ホーム>WEB版協議会だより>2018年4月号〜2019年3月号
2018年12月25日、人手不足の解消策を基準の緩和に求めようとする一部の地方自治体、地方三団体からの提案をふまえて、省令基準に定められた「放課後児童支援員」の資格と配置基準を、これまでの「従うべき基準」という位置づけから「参酌すべき基準」に変更することが、閣議決定されました(以下、「対応方針」)。その内容は以下のとおりです。
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放課後児童健全育成事業(六条の三第二項及び子ども・子育て支援法〔平二四法六五〕五九条五号)に従事する者及びその員数(三四条の八の二第二項)に係る「従うべき基準」については、現行の基準の内容を「参酌すべき基準」とする。
なお、施行後三年を目途として、その施行の状況を勘案し、放課後児童健全育成事業の質の確保の観点から検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
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全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、子どもの命と安全を守り、安心できる「生活の場」を保障するという観点から、学童保育の質の低下、市町村格差の拡大を危惧し、「従うべき基準」の堅持を強く求めています。
職員の資格と員数が「従うべき基準」であることは児童福祉法によって定められていますので、「参酌すべき基準」に変更するには児童福祉法を改定する必要があります。今後は、地方分権一括法案として児童福祉法の改定が第198回通常国会に提出され、議論される見込みです。万が一、法が改定されて省令基準が「参酌すべき基準」になったとしても、市町村は省令基準に従っで定めた現行の条例を、必ずしも改定しなければならないわけではありません。また、現行の条例の内容を変更する際には、市町村議会での議決が必要です。
全国連協は、「児童福祉法の改定に際しては国会で十分な審議を行うこと」「児童福祉法が改定され、条例について地方議会で議論される際にも、質の確保を担保すること」をひきつづき訴えていきます。
本誌「協議会だより」でこれまでもご報告してきたように、地方公共団体の議会は、地方自治法第99条にもとづき、国会または関係行政庁に意見書を提出することができます。この間、複数の自治体で「従うべき基準」の維持を求める意見書が採択されています(2019年2月号参照)。
あらたに、滋賀県議会で「放課後児童クラブの質の確保を求める意見書」、岩手県北上市議会、岩手県滝沢市議会で「放課後児童クラブの職員配置基準等の堅持を求める意見書」、山形県天童市議会で「放課後児童クラブ職員配置基準等の堅持を求める意見書」、埼玉県川越市議会、大分県中津市議会で「放課後児童クラブの職員配置基準等の堅持及び放課後児童支援員等の処遇改善を求める意見書」、福岡県鞍手町議会で「学童保育支援員の資格と配置基準の堅持を求める意見書」が採択されました(2019年1月30日現在)。
ぜひ多くの地域で、地方議会から「従うべき規準」を守るための意見書を提出してもらうための働きかけ・取り組みを進めましょう。地方議会が意見書を提出するつぎの機会は、3月議会です(各自治体の議会の開催日程を確認してください)。
全国連協は、第198回通常国会に提出することを見据えて、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実を求める」「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置を求める」の二種類の請願署名に取り組んでいます。
「学童保育(放課後児童健全育成事業)を拡充し、子育て支援の充実を求める請願書」は厚生労働委員会での付託・採決を、財政措置を求める「学童保育(放課後児童健全育成事業)の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置を求める請願書」は、総務委員会での付託・採決をめざします。
署名の最終集約日はいずれも
2019年5月31日として、100万筆を目標に取り組んでいます。100万筆の実現に向けて、それぞれの地域連絡協議会が自主的に設定した目標や取り組みの様子が全国連協に寄せられています。連絡協議会に加盟する世帯に、「一世帯5筆」「一世帯10筆」を呼びかけたり、未加盟の学童保育にも協力を呼びかけている地域があります。また、それぞれが関連する他団体にも協力を依頼するなどしています。
第一次集約日である2019年1月31日を前に、全国連協事務局には署名についてのお問い合わせの電話やメールも増えてきました。取り組みのQ&Aなどは、全国連協のホームページをごらんください。
全国連協は、学童保育の「従うべき基準」を守るための私たちの取り組みの一つとして、「明日の学童保育を考えるシンポジウム」を開催し、あらためて、学童保育の役割、そして、これからの学童保育のあるべき姿を考えます。
◆日時 2019年2月23日(土)15時開始18時終了(受付は14時から)
◆会場 東京都文京区・文京区民センター2階(3−A会議室)
[シンポジスト]
○山岡 晶さん(神奈川県横須賀市の学童保育に子どもを通わせる保護者)
○小野さとみさん(全国学童保育連絡協議会副会長・東京都町田市の学童保育に勤務する指導員。国が「放課後児童クラブ運営指針」の策定にあたって設けた「放課後児童クラブガイドラインの見直しに関する検討委員会」の委員を務めた。現在、社会保障審議会児童部会放課後児童対策に関する専門委員会専門委員)
○石原剛志さん(静岡大学教授〔教育福祉論、子どもの権利論〕。日本学童保育学会理事。現在、学童保育に子どもを通わせている保護者でもある。『日本の学童ほいく』2017年10月号〜2018年3月号に「学童保育を求め、つくってきた人々 学童保育の歴史から学ぶ」を連載)
◆資料代 1000円(当日、受付でお支払いください)
◆主催 全国学童保育連絡協議会
◆申し込み 定員230名(先着順)。全国学童保育連絡協議会に郵送・ファクス・メールのいずれかで申し込んでください。当日受付もありますが、できるだけ事前の申し込みをお願いします。
人手不足の解消策を、国の「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「設備運営基準」)の緩和に求める一部の地方自治体、地方三団体からの提案により、「設備運営基準」の「従うべき基準」の参酌化が「地方分権の議論の場」で検討されています。2018年11月に開催された地方分権改革有識者会議で、職員の資格と配置を定めた「従うべき基準」を「参酌すべき基準」に変更する方針が示されました(以下「対応方針(案)」)。
これに対する全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)の取り組みやその後の状況を報告します。
◆関係省庁に要望を届けました
23018年12月11日、全国連協は、「公的責任による学童保育制度の拡充と財政措置の大幅増額を求める」要望を厚生労働省と内閣府子ども・子育て本部に、「学童保育の『全国的な一定水準の質』の確保および改善を求める」要望を内閣府地方分権改革推進室に届けるほか、文部科学省と総務省にも要望書を届けました。
また、学童保育に理解を示してくださる国会議員の方々や、「従うべき基準」の参酌化を提案した全国知事会、全国市長会、全国町村会との懇談も行いました。
例年、この時期の要請行動は、政府・各省の来年度の予算編成の時期にあわせて行っていますが、今回は厚生労働省に、「対応方針(案)」が示されるまでの経緯と厚生労働省としての考え、今後の対応について説明を求めました。
厚生労働省からは、国の「設備運営基準」は残したうえで、「従うべき基準」を「参酌すべき基準」とするのが今回の「対応方針(案)」だとあらためて説明がありました。
そして、「対応方針(案)」が閣議決定された場合、年明けの通常国会で「児童福祉法」改定の議論が必要であること、法改定の後、現行の「条例基準」を変更しようとする市町村は、市町村議会での議論が必要であること、厚生労働省としては、2019年度の予算は現行の基準どおりに概算要求をしているとの説明がありました。
全国連協からは、「子どもの命と安全を守り、安心できる生活の場を保障する観点から、学童保育の質の低下、市町村格差の拡大を危惧していること」「『従うべき基準』の堅持を強く求めていること」をくり返し要望しました。
◆「学童保育の『従うべき基準』の参酌化に対する声明」を発表
同11日、全国連協は記者会見を開き、「学童保育の『従うべき基準』の参酌化に対する声明」を発表しました。声明文は全国連協のホームページでごらんになることができます。
記者会見には10社を超える報道機関が集まり、当日の夜には複数の民放テレビ局のニュースでも報道されました。
◆超党派の議員連盟総会開催
2018年12月5日、超党派の国会議員で構成される議員連盟「公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟」(以下、議連)の総会が開催され、自由民主党・公明党・立憲民主党・日本共産党の議員の参加がありました。議連会長の自由民主党の馳浩・衆議院議員(以下、馳会長)は、「議連とすれば、今回の対応方針(案)に、おいそれと『うん』とは言い難い」と述べ、厚生労働省に現行の「設備運営基準」と異なる条例を定めようとする市町村の実態把握と議連への報告を求めました。
また、「対応方針(案)」が地方三団体の強い要望に応えたものだったことをふまえて、厚生労働省に地方議会の受けとめを確認し、埼玉県・岩手県・福岡県・埼玉県東松山市・札幌市の各議会で「従うべき基準」の維持を求める意見書が採択されたことを、その趣旨も含めて報告させました。馳会長からは、「地方議会からの意見書をあげる取り組みがもっとも有効だ」との助言もありました。
◆立憲民主党子ども子育てPTが開催されました
同5日、「立憲民主党子ども子育てPT」が開催され、厚生労働省子ども家庭局子育て支援課、内閣府地方分権改革推進室、全国連協に、学童保育をめぐる諸問題についてのヒアリングが行われました。全国連協は、学童保育の「従うべき基準」の参酌化に関わって、「学童保育が求められる役割を果たすためには、どのような基準が必要か」「国と地方自治体のあり方、地方分権の議論の場について」の二つの視点から発言しました。
◆衆議院厚生労働委員会「従うべき基準」の参酌化に関わって質問
同5日に開催された衆議院厚生労働委員会では、西村智奈美・衆議院議員(立憲民主党・新潟一区)と高橋千鶴子・衆議院議員(日本共産党・比例東北)より、「学童保育の『従うべき基準』の参酌化について」質問が行われました。
衆議院インターネット審議中継で動画を観ることができます。
