そのために、「放課後子ども教室」だけの予算額は示されなくなりました。
また、2011年度予算では、この「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」(総額94億5000万円)が変更されました。同事業のなかに、地域の実情に応じて教育支援活動(「学校支援地域本部」「放課後子ども教室」「家庭教育支援」「地域ぐるみ学校安全体制整備」「スクールリーダー派遣」など)を組み合わせて実施できる「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」というメニューが新たに設けられ、「放課後子ども教室」は、「各地域の実情に応じて」取り組んでも良い活動の一つとして位置づけられました。
2012年度の概算要求における「放課後子ども教室」の位置づけは前年度と同じですが、「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」は、前年比9億3000万円減の、85億2000万円が計上されています。
2007年度 | 2008年度 | 2009年度 | 2010年度 | |
総事業費 | 70.77億円 | 108.12億円 | 131.11億円(注) | 140.43億円(注) |
(うち国庫補助額) | 23.59億円 | 36.04億円 | 44.37億円 | 46.81億円 |
実施か所数 (うち小学校で実施) |
6201か所 | 7736か所 | 8761か所 | 9280か所 |
1教室あたりの年間平均開催日数 | 4299か所 | 5592か所 | 6364か所 | 6688か所 |
実施市町村数 | 117.7日/年 | 117.2日/年 | 119.5日/年 | 119.8日/年 |
「学習」実施教室数 | 851市町村 | 1011市町村 | 1061市町村 | 1065市町村 |
3500か所 | 4685か所 | 4938か所 |
注)総事業費については、2009年度からは「放課後子ども教室」も含めた全メニューの総額となっている(「放課後子ども教室」の予算額は示されていない)。
*この資料は、文部科学省が、民主党・学童保育ワーキングチームのヒアリングに提出したものです。
全国連協主催の全国学童保育指導員学校は、2010年度から新たに北海道会場を加えて全国8会場で開催されています。2011年度の受講者数は過去最高の5320名となりました(表2)。
会場 | 日程 | 会場 | 受講者 |
北海道会場 | 6月5日(日) | 札幌市・かでる2.7 | 355人 |
西日本・大阪会場 | 6月5日(日) | 大阪府堺市・大阪健康福祉短期大学 | 685人 |
西日本・滋賀会場 | 6月5日(日) | 滋賀県草津市・立命館大学 | 770人 |
南関東会場 | 6月12日(日) | 千葉県市原市・東海大学付属望洋高校 | 635人 |
北関東会場 | 6月26日(日) | 群馬県板倉町・東洋大学板倉校舎 | 910人 |
四国会場 | 7月3日(日) | 高松市・高松テルサ | 394人 |
九州会場 | 9月25日(日) | 福岡県春日市・クローバープラザ | 1044人 |
東北会場 | 10月2日(日) | 仙台市・宮城学院女子大学 | 527人 |
10月21日、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)の2011年度総会を金沢市内で開催しました。総会では、2010年度の活動報告、決算報告、会計監査報告が承認され、2011年度の活動方針、予算が討議の後、決定されました。
活動方針では、次の点を今年度の重点課題として取り組むことを確認しました。@東日本大震災で被災した学童保育への支援の輪を広げます。A学童保育の量的・質的な拡充を追求します。B学童保育の役割と指導員の仕事を明確にし、労働条件の抜本的改善を求めます。C『日本の学童ほいく』の普及拡大を進めます。D父母会(保護者会)、連絡協議会の組織強化に取り組みます。E学童保育と「全児童対策事業」や「放課後子ども教室」との一体化に反対します。F新システムによる公的保育制度の解体に反対し、学童保育のあるべき姿を実現できるよう働きかけます。
また、第47回全国学童保育研究集会を、埼玉県で開催することが決定されました。
2011年度の全国連協の役員は以下の通りです。
会長・木田保男(三多摩・保護者)
副会長・荒木田成(石川・保護者)/出射雅子(京都・保護者)/江尻彰(東京・保護者)/小野さとみ(三多摩・指導員)/嘉村祐之(岩手・指導員)/賀屋哲男(愛知・保護者)/河野伸枝(埼玉・指導員)/亀卦川茂(埼玉・指導員)/鈴木美加(千葉・指導員)/千葉智生(東京・指導員)/永松範子(神奈川・指導員)/平野良徳(兵庫・保護者)/前田美子(大阪・専従職員)
事務局長・池谷潤(神奈川・保護者)
事務局次長(全国連協職員)真田祐・志村伸之
2011年10月21日、厚生労働省は、2011年5月1日現在の放課後児童クラブ(学童保育)の実施状況調査結果を発表しました。主な調査結果は次の通りです。
◆放課後児童クラブ数…2万561か所(前年比615か所増)
◆登録児童数…83万2038人(前年比1万8599人増)
◆利用できなかった児童数…7408人(前年比613人減)
◆障害児登録児童数…2万1534人(前年比1815人増)
◆指導員数…8万2686人(前年比3559人増)
