ホーム>WEB版協議会だより>2012年4月号〜2013年協議会だより
2012年11月30日に閣議決定された政府の経済対策第二弾において、「経済危機対応・地域活性化予備費」から、「安心こども基金」の厚生労働省分として1118億円が積み増しされ、利用できる期間が2013年度末(平成25年度末)まで延長されました。
この厚生労働省分は、保育所の整備や認定こども園の設置促進を図り、待機児童解消をめざすために活用されることが主な使途ですが、「放課後児童クラブの設置提進のための整備」も使用対象に含まれています。
「子ども・子育て関連三法」の国会審議で、「制度施行までの問、安心こども基金の継続・充実を含め、子ども・子育て支援の充実のために必要な予算の確保に特段の配慮を行うものとすること」が附帯決議されていました。
「放課後児童クラブのための設置促進のための整備」とは、小学校や既存の施設を学童保育を新設・分割するために改築・改修する際の費用です。補助単価は1000万円で、原則として、改修する施設の敷地内に倉庫設備を設置することが条件です。これは、それまで教材置き場に使っていた教室を学童保育に転用する場合に、教材などの置き場として倉庫が必要になることが考えられるために、倉庫設備の設置も含めて補助されるというものです。補助率は、国・県・市が各3分の1(政令市・中核市は3分の2)ずつです。
なお、2012年12月に発足した安倍内閣は、2013年1月15日に「平成24年度補正予算案」を閣議決定しました。厚生労働省分としては、「待機児童解消のための保育士の確保(安心こども基金の拡充)」に向けて438億円、「保育や地域の子育て支援の充実等(安心こども基金の積み増し・延長)」に向けて438億円が計上されていますが、ここには、学童保育に使えるものは含まれていません。これは、前述の「安心こども基金」に学童保育の施設整備費を含めたためです。
学童保育の新設・分割を進めるために、自治体に「安心こども基金」を活用していくことを要望していきましょう。
『日本の学童ほいく』を編集・発行する全国学童保育連絡協議会では、本誌を多くの学童保育の保護者や指導員の皆さんに読んでいただきたいと願って、購読を呼びかけています。本誌をみんなで読み、さまざまな場所や機会で活用していくことが、役立つ雑誌として広める力になると思っています。
本誌には、私たちがこれまで大切にしてきたつぎのような性格と役割があります。
◆働きながらの子育てに役立つ雑誌です。
◆指導員の実践(生活づくり)に役立つ雑誌です。
◆保護者と指導員の共感をつくるのに役立つ雑誌です。
◆学童保育をよくする活動をすすめるのに役立つ雑誌です。
本誌は、全国学童保育連絡協議会が編集・発行のすべてを行っている機関誌であり、日本で唯一の学童保育の専門の月刊誌です。多くの保護者・指導員、関係者に読んでもらうことで、学童保育への理解が深まり、学童保育をよりよくする取り組みの大きな力になると考えています。また、本誌は財政面でも、よりよい学童保育をつくるための活動を支えています。
全国学童保育連絡協議会では、学童保育の必要性がますます高まり、量的な拡大・質的な拡充が期待されている今、本誌をより多くの方々に購読していただくこと、取り組みや実践に役立てていただくことが必要だと考え、2013年1月20日、「普及・拡大推進会議」を開催し、都道府県の学童保育連絡協議会の代表者や『日本の学童ほいく』の担当者に集まっていただきました。
推進会議では、本誌の発行の意義を事務局から伝え、本誌の魅力、よかったと感じる記事、私のイチオシ情報、本誌が役だった経験などを交流しあいました。また、本誌の魅力を語るために行ったグループ討議では、活発な意見が交わされ、おおいに盛りあがりました。
参加者からは、つぎのような感想が寄せられています。
「『日本の学童ほいく』で、保護者と指導員の共通認識をつくることの大切さを学んだ」
「これまで特集や指導員、保護者の記事を中心に読んできたが、“たのしいな”や“どうしてどうして”“子どもクイズ”などの連載にも魅力がいっぱいつまっていることを認識しました」
「こんな魅力があるものをもっと多くの人に知ってもらうことが大切だと感じた」
全国学童保育連絡協議会では、見本誌、カレンダーつきポスター、チラシ、「普及・拡大の手引き」などを用意しています。ご希望の方は、地域の学童保育連絡協議会または全国学童保育連絡協議会にお申し込みください。読者の皆さんもぜひ、周りの保護者や指導員の方々におすすめしていただくようお願いします。