◆野党六党派が「学童保育の基準緩和の中止を求める要望書」を提出
2018年12月10日、立憲民主党・国民民主党・日本共産党・自由党・社会民主党・無所属の会の野党六党派が、根本匠厚生労働大臣に申し入れるため、「学童保育の基準緩和の中止を求める要望書」を大口善徳厚生労働副大臣に手渡しました。
◆地方議会からの意見書採択
「対応方針(案)」が示された後も、北海道議会、栃木県議会、東京都西東京市議会、福岡県北九州市議会で「放課後児童クラブの質の確保を求める意見書」、東京都武蔵野市議会で、「放課後児童クラブの職員配置基準等の堅持及び放課後児童支援員等の処遇改善を求める意見書」が採択されています(2018年12月20日現在)。
都道府県議会でこのような趣旨の意見書が採択されれば、市町村が現行の基準と異なる条例を定めようとするときの牽制にもなります。ぜひ、各地域の地方議会から意見を提出してもらうための働きかけ・取り組みを進めましょう。
◆100万人の思いを届けよう! 国会請願署名の取り組み
全国連協は、通常国会に提出することを見据えて、「学童保育を拡充し、子育て支援の充実」「学童保育の『従うべき基準』を堅持することが実現できる財政措置」の二つの請願署名に取り組みます。
◎第一次集約日:2019年1月31日
◎最終集約日:2019年5月31日
◎目標:100万筆を目標に取り組みます。
請願署名用紙や取り組む際のQ&Aなどを全国連協のホームページにアップしていますので、ぜひご活用ください。
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引きつづき、国や国会議員への働きかけ、地方議会や自治体からの「『従うべき基準』の堅持を求める意見書」の提出に向けた取り組み、国会請願署名の取り組み、学童保育関係者はもとより、利用していない方々や社会福祉分野の諸団体、マスコミへの働きかけなどを通じて世論を形成するなど、あらゆる手立てをとり、「従うべき基準」の参酌化に反対する取り組みを強めていきましょう。
2018年11月19日、第35回地方分権改革有識者会議・第88回提案募集検討専門部会合同会議が開催され、「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針(案)」(以下、対応方針〔案〕)が示されました(資料全文は、内閣府のホームページに掲載)。
学童保育に関わっては、児童福祉法をつぎのように改定するとされています。
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放課後児童健全育成事業(6条の3第2項及び子ども・子育て支援法(平24法65)59条5号)に従事する者及びその員数(34条の8の2第2項)に係る「従うべき基準」については、現行の基準の内容を「参酌すべき基準」とする。
なお、施行後3年を目途として、その施行の状況を勘案し、放課後児童健全育成事業の質の確保の観点から検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
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同日開催された、「自由民主党学童保育(放課後児童クラブ)推進議員の会」(以下、自民党議連)において、厚生労働省子ども家庭局長はつぎのように説明しました。
「10月に入って、全国市長会の強い要望があって、『参酌すべき基準』とせざるを得なかった。一部の地方自治体、地方三団体からの『指導員のなり手不足で待機児童が解消できない』『基準をさげてほしい』という要望に対して、考えられる方策は二つ。一つは、『従うべき基準』を『参酌すべき基準』とする方法と、もう一つは、現行の基準全体を下げる方法。質の確保の観点からも、今回は、『従うべき基準』を『参酌すべき基準』とすることにした。質の確保という点を補うためにも、施行後3年を目途として状況を勘案し、検討を加えることもつけくわえている」
これに対して、自民党議連代表の吉川貴盛・衆議院議員は、「『従うべき基準』を『参酌すべき基準』とすることは、質の低下、市町村格差の拡大の懸念の声がある。厚生労働省はこれを払拭する努力をしてほしい。説明責任もある。市町村が条例改正するうえで、厚生労働省はどういう指導ができるのか」と厚生労働省に説明を求めました。
子ども家庭局長は、児童福祉法第34条の8の2をあげて、「(市町村が条例で基準を定めるにあたっては、その基準が)児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な水準を確保するものでなければならない、と定めている」と説明するにとどまりました。
全国学童保育連絡協議会や地域連絡協議会から参加した学童保育関係者は、現在、国の基準で「参酌すべき基準」として位置づけられている「児童一人あたりの面積」「子ども集団の規模の上限」が、市町村の条例(最低基準)では、国の基準に従って定められていない実態があること、そのことが子どもたちに深刻な影響を与えていることを発言しました。
吉川議員は最後に、「参酌すべき基準」にされるにあたって、市町村によって格差があってはいけない、厚生労働省にこれだけは行ってほしいと以下の五点あげ、自民党議連として決議し、関係する各大臣に申し入れると述べました。
◆ 放課後児童クラブの「従うべき基準」を「参酌すべき基準」とする場合には、現行の基準の内容を維持するとともに、その考え方などについて事業者側の理解を得るように最大限努める。
◆ 放課後児童支援員に関わる研修を継続して実施できるよう必要な支援を行う。
◆ 放課後児童クラブにおける情報公開、自己評価、第三者評価を行いやすくするとともに、市町村からの適正な指導監督が行えるようにする。
◆ 放課後児童支援員の処遇改善等について必要な財政支援を行うよう最大限努める。
◆ 放課後児童支援員の人員配置や研修受講などの状況について定期的に把握し、その結果に応じて必要な見直しを行う。
今回の基準緩和は、子どもにとっての「最善の利益」を守るものではなく、一部の市町村の都合を優先させたものであり、これが広まれば、学童保育の質を確保することはできず、子どもの放課後の生活を守ることができません。
対応方針(案)は、地方分権推進本部で検討後、正式に決定され、それにもとづいて閣議決定が示されることが考えられます。
ただし、職員の資格と員数が「従うべき基準」であることは、児童福祉法によって定められていますので、これを「参酌すべき基準」に変更するには、児童福祉法を改定する必要があります(閣議決定の後、一括法案として「児童福祉法の改定」が2019年通常国会に提出され、議論される見込み)。
児童福祉法が改定されて「参酌すべき基準」になったとしても、市町村は現行の条例を必ずしも改定をしなければならないわけではありません。また、現行の条例の内容を変更する際には、市議会での議決が必要です。
引きつづき、各地域で国会議員や地方議員に学童保育についての理解を広め、子どものために望ましい基準を守ることをあきらめず、強力に取り組みましょう。
2018年11月19日、「規制改革推進会議」(事務局は内閣府規制改革推進室)の第40回会議を開催し、答申の取りまとめ(以下「答申」)が示されました(資料全文は、内閣府のホームページに掲載)。
これに先だって10月15日に開催された、規制改革推進会議保育・雇用ワーキング・グループでは「保育・雇用ワーキング・グループにおける今期の主な審議事項」として、「学童保育対策(いわゆる「小一の壁」の打破)」があげられていました。この会議の冒頭で、座長の安念潤司氏(中央大学法科大学院教授)はつぎのように述べました。
「官邸での会議で、総理からも、『小一の壁』の打破については、明示的に御言及をいただいたところと考えておりますので、我々としては大変な追い風であるとともに、責任が重大でございます。なんとしても一か月やそこらの間に、少なくともこの項目については、我々としての答申案をまとめなければいけません」
「答申」では、「放課後に子どもを預けられない家庭の問題解決のため、小一の壁となっている制度の改革に取り組む。特に、放課後児童クラブの学校内設置促進に向けた利用時責任を明確化する。また、質を担保しつつ待機児童解消を図るため、運営評価時に自治体の参考となる評価項目を提示する」ことが述べられており、一見、前向きな内容に見えますが、注意が必要です。
保育・雇用ワーキング・グループは、「答申」を発表するまでの1か月間に5回の会議を開催しました。この会議では、自治体から事業を受託して放課後児童クラブと放課後子供教室の一体型の運営をしている民間事業者や、一体型を推進することで「待機児童解消を進めている」と主張する自治体からのヒアリングが行われています。
厚生労働省は今後、「答申」にもとづいて、具体化の検討をはじめます。地方分権改革の動きとあわせて、規制改革の動きにも、学童保育を守る視点からの働きかけが必要です。
2019年度概算要求については『日本の学童ほいく』2018年11月号でお知らせしていましたが、さらにくわしい内容が示されました。
今回の概算要求で新規に要求項目として示された「放課後児童対策の推進」(47.5億円の内数)は、「新たに策定するプランに対応するため、放課後児童クラブの量的拡充とともに、育成支援の内容の質の向上、さらに『放課後児童対策に関する専門委員会』での議論等も踏まえ、子どもの放課後における多様な居場所の確保、児童館等を活用した放課後児童クラブと放課後子供教室の両事業の連携実施の推進を図る」となっています。これについて、つぎのメニューが示されました。
[子どもの居場所の確保]
1.児童館、社会教育施設等の既存の社会資源を活用した放課後の子どもの居場所の確保
○ 待機児童が解消するまでの緊急的な措置として、放課後児童クラブを利用できない主として4年生以上の児童を対象に、児童館、公民館、塾、スポーツクラブ等の既存の社会資源を活用し、モデル事業として放課後等に安全で安心な子どもの居場所を提供する。※実施主体:市区町村、補助率三分の一
○ 児童館等を活用した両事業の連携実施の推進を図るため、地域の人材を活用し、放課後児童クラブと放課後子供教室における横断的な業務の実施を支援する。※実施主体:市区町村、補助率三分の一
2.小規模・多機能による放課後の子どもの居場所の確保
○ 地域の実情に応じた放課後の子どもの居場所を提供するため、小規模の放課後児童の預かり事業及び保育所や一時預かり、地域子育て支援拠点などを組み合わせた小規模・多機能の放課後児童支援を行う。
※実施主体:市区町村 補助率三分の一
メニュー1の「塾、スポーツクラブ等の既存の社会資源を活用」という記述について、厚生労働省の担当者は、「放課後児童健全育成事業者について、厚生労働省令では制限を設けていない。ただし、放課後児童健全育成事業実施要綱では、『放課後児童健全育成事業と目的を異にするスポーツクラブや塾など、その他公共性に欠ける事業を実施するものについては、本事業の対象とならない』としている」「ただし、概算要求にあるこの事業は放課後児童クラブとは別のもの」と説明しました。
