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厚生労働省は、2007年10月19日、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長名で、学童保育のガイドラインを発表しました(通知の全文はこちらに掲載)。あわせて、7月5日にホームページで公募した「ガイドライン案」に対する意見・要望への回答も公表しました。
策定された「放課後児童クラブガイドライン」は、7月に発表された案と比べると、「専用スペース」について「生活の場」としての機能が確保できるよう留意することが追加された、一部の表現を実施要綱にそって修正した等で、あまり変更はありませんでした。「回答」では、1491人から意見があったこと、具体的な数値が示されたところ(規模について「おおむね40人程度まで」「最大70人」としたことや、施設の広さを「児童1人あたりおおむね1.65u以上」としたこと、土曜日や長期休業期間の開設時間を1日「8時間以上開設」など)は、「一律に決めるべきではない」などの意見もあったと紹介されています。
私たちは、施設や指導員などの条件整備について、より明確に基準を定めてほしいという意見・要望を出しましたが(『日本の学童ほいく』2007年9月号「協議会だより」参照)、多くは「地域の実情等により異なることから、一律に基準を示すのは困難」と回答しています。
これまで国は、「地域の実情に応じて柔軟に」との考えから学童保育の設置・運営基準や望ましいあり方などを示してきませんでした。しかし今回、働く親を持つ子どもたちの「生活の場」である学童保育の質的な向上を図るために、「運営するに当たって必要な基本的事項を示し、望ましい方向を目指すもの」としてガイドラインを策定したことは一歩前進だと考えています。
しかし、策定されたガイドラインには指導員の配置基準がない等、不十分さや問題点がたくさんあります。また、実際にそれぞれの学童保育が課題・問題を解決し、質的な向上を図るためには十分な財政措置が必要です。さらに、ガイドライン策定にとどまらず、より明確な学童保育の設置・運営基準が必要であると考えます。
今後、全国学童保育連絡協議会では、厚生労働省にガイドラインの改善および予算措置などを求める要望書を、あらためて出す予定です。
* 「厚生労働省ガイドライン」 「意見・要望に対する回答」および、それらにたいする「全国学童保育連絡協議会からの要望書」は全国連協のホームページに掲載されています。ごらんください。
全国学童保育連絡協議会が4年ぶりに実施した詳細な学童保育の実態調査結果から、指導員数について紹介します。
公営と民間、正規と非正規別の指導員数は下の円グラフのとおりです。
また、一施設当たりの平均入所児童数が大きく増え、指導員数も増えていることがわかりました。(表1)
93年調査 | 98年調査 | 03年調査 | 07年調査 | 03年比 | |
指導員総数 | 約17500 | 約25300 | 約47800 | 約64300 | +16500 |
1施設平均指導員数 | 2.33 | 2.63 | 3.47 | 3.86 | +0.39 |
1施設平均入所児童数 | 30.8 | 34.7 | 39.0 | 44.7 | +5.7 |
指導員1人当たり児童数 | 13.2 | 13.2 | 11.2 | 11.6 | +0.4 |
*全国学童保育連絡協議会調査。調査の回収率89.5%。指導員の総数と一施設あたりの平均指導員数は、回収率にもとづく推計値です。
第32回全国学童保育指導員学校は、7会場に分かれて開催することができました。受講者数は合計で4647人となり、過去最高でした。初めての開催地となった滋賀県・茨城県・岩手県では、保護者の皆さんの協力のもと、目標を大きく上回る受講者がありました。(表2)
新しい指導員も急増しているなかで、さらに開催地の開拓、内容の充実などが期待されています。
それぞれの開催地で準備していただいた保護者・指導員の皆さん、ありがとうございました。
会場 | 開催日 | 開催地 | 受講者数 |
西日本(大阪)会場 | 6月3日(日) | 大阪・堺市 | 12府県515人 |
西日本(滋賀)会場 | 6月10日(日) | 滋賀・草津市 | 15府県763人 |
南関東会場 | 6月3日(日) | 東京・目黒区 | 14都県750人 |
北関東会場 | 6月10日(日) | 茨城・水戸市 | 9都県807人 |
四国会場 | 6月24日(日) | 香川・高松市 | 6県377人 |
東北会場 | 9月24日(祝) | 岩手・盛岡市 | 6県610人 |
九州会場 | 9月30日(日) | 福岡・春日市 | 10県825人 |
合計 | 46都府県4647人 |
9月20日、文部科学省は2007年度から新規の補助事業として始めた「放課後子ども教室推進事業」の補助金申請状況(実施予定箇所数)をまとめました。
●都道府県・政令市・中核市が、「放課後子どもプラン」の推進のためにつくることになっている推進委員会は、4政令市・11中核市を除く84自治体で開催されています。
●市町村の運営委員会は865自治体でつくられています。
●「放課後子ども教室推進事業」は、865市区町村で6267か所の申請が出されています。(予算は1万か所)
●補助金の申請総額は25億3800万円です。(予算は68億2000万円)
8月29日、厚生労働省と文部科学省の来年度の概算要求が発表されました。2007年度からスタートした「放課後子どもプラン」を推進するために、厚生労働省は学童保育予算の増額、文部科学省は「放課後子ども教室」予算の増額を求めています。
概算要求は、各省庁が来年度に必要な予算額を財務省に示すものです。毎年、8月末に発表され、年末の財務省査定を経て政府予算案となり、4月頃の国会審議を経て決まります。概算要求額は財務省査定で大幅に削られてしまうこともあります。