全国連協が2011年8月に発表した会の調査結果と比べると、学童保育数は357か所、入所児童数は1万3416人、多い結果となっています。これは、厚生労働省の調査では、川崎市や大阪市などの「全児童対策事業」で国の学童保育の補助金を受けているところが集計に入っているためです。
厚生労働省は、2007年に厚生労働省が「放課後児童クラブガイドライン」を策定した後の2008年度の調査から、ガイドラインの項目にそった項目で調査を行っています。クラブ数や児童数以外にも、次のような項目があります。
「新1年生の受入開始の状況」「クラブ専用部屋・専用スペースの有無」「登録児童1人当たりの生活スペースの状況」「クラブ内の静養スペースの状況」「1クラブあたりの放課後児童指導員数の状況」「放課後児童指導員の資格の状況」「保護者支援・連携の実施状況」「学校等との連携の実施状況」「関係機関・地域との連携の実施状況」「安全対策の実施状況」「研修受講機会の提供の実施状況」「事業内容の定期的な自己点検の実施状況」「運営状況等の情報提供の実施状況」「要望・苦情対応の実施状況」「放課後児童クラブガイドラインの市町村における策定状況」「放課後児童クラブガイドラインに基づく運営内容の点検・確認状況」。
*調査結果の全文は、厚生労働省のホームページで見ることができます。
2011年10月21日、厚生労働省は、2010年10月1日〜2011年9月30日までの1年間に市町村から報告があった学童保育での重篤な事故(全治1か月以上)は、35都道府県で261件あったと発表しました。
これは、独立行政法人国民生活センターが実施した調査研究(2009年3月5日に公表)「学童保育の安全に関する調査研究」において、放課後児童クラブにおける安全確保等について提言がなされ、「市町村におけるケガや事故の情報収集が十分に行われておらず、また、その情報を分析、共有化して再発防止策に活用する等の取組が進んでいない」との指摘があったことを受けて、2010年3月から厚生労働省が行った調査の報告です。
負傷等の内容は、骨折が大多数をしめています。死亡は1件で、おやつを喉につまらせた事故です。
*厚生労働省の発表資料は同省のホームページに掲載されています。
*全国連協発行の『学童保育情報2011−2012』には、国民生活センターの安全対策の提言や原生労働省の事故報告依頼通知、全国連協がまとめた安全対策指針など、役立つ資料が収録されています。
2011年9月28日、厚生労働省の来年度の概算要求が発表されました。概算要求は、各省庁が来年度に必要な予算額を財務省に示すものです。年末の財務省査定を経て、政府予算案となり、4月頃の国会審議を経て決まります(今後、見直しが行われたり、大幅に削られてしまうこともあります)。
学童保育関係の予算は、「放課後児童対策の充実」という項目で、総額316億9900万円が計上されました(一昨年度までの予算書では「総合的な放課後児童対策〔『放課後子どもプラン』〕の着実な前進」という項目でした)。
概算要求の内容は次の通りです。
〈放課後児童健全育成事業
2012年度予算概算要求〉
◆総額 316億9900万円(前年度予算比9億4900万円増、3.1%増)
◆補助内容と補助額
(1)放課後児童クラブの運営費の補助
・274億8000万円(前年度予算比9億3200万円増、3.5%増)
・要求か所数2万6310か所(前年度比719か所増)
(2)放課後児童クラブの整備費等の補助
・40億7500万円(前年度予算と同額)
(3)放課後子ども教室推進事業(文部科学省所管)との連携促進等
・1億4400万円(前年度予算比1700万円増)
学童保育に関わる厚生労働省の予算の内容は、「総合的な放課後児童対策(放課後子どもプラン)の着実な推進を図るとともに、保育サービスの利用者が就学後に引き続きサービスを受けられるよう、『子ども・子育てビジョン』に掲げる目標の達成に向けた放課後児童クラブの箇所数の増(2万5591箇所→2万6310箇所)を図る」とされています。
政府が2010年1月に決定した「子ども・子育てビジョン」の目標(利用児童を5年間で30万人増やす、放課後児童クラブガイドラインを踏まえた質の向上など)を達成するために、か所数を増やすための費用が増額されました。
次ページの表にみるように、前年度予算比・総額9億余円の増額というのは、ここ数年の予算の伸びと比べると少ないものです。その理由は、補助金の大幅な変更等については、現在、政府が検討している「子ども・子育て新システム」の方針に基づいて行うとされているため、来年度予算は現在の方針(「子ども・子育てビジョン」に基づき箇所数の増加を図る)で予算編成を行うことになっているためです。
なお、運営費の補助単価も多少、増額されることが見込まれているようです(補助単価は年末に決定される政府予算案の発表以後、発表されます)。
施設整備費は、前年と同額が計上されています。
また、2011年7月から8月にかけて、電力需給対策の実施に伴う企業等の早朝・夜間や休日への就業時間等の変更に対応するために学童保育の日曜日開設等への補助金が出されました。来年度の概算要求にも11億7500万円が計上されています。
さらに、東日本大震災の復旧・復興のための2011年度第一次補正予算で組まれた「児童福祉施設等の事業復旧に係る再開準備経費等の支援」(学童保育の再開、学童保育施設の建設もその対象となっている)のための予算として、10億円が計上されています。
「放課後子ども教室事業」も含め、文部科学省の事業の概算要求は次号で紹介します。
2007年度 予算 |
2008年度 予算 |
2009年度 予算 |
2010年度 予算 |
2011年度 予算 |