2012年8月に国会で可決・成立した「子ども・子育て支援法」と、児童福祉法の改定を受けて、政府は、2015年4月からの実施に向けて、新たな子育て支援策の具体化を図る作業を進めています。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、2012年12月20日、2013年度の政府予算における学童保育予算の大幅増額と国の学童保育制度の拡充を求める要望書を、厚生労働省等に出しました。
全国連協の国に対する要望内容の要旨は次の通りです。
1 学童保育(放課後児童クラブ)に対する市町村の実施資任を明確にし、運営の安定性・継続性を保障する制度とすることを要望。
(1)学童保育の「公的責任」「最低基準」「財政措置」を明確にし、学童保育を児童福祉施設として位置づけた国の制度とすること。
(2)市町村の実施責任を明確にした制度とすること。
(3)国の財政措置が強化される制度とすること。
(4)施設や指導員など、学童保育に必要不可欠な内容を定めた最低基準の法的整備を行うこと。
2 法律の施行までに具体化する細部の内容について、学童保育が拡充する内容になることを要望。
(1)市町村の役割・責任をより明確にし、強化すること。また、都道府県の責任を強化すること。
(2)「地域子ども・子育て支援事業計画」の基本指針の策定では、量的拡大だけではなく、規模・指導員配置・施設設備・開設時間・障害のある子どもの受け入れ・保育料の減免措置など、質的拡充をはかること。
(3)国が定める学童保育の基準は、常勤指導員の常時複数配置などを求めて提言している、全国学童保育連絡協議会の「私たちが求める学童保育の設置・運営基準」を取り入れること。国が学童保育の基準を検討する際には、全国学童保育連絡協議会も検討組織に参画させること。
(4)国が設置する「子ども・子育て会議に、全国学童保育連絡協議会を参画させること。
3 学童保育の運営に必要な補助金の大幅な増額と新たな補助金の創設を要望。
(1)来年度予算の概算要求額を引き下げず、さらに大幅増額すること。
(2)運営費の補助単価は、指導員が「常勤配置」できるよう大幅に増額すること。
(3)次の項目に関する補助金を新設・増額すること。
@ 施設整備費を増額すること。土地取得費用の補助を行うこと。
A 障害のある子どもの人数に応じた常勤指舞員の加配ができる補助を行うこと。
B 保育料負担の減免措置を新たに創設すること。
C 児童数10名未満の小規模学童保育への補助を創設すること。20人夫満の補助単価を大幅に総額すること。
(4)国の補助金の負担率を大幅に引き上げること。当面、2分の1に引き上げること。
4 東日本大震災および原発事故で被災した地域の学童保育の復旧・復興と、学童保育の利用家庭の支援のために特別な財政措置を図ることを要望。
(1)東日本大震災で被災した地域の学童保育が一日も早く平常の状態で再開、復旧できるように、国として万全の措置を講じること。
(2)被災した地域の子どもたちが安心して学童保育に通えるように、学童保育の安定的な運営のための特別な財政措置を行うこと。
(3)原発事故による放射線被害から学童保育の子どもと家庭を守るために、特別な措置を行うこと。
(4)学童保育の防災・安全対策について国としての指針を作成すること。
新たな子育て支援策の2015年4月からの実施に向けて、左記のスケジュールが想定されています。
これに対応して、先に紹介した要望内容をもとに、私たちが求める学童保育の制度、条例などを要望していくことが必要です。
政府がイメージしている スケジュール |
市町村・都道府県の仕事 | |
2012年度 | ・政府から地方自治体に、新しい子育て支援視差うの具体化の検討状況を適宜、情報提供。 ・国に「子ども・子育て支援新制度施行準備室」を設置(内閣府) ・地方自治体に「地方版子ども・子育て会議」を発足して、4月からのスタートすることを求める(努力義務)。 |
・国からの情報をもとに自治体としての方針を検討。 ・2013年度予算案に必要な費用(@「地方版子ども・子育て会議」設置に関わる経費、Aニーズ調査に関わる経費、B制度管理システム調達の経費)を計上。 ・「地方版子ども・子育て会議」を設置するか判断し、設置する場合のメンバーの検討 |
2013年度 | ・国の「子ども・子育て会議」を発足(新しい子育て支援策の重要事項を検討) (注)重要事項とは、地方自治体に策定を義務づけている「地域子ども・子育て支援事業計画」の「基本指針」を検討することなど(2013年度半ばに策定か) ・「地域子ども・子育て支援事業計画」策定の基本指針を策定し、地方自治体に示す ・学童保育の国としての基準を策定して市町村に提示 |