待機児童解消を優先するあまり、子どもの集団の規模の上限を考慮せずに受入児童数を拡大したり、ほかの事業を学童保育の受け皿として活用することでは、学童保育の役割を果たすことはできません。
「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」「放課後児童クラブ運営指針」にもとづいた運営を、すべての自治体で行うことが不可欠であるという世論を形成していきましょう。
2018年10月19日、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は神奈川県横浜市内で今年度(2018年10月から2019年10月まで)の定期総会を開催しました。
総会では、2017年度の活動報告、決算報告が行われ、会計監査報告を受けたのち、いずれも承認されました。つづいて、今年度の活動方針(本誌2019年1月号に掲載予定)と予算案についても承認されました。
また、第54回全国学童保育研究集会を、2019年秋に京都府で開催することが決定しました。
総会で選出された今年度の全国連協役員はつぎのとおりです。
◆会長 木田保男(三多摩・保護者・再)
◆副会長 出射雅子(京都・保護者・再)、小野さとみ(三多摩・指導員・再)、
角野いずみ(岡山・指導員・再)、嘉村祐之(岩手・指導員・再)、
賀屋哲男(愛知・専従職員・再)、川崎みゆき(大阪・指導員・再)、
木村美登里(神奈川・指導員・再)、佐藤正美(埼玉・指導員・再)、
中野明彦(奈良・保護者・再)、西田隆良(埼玉・保護者・新)、
早川雅代(石川・指導員・再)、平野良徳(兵庫・保護者・再)、
山崎善明(神奈川・保護者・再)
◆事務局長 高橋 誠(東京・指導員・再)
◆事務局次長 佐藤愛子(職員・再)、千葉智生(職員・再)
2018年10月19日、「地方分権改革有識者会議 提案募集検討専門部会」の会議が開催されました(資料全文は、内閣府のホームページに掲載されています)。
この日は、「平成30年の提案募集方式に係る重点事項について」が議題でした。この間、内閣府と関係府省との間で調整を行う提案について、関係府省から第二次回答が公表されています。厚生労働省からの第二次回答はつぎのとおりです。
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◇「放課後児童健全育成事業の基礎資格に係る実務経験(総勤務時間数)の見直し」
[厚生労働省の回答]当該通知については、「総勤務時間が2000時間程度」と示していることで、自治体に拘束がかかっているとのご指摘を踏まえ、改正することとしたい。
◇「放課後児童健全育成事業に係る放課後児童支援員の資格要件の対象者の拡大」
[厚生労働省の回答]提案団体からの見解等を踏まえ、多様な類型のある認可外保育施設等についてどのように考えるか、年末までに整理したい。
◇「放課後児童支援員の資格取得制度等の見直し」
[厚生労働省の回答]放課後児童支援員には、その必要とされる専門性に鑑み、保育士や教員等の有資格者または実務経験がある方になっていただくことが必要であると考えている。一方で、支障事例のような事態が生じることも承知しており、経過措置期間経過後の放課後児童支援員研修のあり方について、引き続き検討していく。
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また、同会議では、厚生労働省子ども家庭局局長が、「放課後児童クラブに係る『従うべき基準』等の見直し」について、ヒアリングを受けました。
後日、全国連協事務局が、ヒアリングでの発言内容について厚生労働省に確認したところ、「2017年末に発表された閣議決定以降、現在も基準については検討中である。ご提案団体からの声は、この事業は現場あるいは市町村の取組から成り立ってきたという経緯があり、地方としての権限を柔軟に認めてほしいということで変わっていない。厚生労働省としては、『子どもの安全性の確保等一定の質の担保をしつつ地域の実情等を踏まえた柔軟な対応ができるよう』検討しているところである。ヒアリングでは、『ひきつづき、検討します』と返答している」とのことでした。
次項に紹介する「学童保育の『従うべき基準』の堅持と早期拡充をめざす決議」は、「従うべき基準」を守るための私たちの取り組みの一つです。
2017年12月に発表された閣議決定にもとづいて、「地方分権の議論の場」では、国が定めた学童保育の「従うべき基準」(「放課後児童支援員」の原則複数配置)の廃止、または参酌化について検討が行われています。
全国連協では、子どもの命と安全を守るうえで欠かせない「従うべき基準」を堅持するための取り組みを進め、その一環として、地方議会や自治体から「『従うべき基準』の堅持を求める意見書」を国に提出することに取り組んできました。
このたび、「神奈川県の学童保育(放課後児童クラブ)を支える議員連盟」からの要請もあり、10月19日に行われた全国連協の定期総会において、「学童保育の『従うべき基準』の堅持と早期拡充をめざす決議」(以下、決議文)が採択されました。
以下、その内容を一部抜粋して、ご紹介します(全文は全国連協のホームページに掲載しています)。
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(前略)私たちは、この総会において確認された「子どもの命と安全を守る上で欠かせない『学童保育の[全国的な一定水準の質]』を確保するために、『従うべき基準』を堅持し、早期に拡充させる取り組みをすすめます」という方針のもと、世論の理解を得るとともに、国会への請願をはじめ国、国会議員、地方議会および地方自治体に対して、あらゆる手立てを検討し、取り組みを進めていく。
以上、決議する。
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全国連協事務局では、この決議文や新しく刊行した冊子『学童保育情報2018 −2019』を、厚生労働省をはじめ文部科学省、内閣府子ども・子育て本部、内閣府地方分権改革推進室、総務省などの関係各省、学童保育に関わる二つの議員連盟、私たちが2018年4月から7月にかけて取り組んだ請願署名の紹介議員などに届けます。
各地域で、地方議会や自治体から「『従うべき基準』の堅持を求める意見書」を提出してもらうための動きがあるようでしたら、ぜひ、全国連協事務局までお知らせください。
決議文にもあるように、世論の理解を得るとともに、国会への請願をはじめ、国や国会議員、地方議会および地方自治体に対して、あらゆる手立てを検討して取り組みを進めていきましょう。
2018年8月31日に、学童保育(放課後児童クラブ)に関係する2019年度予算の概算要求が発表されました。概算要求とは、各省が財務省に予算を要求するものです。今年末に財務省の査定があり、政府予算案が決まります。その後、来年の通常国会で審議が行われて、予算が決定します。
放課後児童対策に関わる概算要求はつぎのとおりです。
◆ 「放課後児童クラブ運営費等」655.7億円+事項要求
◆ 「放課後児童クラブ施設整備費」143.9億円
◆ 「放課後児童対策の推進」47.5億円の内数(新規)
◆ 「放課後児童クラブ等のICT化の推進」9.3億円(新規)
* 「事項要求」とは……概算要求時に内容などが決定していない事項について、金額を示さずに予算確保を要求し、予算編成過程でその内容が明らかになった際に、追加で要求するもののこと。
* 「内数」とは……その補助金が、一つの事業に使われるものではなく、複数の事業に使われる場合に用いられる用語。
このたびの概算要求について、国はつぎのように述べています。
● 「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月15日閣議決定)において、「女性の就業率の上昇や保育ニーズの高まりを踏まえ、2023年度末までに放課後児童クラブの約30万人分の更なる受け皿拡大や育成支援の内容の質の向上などを内容とする新たなプランを今夏に策定する」こととされており、本プランに掲げる受入児童数の拡大について、予算編成過程で検討。
● 放課後児童対策の推進を図るため、児童館、公民館等の既存の社会資源の活用や、小規模・多機能による子どもの放課後における多様な居場所の確保等を推進。
● さらに、放課後児童クラブの育成支援の内容の質の向上を図るため、先進事例の普及や放課後児童クラブを巡回するアドバイザーを市町村に配置する事業等を実施。
「放課後児童対策の推進」について厚生労働省は、「児童館、公民館等の既存の社会資源の活用や、小規模・多機能による子どもの放課後における多様な居場所の確保等を図る。また、放課後児童クラブの育成支援の内容の質の向上を図るため、先進事例の普及や放課後児童クラブを巡回するアドバイザーを市町村に配置する事業等を実施する」ものだと説明しています。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)事務局が厚生労働省に、「『小規模・多機能による子どもの放課後における多様な居場所』はどのようなものを想定しているか」確認したところ、「放課後児童クラブとはまったく別のものと考えている」とのことでした。また、「放課後児童クラブを巡回するアドバイザー」については、「予算要求の段階なので、具体的にはこれからつめる。どの職種の方をアドバイザーとして配置するかもまだ決めていない」とのことです。
なお、指導員の資格や「質の向上」に関わる、「放課後児童支援員認定資格研修事業」「放課後児童支援員等資質向上研修事業」「都道府県認定資格研修講師養成研修」は、今回示された概算要求とは別枠で予算要求されていること、「放課後児童支援員等処遇改善等事業」「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」は事項要求に含まれているとの説明もありました。
2018年9月14日、国は、文部科学省生涯学習政策局長・文部科学省初等中等教育局長・文部科学省大臣官房文教施設企画部長・厚生労働省子ども家庭局長の連名で、「新・放課後子ども総合プラン」を発表しました。
これは、国が2014年に発表した「放課後子ども総合プラン」の進捗状況や、児童福祉や教育分野における施策の動向も踏まえ、「放課後児童クラブの待機児童の早期解消」「放課後児童クラブと放課後子供教室の一体的な実施の推進等」により、小学校に就学している「全ての児童の安全・安心な居場所の確保を図ること」などを内容とした、向こう5年間を対象とする、新たな放課後児童対策のプランです。