2012年度 概算要求 |
|
総額 | 158.57億円 | 186.94億円 | 234.53億円 | 274.20億円 | 370.50億円 | 316.99億円 |
前年比 | 46.76億円増 | 28.37億円増 | 47.59億円増 | 39.67億円増 | 33.3億円増 | 9.49億円増 |
か所数 | 2万か所 | 2万か所 | 2万4153か所 | 2万4872か所 | 2万5591か所 | 2万6310か所 |
前年比 | 5900か所増 | 同数 | 4153か所増 | 719か所増 | 719か所増 | 719か所増 |
運営費 | 138.45億円 | 161.32億円 | 176.22億円 | 234.85億円 | 265.48億円 | 274.80億円 |
前年比 | 26.64億円増 | 22.87億円増 | 14.9億円増 | 58.63億円増 | 30.63億円増 | 9.32億円増 |
施設整備費 | 18.14億円 | 23.64億円 | 56.68億円 | 38.11億円 | 40.75億円 | 40.75億円 |
前年比 | 18.14億円増 | 5.50億円増 | 33.04億円増 | −18.58億 | 2.64億円増 | 同額 |
その他(注) | 1.98億円 | 1.98億円 | 1.63億円 | 1.24億円 | 1.27億円 | 1.44億円 |
新たな子育て支援システムを検討してきた政府は、2011年729日、少子化社会対策会議で「中間とりまとめ」を決定しました。学童保育については、市町村の事業として実施する「子ども子育て支援事業」(仮称)として位置づけ、次の5点の方向で整備していくことを決めました。
「小学校4年生以上も対象となることを明記し、4年生以上のニーズも踏まえた基盤整備を行う」
「放課後児童クラブについては、市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施する旨を法定する。市町村は、市町村新システム事業計画(仮称)で需要の見込み、見込量の確保策を記載し、提供体制を計画的に確保する」
「質を確保する観点から、人員配置、施設、開所日数・時間などについて、国は一律の基準を設定する」「その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)」
「利用手続きは市町村が定める。ただし、確実な利用を確保するため、市町村は、利用状況を随時把握し(事業者は市町村に状況報告)、利用についてのあっせん、調整を行うことを検討する」
「市町村の役割」については、「子どもや家庭の状況に応じた給付の保障、事業の実施」「質の確保された給付・事業の提供」「給付・事業の確実な利用の支援」「事業の費用・給付の支払い」「計画的な提供体制の確保、基盤整備」をあげています。また市町村は、「市町村新システ去事業計画」(仮称)を策定し、「潜在ニーズも含めた地域での子ども・子育てに係るニーズを把握」し、「見込量確保のための方策等」を決めるとしています。
国からの予算措置については、「子ども・子育て包括交付金(仮称)を検討する」としています。
政府は、2012年1月から開かれる通常国会に、必要な法案を提出する予定です。
全国学童保育連絡協議会は、今後とも、「子ども・子育て新システム」の検討にあたっては、これまでの不十分な国の学童保育に対する制度を抜本的に拡充することを要望していきます。
なお、保育所は個人に対する給付として実施する「子ども・子育て支援給付」として位置づけられ、これまで市町村に実施義務が課せられていた公的育制度を崩すものとなっています。全国学童保育連絡協議会は、今後も保育関係団体と連携して、「公的保育制度を守る」運動を強めていきます。
全国学童保育連絡協議会が毎年5月に行っている学童保育の実施状況調査の結果がまとまりました。なお、今年の調査では、東日本大震災の影響を考慮し、岩手県・宮城県の沿岸部や福島県内の計34の市町村への調査は行わず、調査結果にも含みませんでした。
●学童保育数2万204か所
施設数は前年比667か所増です。これは、71人以上の大規模学童保育の分割によって過去最高に増えた昨年の増加数のほぼ半数です。国が71人以上の大規模学童保育への補助を継続したことにより、分割はあまり進んでいないと思われます(表1)。小学校数以上に学童保育がある市町村は、全市町村の53.1%で、初めて半数を超えました。学童保育数が小学校数の1.5倍ある市町村も増えました。都道府県別の設置率(小学校数比)は、埼玉県と東京都が120%を超えた一方、高知県はまだ50%に達していないなど、格差があります。
年 | 学童保育数 | 入所児童数 | 学童保育数と入所児童数の増え方 |
1993 | 7,516 | 231,500人 | |
1998 | 9,627 | 333,100人 | 1997年児童福祉法改正、1998年施行 1993年からの5年間で学童保育数は2,100か所増加し、入所児童数は10万人増加(年平均2万人増) |
2003 | 13,797 | 538,100人 | 1998年からの5年間で学童保育数は4,200か所増加し、入所児童数は20万人増加(年平均4万人増) |
2006 | 15,858 | 683,476人 | 2003年からの3年間で学童保育数は2,000か所増加し、入所児童数は15万人増加(年平均5万人増) |
2007 | 16,668 | 744,545人 | 入所児童数が1年間で6万1000人増加 |
