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10月4日、5日の両日、第43回全国学童保育研究集会を初めて北海道で開催しました。42都道府県から2732名の保護者・指導員などが参加し、学童保育や働きながらの子育てについて学習や交流を行いました。
開催地・北海道では、道内の163市町村から後援をいただくことができました。また道内からの参加者は1150名で、北海道の学童保育の発展にとっても、大きな意義がある集会となりました。
10月3日、全国学童保育連絡協議会の2008年度総会を、札幌市内で開催しました。総会では、2007年度の活動報告、決算報告、会計監査報告が承認され、2008年度の活動方針、予算が討議の後、決定されました。
活動方針では、次の点を今年度の重点課題として取り組むことを確認しました。
@政府が決定した「10年間に利用児童を3倍化」「質の高い放課後児童クラブの推進」を着実に実現させるために、新設・分割と質の向上に取り組みます。適正規模の学童保育を「必要な小学校区には複数設置」を求めて、国のガイドラインを活用して公的責任による施策の改善・拡充と特別な財政措置を求め、同時に学童保育の設置・運営基準づくりの取り組みを強化します。
A「放課後子どもプラン」の推進にあたっては、学童保育の固有の役割を明らかにし、量・質ともに抜本的に拡充されるように取り組みを強化します。同時に両事業の拡充と連携を図るものの、政令市など一部の自治体で生まれている学童保育の内容の後退や廃止につながる、「全児童対策事業」や「放課後子ども教室」との「一体化」には反対していきます。
B指導員にかかわる課題は、学童保育の「質的な拡充」に直結する問題として取り組みを強化します。指導員の役割を明らかにし、指導員の複数・専任・常勤体制の確立と、労働条件の抜本的な改善を実現するための取り組みを強化します。同時に、指導員の資質と保育内容の向上のために、全国指導員学校等をいっそう拡充していきます。指導員会などの組織の育成、強化に取り組みます。
C学童保育の発展の原動力であり、働きながらの子育ての拠り所となる父母会(保護者会)強化に取り組みます。市区町村と都道府県の学童保育連絡協議会の組織づくりと組織強化に積極的に取り組みます。また、この課題と結びつけて、学童保育の発展の要である機関誌『日本の学童ほいく』の「保護者・指導員の全員購読」に取り組みます。
総会では、第44回全国学童保育研究集会を滋賀県で開催することを決定しました。滋賀県連協の菅能亮会長は「県内の学童保育の発展と結びつけて1年間かけて準備し、たくさんの方をあたたかく迎えたい」と決意を述べました。総会で選出された2008年度の全国事務局役員は以下の通りです。
会長 山本博美(指導員・再)
副会長 池谷 潤(神奈川・保護者・再)/出射雅子(京都・保護者・再)/上垣優子(大阪・指導員・新)/江尻 彰(東京・保護者・再)/片山恵子(埼玉・指導員・再)/嘉村祐之(岩手・指導員・新)/賀屋哲男(愛知・保護者・再)/河野伸枝(埼玉・指導員・再)/坂口正軌(兵庫・保護者・再)/鈴木美加(千葉・指導員・再)/竹中久美子(石川・指導員・再)/永松範子(神奈川・指導員・再)/古谷健太(三多摩・保護者・再)
事務局長 木田保男(三多摩・保護者・再)
事務局次長 真田 祐(全国連協職員・再)/志村伸之(全国連協職員・再)
「次世代育成支援の新たな制度体系」を検討している社会保障審議会少子化対策特別部会が10月29日に開かれ、厚生労働省から今後の学童保育のあり方を検討する視点が示されました。
学童保育は保育園と同じように「両立支援系のサービスとして不可欠」であるとして、以下の6点を検討していくとしています。@量的拡大を抜本的に図っていく上で、場所の確保、人材の確保の問題をどうしていくのか。A法制度上の位置づけの強化について、どのような対応策が考えられるか(市
町村の実施責任など)。B制度の対象年齢をどう考えるか。C質の確保について、どのような基準の内容をどのような方法で担保していくべきか。Dサービスの利用保障の強化、また、抜本的な量的拡大を図っていく上で、財源面についてどのような仕組みが適当か。財源保障を強化する場合は、財政規律の観点から一定のルールの必要性について、どのように考えるか。E放課後子どもプランを推進していく上で、両事業の一体的な運営を行っている場合の制度上の位置づけをどうしていくか。
全国学童保育連絡協議会では今後、約1万1000人あまりも集まった保護者・指導員の切実な願い(声)を部会委員にも届けて、学童保育のいっそうの拡充を求めていきます。
9月1日、文部科学省から2009年度予算の概算要求が発表になりました。「放課後子ども教室」事業の概算要求は、表1のとおりです。
2009年度は、前年度予算よりも減額されて要求されています。文部科学省は、「実態に見合って、開催日数が少ないところを増やし、開催日数が多いところを減らした結果」だと説明しています。
「放課後子ども教室」事業が2007年度に発足した際は、2万か所、年間240日実施を見込んで予算を組みました。2008年度は「年間240日実施」(2500か所)、「年間120日実施」(1万か所)、「年間50日実施」(2500か所)の合計1万5000か所で予算化しました。
2009年度概算要求では、「年間240日実施」(2500か所)、「年間120日実施」(2500か所)、「年間50日実施」(1万か所)の合計1万5000か所に変更しています。
なお、文部科学省と厚生労働省が合同で行った2007年12月1日の実施状況調査によると、「放課後子ども教室」は5707小学校区での実施にとどまっているとの結果が出されています(『日本の学童ほいく』2008年9月号82ページ参照)。
総額 | 対象か所数 | |
2007年度概算要求 | 137.6億円 | 2万か所 |
2007年度予算 | 68.2億円 | 1万か所 |
2007年度実績 | 5707校区で実施 | |
2008年度概算要求 | 99.2億円 | 1万5000か所 |
2008年度予算 | 77.6億円 | 1万5000か所 |
2009年度概算要求 | 69.1億円 | 1万5000か所 |