「放課後児童クラブ」については国全体の目標として、「2021年度末までに約25万人分を整備し、待機児童の解消を図る。その後、女性就業率の更なる上昇に対応できるよう整備を行い、2019年度から2023年度までの5年間で約30万人分の整備を図る」ことをあげています。
「新・放課後子ども総合プラン」とこれまでの「放課後子ども総合プラン」を比較すると、プラン策定の背景が、新たに書き起こされています。また「3 国全体の目標」として、つぎの記述が加えられました。
「放課後児童クラブは、単に保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童を授業の終了後に預かるだけではなく、児童が放課後児童支援員の助けを借りながら、基本的な生活習慣や異年齢児童等との交わり等を通じた社会性の習得、発達段階に応じた主体的な遊びや生活ができる『遊びの場』『生活の場』であり、子どもの主体性を尊重し、子どもの健全な育成を図る役割を負っているものであることを踏まえ、こうした放課後児童クラブの役割を徹底し、子どもの自主性、社会性等のより一層の向上を図る」
なお、「7 市町村における放課後児童クラブ及び放課後子供教室の実施」のなかの「(6)民間サービス等を活用した多様なニーズへの対応」は、現行のプランにも設けられていた項目ですが、以下のように、変更されています。
【現行】地域における民間サービスを活用し、公的な基盤整備と組み合わせることが適当である→【新】地域における民間サービスを活用し、公的な基盤整備と組み合わせることも有効である。
【現行】特に、自立度が高まる高学年の児童については、放課後の過ごし方として、塾や習い事等も重要な役割を担っていることに留意する必要がある→【新】削除
* * *
学童保育を必要とする家庭が増加しているなかで、子どもたちが放課後や学校休業日に安全に安心して過ごせる場を求める声はさらに高まっており、学童保育の量的な拡大と質的な拡充の両方が、着実に図られることが求められます。それには、市町村の施策のさらなる拡充、十分な財政措置を図ることと同時に、国の制度のさらなる拡充が必要です。
その一つとして、厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」に示された「従うべき基準」(指導員の資格・職員配置)を堅持するための私たちの取り組みは大変重要です。ひきつづき、各地域の動きなども情報交換しつつ、「従うべき基準」を堅持するための学習や働きかけを精力的に進めていきましょう。
全国連協は毎年、5月1日現在の学童保育の実施状況について、調査しています。今年度の調査結果がまとまりましたので、概要をご報告します。
◆ か所数と「支援の単位」数、入所児童数…… か所数は2万3315か所、「支援の単位」数は3万1265でした(表1)。
2018年8月31日に、学童保育(放課後児童クラブ)に関係する2019年度予算の概算要求が発表されました。概算要求とは、各省が財務省に予算を要求するものです。今年末に財務省の査定があり、政府予算案が決まります。その後、来年の通常国会で審議が行われて、予算が決定します。
放課後児童対策に関わる概算要求はつぎのとおりです。
年 | 学童保育数 | 「支援の単位」数 | 入所児童数 |
2009年 | 18,475 | - | 801,390人 |
2010年 | 19,744 | - | 804,309人 |
2011年 | 20,204 | - | 819,622人 |
2012年 | 20,846 | - | 846,967人 |
2013年 | 21,635 | - | 888,753人 |
2014年 | 22,096 | - | 933,535人 |
2015年 | - | 25,541 | 1,017,429人 |
2016年 | - | 27,638 | 1,076,571人 |
2017年 | - | 29,287 | 1,148,318人 |
2018年 | 23,315 | 31,265 | 1,211,522人 |
2014年4月に策定された厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下、設備運営基準)にもとづいて、多くの市町村では最低基準となる条例を定めました。「おおむね40人以下とする」と定められた「支援の単位」を全国連協は、学童保育の基礎的な単位と考を集計しています。
年々、「支援の単位」は増えてきているものの、か所数の伸びは、2014年の2万2096か所と比較して、4年間で1219増にとどまります。子どもの所属を明確に区分し、それぞれに施設を整備し、2人以上の適切な指導員数を配置して新設されたものなのか、既存の大規模な学童保育を「支援の単位」に分割したものなのか、そして、分割して増えた「支援の単位」の施設や子どもの集団の分け方など、分割の方法や日々の保育のあり方が、子どもに安全で安定した生活を保障できるものになっているのかが問われます。
入所児童数は121万1522人でした。国は、2014年に策定した「放課後子ども総合プラン」で、「2019年度までに放課後児童クラブについて約30万人分を新たに整備する(約90万人→約120万人)」目標を立て、その後さらに1年前倒しで、2018年度末までにこれを実現する方策を検討するとしていました。2018年5月時点で、目標はほぼ達成されたことになります。ただし、子どもたちが過酷な状況で過ごすことになる大規模化を容認したままでの入所児童数拡大であれば、子どもが負担に思うことなく学童保育に通いつづけることは困難です。
◆ 把握できた待機児童数……1万6957人。学童保育にはこれまで「定員」「人数規模」などについての国の基準がなかったため、入所に制限を設けていない施設や自治体もありました(この場合、「待機児童」は「ゼロ」とカウントされます)。そのため、市町村が実態を正確に把握できていないことも推測されます。
なお、「待機児童ゼロ」は、必ずしも、「学童保育が充足している」ことを表しているとはかぎりません。市町村のなかには、「全児童対策事業」や「放課後子供教室」などの事業を、学童保育の待機児童の受け皿として利用し、その結果、「待機児童ゼロ」としている場合もあります。目的が異なる事業では、学童保育の役割を果たすことは不可能です。
* * *
なお、今年度の報道発表資料は、全国連協のホームページでごらんになることができます。
2018年8月10日、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協) は、「公的責任による学童保育制度の拡充と財政措置の大幅増額を求める」要望を、厚生労働省に届けました。
これまでは、政府・各省の来年度の予算編成に向けた概算要求が発表される(8月末頃)以前の6月に要請行動を行ってきました。しかし今回は、「学童保育(放課後児童健全育成事業)の『従うべき基準』を堅持することを求める」請願署名の取り組みの一環として、学童保育に関わる二つの議員連盟の総会開催などを優先したこともあり、要請行動の時期がずれ込みました。
今回、厚生労働省に、重点をおいて要望した点はつぎのとおりです。
[前文の要旨]
◆2014年策定の「放課後子ども総合プラン」では、5年間で利用児童の30万人増が打ち出されました。2016年発表の「ニッポン一億総活躍プラン」では、この5年計画を一年前倒しし、2018年度までに実現するとしています。2019年度以降も、国が積極的に学童保育の量的拡大や、質の向上を進めていくことが必要です。
◆2017年末の「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」において、厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「設備運営基準」)の「従うべき基準」の廃止、または参酌化を検討する方向が示され、現在、「地方分権」の場でこれらについての議論が進められています。私たちは子どもの命と安全を守るうえで欠かせない「学童保育の『全国的な一定水準の質』」を確保するために、「設備運営基準」で指導員の資格と配置を定めた「従うべき基準」を堅持し、早期に拡充することが必要不可欠であると考えます。
[要望項目]
1 学童保育の国の制度の拡充を求めます
2 量的な拡大、質的な拡充が図られるよう、国としての十分な財政措置を求めます
・ 学童保育を必要とするすべての子どもたちが入所できるよう、公的責任で学童保育を整備すること。具体的には、「高学年の子どもたちも含めて、学童保育を利用したくてもできない『待機児童』を解消するためにニーズ調査を行い、実態に即した必要量の把握」「事業計画の見直しや次期の事業計画の策定の際には前述の調査結果を反映した改善を行うよう、市町村に周知・徹底」を実現してください。
・ 施設整備に対する財政措置を講じること。具体的には、「防災対策としての既存施設の改修、備品購入、移転関連費用補助の継続」「耐震補強のための予算確保」を実現してください。
3 指導員の処遇の改善、保育内容の向上を図るための必要な措置を求めます
・ 指導員の処遇の改善をいっそう強力に推進すること。具体的には、「放課後児童支援員等処遇改善等事業」と「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」の補助単価の増額と、両事業を積極的に活用するよう市町村に働きかけることを求めます。
4 「設備運営基準」を堅持し、早期に拡充するとともに指導員の国家資格制度についての検討を求めます
・ 「設備運営基準」を検討するにあたっては、学童保育の目的・役割を果たすことを目的とし、「子どもの最善の利益」を盛り込んだ「子どもの権利条約」「児童福祉法」の理念を遵守する立場に立ち、厚生労働省において検討することが必要です。
・ 放課後児童支援員の配置基準は、事業内容の根幹にかかわることであり、保育内容の質の低下に直結します。「登録児童数が少ない場合」「地域の人口が少ない場合」「学校との連携が可能な場合」などであっても緩和しないことを求めます。
・ 目的・役割が異なる他事業との兼務では、学童保育の目的・役割を果たすことはできません。他事業との兼務を理由に、放課後児童支援員の配置基準を緩和しないでください。
・ 「放課後児童支援員認定資格研修」において、科目数と時間(16科目24時間)を一部緩和することは、「職務を遂行する上で必要最低限の知識及び技能の習得とそれを実践する際の基本的な考え方や心得を認識する」という「認定資格研修」の目的を果たすことはできません。緩和を行わず、指導員の専門性を保障できる内容にしてください。
・ 放課後児童支援員の基礎要件の条件を切り下げず、「設備運営基準」策定時の内容をもとに、学童保育の指導員としての専門性を保障できる条件整備を求めます。
・ 「認定資格研修」には、「全国的な一定水準の質」を確保することが求められており、人材の確保は、都道府県の重要な責務とされています。「認定資格研修」の実施主体に指定都市を含めず、都道府県を実施主体として「認定資格研修」を行うことを求めます。