2008 | 17,945 | 786,883人 | 法制化10年で7,800か所増、利用児童は45万人増加 |
2009 | 18,475 | 801,390人 | 自治体などの入所抑制で潜在的な待機児童が増加 |
2010 | 19,744 | 804,309人 | 大規模施設の分割がすすみ、施設数は過去最高の1200か所以上増加。しかし、経済的な理由等で入所児童は3000人増にとどまる |
2011 | 20,204 | 819,622人 | 入所児童数は2万3000人増 |
注)全国学童保育連絡協議会調査。詳細な実態調査は5年ごとに実施。入所児童数の全数調査は、2006年から実施。それ以外は概数。
●入所児童数は81万9622人
入所児童数は82万人近くになりました(昨年度は前年比2919人増、今年度は前年度比2万2901人増)。しかし、母親が働いている子どもは1年生で全体の6割おり、そのうち、1日6時間以上働いてる母親は6割います。これを考慮すると、40%弱(45万人ほど)の1年生が学童保育を必要としていると推測されます。しかし調査結果では1年生の入所児童数は28万人(1年生の約25%)にとどまっており、学童保育の数はまだまだ足りないことがわかります。
●規模別の学童保育数
昨年は71人以上の学童保育が相当数減りましたが、今年は大きな変化がありませんでした(「71人以上」はまだ1251か所ある)。大規模学童保育の分割が進んでいないことが推測されます(表2)。大規模学童保育を「40人以下」の適正規模にしていく課題には、引き続き、積極的に取り組むことが必要です。
児童数 | 2007年調査 | 2010年調査 | 2011年調査 | 2007年比 |
9人以下 | 593(3.6%) | 719(3.7%) | 727(3.6%) | ±0 |
10人‐19人 | 1900(11.4%) | 2155(10.9%) | 2178(10.8%) | -0.6% |
20人-39人 | 5636(33.8%) | 7204(36.5%) | 7556(37.4%) | +3.6% |
40人-49人 | 2619(15.7%) | 3762(19.0%) | 3889(19.2%) | +3.5% |
50人-70人 | 3566(21.4%) | 4596(23.3%) | 4603(22.8%) | +1.4% |
71人-99人 | 1809(10.8%) | 1047(5.3%) | 991(4.9%) | -5.9% |
100人以上 | 545(3.3%) | 261(1.3%) | 260(1.3%) | -2.0% |
合計 | 16,668(100.0%) | 19,744(100・0%) | 20,204(100.0%) |
●運営主体と開設場所
運営主体は、私立保育園やNPO法人などが増えています(表3)。指定管理者制度は2171か所の学童保育で導入されています(昨年比233か所増)。民間企業の運営は265か所でした(前年比89か所増)。昨年は30か所増でしたから、かなり増えていると言えます。開設場所は、学校施設内が増えました(表4)。
全国学童保育連絡協議会では、今回の調査結果をふまえて国や自治体に、学童保育の量的・質的な拡充をさらに求めていきます。
運営主体 | か所数 | 割合 | 2007年比 |
公立公営 | 8179 | 40.5% | -3.7% |
社会福祉協議会 | 2124 | 10.5% | -0.8% |
地域運営委員会 | 3671 | 18.2% | +1.4% |
父母会・保護者会 | 1447 | 7.1% | -1.8% |
法人等 | 4402 | 21.8% | +5.4% |
その他 | 381 | 1.9% | -0.5% |
合計 | 20,204 | 100.0% |
開設場所 | か所数 | 割合 | 2007年比 |
学校施設内 | 10362 | 51.3% | +3.7% |
児童館内 | 2686 | 13.3% | -2.5% |
学童保育専用施設 | 1623 | 8.0% | +0.6% |
その他の公的施設 | 1885 | 9.3% | -1.5% |
法人等の施設 | 1348 | 6.7% | ±0 |
民家・アパート | 1298 | 6.4% | -0.9% |
その他 | 1002 | 5.0% | +0.6% |
合計 | 20,204 | 100.0% |
*【岩手県】宮古市、大船渡市、陸前高田市、釜石市、岩泉町、山田町、大槌町、野田村、田野畑村、普代村(10市町村)。 【宮城県】石巻市、気仙沼市、名取市、東松島市、塩竈市、多賀城市、岩沼市、利府町、亘理町、山元町、南三陸町、松島町、女川町、七ヶ浜町(14市町村)。 【福島県】南相馬市、相馬市、浪江町、新地町、富岡町、双葉町、大熊町、楢葉町、広野町、飯舘村(10市町村)。 2010年5月に行った実施状況調査では、この34市町村に、207か所の学童保育があり、入所児童数は7588人でした。 |
政府は、「子ども・子育て新システム」の第13回基本制度ワーキングチームを6月16日に開催し、「子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ(案)」(以下、「中間まとめ案」)を提案しました。