〈厚生労働省の学童保育関連予算〉
厚生労働省は、今年度に引き続いて「放課後クラブの必要な全小学校区への設置促進」のために、運営費と施設整備費の増額を要求しています。
◆総額 187.7億円(今年度の158.5億円と比べて29.2億円増)
◆補助内容と補助額
(1)放課後児童クラブ運営費(ソフト事業)
○161.9億円(今年度予算額と比べて23.5億円増)
○要求か所数…2万か所(今年度と同数を要求)
○多様なニーズ等への対応(二つの点で改善を図る)
・長時間開設加算の改善
現在の長時間加算(「1日6時間を超え、かつ午後6時以降も開設している」学童保育に年額30万円加算)を、延長時間数に応じた加算方式に改める。また新たに、「夏休み等の長期休業中においても、子どもたちにとって安心感のある安定した生活の場が確保され、その開設促進を図るため、長期休業期間などに一日8時間以上開設したクラブへの加算制度」を創設する。
・発達障害児等の受け入れのさらなる推進
現在、障害児を受け入れている学童保育への加算制度があるが、これを「市町村の責任のもとに、適切な専門的知識等を有する指導員(一定の研修を受講した者等)を各クラブに配置する補助方式に変更し、必要なすべてのクラブにおける障害児受け入れ体制」の強化を図る。
『日本の学童ほいく』85頁で紹介するように、厚生労働省の調査ではこの1年間に学童保育が約800か所増えていますが、今年度予算で目標とした5900か所にはとどいていません。しかし、入所希望は増えており、厚生労働省は、早急に未設置校区をなくし、大規模の分離・分割を促進し、2万か所まで整備したい考えです。
そのために今年度予算で、開設日250日未満と71人以上の大規模クラブへの補助金を3年間の経過措置後に廃止するとしました。来年度も引き続きこの方針をすすめ、「2009年度をもって廃止」することを明確にしています。なお、補助単価やくわしい加算方法等はまだ決まっていません。
(2)放課後児童クラブ創設費等(ハード事業)
〇23.8億円(今年度予算額と比べて5.7億円増)
@ 施設整備費補助の充実等
・[児童厚生施設整備費]児童館の整備費である児童厚生施設整備費を活用して、学校の敷地内等に放課後児童クラブ室を新たに設置する際の創設か所数の増を図る(補助単価1250万円)。
・[放課後子ども環境整備事業]未実施小学校区等への設置促進を図るために、既存施設(学校の余裕教室等)を学童保育に転用するための改修費補助(補助単価700万円)と、既存施設で新たに学童保育を実施する際の備品の購入等の設備費補助(補助単価100万円)についても引き続き支援を行う。
A 設置主体の制限緩和
学童保育の設置促進を図るために施設整備費を使いやすくすることをねらいとして、これまで施設設置や施設改修について市町村に限定していたものを緩和する。
[児童厚生施設整備費]は、「市町村、社会福祉法人または民法第34条の規定により設立された法人」も補助の対象とする。(民法第34条で設立された法人とは、財団法人、社団法人、宗教法人、学校法人などで、NPO法人は含まない)
[放課後子ども環境整備等事業]は、「市町村、社会福祉法人その他の者」も補助の対象とする。(「その他の者」には、個人、父母会やNPO法人なども含む)
厚生労働省は、未設置校区に学童保育を新たにつくる、大規模を分離・分割して適正規模にする、そのための施設整備費を今年度より増額要求し、かつ、補助が受けられる対象を広げました。
(3)放課後子ども教室推進事業(文部科学省)との連携促進
〇1.9億円(今年度予算と同額)
各都道府県・政令市・中核市が実施する学童保育指導員と「放課後子ども教室」指導者との合同研修や両事業の円滑な実施を促すコーディネーターの配置等の予算です。今年度と同額を要求しています。
〈ガイドライン策定について〉
厚生労働省のガイドライン案への意見公募には、多くの意見・要望が寄せられたということで、当初の8月末に策定する予定が9月下旬に延びそうです。厚生労働省は策定したガイドラインとあわせて、寄せられた意見・要望と、それに対する回答も公表していくとしています。
〈文部科学省の「放課後子ども教室」予算〉
文部科学省の「放課後子ども教室推進事業」の概算要求は次の通りです。
○要求額…99.2億円(今年度予算額68.2億円の31億円増)
○要求か所数…1万5000か所(今年度は1万か所)
○改善点…安全管理員等への謝金単価を増額
「放課後子どもプラン」の枠組みに大きな変更はありませんが、これまで「余裕教室等を活用して」とされていたのが「学校の余裕教室や地域の児童館、公民館等も活用して」となり、学校施設内にこだわらず地域にある児童館等を活用していくことも示されています。
「放課後子ども教室推進事業」にかかわっては、安全管理員への謝金単価を引き上げる他は大きな変更はありません。
なお、この「放課後子ども教室」について全国学童保育連絡協議会が今年5月に行った調査では、「2007年度中に実施する」と回答した自治体は354市町村2527か所という結果で、多くの市町村は2007年度の様子を見ながら今後、検討していくとしています。
8月10日、厚生労働省の育成環境課が実施した「放課後児童健全育成事業の実施状況調査」の概要が、発表されました。この調査は、毎年、育成環境課(学童保育の担当課)が都道府県を通じて行っているものです。主な結果は次の通りです。
○放課後児童クラブ数…1万6685か所(前年比828か所増)
*全国連協調査…1万6652か所
○登録児童数…74万9478人(前年比4万4496人増)
*全国連協調査…74万3837人
○71人以上の放課後児童クラブ数…2448か所(前年比278か所増)
*全国連協調査…2353か所