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、初めて指導員の欠員状況を調査しました。調査の回収率は約9割で、「欠員の有無を把握している」のはそのうちの約8割の自治体でしたので、学童保育がある1624自治体の約7割の市町村での調査結果です。
この調査によってあらためて、学童保育の量的・質的拡充にとって、指導員の働く条件の改善は急務の課題であることが明らかになりました。今後も、国および自治体に、指導員に関わる課題の抜本的な改善を求めていく必要があります。
*調査結果は、『日本の学童ほいく』74ページに掲載。
厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会は、少子化対策特別部会を開いて、保育所や学童保育、地域の子育て支援についての「新しい枠組み」を検討しています。
学童保育の課題について全国連協に意見発表(ヒアリング)の要請があり、9月18日に開かれた第11回部会で、事務局次長が約20分にわたって学童保育の実態と課題、要望を次のように説明しました。
「『新待機児童ゼロ作戦』で目標に掲げた『利用児童を10年間で3倍に増やす』ための方策として、施設と指導員の確保が必要であり、特に指導員を安定的に確保するためには、常勤配置できる補助金、公的資格制度や養成機関の創設、指導員の配置基準も含めた基準づくりが必要であること。
また、大規模学童保育をなくして、40人以内の規模の学童保育にしていくことが『安全で安心して生活できる学童保育を保障する』基本であること」。
さらに、「全児童対策事業」が学童保育の代わりにならないこととその理由を述べ、それぞれのニーズに応じた拡充の必要性を述べました。
委員からは、「全児童対策事業」と学童保育の違いについての質問があるとともに、「指導員の働く条件の改善と常勤配置できる補助単価にする必要がある」などの意見が出されました。
特別部会では、年内中に学童保育の課題について検討していくとしています。
*部会に出した全国学童保育連絡協議会の資料等はこちらをごらんください。
2008年8月26日、厚生労働省の2009年度の概算要求が発表されました。概算要求は、各省庁が来年度に必要な予算額を財務省に示すものです。毎年、8月末に発表され、年末の財務省査定を経て、政府予算案となり、4月頃の国会審議を経て決まります(概算要求額は財務省査定で大幅に削られてしまうこともあります)。
学童保育関係の予算は、「総合的な放課後対策(「放課後子どもプラン」)の着実な前進」を図るために、総額278億5000万円が計上されました。内容は次の通りです。
◆総額…278億5000万円(前年度比91億5600万円増)
◆補助内容と補助額
(1)放課後児童クラブ運営費(ソフト事業)
・182億5500万円(前年度比21億2300万円増)
・要求か所数2万3600か所(前年度比3600か所増)
*補助単価等は前年度と同額を予定。
(2)放課後児童クラブ創設費等(ハード事業)
・93億9200万円(前年度比70億2800万円増)
*創設費補助(前年度の補助単価1250万円)、既存施設改修費補助(同補助単価700万円)、設備費補助(同補助単価100万円)は前年度と同額を予定。
(3)放課後子ども教室推進事業(文部科学省)との連携促進
・2億300万円(前年度比1000万円増)
学童保育に関わる概算要求額が前年度予算と比べて91億円多くなりました。これまでにない伸びです。
これは、「『新待機児童ゼロ作戦』を踏まえて、放課後児童クラブの受け入れ児童数の集中重点的な増加を図るとともに、大規模クラブ(児童数71人以上のクラブ)の解消を図るなどの緊急重点整備を行う」(発表文書より)とされているためです。
政府は「新待機児童ゼロ作戦」の中で、学童保育の利用児童数を「10年間で3倍に増やす(10年間で145万人増やす)」という目標を決めました。また、7月29日に発表された福田首相の「5つの安心プラン」(後の項参照)でも、利用児童数の大幅増が目標にあげられています。
こうした政府の方針を実現するためには学童保育の設置数を大幅に増やす必要があります。そのために、施設整備費を四倍化する補助金が計上されたのです。
*文部科学省の「放課後子ども教室」関連予算は次号で紹介します。
2009年度概算要求 | 2008年度予算 | 前年度比増減 | 伸び率 | |
総額 |
278億5000万 | 186億9400万 | 91億5600万増 | 1.49倍 |
運営費 (対象か所数) |
182億5500万 (2万3600か所) |
161億3200万 (2万か所) |
21億2300万増 (3600か所増) |
1.13倍 (1.18倍) |
創設費等 (施設整備費) |
93億9200万 | 23億6400万 | 70億2800万増 | 3.97倍 |
政府は少子化対策として2003年度に「次世代育成支援対策推進法」をつくり、保育所や学童保育の整備目標などを立てる「子育て支援」のための地域行動計画の策定をすべての自治体に義務づけました。この地域行動計画の前期(2005年度〜2009年度)が終わりに近づき、後期(2010年度〜2014年度)の計画の策定が始まります。
8月5日、厚生労働省は全国児童福祉主管課長会議を開催し、後期の地域行動計画策定に際しての国の考え・方針を伝えました。
方針では、2008年度と2009年度にかけて、保育園と学童保育についての潜在的なニーズ調査、前期計画の見直し、国が決めた「新待機児童ゼロ作戦」の目標数を参考にして後期計画を策定するよう求めています。そのために、「次世代育成支援対策推進法」の一部改正が国会に上程されました。今後、国としての「策定の手引き」「策定指針」がつくられ、自治体に示されます。
前期計画策定に際して、全国学童保育連絡協議会では各地の連絡協議会とともに「量的・質的拡充」を計画に盛り込むよう要望しましたが、国としての財政措置がとられず、市町村がつくった量的目標を合計しただけの数が国の目標数値となりました。
その結果、学童保育に関しては、5年間で2400か所増との目標にとどまりました。それまで学童保育は1年間に900か所前後増えていましたが、この目標によって増加が抑制され、2005年度は631か所、2006年度は549か所にとどまりました。