・市町村・都道府県の「地方版子ども・子育て会議」を発足(新しい子育て支援策の重要事項を検討) ・「地域子ども・子育て支援事業計画」策定のためのニーズ調査の実施 ・「地域子ども子育て支援事業計画」策定の検討 ・市町村として学童保育の基準の条例化を検討 |
2014年度 | ・国から市町村に出される交付金の予算編成 | ・市町村・都道府県の「地域子ども・子育て支援事業計画」を策定(「地域子ども・子育て支援事業計画」の検討と策定ほか ・市町村が学童保育の基準を条例制定(議会で審議) ・学童保育の実施に関する届け出受理 ・国からの交付金の都道府県・市町村負担分の予算編成 |
2015年度 | ・4月本格実施(施行)スタート ・内閣府に「子ども・子育て本部」設置 ・交付金の支給 |
・自治体において実施体制を整備 ・「地域子ども・子育て支援事業計画」がスタート ・学童保育の基準を定めた条例の施行 |
学習し、よりよい学童保育を
2012年8月、国がすすめる新しい子育て支援策「子ども・子育て関連三法」が国会で可決・成立しました。政府は2015年4月からの本格施行を予定しており、地方自治体への説明会を開く一方、施行に向けてさまざまな検討を始めています。また、都道府県も、市町村向けの説明会を開きながら、施行までの課題などの周知を始めています。
国は、2013年4月から「子ども・子育て会議」を設置して、新しい子育て支援策の推進体制づくりの準備を始めます。国は、都道府県と市町村には、努力義務として地方版「子ども・子育て会議」を2013年4月から設置できるよう依頼しています(そのための経費を2013年度予算に計上することも依頼しています)。
また、「地域子ども・子育て支援事業計画」(以下、事業計画)の策定が地方自治体に義務づけられ、国は、そのための基本指針を定めて地方自治体に示すこと、新しい交付金の仕組みを決めていくこと、国としての学童保育の基準を定めること、などを行っていきます。
今回の法改定で、市町村は学童保育の基準を条例で定めることになります。また、都道府県・市町村は、事業計画を策定するためのニーズ調査の経費を2013年度予算に計上するよう国から依頼されています。
今後、国からの交付金は市町村の事業計画に基づいて出される仕組みになったために、どのような事業計画や基準を条例で定めるかが、今後の学童保育施策のあり方に大きく影響を与えます。
国・都道府県・市町村が学童保育の拡充に責任をもち、よりよい制度をつくるようになるためには、私たちの働きかけが必要です。全国学童保育連絡協議会では、学童保育関係者が、現在の国の動き・新しい子育て支援策の内容などを把握して、私たちが求める学童保育のあり方などを学習しながら、今後の取り組みを強力に進めていくことを呼びかけています。しっかり学習し、共によりよい学童保育をつくっていきましょう。
*現在、学習のためのリーフレットなどを作成しています。全国学童保育連絡協議会発行の『学童保育情報 2012-2013』なども活用してください。
厚生労働省は、2011年10月1日〜2012年9月30日までの1年間に市町村から報告があった学童保育での重篤な事故(全治1か月以上)は、22都道府県で227件あったと発表しました(昨年は、35都道府県で261件)。
独立行政法人国民生活センターが2008年〜2009年にかけて行った調査研究(2009年3月5日公表「学童保育の安全に関する調査研究」)で、学童保育における安全確保等についての提言が行われています。そのなかで、市町村におけるケガや事故の情報収集が十分に行われておらず、また、その情報を分析、共有化して再発防止策に活用する等の取り組みが進んでいないとの指摘がありました。今回の報告は、その指摘を受けて、厚生労働省が2010年3月から調査を始めたものです。
今回の調査では、負傷などの内容は、骨折が8割を占めています。校庭などの屋外が約6割で、「集団遊び(おにごっこ、かくれんぼ等)中の転倒」がもっとも多く、ついで「遊具(鉄棒、すべり台、うんてい等)からの転落、球技(サッカー、ドッジボール等)中の他児童との衝突、転倒」などがあげられています。大阪では、下校して学童保育に向かって歩道を歩いていた子どもが犠牲になった死亡事故もありました。