○利用できなかった児童のいるクラブ数…2253か所(前年比233か所増)
○利用できなかった児童数…1万4029人(前年比1840人)
施設数や入所児童数などは、全国連協の調査とほぼ同じ結果となっています。
全国連協では、施設の広さや設備の状況、待機児童数、開設時間、指導員数や労働条件などの詳細な実態調査を4年ぶりに実施しました。結果は10月頃にまとまります。
独立行政法人・国民生活センターが、利用者の立場から学童保育の拡充を図ることを目的として、「学童保育の実態と課題に関する研究会」を発足させて調査研究を進めています。研究会の委員には全国連協の役員も参加しています。
この調査には、学童保育は安全な生活の場として注目され、利用者も年間6万人も増えている。しかし、設置・運営基準もないなどの問題もある。各地の消費者センターにも学童保育のサービスの質や保育料、事故・ケガの対応等の相談が寄せられている。そこで、利用者の視点から実態の調査を行い、学童保育の問題点と課題をさぐり、拡充につなげていきたいとのねらいがあります。
国民生活センターでは、来年2月頃に調査研究報告をまとめていきたいとしています。
全国学童保育連絡協議会が2007年5月に実施した学童保育の実態調査では、「放課後子どもプラン」の策定予定についても尋ねました。回答日の5月1日時点で、「2007年度中に策定する」と答えた市町村は1437市町村(調査回収率88.8%)の2
割程度であることがわかりました。「わからない」「検討中」と回答した市町村が多くありました。
Q11のA「放課後子どもプラン」の策定について *市町村数(回答数全体における割合) 1 2007年度中に策定する………275(19.1%) 2 2007年度以降に策定する……126( 8.8%) 3 策定しない……………………139( 9.7%) 4 わからない……………………658(45.8%) 5 その他…………………………177(12.3%) 6 未回答……………………………62( 4.3%) 合計……………1437(調査回収率88.8%) ※その他の内訳は、「検討中」が多数。「すでに策定」が4市町村あった。 |
各地の新聞報道などを見ても、「放課後子どもプラン」策定や2つの事業の「一体的あるいは連携」のあり方や方法等で市町村にとまどいや混乱があることが推測されます。
なお、今年の実態調査では、小学校数よりも学童保育数が多い市町村が増えていることがわかりました(『日本の学童ほいく』30頁の欄外注3参照)。小学校数に限らず、適正規模の学童保育をたくさん整備していくことが課題となっています。
厚生労働省は、「放課後児童クラブを『生活の場』としている児童の健全育成を図る観点から、放課後児童クラブの質の向上に資することを目的」にガイドラインづくりを始めています。8月中に策定する予定で、7月5日にガイドライン案を公表し、広く意見募集をしました。
全国学童保育連絡協議会は、7月10日にこのガイドライン案に対する意見・要望を厚生労働省に届けました。『日本の学童ほいく』9月号78ページにくわしく紹介しましたのでぜひご覧ください。
政府の今後の少子化対策を検討していた「『子どもと家庭を応援する日本』重点戦略検討会議」が、6月1日に中間報告を発表しました。「地域・家族の再生分科会の議論の整理」として学童保育に関わって次のことが取り上げられています。
(4)学齢児の放課後対策 学齢期の放課後対策については、その普及状況を見ると地域差が大きく、放課後児童クラブ、18年度まで実施した地域子ども教室のいずれも行われていない空白市町村も、未だ存在している。また、放課後児童クラブは、主に小学校1〜3年生を対象として進められてきたが、高学年期における安全な児童の居場所の確保や、多様な就労時間に対応した開所時間の設定も課題となっている。 さらに、本年度より「放課後子どもプラン」の推進を図ることとしているが、これを展開していく上で、子ども同士の交流や、退職者・高齢者などを活用した地域とのつながりを大切にする取組も求められている。 こうした実状を踏まえ、全小学校区への「放課後子どもプラン」の普及を図ることにより、幼児期から、高学年期まで円滑に、安全で健やかな活動場所を確保し、多様なニーズに対応した柔軟なサービスを提供していくことが必要である。 |
これは、内閣府のホームページで「放課後子どもプラン」について意見募集をしたところ、学童保育の拡充への意見(設置促進、高学年受け入れ、開設時間の延長など)が大半だったことを受けてまとめられたものです。
ただし、後半の「放課後子どもプラン」についての記述は、「放課後子ども教室」についてのことであり、「放課後子どもプラン」と「放課後子ども教室」が混同された表現になっています。教育再生会議の第一次のまとめでも、「放課後子どもプラン」=「放課後子ども教室」と混同されている表現となっていました。自治体でも、こうした混同が混乱のもとになっています。
正確な情報を伝えていくことが必要です。
厚生労働省育成環境課と(財)児童健全育成推進財団は、財団法人こども未来財団がガイドライン研究報告書を作成したことを受け、研究報告書の中で取り上げられたガイドラインの35項目すべてを「学童保育の役割」と「指導員の仕事」にまとめたテキストを作成し、それを使った研修会を共催で開催することになりました(厚生労働省の補助事業)。
「平成19年度放課後子どもプラン指導者研修会」の名称で、全国7会場で開催されます。講師は、研究報告書をまとめたガイドライン研究会の委員の方々です。テキストは全国すべての学童保育と児童館に配布されました。くわしくは(財)児童健全育成推進財団のホームページをご覧ください。
http://www.jidoukan.or.jp
全国学童保育連絡協議会が毎年行っている学童保育数の調査結果がまとまりました。結果は以下のとおりです。 表とグラフはこちらへ