すべての自治体で、これから後期の地域行動計画の策定作業が始まります。国の想定によると、市町村が行うスケジュールは、2008年9月から「現状分析・ニーズ調査の企画」を行い、10月「ニーズ調査の実施」、2009年3月「基礎資料の整理完了」「前期計画の必要な見直し」。そして2009年8月「定量的目標数値の都道府県への報告」、12月「素案作成完了」、3月「後期計画の決定・公表」となっています。
「新待機児童ゼロ作戦」で示された学童保育の量的拡大はもちろんのこと、質的な拡充の目標も後期地域行動計画に盛り込まれるよう、課題を明確に示して要望を出していきましょう。
2008年7月29日、福田首相は社会保障分野の緊急対策として、「社会保障の機能強化のための緊急対策〜5つの安心プラン〜」を発表しました。
このプランの三つ目の柱には、「未来を担う『子どもたち』を守り育てる社会」があげられています。そして、その中の大きな項目に「@保育サービス等の子育てを支える社会的基盤の整備等」があげられ、「新待機児童ゼロ作戦」の集中重点期間(2008年度〜2010年度)の取り組みの推進を図るとして、学童保育については以下の目標があげられました。
「放課後児童クラブについても、その提供を受ける児童の割合を32%(10年間で19%→60%)とすることを目指し、放課後児童クラブの緊急整備を行う。」
またこのプランでは、「概算要求予定」のものとして、「放課後子どもプラン」の推進/「放課後子どもプラン」等に基づく放課後児童クラブ・放課後子ども教室の設置促進、「放課後児童クラブの質の改善」/大規模クラブの解消、開設時間の延長等が示されています。
さらに、「平成20年度における事業実施、運用改善」では、「放課後子どもプランの更なる一本化/放課後児童クラブ・放課後子ども教室の更なる一本化の方向での改善策の検討」「子育てサービス利用における運用改善/放課後児童クラブの先進的な取組事例の収集・周知」が盛り込まれています。
「放課後児童クラブ・放課後子ども教室の『更なる一本化』」が、どのような内容を指すのかは不明ですが、両事業の施設・場所・職員も同じにする「一体化」のもとでは、学童保育は事実上の廃止となってしまいます。全国学童保育連絡協議会はあらためて、「両事業の一体化ではなく、それぞれの拡充と連携」を政府に求めていきます。
6月23日、厚生労働省と文部科学省が「放課後子どもプラン実施状況調査」の結果を発表しました。これは両省が2007年12月に共同で行ったもので、自治体の12月1日現在の取り組み状況や実施にあたっての課題等を把握するために行われたものです。
調査結果では、「放課後子どもプラン」の事業計画を策定している自治体は170で、全自治体の9%にとどまっています。「策定していない」理由として、「現在、検討中」が33%、「後年度までの計画を立てるに至らない」が29%、「補助金申請上、必須事項でないため」が21%、「既に放課後対策のための計画がある」が7%、「その他」が11%でした(「その他」の主な内容は、「他の事業計画で代用」「一方の事業のみの実施のため」「必要性を感じない」など)。プラン策定があまりすすんでいない実態が明らかになりました。
また、「放課後子ども教室」を実施している校区は5707という結果でした。目標数の1万か所、2006年度の「地域子ども教室推進事業」実施数8318か所と比べても少ない状況となっています。
「放課後子ども教室」と「学童保育」を「一体的実施」しているのは全体(小学校区)では2.6%で、東京都内227か所、札幌市113か所、川崎市114か所、横浜市30か所となっており、このほとんどがいままで自治体独自で実施していた「全児童対策事業」を、一体型の「放課後子ども教室」と位置づけています。
実施にあたっての課題として、「現行どおりで良い」が35%(647市町村)、「両事業の一本化が必要」が27%(499市町村)、「両事業の補助要件の緩和が必要」が23%(421市町村)、「その他」が27%(501市町村)でした(「その他」の主な内容は、「人材や実施場所の確保が困難」「両事業の連携・調整が困難」「両事業を一本化する必要はない」でした)。
文部科学省と厚生労働省は、この調査結果および文部科学省独自の委託調査結果をもとに改善方策を検討して、2009年度から実施していくとしています。
一方、内閣府の地方分権推進委員会が5月28日にまとめた「第一次勧告」は「放課後子どもプラン」について、「両事業の統合も含めたさらなる一本化の方向で改善方策を検討し、平成21年度から実施する」としています。
全国学童保育連絡協議会はこれまでも、“「放課後子ども教室」と「学童保育」の2つの事業は目的・役割、事業内容が異なり、「施設や職員が一体となった一体化」は学童保育の廃止になるとして反対してきています。それぞれの事業が拡充されて連携がすすむよう、文部科学省・厚生労働省・地方分権推進委員会に引き続き要望していきます。
政府の経済財政政策の基本となる「経済財政改革の基本方針2008」(通称「骨太方針2008」)が6月27日、閣議決定され、そこでは、就労女性を今後さらに20万人増やす「新雇用戦略」および「総合的な少子化対策の推進」が示されました。
その中では、「『子どもと家族を応援する日本』重点戦略に基づき、保育サービスや放課後対策等の子育て支援の拡充及び仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)実現を車の両輪として、少子化対策を行う」とされています。
また、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」「新待機児童ゼロ作戦」では、学童保育の利用児童を「一〇年間で三倍に増やす」という目標を定めています。それにより、この目標が政府の公式な方針となったといえます。
今後、厚生労働省だけでなく政府全体として、この方針をどう実現していくのかが課題となります。全国連協は引き続き、方針の実現(学童保育の量的拡大・質的拡充)を政府に求めていきたいと思います。
独立行政法人・国民生活センターは、昨年度、「学童保育の実態と課題に関する調査研究」を行いました。そして、「学童保育の公的支援体制はかなり遅れた状態にある」「公的部門が推進力となって学童保育サービスの充実を目指していく必要がある」「安全面の対応への公的サービスとしての見直しが必要」などの提言をまとめ、厚生労働省に学童保育の拡充を要望しました。この調査研究には大きな反響が寄せられました。