その中では、「質改善(機能強化)については、量的拡充と合わせて1兆円を超える額を提言しており、政府に財源確保の最大限の努力を求めています。また、「税制抜本改革とともに法案提出ができるよう、@国、地方及び事業主の負担の在り方、利用者負担の在り方、既存の財政措置との関係など費用負担の在り方、A国における所管の在り方、Bワークライフバランスの在り方、C国の基準と地方の裁量の関係など地域の実情に応じた給付・事業の提供のための仕組みの在り方、など残された課題について、できる限り速やかに検討を再開したい」としています。
学童保育(放課後児童クラブ)については、「子ども・子育て支援事業(仮称)」として「市町村事業」の制度とすることとし、次の四点を示しました。
○ 小学校四年生以上も対象となることを明記し、四年生以上のニーズも踏まえた基盤整備を行う。/○
放課後児童クラブについては、市町村が地域のこーズ調査等に基づき実施する旨を法律上明記。※市町村新システム事業計画(仮称)で需要の見込み、見込量の確保策を記載し、提供体制を計画的に整備。/○
質を確保する観点から、人員配置、施設、開所日数・時間などについて、国は一律の基準を設定。※児童福祉法に位置づけることを検討/○
利用手続は市町村が定める。ただし、確実な利用を確保するため、市町村は、利用状況を随時把握し(事業者は市町村に状況報告)、利用についてのあっせん、調整を行うことを法律に明記。この1〜3点目は、これまで全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)が政府に要望してきたことです。これまでも全国連協は、公的保育制度を守ること、学童保育の不十分な国の制度(「公的責任があいまい」「最低基準がない」「財政措置が不十分」)の抜本的な見直し・拡充を要望してきました。「中間まとめ案」は、7月上旬に開かれる基本制度ワーキングチームで成文化されたものが検討され、7月中旬に決定する予定とのことです。
2011年6月23日、全国連協は、厚生労働省や内閣府に要望書を提出しました。学童保育の来年度予算の検討が始められ、「子ども・子育て新システム」をまとめる段階にあるこの時期に、公的責任において学童保育の制度の抜本的拡充と予算の大幅増額を求めました。
今回の要望書では、第一に東日本大震災被災地の学童保育の国の責任による早急な復旧・復興を要望しています。厚生労働省に要望した内容は以下の五点です。
厚生労働省への全国学童保育連絡協議会からの要望内容 1 【被災地の学童保育の復旧、復興に関する要望 国の貨任で、一刻も早く、安定的な学童保育の復旧、復興を実現してください。 (1) 被災地で学童保育を一刻も早く再開、復旧できるように国として万全の措置を講じてください。 (2) 被災地の子どもたちが安心して通え、学童保育が安定的な運営ができるように特別な財政措置を図ってください。 2 【新システムに関わる学童保育の制度改革に関する要望】 児童福祉法を改正し、市町村の実施責任を明確にして、運営の安定性・継続性を保障する制度に拡充することを要望します。 (1) 児童福祉法を改正し、学童保育を児童福祉施設として位置づけ、「公的責任」「最低基準」「財政措置」を明確にしてください。 (2) 市町村の実施責任を明確にした制度としてください。 (3) 国の財政措置が強化される制度としてください 3 【学童保育の最低基準に関わる要望】 学童保育の質の確保のために、「最低基準」を定めて、条件整備を図ってください。 (1) 学童保育施設は、最低基準を決めて「生活の場」にふさわしく整備してください。 (2) 指導員の配置基準を決めて、常勤配置ができる制度を要望します。 (3) 指導員の公的資格制度を創設し、養成機関を整備してください。 (4) 「最低基準」を定める際は、現在ある学童保育が切り捨てられないよう、全体の底上げを図りつつ定めてください。 (5 )学童保育の質の確保のために・学童保育の保育指針を策定してください。 4 【2012年度の国の学童保育予算に関わる要望】 学童保育の運営に必要な補助金の創設と補助額の大幅な増額を要望します。 (1) 地方自治体の負担軽減のために国の負担率を大幅に引き上げることや特別な財政措置を図ってください。 (2) 運営費の補助単価は・大半を占めているのは指導員の人件費ですが、指導員が「常勤配置」できるように大幅に引き上げてください。 (3) その他、施設整備や運営費に含む補助項目、障害児受入のための櫛助金など・補助金に関する細部の要望は別紙1(省略)の通りです。補助金の内容や補助額を実態に見合って改善してください。 5 【政府の政策方針に関わる要望】 (1) 「子ども・子育てビジョン」に示されているように、学童保育の量的な拡大、質的な拡充を確実に図ってください。 @「子ども・子育てビジョン」で掲げた学童保育の整備目標を着実に実現してください。 A「放課後児童クラブガイドライン」を見直し、充実してください(別紙2は、省略)。 (2)「放課後子どもプラン」は、二つの事業の「一体化」ではなく、それぞれの事業の拡充を図るものに見直してください。 @「放課後子ども教室」等との「一体的運営」ではなく、それぞれの拡充を図ること。 A放課後の児童対策は二つの事業に限らず、総合的なものとして推進してください。 |
現在、「子ども・子育て新システム検討会議」基本制度ワーキングチーム(以下、基本制度ワーキングチーム)で、学童保育の国の制度の見直しが検討されています。2010年6月に出された「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」、2010年11月15日に出された政府素案、2011年2月21日に出された政府案および基本制度ワーキングチームでの議論については、「国や市町村の公的責任と実施責任がどのように強化されるのか」「どの学童保育でも最低保障されなければならない基準がどのようにつくられるのか」「確実に学童保育に財政的な保障がなされるのか」「放課後子ども教室と一体化がされるのではないか」など、国の制度が本当に拡充されるのかについて、強い懸念がありました。