●入所児童数は74万人(表1)
この間、入所児童数の激増が続いています。昨年比で6万人が増えました。1年間に6万人増は初めてのことです。また、2003年の調査と比べると4年間で21万人も増えています。
●学童保育数1万6652か所(昨年と比べて794か所増)
今回の調査では、小学校数よりも学童保育数が多い市区町村が242あることがわかりました(表2)。
入所児童数は激増していますが、施設数はそれに見合って増えていません。
厚生労働省は、71人以上の学童保育の分離・分割、今年度に2万か所に増やす方針を立て、補助金を増額しました。
●規模別の学童保育数(グラフ1)
入所児童数が激増する一方、施設数がそれに見合って増えていないため、大規模化がますます進行しています。71人以上の学童保育が2350か所にもなり、そのうち500か所以上が100人を越えています。
71人以上の学童保育の割合は全体の14.1%ですが、入所児童でみた場合、71人以上の学童保育で生活している児童は3割近くになります(表3)。全国学童保育連絡協議会や財団法人こども未来財団のガイドラインの調査研究などが適正規模と示している40人以下の学童保育で生活している児童よりも多いとみられます。大規模
化の解消は、ますます緊急の課題となっており、分離・分割と増設が求められます。
●運営主体と開設場所
運営主体と開設場所はグラフ2、グラフ3のとおりです。約1400か所の学童保育に指定管理者制度が導入さ
れていました。(昨年は1100か所)
* * *
ますます必要性と期待が高まっている学童保育は、必要とする子どもがだれでも入所できるように、早急に整備が図られることが必要です。また、安全・安心な学童保育をつくるために、国にも自治体にも設置・運営基準づくりと施策改善が求められています。現在、国としてのガイドラインを作成する考えを示している厚生労働省にも、今回の調査結果をふまえて学童保育の拡充を求めていきたいと思います。
(注)今回は「放課後子どもプラン」の策定状況などもあわせた詳細な実態調査(前回は2003年)も行っています。くわしくは次号で紹介します。
政府が2008年度予算編成作業を始める時期です。全国学童保育連絡協議会は5月30日に、学童保育の拡充を求めて厚生労働省等に要望書を提出しました。その内容を紹介します。
1 学童保育の国の方針を明確にし、法的な整備も含めて制度を確立してください。
(1)政府の少子化対策、仕事と子育ての両立支援策等の中に「学童保育の量的拡充・質的拡充」をしっかりと位置づけ、国として学童保育の設置・運営の基準をつくり、強力に推進してください。
(2)厚生労働省は「ガイドラインを示す」方針を明確にされましたが、ガイドライン作成に際しては、私たち学童保育関係者の要望を十分に聞き、提言「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」が実現する内容を示してください。
(3)ガイドラインを示すにあたっては、自治体がガイドラインにそって条件整備を図れるように、財政措置と仕組みをつくってください。また、各地の学童保育の実態と課題を把握して、学童保育の拡充をすすめるような指導や手だてをとってください。
(4)法律で対象と目的が明確にされている学童保育に必要不可欠な要件を、施策上(実施要綱や補助要件等)でも明確にし、すべての児童を対象とした事業と区別して、学童保育の拡充を図ってください。また、自治体にも法律の主旨や実施要綱等の内容の周知徹底をしてください。
(5)学童保育の質的拡充を図るために、実施要綱と補助基準・補助要件を次のように改善してください(以下、項目だけ紹介し、内容は省略します)。@施設・設備について、A学童保育指導員について、B適正規模について、C大規模の分離・分割について、D対象学年について、E開設日について、F学童保育の運営について、Gその他の項目について
2「放課後子どもプラン」は、学童保育が拡充するように進めてください。
(1)「放課後子どもプラン」の推進にあたっては、2つの事業の実施場所(部屋、空間)と職員を同じにするような「一体化」の実施は絶対にやめてください。
(2)教育委員会主導ではなく、福祉部局との対等な連携によって学童保育が拡充し、かつ、他の放課後対策も拡充するようにすすめてください。
(3)学校だけが放課後の居場所であるかのような、「学校内で事業を実施することを原則」とするのではなく、子どもにとって最善な場所を考え、児童館の整備等も含めて安全で豊かな地域づくりの視点で総合的な放課後対策を進めてください。
(4)「放課後子どもプラン」の「推進委員会」にも、学童保育関係者の参加が必要なことを明確にしてください。
(5)学童保育の拡充を図るために文部科学省と連携して、教育委員会やコーディネーター、学校関係者、「放課後子ども教室推進事業」関係者に、2つの事業の違いを理解し、かつ「放課後子ども教室推進事業」や「全児童対策事業」が学童保育の替わりにはならないこと等も含めて、学童保育への十分な理解が図られるような指導や仕組みづくりを行ってください。
3 学童保育を必要とするすべての子どもたちに、安全で安心して生活できる学童保育を保障するために、国の学童保育予算の大幅な増額をしてください。
(1)学童保育が必要な地域すべてに必要な数だけ早急に設置されるよう、施設整備費の補助単価と総額を大幅に引き上げてください。また、土地取得にかかる費用の予算化、民間学童保育の家賃補助も予算化してください。
(2)3年間の間にすべての71人以上の学童保育の分離・分割ができるように、市町村に対する施設整備費、運営費を大幅に引き上げるなどの予算措置を行ってください。また、70人以下であっても、より適正規模(40人を上限)にするための分離・分割がすすむような施策と補助金の仕組みをつくり、十分な予算措置をしてください。