国民生活センターは、引き続き、学童保育に関する調査研究を行います。今年度行うのは、「学童保育の安全に関する調査研究」です。
研究会には児童福祉・社会福祉・学童保育関係者・弁護士が参加して、自治体や学童保育施設に対する事故・けがの実態や対応の調査、ヒヤリング、事故事例の収集・分析を行い、「学童保育サービスの安全対策のあり方」などについての提言を出す予定です。
この研究会には全国連協の役員が学童保育関係者として、参加します。2009年2月頃には調査研究報告書がまとめられる予定とのことです。
全国学童保育連絡協議会が毎年行っている学童保育数の調査結果がまとまりました。結果は以下のとおりです。
表とグラフはこちらへ
●学童保育数は1万7495か所(昨年と比べて八二七か所増)
施設数は増えていますが、入所児童数に見合った増加にはなっていません。厚生労働省が目標とする2万か所にも届きません。新設・分割があまり進んでいない結果です。小学校数と比べた設置率は77.1%となりましたが、学童保育がまだない小学校区もあります。
一方、小学校数よりも学童保育数が多い市町村が302市区町村に増えました(表1)。
●入所児童数は78万6883人(表2)
この間、入所児童数の激増が続いています。昨年比で4万2000人が増えました。しかし、1年前の6万人増と比べると、増え方は緩やかになりました。
考えられるのは、市町村や運営主体が「財政難」や「71人以上の学童保育への国の補助金が2010年度で打ち切られること」を理由に、入所基準を厳しくするなど受け入れを抑制していること、同じ校区に「全児童対策事業」ができて入所児童が減ったこと、あまりの大規模化で保護者が入所をためらったりしていることなどです。いずれにせよ、学童保育の必要性が弱まったということではなく、必要としている子どもが入りにくくなっていることが懸念されます。
学年別の入所児童数では、1年生の入所割合が、同学年生徒全体の24%となりました。高学年児童の比率も高まっています。
●規模別の学童保育数(グラフ1)
学童保育の大規模化はあいかわらず進行しています。71人以上の学童保育は2481か所にもなり、うち約600か所が100人を越えています。大規模化の解消は、ますます緊急の課題となっています。
●運営主体と開設場所
運営主体はグラフ2のとおりです。法人等の運営が増えていますが、多くは私立保育園と、父母会等がNPO法人を取得したケースです。
指定管理者制度は約1500か所の学童保育で導入されていますが、昨年比ではあまり増えていません。
開設場所はグラフ3のとおりです。学校施設内が増えています。
全国学童保育連絡協議会では今回の調査結果をふまえて、国や自治体に、学童保育の量的・質的な拡充をさらに求めていきたいと思います。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は「適正規模の学童保育を一小学校区に複数設置する」ことを今年度の運動方針の重点課題にあげています。大規模な学童保育が急増するなかで、補助金が打ち切られる2010年度までに71人以上の学童保育を分割するという課題も期限が迫っています。
全国連協では毎年、全国合宿研究会を開催して、学童保育の重要課題を研究しています。今年のテーマは「学童保育の新設、分離・分割をどうすすめていくか」でした。
はじめに、全国連協事務局からの現状認識と課題提起を行い、その後、三重県津市、山形県天童市から、行政に向けて新設や分割をどう働きかけて、実現させてきたかについての報告がありました。その後、「学童保育のつくり運動、分離・分割の運動をどうすすめていくか」をテーマに討論を行いました。
討論では、「必要とする子どもたちがすべて入れるように、学童保育をつくっていくことが大切」
「七一人以上の学童保育を分割することで終わらせず、私たちが求めてきた『適正規模は四〇人以下』に対する合意をどうつくっていくのかを考えることが大切」
「指導員が子どもたちの様子を伝えながら、保護者、行政の理解と合意をつくっていくことが大切」
などの活発な発言があり、新設・分割に取り組む私たちの考え方や方向、課題を整理することができました。
いま政府内では、今後の少子化対策、仕事と子育ての両立支援、地方分権改革、規制改革、教育再生など、さまざまな課題が検討されています。そのなかには、学童保育の利用児童を「10年間で3倍にする」「質の高い学童保育の推進」との目標も出されていますが、その具体的な内容や、どのように実現していくのかは明らかになっていません。
私たちは、2010年度までに「71人以上」の学童保育の分割を必ず実現させていくとともに、「適正規模は40人以下」の合意を広げ、「量的・質的な拡充」が着実に実現されるよう、国や自治体にねばり強く働きかけていくことが必要です。いま呼びかけている「一人ひとりの声を国と自治体に届けましょう」の取り組みをさらに強め広げていきましょう。
全国連協では、2008年6月13日、厚生労働省や関係省庁、政党、国会議員の方々への陳情を行います。そこに、すでに寄せられた「一人ひとりの声」も届ける予定です。
そして、最終締切の10月4日にはたくさんの切実な声・願いを国や自治体に届けられるよう、引き続き取り組みをお願いいたします。
(次号で、厚生労働省等への全国連協の要望事項等をお知らせします)
国民生活センターは、2007年度に「学童保育の実態と課題に関する調査研究」を行い、政府に「公的サービスとしての条件整備を図る必要がある」との提言をまとめました。そして、2008年度も学童保育に関わる課題を取り上げ、調査研究を行って提言を出すことになりました。
2008年度は、学童保育の課題のなかでも、特に安全面に焦点をあて、けがや事故の未然防止に資することを目的に、全国の自治体(市区町村)や施設に対して調査を行うと同時に、「学童保育の安全に関する研究会」を設置し、事故事例の収集・分析を行い、より安全で安心な学童保育サービスの安全対策のあり方などについて検討し、提言を行う予定とのことです。
大規模化した学童保育では、事故・ケガが多いことが問題となっています。子どもの安全面からみても新設・分割が大きな課題となっています。学童保育の「量的・質的な拡充」につながるような調査研究が期待されます。