3月11日の東日本大地震以降、中断されていた基本制度ワーキングチームが5月中旬に再開されるとの情報を受けて、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)ではあらためて5月10日に、内閣府・厚生労働省・基本制度ワーキングチームに「学童保育の制度の拡充に関する要望」を提出しました。要望内容の概要は次の通りです。
1 事業の位置づけに関する要望…児童福祉法における市町村の実施責務を明確にし、市町村の必須事業として位置づけ、市町村が自ら実施するか市町村が委託して実施するものとしてください。
2 基準の設定に関する要望……児童福祉法に基づき、児童数の規模、指導員の配置基準、資格要件、施設の面積基準等を明確にした「最低基準」をつくってください。
3 必要としている児童のすべてが入所できるような仕組みづくりに関する要望……@学童保育は高学年の児
童も対象とすることを児童福祉法で明記してください。A必要としている児童が確実に入所できるよう、市町村が適切な対策を講じる責務を明確にしてください。B経済的な理由等で入所できなくならないよう、保育料の適切な設定や減免措置の仕組みをつくってください。C市町村が潜在的なニーズを的確に把握して、「整備計画」を立てることを義務づけてください。
4 国としての財政措置に関する要望……国の財政措置は、「包括的な交付金」ではなく、市町村が学童保育の整備に確実に使うような仕組みとしてください。
5 放課後子ども教室との関係に関する要望……役割や内容などが大きく異なる「学童保育」と「放課後子ど
も教室」を、「将来的に一体化を目指す」のではなく、今後も「一体化」することはやめてください。
「子ども・子育て新システム」のもとでは、保育制度に市場サービスが導入され、幼保が無理やり一体化され、「地域主権」で国の責任が失われるなど、これまでの公的保育制度が崩される懸念が強く、全国連協としても、保育関係団体とともに反対しています。学童保育についても、国の制度の拡充を求める働きかけをいっそう強めていく必要があります。
2011年5月18日に開かれた基本制度ワーキングチームの会議の中で、「質改善(機能強化)の基本的な考え方」が政府から示されました。学童保育については、「小1の壁の解消」として、次の点が示されました。
W.小1の壁の解消
[基本的な考え方]
○潜在的需要(+48万人(平成29年度))の解消のための放課後児童クラブの供給量の確保
○利用ニーズに対応した放課後児童クラブの開所時間(19時以降)の延長への対応
[具体的な方策]
1、放課後児童クラブの職員体制の見直し
・現在の補助水準では職員の確保が困難であり、なかなか定着しないといった状況。
・放課後児童クラブについては、開所時間が短く利用ニーズにあっていないとの指摘がある。この利用ニーズに対応するためには、現在の非常勤が前提の職員体制では対応が困難。
・このため、開所時間の延長に対応し、現在の非常勤が前提の職員体制について、非常勤職員が前提の体制から、常勤職員を導入するなど、利用ニーズに即した放課後児童クラブの拡充を図ることを検討。
2.イコールフッティング
・減価償却費について運営費へ上乗せすることを検討。
2010年12月28日の基本制度ワーキングチームで、「参考」として、「非常勤指導員を常勤化することが考えられる」との意見が初めて取り上げられました。今回の「基本的な考え方」では、「常勤職員の導入」を検討することが示されました。
全国連協では、これまでの「国の補助金」が「非常勤」を前提に計算されていることが、補助単価が実態と比べてたいへん不十分なことの原因として、問題にしてきました。「常勤職員」を前提とすることで、補助単価を大幅に増額させる可能性も出てきます。
全国学童保育連絡協議会では、東日本大震災により被災した、学童保育の子ども、保護者、指導員、施設等の被害状況の把握と、被災地の学童保育の復旧・復興のための支援の取り組みを始めています。その重要な一つとして、2011年4月20日、国の責任で復旧・復興することを厚生労働省に要望しました(要望内容は後述)。懇談の席では、国として早急に被害の状況と復旧・復興の課題、被災地の要望を把握し、国の責任で必要な手立てを迅速にとってほしいことなどを要望しました。厚生労働省からは「現地の市役所も大きな被害を受けており、被害状況をつかむのは、なかなかむずかしい。震災により、国の補助金の基準である開設日数や児童数が減少しても不利益にならないようにしたい。損壊した施設の整備については国の第一次補正予算に組み込むことを要望している」などの返答がありました。
全国学童保育連絡協議会では、引き続き、各政党や国会議員にも要望を届けていく予定です。
*4月22日に第一次補正予算案が閣議決定されました。その中には、学童保育施設の復旧、事業再開に要する経費への補助金が組み込まれました。