(3)すべての学童保育で専任の常勤職員が常時複数配置され、継続して働き続けられるよう、現在の運営費(補助額)が「非常勤配置」「報償費」として積算されているのを改め、常勤配置の人件費として積算して、補助単価を大幅に引き上げてください。
(4)事業運営費の積算に、教材費・児童の保険料・保育料の減免措置を含め、大幅に引き上げてください。
(5)障害児加算は、現在の補助単価の69万円ではなく、常勤指導員の人件費分で計算して加算するとともに、障害児の人数や障害の程度に応じて加配人数を増やせるような仕組みの加算制度にしてください。
(6)保護者の働く実態に即した開設日・開設時間となるように補助額を増額してください。
(7)児童数20人未満の学童保育に対する補助は、小規模でも指導員が複数配置できるよう補助額を増額してください。また、児童数20人未満の学童保育に対する補助金を新たに予算化してください。
(8)年間を通して指導員の資質の向上、実践に役立つ研修ができるように、研修費補助を大幅に引き上げてください。また、「放課後子ども教室推進事業」スタッフとの合同研修実施に際しては、学童保育指導員に対する研修内容の低下が起こることがないようにしてください。
高市早苗・少子化対策特命大臣は、新たな少子化対策を検討するために、内閣府のホームページで少子化対策関係の意見募集を行っています。2月に「放課後子どもプランについて」の意見募集がありました。
「放課後子どもプランについて」の意見は197件あり、以下に紹介するように、ほとんどが学童保育の拡充に関する意見でした。
時間延長を望む意見(12%)/国が運営基準(ガイドライン等)を整備し、サービスの一定の質を確保してほしいという意見(9%)/指導員の質や人材の確保を望む意見(8%)/大規模化(許容人数を超えている)が問題であるという意見(5%)/対象年齢を6年生までにしてほしいという意見(4%)/財政支援拡充(利用料の地域格差是正等)を望む意見(10%)。
ホームページで公開された意見とそれに対する「大臣からの返事」の概要(●以降)を紹介します。
【放課後子どもプランについて】
(2月募集分)
意見 保育園では19時頃まで預かるところが増えているが、放課後児童クラブでは18時までの対応が多いため、預かり時間を延長してほしい。
●多くの方から同様のご意見をいただいた。利用者のニーズに対応したサービスの提供は重要であり、18時を超え、かつ、一日6時間以上開所しているクラブへの運営費の加算を行っている。18時以降も開所しているクラブは年々増加しており、国としても引き続き推進を図っていく。
意見 子どもの安全と安心感のある生活が保障されるよう、国で設置基準(ガイドライン等)を整備し、サービスの一定の質を確保してほしい。
●ガイドライン等の策定に当たっては、各地域の多様で柔軟な事業実施を尊重しつつ、国としてどのような対応が可能かを検討する必要があると考えている。厚生労働省として、地方自治体におけるガイドライン等の設定状況やその内容について実態調査を実施し、平成19年中に、国のガイドライン等を示す予定。
意見 指導員の質や人材の確保を図ってほしい。
●指導員の資質の向上は重要であると考えており、厚生労働省では、都道府県レベルで実施する放課後児童指導員等に対する児童の安全管理、生活指導、遊びの指導等の研修に対して費用の補助を行っている。
●(財)児童健全育成推進財団においても、平成19年度より、放課後子どもプラン担当者を対象とした研修を実施することとしており、こうした研修の機会の活用を呼びかけ、プラン関係者の情報交換等を行い、資質の向上を図っていく。
意見 放課後児童クラブの大規模化(許容人数を超えている)が問題。
●一定規模以上になることは、子どもの情緒の安定や事故防止を図る観点から適当ではない。平成19年度予算において、児童数が71人以上の大規模クラブについては、3か年の経過措置後、国からの補助を廃止することとし、分割などによる適正な人数規模への転換を促すこととしてる。大規模クラブを分割するため、小学校の余裕教室等を改修する際に必要な経費の補助も行っており、分割等が円滑に進むよう地方自治体の取組を支援していく。
意見 低学年のように保育の必要はないと思うが、高学年でも安心して過ごせる居場所が必要なので、対象年齢を6年生までにしてほしい。
●児童福祉法第6条の2第2項の規定により、対象児童を「小学校に就学している」児童としており、小学校6年生までの利用は制度上可能。しかし、実施主体である市町村においては、条例等で対象児童を小学校3年生までとしているところもあるので、地方自治体の担当者を集めた会議等を通じて、4年生以上の児童の受入れについて配慮するよう周知を図っている。
政府は「『子どもと家庭を応援する日本』重点戦略検討会議」で少子化対策を検討しています。そこでも今回の意見と「大臣からの返事」をふまえて、「子どもの放課後対策」についての対応が検討されています。全国学童保育連絡協議会は、この検討会議委員にも学童保育の拡充を求める要望書を出しました。
全国学童保育連絡協議会は、3月18日、子育てシンポジウム「地域の子育てと放課後子どもプラン」を開催しました。定員を超える申し込みがあり、当日は満席でした。
4月からスタートする「放課後子どもプラン」と地域の子育てのあり方について、いろいろな分野から貴重な発言がつづき、有意義なシンポジウムとなりました。
早稲田大学の増山均先生の「机上のプランから発達保障のプランへ」と題する問題提起から始まり、共働き家庭等にとっての学童保育の大切さ(東京都文京区・保護者・飯田恵子さん)、学童保育で何を大切にして子どもと向き合っているか(さいたま市・指導員・片山恵子さん)、児童館の持つ役割と可能性(児童健全育成推進財団事務局長・鈴木一光さん)、川崎市の「わくわくプラザ」の何が問題か(川崎市・保護者・菊間由衿さん)、「地域子ども教室と「放課後子ども教室」は何が違うのか(栃木県足利市・地域子ども教室運営委員・吉田俊一さん)など、体験や実践、実感にもとづく発言・報告がありました。