学童保育を必要とする家庭がますます増えるなか、国は、学童保育の利用児童を10年間で3倍にする「新待機児童ゼロ作戦」を決めました。量的・質的な拡充が求められていますが、そのためには、指導員の安定的な確保と仕事に責任を持って働き続けられる条件整備が欠かせません。
全国学童保育連絡協議会では、これまでも国や自治体に、公的資格制度や養成機関の創設をはじめ、指導員が安心して働き続けられる条件整備、予算措置などを求めてきました。
ところが、いま各地で、学童保育で働く指導員が、厳しい働く環境・条件のもとに置かれているため、「退職者が後を絶たない」「募集してもなり手がいない」などの理由で欠員状況が生まれています。
指導員の働く環境・条件がこのまま改善されなければ、深刻な問題が広がり、学童保育数を増やすことにも大きな障害となることが確実に予想されます。
そこで、全国学童保育連絡協議会は、指導員の欠員がどの程度広がっているのか、なぜ欠員が生まれるのか、その実態を明らかにするために、「指導員の欠員状況調査」を初めて行うことにしました。
指導員が安心して働き続けることができ、学童保育の役割が果たせるような仕事ができるための条件整備の促進にいかしていきたいと思います。
*7月以降に調査結果をまとめ、発表する予定です。
厚生労働省は、2008年2月に開催した全国児童福祉主管課長会議で、「利用できない児童(いわゆる待機児童)の把握も含めたニーズの適切な把握」を行うことを表明しました。その中で、待機児童の定義についても、「放課後児童クラブの利用児童に当たっては、例えば、公設民営のクラブにおいても直接クラブに利用申込をし、クラブが入所決定を行い、市町村は手続過程で関与していないケースがあるなど、市町村が地域における利用ニーズの全体像を把握しておらず、その結果、利用できない児童が発生するなどの課題も生じているところである。このため、本年5月1日現在で行う予定の実施状況調査において、『利用できない児童』の定義の見直しを検討しているところである」(同会議資料より)としています。
「放課後子どもプラン」でも厚生労働大臣が国会答弁で表明していたように、学童保育の待機児童をなくすことが大きな目的とされています。
また、政府が二月に決めた「新待機児童ゼロ作戦」では、学童保育の利用児童を10年間で3倍に増やすという
目標が立てられています。市町村で待機児童の把握ができていないという問題を改善するねらいもあるようです。
今年2月に発表された国民生活センターの調査結果でも、入所手続きに市町村が関与せず、把握もしていない実態に対して「受付窓口業務は施設が87.2%と多く、自治体は34.0%にとどまる」と指摘されています。
全国学童保育連絡協議会では、これまでも「保育園卒園児童の6割しか入所できていない」「保育園を卒園して小学校に入った57万人の子どもたちは学童保育に入れていない」と、学童保育不足を指摘してきました。
行政には、学童保育を必要としている家庭を適切に把握し、入所できるように条件整備を図っていくことが求められます。
本誌は、働きながらの子育てを交流し、保護者と指導員が力をあわせてよりよい学童保育をつくることをめざして全国学童保育連絡協議会が編集・発行している日本で唯一の「学童保育の専門誌」です。
昨年7月号で講読数は4万8057部となりました。今年は7月号で49000部の購読数をめざして、広めていく取り組みを進めています。
新学期が始まり、学童保育にたくさんの子どもたちが新しく入所しています。読者の皆さんには、ぜひともより多くの方々に購読を勧めてくださいますようお願いします。
2008年2月27日、厚生労働省が「新待機児童ゼロ作戦」を発表しました(くわしくは本誌76ページ参照)。ここでは、学童保育の利用児童数を10年間で3倍に増やすなどの目標を決めています。
全国学童保育連絡協議会は、2008年3月14日、「学童保育の量的な拡大と質的な拡充を図ることが政府の方針となったことを歓迎するとともに、その着実な実現を求める」との立場から、厚生労働省に要望書を提出しました。要望の概要は、以下のとおりです。
1 必要な財政措置を図ること。また、地方自治体に対する十分な財政措置を図ること。
@施設整備費と、指導員の安定的な確保ができる大幅な補助金増額を図ること。
A地方自治体への十分な財政措置を講じること。(補助率の見直し、特別財政措 置など)
2 学童保育の整備に絶対不可欠な基盤整備を早急に図ること。
@独立専用施設の設置、公的施設などを活用して「生活の場」にふさわしい施設 を確保すること。
A専任・常勤・複数指導員の配置、資格や養成制度の創設など、指導員を安定的 に確保すること。
B大規模学童保育の解消のために、新設・増設、分離・分割を早急にすすめること。
3 量的な拡大によって質が低下しないよう、全国的な一定水準の確保を図ること。
@ガイドラインの改善と設置・運営基準、「最低基準」の策定と財政措置を行う こと。
A国民生活センターの提言にあるように、公的責任での拡充と、きめ細かい指導 監督を行うこと。
4 首長が推進の責任者となるなど、自治体として積極的な取り組みが促進される ための努力を。
5 利用の促進が図られ、利用しやすい方策と保護者等への広報を図る。
6 留意すべきこと
@学童保育ではない事業の利用者を目標数に含めてはならないこと。
A「ただ数だけ増やせば良い」「地域の実情に応じて劣悪なものでもよし」とし ないこと。
本誌の2008年4月号「協議会だより」で紹介したように、学童保育の実態と課題に関する調査研究をもとに国民生活センターが厚生労働省に要望を出しました。これを受けて厚生労働省育成環境課は2008年2月28日、「放課後児童クラブの運営に当たっての留意について」という事務連絡を自治体宛てに出しました。
事務連絡では、「国民生活センターが実施、公表した調査研究において、利用者の利便性向上のための情報提供や安全対策の強化等について指摘があった」「中でも、放課後児童クラブの利用に当たり、運営者が利用者に一方的に不利益となる内容の誓約書等の提出を求めるケースがあるとの報告がありました」と明記し、そのようなことがないよう各市町村および放課後児童クラブ運営者に注意を促しています。