5 学童保育の「設備運営基準」の改善・拡充を図ってください。
6 国としての制度の創設と財政措置を講じることを求めます
7 「放課後子ども総合プラン」において、「放課後子供教室」と学童保育はそれぞれの事業として実施する方針を堅持し、都道府県および市町村に周知・徹底することを求めます
8 「東日本大震災」「平成28年熊本地震」で被災した地域の学童保育の復旧・復興を進め、学童保育を必要とする家庭・子どもが安心して利用できるよう国としての支援を求めます
* * *
要請行動には、全国各地の連絡協議会および全国連協から計23名が参加し、地域の現状を報告し、それぞれの要望内容を伝えました。また、概算要求についての見通し、今夏に策定される予定の新たな放課後児童対策のプランについて、「設備運営基準」の「従うべき基準」をめぐっての動きについて質問しました。
この間、「地方分権」の場では、「設備運営基準」についての検討が行われています。2018年2月に開催された「地方分権改革有識者会議 提案募集検討専門部会」で厚生労働省は、「平成30年8月を目途に具体的な検討を進めてまいりたい」と発言していましたが、同年8月に行われたヒアリングでは、「ひきつづき考えさせていただきたい」と回答しており、結論を先延ばしにしています。この間の私たちの「従うべき基準」を堅持することを求める取り組みが、厚労省の判断に歯止めをかけているという側面もあるのではないでしょうか。
ひきつづき、各地域の動きなども情報交換しつつ、「従うべき基準」を堅持するための学習や働きかけを精力的に進めていきましょう。
2018年6月18日に大阪府北部を震源として発生した「大阪北部地震」は、最大震度六弱を観測し、大阪府をはじめ、京都府、滋賀県、兵庫県、奈良県でも、交通網の混乱、施設の破損、ガス・水道の停止などの被害が発生しました。
また、2018年7月5日から西日本を中心に発生した集中豪雨「平成30年7月豪雨」では、河川の氾濫、大規模な浸水、土砂崩れなど、広島県・岡山県・愛媛県をはじめ13府県に甚大な被害をもたらしました。
亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
全国学童保育連絡協議会は、「『大阪北部地震』により被害を受けた地域および学童保育の防災等への対応を求める緊急要望書」「『平成三〇年七月豪雨』による被害のあった学童保育および地域への対応を求める緊急要望書」を厚生労働省に提出しました。
また、「平成30年7月豪雨」からの復旧への支援、および、子どもたちや学童保育指導員へのケアが必要になるであろうこと、そして、今回の災害が県域を越えて広域に及んでいることから、支援のための募金を呼びかけることにしました。くわしくは78ページをごらんください。
2017年末の閣議決定「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」では、省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下、設備運営基準)に示された「従うべき基準」(指導員の資格・職員配置)を「参酌化すること」について、「地方分権の議論の場」で検討し、2018年度中に結論を得るとの方針が示されています。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)が呼びかけた、「従うべき基準」を堅持することを求める請願署名の取り組み(『日本の学童ほいく』2018年6月号参照)には、たくさんのご協力・ご賛同をいただきました。この場を借りて、御礼申し上げます。
『日本の学童ほいく』2018年8月号81ページでお知らせしたように、第196回国会の請願提出の締め切りであった2018年6月13日までに、衆議院で46人、参議院で20人の議員が紹介議員を引き受けてくださり、合計で20万300筆の請願署名が国会で受理されました。当初6月20日を予定していた会期末が7月22日に延長されたことを受けて、請願提出も7月13日まで可能になり、最終的には、衆議院で53人、参議院で23人の議員が紹介議員を引き受けてくださり、合計で20万7993筆の請願署名が国会で受理されました。
この請願は、衆議院・参議院ともに厚生労働委員会に付託されましたが、同委員会で審査が行われ、採択されるためには、国会議員へのさらなる働きかけが必要だとして、全国連協は、同委員会の委員長はじめ理事を務める国会議員数名に「この請願について、厚生労働委員会でぜひ採択してほしい」と陳情しました。
しかし残念ながら今回の請願は、「採択」でも「不採択」でもなく、理事会の協議により委員会での請願の審査を保留する「審査未了」となり、7月22日に国会は閉会となりました。地方議会とは異なり、つぎの国会で「継続審査」される仕組みではありませんので、つぎの国会に向けては、あらたに働きかけをはじめることが必要になります。
請願については残念な結果となりましたが、この間の取り組みを通して、「従うべき基準」が廃止、または「参酌すべき基準」に引き下げられてしまうと、学童保育の現場にどのようなことが起こり得るのかを広く訴える機会になりました。そのような事態になれば、子どもたちの保育にあたるうえで必要な専門的な知識及び技能を有した「放課後児童支援員」をまったく配置しないこと、ともすれば、資格のない大人がたった一人で子どもたちの保育にあたることも起こり得ます。これでは、子どもたちに安全で安心できる「毎日の生活の場」を保障することはできません。
全国連協はこれに断固として反対し、今後も引きつづき、「従うべき基準」を堅持するための取り組みを進めていきます。
「自由民主党学童保育(放課後児童クラブ)推進議員の会」が、2018年6月19日に開催した総会で「放課後児童クラブの『従うべき基準』の維持を求める決議」を行いました(『日本の学童ほいく』2018年8月号82ページ参照)。
同年7月4日、吉川貴盛代表をはじめ8名の衆議院議員が、厚生労働省大臣室にて、加藤勝信大臣にこの決議を申し入れました。
決議と、その申し入れがなされたことは、前述した請願署名の紹介議員の依頼や、採択に向けての協力依頼の際にも、私たちの取り組みを後押しする大きな力となったように思います。
各地域の学童保育関係者の皆さんが、連絡協議会の総会や研究集会で地元から選出された国会議員を来賓として招待するなど、日常的に働きかけ、学童保育への理解や支援を得て、広げてきたことが、今回の結果にもつながっています。
埼玉県議会の平成30年6月定例会で、「従うべき基準」を堅持することを求める意見書が採択されました。
埼玉県学童保育連絡協議会(以下、県連協)はこれまで、「従うべき基準」を堅持するための意見書を県議会としてあげてくれるよう、県議会への働きかけを行ってきました。県連協の意見もふまえて県議会の最大会派である自由民主党が「意見書案」を議会運営委員会に提案し、これにすべての会派が賛同して、2018年7月6日の本会議に提案され、採択されました。
採択された意見書は「埼玉県議会議長 齊藤正明」名義で、衆議院・参議院議長、内閣総理大臣、財務大臣、厚生労働大臣、少子化対策担当大臣、男女共同参画担当大臣、地方創生担当大臣宛てに提出されます。
地方公共団体の議会は、地方自治法第99条にもとづき、意見書を国会または関係行政庁に提出することができます。ぜひ多くの地域で、地方議会から「従うべき規準」を守るための意見書を提出してもらうための働きかけ・取り組みを進めましょう。地方議会が意見書を提出するつぎの機会は、9月議会です(それぞれ日程を確認してください)。
引きつづき各地域の動きなども情報交換しつつ、「従うべき基準」を堅持するための学習や働きかけを精力的に進めていきましょう。
2018年6月4日、第10回「放課後児童対策に関する専門委員会」(以下、専門委員会)が開催されました(資料全文は厚生労働省のホームページに掲載されています)。
今回の専門委員会では、冒頭に、吉田 学・子ども家庭局長が、6月1日に行われた加藤勝信・厚生労働大臣の閣議後記者会見の発言にふれて、新たな放課後児童対策のプランを今夏に策定すると述べました。これは、2023年度末までに放課後児童クラブの約30万人分のさらなる受け皿整備を図るというものです。制度や予算、現場での取り組みについては、これから検討を行うそうです。
専門委員会での意見交換のなかでは、「放課後児童クラブの今後のあり方」「質の確保」にあたって、省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「設備運営基準」)や「放課後児童クラブ運営指針」で示された内容を現場で浸透させている段階であり、徹底的に普及していく必要があるという主旨の発言がありました。
新たな放課後児童対策プランには、この専門委員会での議論の内容も反映されることになっています。
2017年末の閣議決定「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」では、「設備運営基準」に示された「従うべき基準」(指導員の資格・職員配置)を「参酌化すること」について、「地方分権の議論の場」で検討し、2018年度中に結論を得るとの方針が示されています。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)が呼びかけた、「従うべき基準」を堅持することを求める請願署名の取り組み(『日本の学童ほいく』2018年6月号参照)には、たくさんのご協力・ご賛同をいただきました。この場を借りて、御礼申し上げます。
今国会の請願提出の締め切りである2018年6月13日までに、衆議院で46人、参議院で20人の議員が紹介議員を引き受けてくださり、合計で20万300筆の請願署名が国会で受理されました(なお、今国会の会期末は当初、6月20日を予定していましたが、その後、7月22日に延長されました)。
請願は、衆議院では厚生労働委員会に付託されました。委員会で審査を行い、議院の会議で議論する必要があるか否かを区分する、採択すべきものか不採択とすべきものかを決定するにいたるまでには、国会議員へのさらなる働きかけが必要です。
今後の動向については、次号以降の「協議会だより」でご報告します。
全国連協では、「設備運営基準」の「従うべき基準」を堅持することについて、学童保育に関わる二つの議員連盟に働きかけ、それぞれの議員連盟の総会が開催されましたので、報告します。
〈公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟〉
超党派の国会議員で構成される議員連盟です。自由民主党の馳浩・衆議院議員が会長を、国民民主党の泉 健太・衆議院議員が幹事長を、公明党の石川博崇・参議院議員が事務局長を務めています。