参加者からは、「さまざまな立場からの発言があり、もっと時間がほしかった」「地域子ども教室推進事業についてよくわかった」「学校に子どもたちを囲い込むのではなく地域を安全で豊かにしなければならないことを痛感した」などの感想が多く寄せられました。
なお、『日本の学童ほいく』6月号でこのシンポジウムの概要を紹介します。
3月20日、厚生労働省育成環境課は、都道府県・政令市・中核市の児童健全育成関係の担当者を集めた会議を開きました。
会議で育成環境課は、「放課後子どもプランに対する育成環境課の立場は、放課後児童クラブを2万か所に増やし、待機児童や大規模をなくしていくことにある」「サービスの水準を確保するために、ガイドラインを平成19年中に示していきたい」との考えを発表しました。
また、この場で、自治体からの質問に対する育成環境課の回答(「疑義回答」)が配布され、説明が行われました(『日本の学童ほいく』74ページにその一部を紹介)。
文部科学省分と厚生労働省分をあわせた「疑義回答」は、3月末にあらたに発表される予定です。
実施要綱が示されました
2007年2月7日、文部科学省と厚生労働省は、2006年9月20日に続いて2回目となる「放課後子どもプラン全国地方自治体担当者会議」を開き、「放課後子どもプラン」に関わる諸事項を説明しました。会議には、都道府県・政令市・中核市の教育委員会生涯学習関係者と福祉部局の学童保育担当者が出席しました。
今後は、学童保育(放課後児童クラブ)と「放課後子ども教室推進事業」という二つの事業を、「放課後子どもプラン推進事業」という枠組みですすめることになります。今回の会議では、@二つの事業の補助金交付要綱を一つにまとめた案、A文部科学省が管轄する「放課後子ども教室推進事業」の実施要綱案、B二つの事業の実施要綱を一つにまとめた案、が示されました。
これはこの会議の後、「必要な調整」をして決定するとのことですが、内容はほとんど確定しています(実施要綱案の全文は、全国学童保育連絡協議会や厚生労働省のホームページで見ることができます)。また、会議では補助金交付申請のスケジュールやマニュアルも示されました。学童保育の補助金の申請締切は5月末です。
文部科学省の補助金は基準単価なし
文部科学省はこれまで、「放課後子ども教室推進事業」の補助金を1か所当たり年間128万円と示していましたが、これは文部科学省の積算内訳であり、実際の補助金額は「上限も下限もない」「市町村から申請があった金額を出す」ということだそうです。
資料として出された補助単価の一覧表には学童保育の補助単価が明確に示されていましたが、「放課後子ども教室推進事業」関係には「市町村が地域の実情に応じて積算し、文部科学大臣が認めた金額」とのみ記されています(都道府県などに設置する推進委員会、市町村に設置する運営委員会、コーディネーターの謝礼金、安全管理員の謝礼金、備品費、研修費などすべて)。
ただし、実施要綱には「一時間あたりの謝金単価は、安全管理員七二〇円、学習アドバイザー1080円までを上限として積算する」とあり、謝金単価の上限だけを決めて、回数や人数は地域の実情に任せるとしています。
その理由は、この事業は多様な形で実施されるものなので、放課後児童クラブのような「補助基準」「補助単価」という概念はなじまないということでした。
別々の部屋と職員配置は絶対的な要件
会議では「放課後子どもプランの実施場所・実施形態の例」という資料が出され、放課後児童クラブと「放課後子ども教室推進事業」を、「@別々の場所(建物)で連携して実施」「A同じ建物内で部屋を分けて連携して実施」「B同じ建物内・同じ部屋で、一体的に実施」という三つのパターンが示されました。
これまで厚生労働省担当課は、「専任指導員の配置」「専用スペースの確保」「開設日・開設時間の確保」などの要件がクリアされないと国の補助金は出せないと述べていましたが、今回の資料で示されたBのパターンと、補助要件は相容れないものです。
厚生労働省担当課は、この例示については、まだ検討中・調整中の段階のものであるということ、やり方としてはこういう方法もあるだろうとして示したもので、地方単独事業としてBのパターンが取り組まれるならば、国としてもそうするなとは言えない。しかし、Bのパターンで補助要件を満たしていないならば国の補助金は出せない。個々のケースに応じて総合的に判断するなどと、説明しています。
私たちは、一つの部屋で同じ職員が「一体的」に子どもたちに対応することは、事実上の学童保育の廃止であり、強く反対してきました。また、厚生労働省に対しても、そうしないよう強く要望してきました。厚生労働省がこれまで方針としてきた、「いままでの放課後児童クラブの役割・機能を損なわない」「これまでのサービスの質を落とさない」ためにも、今回示されたBは絶対に認められないパターンです。
現在、安倍首相の諮問機関として政府内に「教育再生会議」が開かれています。また、あらたな少子化対策を検討する「『子どもと家庭を応援する日本』重点戦略検討会議」を内閣府に発足させています。
全国学童保育連絡協議会は二つの会議の各委員に、「『放課後子どもプラン』は、二つの事業を一体化するのではなく、それぞれの拡充と連携を求める」主旨の要望書を届けました。
『日本の学童ほいく』2007年3月号の緊急企画で掲載したように、「放課後子どもプラン」を学童保育を拡充する内容にしていく取り組みを、さらに強めていきたいと思います。
*全国学童保育連絡協議会は4月中旬に、単行本『放課後子どもプラン』を刊行する予定です。『日本の学童ほいく』2007年3月号の緊急企画とあわせて、ぜひ活用してください。