国民生活センターの提言は、契約書等の問題を指摘するだけでなく「学童保育の公的支援体制は、かなり遅れた状態にある」「公的部門が推進力となって、長期、短期の目標を定めて、利用しやすい仕組みを導入するとともに、学童保育サービスの充実を目指していく必要がある」と指摘し、「安全面の対応への公的サービスとしての見直しが必要」と述べています。
2008年3月16日、全国学童保育連絡協議会主催で「全児童対策事業を考える学習会」を開催しました。大阪・愛知・長野などからの参加者も含め、86人が参加しました。学習会では、川崎市や横浜市、東京都内(品川区・江戸川区・豊島区・渋谷区・世田谷区)で広がっている「全児童対策事業」の実態の報告があり、学童保育事業との違い、「一体化」されたことによる問題点、今後の両事業のあり方などについて学びました。
「大規模学童保育の解消、学童保育予算の大幅増額などを求めて、保護者・指導員一人ひとりの声を国と自治体に届けましょう」。本年1月に全国学童保育連絡協議会が提起した取り組み・運動が各地でスタートしています。
取り組みを具体化する話し合い、学習会の開催や独自の要望書用紙を作成している連絡協議会もあります。
5月末までに全国学童保育連絡協議会に到着した「一人ひとりの声」は、6月に厚生労働省に届ける予定です(これ以降に到着したものは11月に届けます)。ぜひ積極的な取り組みをお願いいたします。
2008年2月22日、厚生労働省は都道府県・政令市・中核市の児童福祉主管課長を集めて全国児童福祉主管課長会議を開きました。
そこで、学童保育の担当課である育成環境課から国の方針や考え方について説明がありました。また、2008年度の国の補助金の長時間開設加算と障害児受入推進事業について詳しく説明した「Q&A集」が会議の資料として出されました。
「放課後子どもプラン」については、国の規制改革推進会議で「一体化」について検討するよう指摘されたことを受けて、現在、文部科学省と合同で2つの調査を実施しており、2008年3月末に結果を公表するとしています。
71人以上の大規模クラブの分割促進については、これまでの方針に変わりはなく、「例えば、大規模クラブが一定数以上ある市町村を対象に個別ヒヤリングを実施して、解消に向けての具体的取組を促す」ことなどをあげ、「子どもたちの安定した生活の場としての機能を最優先に考慮して取組を積極的に進めてほしい」と述べました。
長時間開設加算の補助単価や出し方が変更されたことは、『日本の学童ほいく』2008年3月号の協議会だよりで紹介しました。1月の部局長会議で出されたのは、「1時間毎に加算する」という案で、平日午後6時30分まで開設している学童保育(学童保育全体の2割)への加算(年額30万9000円)がなくなってしまうという問題がありました。
しかしその後、変更され、実際の時間数に応じた割合で加算されることになりました。これにより、平日分と長期休暇等分を合計すると、大半の学童保育で補助金がほとんど削られずにすみます(全国学童保育連絡協議会では、「補助金が削減されないようにしてほしい」との緊急要望書を2月8日に厚生労働省に提出していました)。
障害児受入推進事業については、障害児が年度途中で入所したり退所した場合の考え方などを「Q&A集」で説明しています。
ガイドラインについては、「本ガイドラインの内容を管内市町村や各クラブに十分に周知することに止まらず、@市町村及び各クラブが本ガイドラインを基に定期的にクラブの運営内容の確認・点検を行う、A地域の実情に応じた取組の促進のため、市町村等においてもできる限り地域性を考慮したガイドライン等の策定を行うなど、本ガイドラインを積極的に活用して利用者のニーズに十分対応した運営に向けて、具体的な取組に着手いただくことが重要」と説明がありました。また、厚生労働省が毎年実施している学童保育の調査にガイドラインの内容に関わる項目も入れること、こども未来財団のホームページ中の「i‐子育てネット」というページ(全国の学童保育が検索できる)で、ガイドラインにそった学童保育ごとの情報が掲載されるようにしていくことが明らかにされました。
雇用均等・児童家庭局長や審議官の説明では、昨年末にまとまった総合的な少子化対策である「重点戦略」を実現することが大きな課題になっており、ワーク・ライフ・バランスと少子化対策を「車の両輪」として推進していくこと(学童保育については2012年度までに利用児童を2倍にする目標が決められている)が、くり返し強調されました。
学童保育の利用児童を2倍にすることについては、国の決めた目標にそって自治体の行動計画が策定されるようにするために、次世代支援対策推進法の改正案が3月中に国会に上程されることも明らかにされました。
*会議資料の抜粋および「Q&A集」は、全国学童保育連絡協議会のホームページで見ることができます。
国の法律にもとづいて設置されている独立行政法人・国民生活センターは、2008年2月21日、『学童保育の実態と課題に関する調査研究』(A4判282ページ)を発表しました。
量的・質的拡充が求められている学童保育について消費者の視点から実態と課題を探るために、国民生活センター内に「学童保育の実態と課題に関する研究会」を設置して、1年間かけて調査や検討を行ってきた結果をまとめたものです(全国学童保育連絡協議会事務局次長も委員として参加)。
(1)市区町村対象調査、(2)学童保育施設対象調査、(3)契約時の交付書面、の三点について調査し、それらの結果をもとに学童保育サービスの現状と利用契約の問題点等について検討を重ね、行政と施設に向けて、放課後の子どもの生活の場として安心して利用できるための提言をまとめました。その内容は、発表の翌日、厚生労働省に要望書として提出されました。
提言では、@施設及び自治体は、消費者に情報提供を十分に行うこと、A契約書の作成と利用者への交付は不可欠、B安全対策の強化、事故時の体制の整備、事故予防への取り組みが重要、C子どもの生活の場としての環境整備(量・質の拡充、指導員の待遇改善)、D公的サービスとして地域間・施設間の格差是正が必要、という5点があげられています。
*提言も含めた調査結果の概要は、国民生活センターまたは全国学童保育連絡協議
会のホームページで見ることができます。→ PDFファイル
2008年1月17日、厚生労働省が都道府県・政令市・中核市の厚生労働関係の部局長を集めて来年度の方針や予算案を説明する会議を開きました。