2018年6月6日に行われた総会には、『日本の学童ほいく』2018年7月号「協議会だより」で報告した「放課後児童健全育成事業の『従うべき基準』に関する実態調査の結果について」という資料が提出されました。これは、厚生労働省と内閣府地方分権推進事務局とが共同で実施した調査です。学童保育の担当が地方分権の担当と協議したうえで各自治体の回答を提出することが求められており、「従うべき基準」を「参酌すべき基準」に引き下げることを前提としたかのような、大変恣意的な設問と選択肢が設けられています。
これについては議員連盟に所属する議員からも、「なぜ、学童保育の担当と地方分権の担当との協議を必要としたのか」という指摘があり、内閣府地方分権改革推進室は、「市町村としての公的な回答をしてもらうために協議を求めた。調査の実施についても、一定関与するのがのぞましいと考えた……」と説明していました。
議員からは、このほかにも「人材が集まらない理由は基準だけなのか。処遇改善などに解決策があるのではないか」との意見があげられました。
〈自由民主党学童保育(放課後児童クラブ)推進議員の会〉
吉川貴盛・衆議院議員が代表を、河井克行・衆議院議員が副代表を、亀岡偉民・衆議院議員が幹事長を、大塚高司・衆議院議員が事務局長を、笹川博義・衆議院議員が事務局次長を務めています。
同年六月一九日に開催された総会では、「自由民主党学童保育(放課後児童クラブ)推進議員の会代表 吉川貴盛 他一同」として、「放課後児童クラブの『従うべき基準』の維持を求める決議」がされました。以下、その内容を紹介します。
(前略)下記の事項を政府に対して要望する。政府においては、これを真摯に受け止め、当該事案について、適切な対応をお取り頂くよう強く求める。
記
1 放課後児童クラブにおける「従うべき基準」とされている資格及び人数要件は、いずれも、児童の安全確保、放課後児童クラブにおける育成支援の内容の質の向上という観点から必要なものであることを踏まえた上で、地方分権提案への対応について検討をされたいこと。
2 1の検討にあたっては、自治体のみならず、放課後児童クラブの運営者や利用者の声も聴取すること。
3 地域により放課後児童クラブの継続が困難となる事例の検証を行い、いかなる場所でも放課後児童クラブが安定的に継続して運営されるよう、制度面、財政面から適切な措置を講ずること。
4 1から3に掲げた事項のほか、「従うべき基準」が策定された経緯や放課後児童クラブの多様性にも留意し、「従うべき基準」の安易な見直しを行わないこと。
この決議は、後日、関係する各大臣に提出されることになっています。これらも活用して、各地域でも、「従うべき基準」を堅持するための学習や働きかけをぜひ進めていきましょう。
「設備運営基準」について検討を行っている「地方分権改革有識者会議 提案募集検討専門部会」の会議は、「非公表」、つまり「傍聴不可」で行われており、「議事概要」のみが後日公開されることになっています。
内閣府のホームページには、2018年5月11日に開催された会議の議事概要が掲載されています。この日の会議は冒頭、「詳細な調査により、『従うべき基準』の見直しに向けた一定の方向性が出たものと思料。様々な形で放課後児童クラブにおける基準の柔軟化を求めている地方のニーズが高いことが確認できたため、ぜひ閣議決定に沿って参酌化していただきたい」という部会長の発言からはじまりました。
全国知事会の代表としてヒアリングを受けた、尾崎正直・高知県知事は、「この前提となる資格だが、果たして○○士という資格が本当に必要だろうかということもあるのではないか。事実上、地域の中で子育て経験も大変豊富で、地域の子どもたちのこともよく知っていて、人望のある方がいらっしゃる場合、恐らく、昨日今日おいでになった○○士という資格保有者の方よりも、そのような方にお任せする方が安心だとおっしゃる地域の保護者の方々もいるのではないか」と発言しました。これを受けて、部会のメンバーである構成員が、「もともとこの資格要件というのは参酌すべきものであって、これを『従うべき基準』にするということ自体に非常に違和感がある。この何々士等を資格にすることについて、それぞれに資格は重要であるとしても、『従うべき基準』にしておくということの合理性がそもそもないように感じている」と発言し、部会長は、「地域全体で放課後事業を実施している場合、実際に地域住民の声が直に地方公共団体に入るため、参酌化しても地方公共団体が危ない運営をするわけがない」とつづけました。
構成員たちは口々に「参酌化せよ」と厚生労働省に厳しく迫り、部会長は、「どこの部分について参酌化、少なくともここは参酌できるといったことを今の段階では回答することは難しいか」「ここは参酌化の方向でぜひご検討いただきたいということであらためてお願いしたい」と結論を急がせました。
これらの意見に対して厚生労働省は、「やはり一定の資格という形で、外形的にも経験則以上にきちっと身につけていることが担保されていることが必要であるというのは基本だろうと思うが、それをどういう形で、先ほどの人数の話も含めてやり繰りするのか、あるいは担保をするのかというところについては、すべての地域で放課後児童クラブを展開するために、現場としていろいろな困難、あるいは工夫があるということならば、そこも含めて御議論を今後させていただきたい」「制度を作っている者として、どういう形でどこまでを国として担保すべきかというところが究極の議論であり、その中で地域の実情に応じて、どこまでの幅、柔軟性をそれぞれの地域で運営を確保するために持たせるか」「『従うべき基準』の中でどのようなアプローチがあるのか、あるいは参酌化という形で、ノールールではなくて、ある程度きちっと外形的にやれる方策があるのか、というところについては、引き続き幅広く研究・検討し、議論させていただきたい」などと回答しました。次回の会合は、事務局と調整のうえ、開催することとされています。
* * *
「従うべき基準」が廃止、または「参酌すべき基準」に引き下げられてしまえば、子どもたちの保育にあたるうえで必要な専門的な知識及び技能を有した「放課後児童支援員」をまったく配置しないこと、ともすれば、資格のない大人がたった一人で子どもたちの保育にあたることも起こり得ます。これでは、子どもたちに安全で安心できる「毎日の生活の場」を保障することはできません。
全国学童保育連絡協議会は、これに断固として反対し、今後も引きつづき、「従うべき基準」を守る取り組みを進めていきます。
2018年5月15日、第9回「放課後児童対策に関する専門委員会」(以下、専門委員会)が開催されました(資料全文は厚生労働省〔以下、厚労省〕のホームページに掲載)。
今回の専門委員会では、子どもの権利条約の休息・余暇などの視点(第31条)、子どもたちの生活が学校に局限化される傾向にあることに関わっての課題、「放課後児童クラブの今後のあり方」を盛り込んだ「中間とりまとめ(素案)」が示され、意見交換が行われました。
「放課後児童クラブの今後のあり方」には、「放課後児童クラブの質の確保を考えるにあたり、設備運営基準及び運営指針に基づき、子どもの最善の利益を第一に、子どもの視点に立って」という点が明確に記述されていました。第10回の専門委員会では、「中間とりまとめ(案)」が示される予定です。
2017年末の閣議決定「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」では、省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下、設備運営基準)に示された「従うべき基準」(指導員の資格・職員配置)を「参酌化すること」について、「地方分権の議論の場」で検討し、2018年度中に結論を得るとの方針が示されています。
「地方分権の議論の場」である「地方分権改革有識者会議 提案募集検討専門部会」(以下、専門部会)は、専門部会の部会長・構成員、内閣府地方分権改革推進室の職員で構成されています。会議は傍聴不可で、「議事概要」が後日公開されます(委員名簿や「議事概要」は内閣府のホームページに掲載)。
2018年2月19日に開催された第70回専門部会では厚労省へのヒアリングが行われました。「議事概要」には、委員が「従うべき基準」の廃止も含めて厚労省に厳しく迫る様子がまとめられています。以下、主な発言です。
「現在支障が表面化していない地方公共団体でも、現行の基準でやせ我慢をしており、人材をなんとかやり繰りしている実態がある」
「個別の対応を行うだけでは、別の地域事情を抱えた地方団体から、引き続き新たな対応を求められることとなり、いたちごっこが続くことになると思料。従うべき基準を定めること自体の弊害が出ている」
「今から結論の話をすべきではないと思うが、現行の児童福祉法の当該条文の改正等も視野に入れて、今後の検討を進めていただけるという理解でよいか」
「従うべき基準の廃止、縮減の方向で今後の制度設計についてもご検討いただきたい」
これに対して厚労省は、実態の把握調査を行って事実を整理し、地方分権の議論の場に報告したうえで、2018年8月を目途に具体的な検討を進めていくと回答しました。
さらに同年5月11日に開催された第71回専門部会では、「放課後児童健全育成事業の『従うべき基準』に関する実態調査の結果について」という資料が提出されました。これは、厚労省と内閣地方分権推進事務局とが共同で実施した調査で、全市区町村を対象に1674自治体から回答を得たものです。
この調査内容を見ると、「設備運営基準」の「従うべき基準」を「参酌すべき基準」に引き下げることを前提としたかのような、結論ありきの大変恣意的な設問と選択肢が設けられています。
たとえば、「認定資格研修の在り方をどのようにすることで、支障の改善につながると考えるか」との問いの選択肢は、@「認定資格研修の受講を努力義務として、義務付けをやめるべき」A「保育士や教員免許取得者を雇用しやすくするよう、研修免除、科目の免除を考えるべき」、B「資質向上研修や自治体が実施する研修における類似科目を受講した場合には、放課後児童支援員研修も受講したこととするなど、柔軟な制度とすべき」などが設けられています(回答は、@32.1%〔1674件中、538件〕、A51.4%〔1674件中、860件〕、B36.7%〔1674件中、614件〕)。
「従うべき基準」が廃止、または「参酌すべき基準」に引き下げられてしまえば、子どもたちの保育にあたるうえで必要な専門的な知識及び技能を有した「放課後児童支援員」をまったく配置しないこと、ともすれば、資格のない大人がたった一人で子どもたちの保育にあたることも起こり得ます。これでは、子どもたちに安全で安心できる「毎日の生活の場」を保障することはできません。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、これに断固として反対し、国会請願をはじめ、今後も引きつづき、「従うべき基準」を守る取り組みを進めていきます。
2018年6月1日、全国連協は、『学童保育の安全対策・危機管理〜「安全対策・危機管理の指針」づくりの手引き〜』を刊行しました(頒価200円〔税込〕)。