事故防止のポイントも紹介されており、「遊具の使用ルール・適切な使用方法について指導を徹底する」「集団生活の場としての環境を整える」「安全に関する指導を徹底する」「事故が発生した場合の対処方法を事前に準備しておく」などが示されています。
*厚生労働省の発表資料は同省のホームページに掲載されています。
*『学童保育情報 2012-2013』でも、安全対策に関する情報を掲載しています。
5100人以上が受講
全国学童保育連絡協議会が主催する全国学童保育指導員学校は、2010年度から新たに北海道会場を加え、全国8会場で開催されています。37回目を迎える今年は、受講者総数が初めて5000名を超え5162名でした。
会場 | 日程 | 受講者数 |
北海道会場(札幌市) | 6月17日(日) | 378人 |
東北会場(仙台市) | 11月3日(祝) | 525人 |
北関東会場(水戸市) | 6月17日(日) | 814人 |
南関東会場(東京都国分寺市) | 6月3日(日) | 822人 |
西日本会場(京都市) | 6月17日(日) | 1016人 |
西日本会場(岡山県津山市) | 6月3日(日) | 403人 |
四国会場(高松市) | 6月24日(日) | 355人 |
九州会場(福岡県春日市) | 9月30日(日) | 849人 |
計5162人 |
10月5日、さいたま市内で全国学童保育連絡協議会の2012年度総会を開催しました。
総会では、2011年度の活動報告、決算報告、会計監査報告が承認され、2012年度の活動方針、予算が討議の後、決定されました。
また、第48回全国学童保育研究集会を、2013年10月5日〜6日に岡山県で開催することが決定されました。岡山県連協から、「岡山で初めて開催される全国研。岡山の学童保育の発展と結びつけて準備をしていきたい」と決意が表明されました。
2012年度の全国学童保育連絡協議会役員は以下の通りです。
会長 木田保男(三多摩・保護者・再)
副会長 荒木田成(石川・保護者・再)/出射雅子(京都・保護者・再)/江尻彰(東京・保護者・再)/小野さとみ(三多摩・指導員・再)/嘉村祐之(岩手・指導員・再)/賀屋哲男(愛知・保護者・再)/河野伸枝(埼玉・指導員・再)/亀卦川茂(埼玉・指導員・再)/田村明日香(千葉・指導員・新)/千葉智生(東京・指導員・再)/永松範子(神奈川・指導員・再)/平野良徳(兵庫・保護者・再)/前田美子(大阪・専従職員・再)
事務局長 池谷潤(神奈川・保護者・再)
事務局次長 真田祐(職員・再)・志村伸之(職員・再)
2012年9月26日、厚生労働省は、2012年5月1日現在の放課後児童クラブ(学童保育)の実施状況調査の結果を発表しました。主な調査結果はつぎのとおりです。
●放課後児童クラブ数 2万1085か所(前年比524か所増)
●登録児童数 85万1949人(前年比1万8911人増)
●利用できなかった児童数(待機児童数) 7521人(前年比113人増)
●障害児入所クラブ数 1万460か所(前年比672か所増)
●障害児登録児童数 2万3424人(前年比1890人増)
●指導員数 8万6457人(前年比3771人増)
全国学童保育連絡協議会が8月に発表した会の調査結果と比べると、学童保育数は242か所、入所児童数が5030人多い結果となっています。これは、川崎市や大阪市などで行われている「全児童対策事業」で国の学童保育の補助金を受けているところも集計に含まれているためです。
厚生労働省は、2007年に「放課後児童クラブガイドライン」を策定し、その後、2008年度の調査から、ガイドラインの項目にそった項目で調査を行っています。クラブ数や児童数以外には、「新一年生の受入開始の状況」「クラブ専用部屋・専用スペースの有無」「登録児童一人当たりの生活スペースの状況」「クラブ内の静養スペースの状況」「一クラブあたりの放課後児童指導員数の状況」「放課後児童指導員の資格の状況」「保護者支援・連携の実施状況」「学校等との連携の実施状況」「関係機関・地域との連携の実施状況」「安全対策の実施状況」「研修受講機会の提供の実施状況」「事業内容の定期的な自己点検の実施状況」「運営状況等の情報提供の実施状況」「要望・苦情対応の実施状況」「放課後児童クラブガイドラインの市町村における策定状況」「放課後児童クラブガイドラインに基づく運営内容の点検・確認状況」などの項目があります。
*調査結果の全文は、厚生労働省のホームページで見ることができます。
2012年9月5日、厚生労働省は来年度の予算概算要求を発表しました。学童保育予算の概算要求額は以下の通りです。
放課後児童対策の充実