1月15日〜16日、厚生労働省が都道府県・政令市・中核市の厚生労働関係の部局長を集めて来年度の予算案や方針を説明する会議を開きました。
会議では、「放課後子どもプラン」の推進が、厚生労働省(主に厚生関係)の4つの重点事項のひとつに位置づけられていました。
学童保育の予算や施策の説明の中で総務課長は、「放課後子どもプラン」はいままで自治体がつくってきたもの(学童保育や児童館など)を組み直すことが本意ではなく、放課後児童クラブの空白小学校区をなくすことが厚生労働省の方針であると強調しました。
当日配布された資料には、以下のような内容がありました。
○次世代育成支援のための行動計画で、放課後児童クラブを必要な全小学校区に設置するよう設置目標の前倒しを自治体に依頼した。「放課後子どもプラン」の基本的考え方として、必要な全小学校区での2つの事業の実施に努力してほしいが、放課後児童クラブのみの実施であっても差し支えない。また、小学校内での実施を基本としているが、学校外で実施している場合、引き続き当該場所での実施が望ましい場合や余裕教室のない場合などは、新設も含めて今後も学校外での実施でも差し支えない。
○「放課後子どもプラン」の推進体制として、文部科学省と厚生労働省に「放課後子どもプラン連携推進室」を設置し、補助金交付要綱は一本化する。市町村や都道府県での補助金の申請手続きは教育部局でも福祉部局でもよく、どちらの省に申請しても構わない。
○「『放課後子どもプラン』の推進について」(文部科学省と厚生労働省の両局長通知)が示された。9月20日の「放課後子どもプラン全国地方自治体担当者会議」で出された「現段階のイメージ(案)」(『日本の学童ほいく』2006年11月号の78頁参照)が通知となったもの。「現段階のイメージ(案)」から変更された点は2点。1点目は「事業経費」部分の表現で、国において補助金交付要綱が一本化されることになったのに伴う変更。
もう一点は、通知の最後に書かれている放課後児童健全育成事業(学童保育)の〈サービスの内容例〉に、「専用のスペースの確保」が追加されたこと。
会議の説明資料には、「両事業を同じ小学校内等で実施する場合には、保護者が就労等により昼間家庭にいない等、子どものおかれている状況に鑑み、放課後児童クラブとしての専任の指導員の配置や専用スペースの確保などが補助要件となるのでご留意願いたい」と記されている。
○新しい学童保育の実施要綱(案)が示された。(実施要綱(案)については、28頁からの緊急企画をごらんください)
○学童保育の施設整備費は、「放課後子ども環境整備事業(放課後児童クラブ未実施小学校区緊急解消等事業)」という事業名になってまとめられ、実施要綱が示された。(2007年2月号「協議会だより」参照)また、独立の専用施設を新たに建てる場合は、児童館の施設整備費を活用できるが、国庫補助協議にあたって作成している通知の中にある「放課後児童クラブ室の基本的整備方針」に「小学校の敷地(校庭等)内に整備を図るもの」が追加された。さらにこの通知には、「1クラブ当たりの児童数が71人以上となる施設については、国庫補助の対象外とするので、当該施設を既に計画している場合には、2クラブ分(1クラブ当たりの児童数が70人以下)として協議されたい」と、71人以上の大規模クラブの分割促進を自治体にすすめている。
○これまで、学童保育へのボランティア派遣のための補助金、指導員の健康診断への補助金があったが、それに加えて、学童保育の未実施市町村の早期解消を図るために、新しく指導員になる者への研修や、見学や実習の実施、「放課後子どもプラン」のリーフレットの作成や連携推進のための取り組みに対する補助金として、新たに「放課後子どもプラン実施支援事業」をつくり、この3つの補助金を「放課後児童クラブ支援事業」としてひとつにまとめた実施要綱が示された。
○都道府県等が実施する指導員に対する研修費補助について、「放課後児童指導員等資質向上事業」という名称となった。また、この事業は「放課後子どもプラン」の円滑な実施を図ることも目的とされ、研修対象者に「放課後子ども教室推進事業」の担当者、およびこの人々と連携・協力を行う学校の教職員も加えている。研修内容も、「放課後子どもプラン」の円滑な実施ができるようなものにしている。さらに、これまでの事業(研修)の実施主体は都道府県・政令市・中核市だったが、事業の全部または一部を、実施するのに適した社会福祉法人、財団法人、NPO法人に委託することが可能となった。
○学童保育の運営費の補助内容が明らかになった(くわしくは『日本の学童ほいく』28頁からの「緊急企画」参照)。
12月21日、厚生労働省の来年度予算案が発表されました。1月から始まる通常国会で採択されれば正式決定となります。
学童保育の補助金は、「放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)の必要な全小学校区への設置促進」をするために、総額158億4900万円となりました(前年比46億6000万円増)。
8月に出された概算要求額は、総額187億6300万円でしたが、財務省査定で29億1400万円が削られました。しかし、補助対象か所数や補助単価の見直しは、概算要求の時の内容と同じです。厚生労働省は、「放課後児童クラブの未実施小学校区の早急な解消や適切な運営の確保等を図るためのソフト及びハード両面での支援措置を講じる」としています。予算の内容は次のとおりです。
◆放課後児童クラブ運営費(ソフト事業)
○総額 138億4500万円(前年比26億6400万円増、23.8%増)
○補助対象か所数 2万か所(前年比5900か所増)
○補助単価等の見直し
・基準開設日数の弾力化(年間281日以上→250日以上)を図り、250日を超えて 開所する学童保育には日数に応じて加算措置(300日を限度)を講じる。また 、200日以上250日未満の学童保育については、3年間の経過措置後、補助を廃 止。