全国連協では2006年7月に、それぞれの地域や地方自治体で「安全対策・危機管理の指針」などを作成する際に手引きとして活用してもらえるよう、「学童保育の安全対策・危機管理〜『安全対策・危機管理の指針』づくりの手引き」(以下「手引き」)を作成していましたが、安全対策や危機管理の充実を求める声が高まっていること、各地で地震や風水害などの自然災害が起きていることをふまえて、「手引き」を大きく改訂し、あらたに冊子にまとめました。
「子ども集団の規模の上限を守る必要があり、子どもの人数のとても多い学童保育では安全確保に限界があること」「指導員が、一人ひとりの子どもを理解し、信頼関係を築くこと、日常的な安全指導、子どもが自ら危険を回避することのできる力を育てる援助をすることが求められ、そのためにも専任の指導員を常時複数配置すること」「成長過程にある子どもの、遊びや生活における『危険』をどう考えるか」「『安心・安全』について、子どもたちと一緒に考え、つくりあげること」など、私たちが長年にわたってたしかめあってきたことを前提に、「学童保育の生活のなかでの安全(事故・ケガ対応、健康管理、食に関わってなど)」「災害に際しての備えと対応」に必要なことを、具体的に示して整理しました。
放課後児童支援員の資格と配置基準についての「従うべき基準」を廃止することも含めて議論が進められているいま、「子どもたちの安全を守ること」について、あらためて必要なことを考えあううえでも、ぜひこの冊子をご活用ください。
2017年12月26日の閣議決定では、「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「省令基準」)において「従うべき基準」として定められた放課後児童支援員の「資格」と「配置基準」を「参酌化」することを、「地方分権の議論の場において検討し、平成30年度中に結論を得る」ことが示されました。
「資格」「配置基準」の内容と、「従うべき基準」という位置づけは、全国すべての学童保育に通う子どもたちに「全国的な一定水準の質」を保障するうえで必要不可欠のものです。全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)はこれに断固として反対し、この間、学童保育に関わる議員連盟や国会議員へさまざまな働きかけを行ってきました。この問題に関わって、国会の委員会で質問が行われましたので、報告します。
〈立憲民主党・大河原雅子議員が衆議院内閣委員会で質問〉
立憲民主党の大河原雅子・衆議院議員(2018年2月に開催された超党派の議員連盟、「公的責任における放課後児童クラブ〔学童保育〕の抜本的拡充を目指す議員連盟」総会に出席)が、2018年4月4日の衆議院内閣委員会で質問を行いました。
大河原議員は、厚生労働大臣政務官、厚生労働省審議官、内閣府・地方分権改革推進室次長に質問を行い、つぎのように指摘しました。
「指導員には、子どもの発達過程についての理解や子どもと関わる際に不可欠な倫理観を持つことが必要です。『従うべき基準』が参酌化されてしまっては、指導員はどこで専門職としての知識や技能を習得するのでしょう」
「2015年から5年間の経過措置期間も終わらない段階で、地域のレアケースを引き合いに出して、全体の基準を参酌化しようとするのはあまりに乱暴なやり方だと思います」
そして、「長い時間をかけて厚生労働省が決めた基準を、内閣府が変えようとするのは極めておかしなこと。これまで関係者が重ねてきた議論に水をかけるような行為は断じて行っていただきたくない」と意見を述べました。
〈日本共産党・塩川鉄也議員が衆議院内閣委員会で質問〉
同日の衆議院内閣委員会で、日本共産党の塩川鉄也・衆議院議員が、指導員の専門性と処遇改善について質問しました。
塩川議員が、「放課後児童支援員等処遇改善等事業」や「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」を実施する市町村が全体の二割にも達していない理由について質問したところ、厚生労働省審議官は、指導員の処遇改善が進まない理由を、「平日18時半以降に開所している放課後児童クラブが全体の55%にとどまっていること、自治体内のほかの職員との均衡を考えると放課後児童クラブの職員のみを処遇改善することがむずかしいこと、自治体での予算措置がむずかしいことが考えられる」と述べました。
塩川議員は、指導員に求められる専門性とその専門性にふさわしい処遇について確認したうえで、内閣府特命担当大臣(少子化対策担当)に向けて、「大臣の立場から、市町村にどのような働きかけをしていただけるのか。国の仕事として積極的に役割を果たすべきだ」と強調しました。
* * *
なお、これらの質問の様子は、衆議院インターネット審議中継で動画を観ることができます。
2018年4月20日、第八回放課後児童対策に関する専門委員会(以下、専門委員会)が開催されました(資料全文は厚生労働省のホームページに掲載されています)。今回の専門委員会では、「中間取りまとめ(素案)」が示されました。「中間取りまとめ(素案)」は、「はじめに」「1.子どもたちの放課後生活の重要性とその理念」「2.放課後児童対策の歴史的推移と現状並びにその課題」「3.放課後児童クラブの今後のあり方」「おわりに」という構成になっています。この日の議論では、「3.放課後児童クラブの今後のあり方」に重点をおいて意見が求められました。次回の専門委員会は2018年5月15日に開催され、引きつづき「中間取りまとめ(素案)」についての意見交換が行われる予定です。
前述したようにこれまで全国連協は、厚生労働省はもちろん内閣府など関係各省や、議員連盟に要望書を届けるなどして、「従うべき基準」を守るためにさまざまな働きかけを行ってきましたが、「地方分権の議論の場において検討し、平成30年度中に結論を得る」という作業が進められようとしているいま、全国の学童保育関係者に広く呼びかけて請願署名に取り組み、私たちの声を直接国会に届けることにしました。
請願とは、憲法16条で国民の権利として保障されている請願権にもとづいて、国民が国政に対する要望を直接国会に届けることです。請願要旨に賛同した国会議員の紹介により、国会に提出されます。請願は、請願者一人と紹介議員一人で行うことができますが、多くの人々の共通の願いを「請願事項」としてまとめ、それに賛同する多くの人が請願者となって届けることで、大きな力を発揮します。
今回の請願署名は、専門委員会の中間まとめが発表される時期(6月末を予定)および、今国会会期末(6月20日の予定)に向けて、第一次集約日を2018年5月31日に設定しています。
署名用紙は、全国連協のホームページでダウンロードすることができます。また、署名用紙の裏面用として、署名してもらう際の注意事項や集約方法の説明、学童保育の制度や今回問題になっていることについての説明をまとめた資料を作成しました(表面だけの印刷でも署名は有効ですので、念のため申し添えます)。
お手数ですが、各自、各地域で署名用紙の必要部数を印刷のうえ、できるところから取り組んでいただき、2018年5月31日までに全国連協宛てにお送りください。請願署名2018.表(PDF) 請願署名2018.裏(PDF)
2017年12月26日の閣議決定では、「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「省令基準」において「従うべき基準」として定められた放課後児童支援員の「資格」と「配置基準」を「参酌化」することを、「地方分権の議論の場において検討し、平成30年度中に結論を得る」とされています。
現行の「省令基準」に示された、「資格」と「配置基準」の内容、および、「従うべき基準」という位置づけは、全国すべての学童保育に通う子どもたちに「全国的な一定水準の質」を保障するためには必要不可欠のものです。これらを参酌化することは、子どもたちに困難を強いている現状を放置することであり、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)としては、断固として反対します。
現在、学童保育に関わる議員連盟が二つあります。この間、全国連協から議員連盟にこれらのことについて働きかけを行い、それぞれの総会が開催されましたので、報告します。
〈公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟〉
超党派の国会議員で構成される議員連盟で、会長を自由民主党の馳浩・衆議院議員、幹事長を希望の党の泉健太・衆議院議員、事務局長を公明党の石川博崇・参議院議員が務めています。
2018年2月20日に行われた総会には、厚生労働省子育て支援課、文部科学省社会教育課、内閣府子ども・子育て本部が出席したほか、地方自治確立対策協議会(地方六団体)、内閣府地方分権改革推進室、全国運協も同席しました。当日は、厚生労働省・文部科学省からの説明のほか、議員からの質問もあり、一時間以上、議論が行われました。
馳会長はまとめのなかで、「『公的責任における……』という議員連盟の名称には、法的な位置づけの確立、社会的認知の向上という意味が込められている。職員の確保、育成、配置、認定資格研修と、1センチずつでも向上させていく。公的支援の拡充の一点にしぼって取り組んでいきたい」と述べました。
〈自由民主党学童保育(放課後児童クラブ)推進議員の会〉
代表を吉川貴盛・衆議院議員、事務局長を大塚高司・衆議院議員が務めています。同年3月15日の総会には、厚生労働省子育て支援課、文部科学省社会敦育課、内閣府子ども・子育て本部が出席したほか、地方自治確立対策協議会(地方六団体)、内閣府地方分権改革推進室、全国連協も同席しました。
吉川代表はまとめのなかで、「地方分権の議論では、地方の裁量に任せてほしいというが、国の施策として『省令基準』ができたことは大きい。基準を守ってもらいたい。全国どこに住んでいようと、子どもは等しく守られる必要がある。『従うべき基準』を緩和してしまって、子どもの安全を守ることができるのか?」と発言しました。
前述した超党派の議員運盟総会に出席した日本共産党の宮本岳志・衆議院議員が、同年3月16日の衆議院地方創生特別委員会で、「従うべき基準」の参酌化にかかわって、厚生労働省審議官、内閣府・地方分権改革推進室次長に質問を行いました(衆議院インターネット審議中継で動画を観ることができます)。
そのなかで内閣府・梶山弘志特命大臣(地方創生 規制改革)に対して、「地方は『円滑な事業運営に支障が生じている』というが、緩和することによって生まれる支障は、命を落とすとか大けがをするという支障になる。子どもの安全性の確保に関わる問題だから、『従うべき基準』は大事なのだ」「担い手が増えないことから、いま働いている職員が展望を持てずにやめていくという悪循環になっているということも聞く。専門職にふさわしい処遇に引き上げることこそ、人手不足解消、ひいては制度の拡充につながる」と意見を述べました。