317億2200万円(前年予算比9億5700万円増)
●放課後児童クラブの運営支援
288億8900万円(前年予算比9億5700万円増)
保育の利用者が就学後に引き続き放課後児童クラブが利用できるよう、「子ども・子育てビジョン」に掲げる目標の達成に向けた箇所数の増(26310箇所→27029箇所)を図る。また、放課後児童クラブの円滑な実施を図るためのボランティア派遣や、指導員等の資質の向上のための研修の実施を支援する。
●放課後児童クラブの整備
28億3300万円〔前年度予算と同額)
@施設整備費の補助……放課後児童クラブを新たに設置するための創設整備や、耐震化に対応するための改築、大規模修繕等に必要な費用の一部を支援する。
A改修費及び設備費の補助……学校の余裕教室等、既存施設の改修による放課後児童クラブ室の設置や、71人以上の大規模クラブの解消を図るための改修等に必要な費用の一部を支援する。
運営費の補助単価は、指導員の時間給単価を東京都の最低賃金の増にあわせて増額したものになっています。その他の改善や新しい補助はありませんでした。厚生労働省の担当課は、「新しい子ども・子育て支援策で質の拡充は検討しているので、その間は大きな質の改善はない。『子ども・子育てビジョン』に掲げた数値目標に基づいた量的な拡大を図る」としています。
概算要求は、年末の財務省査定後に国会へ予算案として提案されます。全国学童保育連絡協議会では、年末の予算案決定前に、政府や国会議員への要請を行い、学童保育予算の大幅増額を求めていきます。
国会で審議されていた「子ども・子育て関連三法案」(「子ども・子育て支援法案」「認定こども園法改正案」と児童福祉法改正などを含む関係法律の条件整備法案)が、2012年8月10日に国会で可決され、成立しました。「子ども・子育て支援法」と「児童福祉法改正」の学童保育に関わる事項の概要を以下に紹介します。
「子ども・子育て支援法」の学童保育に関わる内容
●学童保育を、市町村が行う「地域子ども・子育て支援事業」(市町村事業)として学童保育を、位置づける(13事業のひとつ)。
●「地域子ども・子育て支援事業計画」の策定を都道府県と市町村に義務づける。市町村は、学童保育の整備目標などを事業計画として策定する(5年を1期間とする)。
●学童保育の補助金は、市町村の「地域子ども・子育て支援事業計画」に基づいて支出される交付金(包括的な交付金)とする(交付金は大きくは、保育所や児童手当などの「給付」と「市町村事業補助金」に区分けされて出される。学童保育の補助金は、13事業一括の交付金)。
●交付金は、国から市町村への直接補助となり、都道府県は予算の範囲内で補助する。
●国に「子ども・子育て会議」を設置する。都道府県と市町村にも同じような機関を設置することを努力義務とする。
●法律の附則に「指導員の処遇の改善、人材確保の方策を検討」を盛り込んだ。
児童福祉法改正の学童保育に関わる内容
●対象児童を「小学生」とし、6年生までに引き上げる。
●国・都道府県・市町村以外の者が学童保育を実施(変更や廃止等も)する場合には、市町村への届け出を必要とする。
●国は、学童保育の基準を省令で定め、市町村はそれに従い、条例で基準を定める。指導員の「資格」と「配置基準」は国が決めた基準に従う。それ以外の、開設日・開設時間・施設の基準などは、国の基準を参酌(参考にする)して自治体が基準をつくる。
●市町村長は、条例で決めた基準の維持のために実施者に報告を求め、検査等を行う。
●市町村は、余裕教室等の公有財産の積極的な貸し付けを促し、実施の促進を図る。
政府は、可決・成立した法律の施行は2015年4月からを予定しており、現在、「地域子ども・子育て支援事業計画」の基本指針の策定や、省令で定める学童保育の基準づくりの検討を進めています(国の「子ども・子育て会議」、自治体の「子ども・子育て会議」は施行日が2013年4月とされています)。
全国学童保育連絡協議会では、政府が策定する基本指針や省令で定める基準が学童保育の拡充に結びつくように、引き続き、国に要望していきます。
また、市町村が策定した「地域子ども・子育て支援事業計画」に基づいて交付金が交付され、市町村が条例で基準を決めることなど、市町村の学童保育に対する方針・計画が今後の学童保育の拡充に大きく影響を与えますので、市町村への働きかけが重要です。全国学童保育連絡協議会として、地域での学習に役立つリーフレットを作成するなどして、今後の課題を整理し、取り組みを提起していきたいと考えています。