・子どもの情緒面への配慮及び安全性の確保の観点から、適正な人数規模への移 行を図るため、71人以上の大規模クラブについては、3年間の経過措置後、補 助を廃止し、規模の適正化(分割等)の促進を図る。
◆放課後児童クラブ創設費等(ハード事業)
○総額 18億1400万円
・創設費補助の充実【児童厚生施設等整備費】。学校の敷地内等に放課後児童ク ラブ室を新たに設置する際の創設か所数の増を図る。
・改修費補助の充実【放課後子ども環境整備等事業】。既存施設(学校の余裕教 室、商店街の空き店舗等)を改修して、放課後児童クラブ室を設置する際の改 修か所数の増を図る。
・設備費(備品の購入等)補助の創設【放課後子ども環境整備等事業】。既存施 設(児童館、商店街の空き店舗等)において、新たに放課後児童クラブを実施 する際の冷暖房器具の設置や冷蔵庫及び調理器具等を購入する場合にも補助対 象とする。
運営費の補助単価はまだ明らかになっていませんが、現行の補助単価を上回る金額が検討されています。補助単価の見直し、「放課後子どもプラン」との関係もあるため、厚生労働省育成環境課は現在の実施要綱も見直すと説明しています。また、できれば1月中旬に厚生労働省が開催する厚生労働部局長会議(都道府県・政令市・中核市の民生部局長を集めた説明会)では具体的な内容を明らかにしていきたいとのことです。
このほか、「放課後子ども教室推進事業(文部科学省)との連携促進」として、これまで事業ごとに実施していた指導員(者)研修を、各都道府県等において合同で開催するなど、両事業の連携促進を図るための取り組みを実
施するために、1億9000万円が予算計上されました。
厚生労働省は、2007年度中に学童保育をいっきに2万か所に増やす予算をつけました。しかし、市町村と都道府県がそれに応えて学童保育を増やすための予算化をしなければ実現しません。大規模学童保育の分離・分割も
含めて、必要とする子どもたちが学童保育に入所でき、安全で安心な生活をおくれるように、私たちの取り組みを
強めていきましょう。
12月22日、文部科学省が新規事業として概算要求していた「放課後子ども教室推進事業」(「放課後子どもプラン」で推進するもう一つの事業)の予算案も発表されました。
○総額 68億2000万円(概算要求額137億円・新規事業)
○実施か所数 1万か所(概算要求では2万か所)
○事業費補助単価(「放課後子ども教室推進事業」の実施に必要な費用) 128万8000円(概算要求通り)
安倍首相がつくった教育再生会議は、「放課後子どもプラン」による「放課後子ども教室推進事業」の推進を重要施策として位置づけましたが、概算要求額は大きく削られ、2006年度の「地域子ども教室推進事業」(総額66億円)に近い金額となっています。
文部科学省は生涯学習部局長会議等(1月末に開催予定)で、「放課後子どもプラン」による「放課後子ども教室推進事業」の4月からのスムーズな実施を各自治体に呼びかけていくことにしています。
厚生労働省は、「学童保育の役割・機能とこれまでの水準を守る」立場から、2006年度と比べて約70億円多い190億円を2007年度の学童保育予算として要求し、学童保育のか所数を2万か所に増やすことをめざしています。
また、「71人以上」 の大規模学童保育の分割をすすめるための補助単価の見直し(71人以上の学童保育は3年間の経過措置後に補助金を廃止する)や、か所数を増やすための施設整備費も要求しています。全国学童保育連絡協議会は、この概算要求額が全額実現されるよう、厚生労働省に緊急要望書を出しました。
また、「放課後子どもプラン」によって2つの事業の施設(場所、部屋)や職員が「一体的」になってしまうと学童保育の廃止につながるため、学童保育としての 「専用施設(室)」の確保と「専任指導員」の配置を実施要綱に盛り込むことを強く要望しました。要望事項は次の点です。(説明文は省略)
(1)学童保育に関する来年度の概算要求額が全額認められるよう要望します。
(2)補助基準の改善と実施要件の拡充を要望します。
(3)「放課後子どもプラン」では、二つの事業の「一体化」をしないでください。
(4)「放課後子どもプラン」には「教育委員会主導」とありますが、福祉部局との対等な連携のもとですすめてください。
(5)正確な情報を自治体等に提供することを要望します。
厚生労働省からは、“概算要求の全額が財務省に認められるよう努力している”“二つの事業が同じ施設(室)内や同じ職員でできるものではないことは理解している”との回答がありました。
全国学童保育連絡協議会では、12月上旬にも厚生労働省に対する陳情を行います。あわせて、文部科学省、財務省、内閣府、地方六団体、政党、国会議員にも、同様の趣旨で陳情・懇談を行う予定です。
地方自治体でも、来年度の予算編成作業が始まっています。学童保育をいっきに2万か所に増やし、71人以上の大規模学童保育を分割するためには、地方自治体でも方針をもってそれに必要な予算を組まなければ実現できません。「放課後子ども教室」との「一体化」に反対することも含めて、地方自治体に向けて、私たちの願いを届けていくことが必要です。
10月28日、29日に開催された第41回全国学童保育研究集会には、44都道府県から4449名の参加がありました。愛知県内からの参加者は2154名、愛知県以外からの参加者は2295名です。
参加者の内訳をみると、保護者(OB含む)は2248名、指導員は1989名、その他
(自治体職員、児童館職員、学生、民生委員、議員、連協職員など)は212名でした。
日頃より、各地域では、保護者と指導員が力をあわせてよりよい学童保育づくりに取り組んでいます。この全国研究集会も、保護者と指導員がともに学習・交流する、熱気あふれるものとなりました。
当日の様子は、本誌2月号の特集で紹介します。ぜひごらんください。