* * *
今後も全国連協は、あらゆる機会をとらえて情報を発信し、多くの方々に参酌化の問題点を広め、「従うべき基準」を守る取り組みを進めていきます。
「放課後児童対策に関する専門委員会」(以下、専門委員会)の第6回(2018年2月27日)、第7回(2018年3月19日)が開催されました(資料全文は厚生労働省のホームページに掲載されています。
第6回からは、全国知事会から静岡県こども未来課課長、全国市長会から東京都三鷹市児童青少年課課長、全国町村会から新潟県聖籠町教育委員会子ども教育課課長が正式に委員に就任しました。会議では、この三自治体と、地方三団体から紹介された三自治体のヒアリングが行われ、「資格取得しても、勤務時間や賃金の低さなど、処遇の問題から離職する人も多い。人材確保に苦慮している」「県内都市部では主に中高年女性が、この事業を担っている。短時間勤務で安定した収入が得られない。資格取得のための従事時間数(2年以上、かつ2000時間程度)を満たすことが困難」「県内山間部では、主に65歳以上の高齢者がこの事業を担っている。有資格者になっても、資格を生かした長期間の勤務が期待できない」「採用できる職員の多くが50代以上であり、若い世代の応募が少ない」などの発言がありました。
第7回の専門委員会では、「これまでの議論を踏まえた論点整理と検討の方向性」をふまえて、「中間まとめに向けて当面御議論いただきたい事項が示されました。
「放課後児童対策のあり方に係る基本的な視点(案)」として、
(1) 児童の権利条約の精神の尊重(児童の最善の利益を第一に考える)
(2) 共生社会の実現
(3)子どもたちの「生きる力」を育む
の三つの柱と、これまでの議論の主な発言要旨が示されました。
なお、この日の会議の資料のなかには、「小規模な放課後児童クラブ(家庭的学童)」「家庭的保育に類似した在り方は考えられるか」との記述がありましたが、当日の議論ではこのことに関わって、「(児童数が小規模という点では)現行の施策で対応することが可能」「家庭のなかで個人が保育することには慎重であるべき」「家庭での子育ての経験やその際に得た知識だけでは対応しきれず、専門的な知識や技能を必要とするもの」との発言がありました。
2018年4月中旬に開催される第8回の専門委員会で、中間取りまとめ(骨子)が出される予定です。
2018年3月20日、全国児童福祉主管課長会議が開催されました(資料全文は厚生労働省のホームページに掲載されています)。
子ども家庭局長は冒頭のあいさつのなかで、厚生労働省の課題としてつぎの4点をあげました。
1.待機児童の解消は取り組むべき最重要課題、そのための保育人材確保
2.地域の子育て支援の需要が変化していくなかでの放課後対策
3.法令改正に伴い、その趣旨に沿った児童虐待防止対策
4.妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援
なかでも、人材確保に関わっては、「どの分野も人材の養成、確保が大切な時期になっている。地域からは、『人材確保ができない』『養成や研修がむずかしい』という声を聞く。現場で地道に取り組んでいかなければ、いまだけでなく、これからの大きな問題となってくるので、留意していただきたい」と述べました。
子育て支援課課長は、以下の9項目について、資料に沿って説明しました。
・保育所を利用する子どもは、数年後には放課後児童クラブを必要とすること。
・放課後子ども総合プランにおける一体型の推進に関わって、「一体化」ではいけないということ。
・10人未満の放課後児童クラブは、2015年度から国庫補助対象になる場合があるが、厚生労働大臣への事前協議が必要。遡っての協議は受け付けないので、注意すること。
・社会保障審議会児童部会放課後児童対策に関する専門委員会について。
・「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」について。
・都道府県認定資格研修の実施について。
・「放課後児童クラブ運営指針解説書」の活用について。
・放課後児童クラブの運営内容の評価等について。2019年度子ども・子育て支援推進調査研究事業で検討を行う予定であること。
・放課後児童クラブにおける安全確保について。
* * *
例年、この会議では放課後児童健全育成事業の新たな補助単価が示されていますが、今回の会議資料には掲載されていませんでした。くわしいことがわかりしだい、皆さんにお知らせします。
第4回の「放課後児童対策に関する専門委員会」(以下、専門委員会)が2018年1月29日に、第5回が同年2月8日に開催されました(『日本の学童ほいく』2018年1月号・3月号の「協議会だより」もお読みください。当日資料は厚生労働省のホームページに掲載)。この2回では「関係者からのヒアリング」が行われており、第5回では、「学童保育に子どもを通わせる保護者」「全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)」「事業者」がヒアリングを受けました。
まず、学童保育に子どもを通わせる保護者の方が、ご自身の経験と実感を交えつつ、「学童保育には子どもが信頼でき、安心して共に過こすことのできる指導員が絶対に必要」「すべての学童保育で、専門的な知識と技能、子どもや保護者から信頼される資質を持った指導員が常時複数配置され、継続して子どもと関係をつくれるようにしていただきたい」「必要としている家庭の子どもが、必要としている期間、経済的な理由に左右されることなく学童保育に通いつづけられること、保護者や子どもが信頼できる指導員を安定的に長期的に雇用できることを実現できるような制度の充実を求めます」と話されました。
全国連協からは、「『質の確保』について、私たちが考えること」「学童保育を必要とする子どもが、必要とする期間、学童保育に通いつづけることを支えるために、指導員に関わる諸条件が整えられる必要があること」「現状と課題の解決にむけて、私たちが要望すること」を発言しました(発言要旨と全文を資料として提出)。
2017年12月26日に発表された閣議決定では、「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(以下「省令基準」)において「従うべき基準」として定めされた放課後児童支援員の「資格」と「配置基準」を「参酌化」することを、「地方分権の議論の場において検討し、平成30年度中に結論を得る」とされています。これもふまえてヒアリングでは、「質の確保」、とりわけ指導員に焦点を当てた発言をしました。とくに強調したのは、つぎの点です。
・子どもたちに安全で安心して過ごせる生活を保障するにあたって、全国共通に子どものために守らなければならない質の確保がある。運営者や自治体の都合ではなく、「子どもの最善の利益」を守るという視点で考えるべき。
・1997年の法定化以降も、学童保育の事業内容は各自治体によってさまざまで大きな格差があり、「省令基準」策定後もその状況はつづいている。「全国一定水準の質の確保」がされた学童保育を、「量的拡大」していくことが急務。
・指導員不足の背景である「指導員の処遇が大変低いこと」「『省令基準』と『運営指針』の理解が不十分なこと」などの根本的な問題に取り組むことが必要。
・学童保育をはじめとした放課後の施策について、どのステージを「議論の場」とするにしても、児童福祉の理念、「子どもの最善の利益」を尊重して議論されることが最低隈求められると考える。国は、後退することなく、質の確保に努めながら、量的拡大を図ってほしい。
事業者からは、愛媛県久万高原町で保育園を運営する社会福祉法人が、児童館・学童保育・放課後子供教室を広く展開している経験を報告しました。
2018年2月27日の第6回専門委員会では引き続き「関係者からのヒアリング」が行われ、同年4月中旬に開催される第8回で中間取りまとめ(骨子)が出される予定です。
前述した閣議決定では、放課後児童支援員の資格要件を「一定の実務経験があり、かつ、市町村長が適当と認めた者に対象を拡大することとし、平成29年度中に省令を改正する」としています。これをふまえて厚生労働省は、2018年1月29日より、「『放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準』の一部を改正する省令案についての意見募集」(締切は同年2月27日)を行っています。
今回検討されている改定は二点です。一つは、放課後児童支援員の基礎資格が教諭有資格者である場合の教員免許更新講習の取り扱いについてです。2009年4月から教員免許更新制が導入されていますが、放課後児童支援員は、更新講習の受講対象者ではありません。「更新講習を受けなくてよい」という取り扱いを明確にしました。全国連協は、このことは評価しています。
質に大きく関わるのは、つぎの点です。放課後児童支援員の資格要件を「一定の実務経験があり、かつ、市町村長が適当と認めた者に対象を拡大する」としており、「省令基準」の改定が行われれば、2018年度から、市町村の判断によっては、「高等学校を卒業していない者」も、認定資格研修の受講対象者となります。「5年以上の実務経験者」とされてはいるものの、これでは、放課後児童支援員の基礎要件を担保していた、保育士や教諭をはじめとする有資格者などの九項目が無意味になってしまうと言っても過言ではありません。全国連協は、この基礎要件の切り下げを不適切と考え、絶対に認めることはできないと考えています。
今回の改定は、基準で定められた指導員の資格のあり方、そして学童保育の質に大きく関わるものです。全国連協は、「私たちの意見・考え・要望を発信する貴重な機会として、このパプリックコメントに積極的に取り組んでほしい」と呼びかけました。
なお、閣議決定ではこのほかにも、「平成30年度中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる」「地方分権の議論の場において検討」として、「放課後児童健全育成事業に従事する者及びその員数に係る『従うべき基準』について、子どもの安全性の確保等一定の質を担保しつつ地域の実情等を踏まえた柔軟な対応ができるよう、参酌化することについて検討・結論」「放課後児童支援員の配置について、登録児童数や地域の人口が少ない場合又は学校との連携が可能な場合等の特例を検討・結論」をあげており、全国連協は大きな危惧を抱いています。
現行の「省令基準」に示された、「資格」と「配置基準」の内容、および、「従うべき基準」という位置づけは、全国すべての学童保育に通う子どもたちに「全国的な一定水準の質」を保障するためには必要不可欠のものです。これらを参酌化することは、子どもに困難を強いている現状を放置することであり、全国連協としては、断固反対です。今後の検討状況を注視し、あらためて皆さんに学童保育を守るための取り組みを呼びかけていきます。