雇用均等・児童家庭局は、昨年末にまとまった国の「子どもと家族を応援する日本」重点戦略を新たな少子化対策の「重点事項」と位置づけて推進するとしています。この重点戦略では、学童保育については「保育所から放課後児童クラブへの切れ目のない移行」が必要であるとしています。同じく昨年末に策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」では、今後10年間で学童保育の利用者を3倍に増やすことが決められました。また、この会議では、「放課後児童クラブについては、これまで、地域の実情に応じた柔軟な取組が可能となるよう、国としてはガイドラインを定めていなかったところである。しかしながら、放課後児童クラブへのニーズの高まりを受けて、@実施か所数そのものが増加したこと、また、A1クラブ当たりの登録児童数が増加し、クラブが大規模化してきたこと等を踏まえ、昨年10月、放課後児童クラブを利用する子どもの健全育成を図る観点から、クラブを運営するに当たって必要な基本的事項を示した『放課後児童クラブガイドライン』を策定したところである」と説明があり、市町村および学童保育関係者への周知徹底が呼びかけられました。
2008年度の学童保育の補助単価も提示されました(下の表参照)。2007年度の補助単価と異なる点は、長時間開設加算と障害児受入加算です。長時間開設加算は、これまで「1日6時間を超え、18時を超えて開設する場合」に1クラブあたり年額30万9000円が加算されていましたが、2008年度からは平日分と長期休暇等分に分けられました。
平日分は「1日6時間を超え、18時を超えて開設する場合」に1時間あたり年額19万9000円が加算されます。つまり、19時まで開設しなければ長時間加算は受けられないことになります。
新たにつくられた長期休暇等分では、「1日8時間を超えて開設する場合」に、1時間あたり9万円が加算されます。全国学童保育連絡協議会が行った実態調査によると、長期休暇中は、朝8時〜8時30分に開室し、18時〜18時30分に閉室している学童保育が多く、こうしたところでは、2時間分が加算されることになります。
また、同調査によると、平日18時30分まで開設している学童保育は全体の2割程度です。こうしたところでは、今後、平日の閉室時間を19時まで延長しないと補助金の総額が減ることになり、大きな影響を受けることが懸念されます。
障害児受入加算は、これまでの補助単価68万7000円から2倍以上増額の142万1000円となりました。ただし、これまで学童保育の運営費に加算されていた方法から、市町村への補助に変更されています。
補助の出し方としては、
@市町村が適切な指導員を雇用して学童保育に派遣する方法
A学童保育が適切な指導員を雇用して、市町村がその費用を委託費として支出する 方法
B学童保育が雇用した指導員について、市町村が一定の資質を有すると認めたうえ で(市町村等が実施する研修を受講するなど)、当該指導員に係る経費を補助す る方法
が可能であるとしています。
また、国は、都道府県・政令市・中核市に出している指導員研修費補助を活用して、障害児受入のための知識や技術を習得することを奨励しています。
なお、開設日が250日未満であったり、児童数71人以上である学童保育への補助金を、2010年度から打ち切るという方針は変わっていません。
施設整備費については、大規模施設の分割や新設を促進していくために、23億円に増額(2007年度は18億円)し、補助が受けられる対象も拡大されました。
児童館の施設整備費を活用した学童保育専用施設の設置は、これまでは市町村のみが対象とされていましたが、社会福祉法人などの法人も対象となりました(NPO法人は対象外)。また、余裕教室や民家などの既存の施設を改修して学童保育として利用する場合の「放課後児童子ども環境整備事業」は、同じく、市町村のみから、法人、NPO法人、父母会なども対象とされることになりました。
入所児童数 | 年間開設日数 | |||
250日 (基準開設日数) |
290日の場合 | 200日-249日 (2010年度廃止) |
||
児童数 区分 |
10人〜19人 | 990,000 | 1,510,000 | 対象外 |
20人〜35人 | 1,612,000 | 2,132,000 | 1,611,000 | |
36人〜70人 | 2,408,000 | 2,928,000 | ||
71人以上 (2010年度廃止) |
3,204,000 | 3,724,000 | ||
長時間 開設加算 |
平日分 | 1時間当たり199,000 | 1時間当たり199,000 | |
長期休暇等分 | 1時間当たり90,000 | 対象外 | ||
市町村分 | 放課後児童クラブ 支援事業費 |
(1)ボランティア派遣事業(4事業) 1事業当たり年額441,000 (2)放課後子どもプラン実施支援等事業 1市町村当たり年額750,000 (3)放課後児童等の衛生・安全対策事業(変更の可能性あり) 1市町村当たり年額584,000 (4)障害児受入推進事業(開設日数250日以上のクラブ) 1クラブ当たり年額1,421,000 |
||
都道府県分 | 放課後児童 指導員等 資質向上 事業費 |
都道府県・政令市・中核市 1か所当たり1,000,000 *障害児対応の指導員研修も奨励 |
2007年12月21日、学童保育関係の来年度予算案が発表されました。同年8月の概算要求(厚生労働省が財務省に要求した金額と内容)はほとんど認められました。2008年1月から開会する通常国会で政府予算案が採択されれば正式決定となります。
総合的な放課後児童対策(「放課後子どもプラン」)の着実な推進
総額186億9400万円
前年比28億4500万円増
概算要求額比7400万円減
(1)放課後児童クラブの必要な全小学校区への設置促進(184億9600万円)
@放課後児童クラブ運営費(ソフト事業)
○161億3200万円(前年比22億8700万円増)
○補助対象か所数2万か所(前年比同じ)
○多様なニーズ等への対応
長時間開設加算の改善、発達障害児等の受け入れの更なる推進、長期休業期間中の開所促進や大規模クラブの解消(くわしくは『日本の学童ほいく』2007年10月号80頁参照)
A放課後児童クラブ創設費等(ハード事業)