東日本大震災・福島原発事故 被災地の学童保育の復旧、被災家庭への支援に関する緊急要望書 2011年3月11日、宮城県沖を震源とする日本観測史上最大の地震が発生しました。岩手県・宮城県・福島県をはじめとする東日本一帯は未曾有の災害に襲われました。特に、岩手県・宮城県・福島県の沿岸地域では津波により、いくつもの市や町や地域が甚大な被害を受けています。また、大地震と大津波によって引き起こされた福島原発事故も深刻な被害をもたらしています。 このたびの災害により、学童保育に通う子どもとその家族、指導員、学童保育の施設も多くの被害を受けました。いまだその全容は明らかにはなっていませんが、一日も早く被害状況を把握し・復旧・復興のための手立てが必要です。 被災地での学童保育の一日も早い再開・再建は、被災地の早急な復旧・復興のためにも欠かせません。被災地の多くの自治体そのものも深刻な被害を受けており、学童保育の復旧・復興ができる状態ではありません。また、復旧・復興に係る財政措置も県や市町村で負担できる限度をはるかに超えています。 つきましては、被災地の学童保育が一日も早く復旧・復興とともに、被災された学童保育に通う子どもの家庭を支援できるように、国として最大限の支援を要望します。 1.国が策定する被災地復興計画に、国の責任と財政措置によって、学童保育が復旧・復興させる計画を盛り込んでください。 2.被災地で学童保育を必要とするすべての子どもたちが一日も早く学童保育に入所できるよう、各市町村が学童保育の復旧・復興を図れるよう、国として必要な措置を緊急に図ってください。 (1) 公設・民設に関わらず、学童保育施設の再建、改築・修繕にかかる費用、設備・備品の購入等にかかる費用を国として全額保障してください。 (2) 学童保育が再建・再開できるまでに必要な指導員の人件費も含めた運営費への補助を、市町村・都道府県の負担がないよう全額を国として保障してください。 (3) 被災した家庭に対しては、学童保育の保育料が免除されるよう、国として必要な財政措置を図ってください。 (4) 被災地において、避難や疎開などで、入所児童数が急激に減った学童保育に対しても、指導員の雇用を守り、早期の再開が図れるよう国としての必要な財政措置を図ってください。 3.被災した子どもが避難先・疎開先ですみやかに学童保育に入所できるように、受け入れ先の各市町村が、受け入れ態勢の整備などを行い、積極的に対応できるよう国として特別な措置を早急に講じてください。 4.被災地において、やむを得ず休所したり、入所する子どもが急減した学童保育においても、指導員の雇用を守り、学童保育の早期再開をはかるために、国として必要な財政措置を図ってください。 5.被災地の市町村の行政機能が回復していない状況をふまえ、あらゆる分野において市町村まかせにせず、国が積極的な対応を行ってください。また、被災地の県が市町村に援助できるよう、国として、県への必要な財政支援を行ってください。 6.被災地及び各地避難所における子どもに関わる相談・支援体制を確立し、被災によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)への早期対応など、すべての子どもを対象にしたケアを行うために、国として必要な措置を講じてください。また、学童保育の生活(おやつ等の提供等も含めて)に必要な支援を国としても行ってください。 2011年4月20日全国学童保育連絡協議会 |
2011年12月、厚生労働省は、全市町村を対象に行った、平成20年の「地域児童福祉事業等調査」の結果の
概要を発表しました。学童保育については、「年間運営費の状況」「月額利用料金」「放課後児童指導員の配置人数にかかる規定の有無」の3点について調べています。
その結果は次のとおりです。
【年間運営費の状況】
250万円未満…13.1%
250〜500万円未満…27.7%
500〜750万円未満…20.8%
750〜1000万円未満…14.0%
1000〜1250万円未満…8.8%
1250〜1500万円未満…5.5%
1500〜1750万円未満…3.1%
1750〜2000円未満…1.7%
2000万円以上…5.3%
【月額利用料金】
利用料なし…7.5%
4000〜6000円未満…26.8%
6000〜8000円未満…21.6%
【放課後児童指導員の配置人数にかかる規定の有無】
規定あり…45.1%
規定なし…54.9%
「公の施設」の管理運営について指定管理者制度の導入を進めてきた総務省は、2010年12月28日、「制度の適切な運用」を求める通知を出しました。「サービスの水準の確保という要請を果たす……単なる価格競争による入札とは異なる」こと、「期間については、法令上の定めはないものであり、……安定的な運営の要請も勘案」すべきこと、「同一事業者を再び指定している例もあり、……施設の態様に応じて適切に」などをふまえて運用するよう、自治体に要請しています。
2011年1月5日の年頭会見で片山総務大臣は、この通知を出した理由をつぎのように説明しました。「特に、私などが懸念していますのは、本来、指定管理になじまないような施設についてまで、指定管理の波が押し寄せて、現れてしまっているという。そういうことを懸念していたものですから、あらためて、その誤解を解いたり、本来の趣旨、目的を理解していただくために出した」「集中改革プランという法的根拠のない仕組みを全国に強いてきたという、これの解除ですね」。これは、指定管理者制度導入を含む「民間委託等の推進」が法的根拠を欠いたものという認識を示したものです。
学童保育の運営に、指定管理者制度を導入させない、すでに導入している市町村への撤回の働きかけにこの通知を活用していく必要があります。
全国各地で行われている全国学童保育指導員学校には昨年、5340名と過去最高の参加がありました。昨年からは北海道会場が加わり、8会場で開催されています。
2011年も、8会場での開催を予定しています。一人でも多くの指導員の皆さんが参加され、学んでくださいますよう、お願いします。
会場 | 開催日 | 開催場所 | 案内 |
北海道会場 | 6月5日 | 札幌市・かでる2.7 | 詳しくはこちらへ |
西日本・滋賀会場 | 6月5日 | 滋賀県草津市・立命館大学草津キャンパス | |
西日本・大阪会場 | 6月5日 | 堺市・大阪保健福祉短期大学 | |
南関東会場 | 6月12日 | 千葉県市原市・東海大学付属望洋高校 | |
北関東会場 | 6月26日 | 群馬県板倉町・東洋大学板倉校舎 | |
四国会場 | 7月3日 | 高松市・高松テルサ | |
九州会場 | 9月25日 | 福岡県春日市・クローバープラザ | 7月号に案内を掲載 |
東北会場 | 10月2日 | 仙台市・東北大学 |
学童保育の制度の見直し等も検討している「子ども・子育て新システム検討会議」基本制度ワーキングチームは、2010年12月28日、学童保育(放課後児童クラブ)に関わって、「質の改善に関する論点整理」で「職員配置の充実等」についての論点を示しました。また、2011年2月21日には、「放課後児童給付(仮称)」を取り上げ、議論が行われています。
●「職員配置の充実等」について
政府が出した論点整理の資料には、次のような課題が示されています。
○子どもが安全に安心して過ごせる生活の場を提供するため、子どもや保護者と安定した関係が構築できる人材を確保する観点から、質の改善を行うことを検討。
○検討課題としては、以下の点が考えられるがどうか。
@職員体制の強化……子どもの安全安心な生活の場を提供する観点から、開設時間の延長や職員体制を強化し、一定の資質を有した職員の定着を図ることを検討。
(参考)○現在の指導員(非常勤)が常勤並の勤務時間を要請されていることや、開所時間の拡充の要請を踏まえ、非常勤指導員を常勤化することが考えられる。〈40人規模のクラブの場合〉○この場合、1クラブあたり300万円/年×3名分の追加費用が必要。
このように、「非常勤指導員を常勤化することも考えられる」として、指導員の年収を約150万円で計算している現在の国の補助単価を、450万円に引き上げることも必要だという資料が出されました。また、「質の改善」のために、国の給付率を現在の5割から6割に引き上げることも検討課題とするとされています。
●11月12日「放課後児童給付(仮称)の検討
「放課後児童給付(仮称)」を取り上げたのは、2010年11月15日に続いて2回目です。
当日は、東京都三鷹市教育長から、放課後子ども教室と学童保育の連携の事例発表が行われ、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)から、学童保育の現状・課題・要望を発表しました。その後、政府事務局からの提案資料が示されました。
政府提案では、(1)事業の位置づけ(事業構成)として、「市町村が地域の実情に応じてサービスを提供できるよう、市町村事業として実施」すること、(2)基準の設定として、「サービスの質を確保する観点から、全国一律の基準を設けることが必要。→児童福祉法に基づく基準として位置づけ」ることが示されました。
また、(3)基準記載事項のイメージでは、「児童福祉法に規定する場合の一律の基準について、現行『放課後児童クラブガイドライン』の内容を踏まえつつ、地域の実情に応じた柔軟な事業実施を可能とする観点から、基準の項目や内容を整理する必要がある」
「放課後児童クラブの質を確保するために最低限必要な内容については、国が一律の基準を示し、それを満たす形で市町村が設備、人員配置、事業内容等に関する基準を定め、質の確保を担保してはどうか」
「また、地域の実情に応じて柔軟に実施する必要がある事項については、国が基準を示し、市町村がそれを勘案し、地域の実情に応じて基準を定め、質の確保を担保することとしてはどうか」
との提案が示されています。
さらに、「一律の基準、地域の実情に応じた基準の内容や利用料に関する規定をどうするか」「必須事業として位置づけることも考えられる」「指導員の処遇改善、基準を満たすための支援措置(指導員に対する研修強化等)が必要ではないか。また、経過措置期間が必要ではないか」との課題も示されています。
(4)新システムにおける利用手続き等については、「利用者は、現行どおり、地域の実情に応じて市町村又は事業者に申し込む」ことが提案されています。
(5)計画的な基盤整備では、「市町村が地域のニーズを的確に把握し、市町村新システム事業計画(仮称)において需要の見込み、見込量の確保のための方策を記載することにより、計画的に提供体制の整備を図る」ことが提案されています。
そして、「市町村が策定した新システム事業計画(仮称)に必要な費用に対し、国は子ども・子育て包括交付金(仮称)を交付する」としています。
放課後子ども教室との関係については、「将来的には両事業を一体的に実施していくことを目指しつつ、当面はそれぞれの質・量の充実を図ることが急務」とされています。
全国連協では、「市町村事業とした場合の市町村の実施責任がどうなるのか」「市町村任せにならないか」「基準がどのような内容や水準となるのか」「学童保育に確実に予算がつくのか」「放課後子ども教室との関係は将来にわたって一体化を目指すのは問題ではないか」など、制度の実施にあたって懸念されることを明らかにし、私たちが求める学童保育の制度となるよう、引き続き強く要望していきます。
*基本制度ワーキングチームで示された政府提案と資料、および、全国連協からの意見と資料は、全国連協ホームページに掲載されています。