○23億6400万円(前年比5億5000万円増)
○設置主体等制限の緩和(くわしくは『日本の学童ほいく』2007年10月号80頁参照)
(2)放課後子ども教室推進事業(文部科学省)との連携促進(1億9800万円)
指導員の合同研修の開催や両事業の円滑な実施のためのコーディネーター配置等
運営費の補助単価は、厚生労働省が2008年1月中旬に開催する厚生労働部局長会議(都道府県・政令市・中核市の民生部局長を集めた説明会)で明らかになります。なお、文部科学省予算の「放課後子ども教室推進事業」は、1万5000か所実施目標で(2007年度申請数は約6300か所)、総額77億6500万円(前年比9億4500万円増、概算要求額比21億5000万円減)でした。
事業の考え方と内容は2007年度と変わりませんが、謝金単価が増額されます。(安全管理員の単価360円を665円に、学習アドバイザーの単価540円を740円に引き上げ)
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、2007年12月12日、厚生労働省・文部科学省・内閣府・財務省などに、2008年度の国の学童保育予算の増額と施策拡充を求める要望書を届けました。また、各政党の政策審議会や国会議員にも陳情を行いました。
全国連協は2007年6月にも学童保育の拡充を求める詳しい要望書を提出しました。今回は、厚生労働省が10月にガイドラインを策定したことを受け、次の4点にしぼって要望しました。
@待機児童と大規模学童保育をなくしてほしい。
Aガイドラインに実効力をもたせ、質的な拡充を。
B「放課後子どもプラン」では、学童保育の拡充を。
C専任で常勤の指導員が配置できる予算措置を。
(要望書の全文は全国連協のホームページをごらんください)
大規模学童保育が急増しているなかで、厚生労働省は71人以上の学童保育の分割を促進するために、2009年度いっぱいで71人以上の学童保育への補助金を廃止する計画です。
該当する学童保育では早急に分割していくことが必要ですが、自治体からは「施設と予算の確保が厳しいので分割はむずかしい」との声も聞かれ、あまり進んでいません。
また、国は学童保育のガイドラインを初めて示しましたが、質的拡充を図るうえでは不十分な内容であり、国の予算もまだまだ十分ではありません。
早急に大規模な学童保育の分割を進めるとともに、学童保育の質的な拡充を図っていくためには、国も自治体も学童保育に対する補助金、予算措置を抜本的に引き上ることが必要です。
全国連協では、2008年の1年をかけて、「一人ひとりの声を国と自治体に届けよう」という運動に取り組むことにしました。
保護者・指導員など一人ひとりが、大規模学童保育の分割、質的な拡充の願いを手紙に書き、連絡協議会を通して国と自治体に届けるものです。
一人でも多くの方々が、学童保育の拡充に対する切実な願いを書いていただくようお願いいたします。(くわしくは『日本の学童ほいく』3月号に綴じ込む呼びかけのリーフレット、全国連協のホームページをごらんください)
厚生労働省は2007年10月19日に「放課後児童クラブガイドライン」を策定しました(こちらに全文を掲載しています)。全国学童保育連絡協議会は、今後、学童保育のさらなる拡充が図られるようにと、厚生労働省に要望書を提出しました。その一部を紹介します。
1 ガイドラインの策定によって、各地の学童保育の質的向上が図られることを望みます。
(1)法制化しても基準をつくらず「地域の実情に応じて柔軟に」としてきた国の考えから一歩前進と考えています。ガイドラインが示した「望ましい方向」で改善がすすむよう、予算措置や仕組みを要望します。
(2)ガイドラインが持つ不十分さ、問題点を改善し、よりよいものにしていくことを要望します。
2 ガイドライン策定にとどまらず、設置・運営基準をつくり、十分な予算措置を図ることを強く要望します。
(1)ガイドラインより拘束力のある設置・運営基準の策定を要望します。
(2)学童保育の量的・質的拡充のために一日も早く十分な予算措置を要望します。
(要望書の全文は、こちらに掲載しています)
現在、内閣府で新たな少子化対策が検討されています。それを検討している「『子どもと家庭を応援する日本』重点戦略検討会議」の「基本戦略分科会」では、学童保育は保育園と同じく「親の就労と子どもの育成の両立を支える支援」の課題として位置づけられ、拡充が検討されています。「放課後子ども教室」は、「すべての子どもの健やかな育成の基盤となる地域の取組」に位置づけられます。
第7回の会議には、放課後児童クラブについて、希望する者が就業できるように、総児童数に対して放課後児童クラブに通える人数の割り合いをカバー率として、「(小1〜3年生のカバー率現行19%→60%)(現在)400億円→《+900億円》→(推計所要額)1300億円」という厚生労働省作成の資料が出されました。
また、第9回の会議で出された「論点の整理(案)」では、「3〜5歳の保育所利用率は約4割だが、小学校1〜3年の放課後児童クラブ利用率は2割弱にとどまり、保育所から放課後児クラブへの切れ目のない移行ができていない」ことを課題としています。「求められるサービスの考え方」として、「対象児童の増加に対応した一学校区当たりのクラブ数の増加による、保育所から放課後児童クラブの切れ目のない移行と適正な環境の確保」をあげています。
この会議での検討結果は、2007年12月中にまとめられる予定です。
地方分権について検討している内閣府の地方分権推進委員会は、11月19日に出した「中間まとめ」で、「放課後子どもプラン」ですすめている文部科学省の事業と厚生労働省の事業について、次のような意見を出しています。
「両事業には所管省の違いに発した差異があることから、現場における円滑な事業実施に支障をきたし、地方自治体からは、『一本化』とはいえないとの意見が強い。このため、国の所管省の縦割りによって現場に混乱が生じることのないよう、両事業の統合も含めたさらなる一本化を早急に実施すべきである」
厚生労働省と文部科学省は、この意見に対して、「まずは両事業の実施状況を把握するための実態調査を実施し、それを踏まえ、地方自治体が取り組みやすく、子どもにとって最善のものとなるよう、両省が一体となって改善方策について検討してまいりたい」と文書で答えています。