*くわしくは全国学童保育連絡協議会のホームページおよび、会発行の「学童保育情報2012-2013」(頒価500円)で紹介しています。
全国学童保育連絡協議会が毎年行っている学童保育の実施状況調査の結果がまとまりました。今年は、東日本大震災・原発事故の影響を考慮し、福島県内の9町村への調査は行わず、調査結果にも含みませんでした〔*)。
●学童保育数
施設の増加数は2万843か所(前年比441か所増)で、大規模学童保育の分割によって過去最高に増えた一昨年の3分の1の数にとどまっています(表1)。小学校数と学童保育数を比較した設置率は97.3%となりましたが、今回、初めて調査した「小学校区内に学童保育がない校区数」は、3855校区(全小学校数の約2割)でした。「設置率」は、市町村や都道府県によって依然として大きな格差があります。
年 | 学童保育数 | 入所児童数 | 学童保育数と入所児童数の増え方 |
1993 | 7,516 | 231,500人 | |
1998 | 9,627 | 333,100人 | 1997年児童福祉法改正、1998年施行 1993年からの5年間で学童保育数は2,100か所増加し、入所児童数は10万人増加(年平均2万人増) |
2003 | 13,797 | 538,100人 | 1998年からの5年間で学童保育数は4,200か所増加し、入所児童数は20万人増加(年平均4万人増加) |
2006 | 15,858 | 683,476人 | 2003年からの3年間で学童保育数は2,000か所増加し、入所児童数は15万人増加(年平均5万人増加) |
2007 | 16,668 | 744,545人 | 入所児童数が1年間で6万1000人増加 |
2008 | 17,495 | 786,883人 | 法制化後10年で7,800か所増加し、利用児童は45万人増加 |
2009 | 18,475 | 801,390人 | 自治体などの入所抑制で潜在的な待機児童が増加 |
2010 | 19,744 | 804,309人 | 大規模施設の分割で施設数は過去最高に増えた |
2011 | 20,204 | 819,622人 | 入所児童数は2万2901人増 |
2012 | 20,843 | 846,919人 | 学童保育の増加は441か所にとどまる。入所児童数は2万521人増 |
注)全国学童保育連絡協議会調査。詳細な実態調査は5年ごとに実施。入所児童数の全数調査は、2006年から実施。それ以外は概数。
●入所児童数
入所児童数は84万6919人(前年比2万521人増)となりました。
母親が働いている子どもは1年生全体の6割おり、そのうち、1日6時間以上働いてる母親は6割です。これを考慮すると、4割(40万人ほど)の1年生が学童保育を必要としていることが推測されます。しかし調査結果では1年生の入所は29万人にとどまっています。3年生まででみても、学童保育を必要としているのに利用できない「潜在的な待機児童」が約50万人いることが推測されます。「校区内に学童保育がない」「経済的負担で利用をあきらめた」「開設時間が短すぎる」「大規模化で利用をあきらめた」など、制度・施策に関わる問題などにより、利用したくてもできない家庭がまだたくさんあります。
●規模別の学童保育数
国が71人以上の大規模学童保育への補助金を打ち切る考えを示した2007年の調査以降、71人以上の大規模学童保育は減り続けていました。しかし、今年の調査では4年ぶりに増加して1352か所となっており、大規模学童保育の分割の動きが鈍ったことが明らかになりました(表2)。これまで以上に、大規模な学童保育を「40人以下」の規模にしていくという課題への対応が必要です。
児童数 | 2007年調査 | 2011年調査 | 2012年調査 | 前年比 |
9人以下 | 593 (3.6) |
727 (3.6) |
725 (3.5) |
-2 |
10人-19人 | 1900 (11.4) |
2178 (10.8) |
2296 (11.0) |
+118 |
20人-39人 | 5636 (33.8) |
7556 (37.4) |
7768 (37.3) |
+212 |
40人-49人 | 2619 (15.7) |
3889 (19.2) |
3991 (19.1) |
+102 |
50人-70人 | 3566 (21.4) |
4603 (22.8) |
4711 (22.6) |
+108 |
71人-99人 | 1809 (10.8) |
991 (4.9) |
1075 (5.2) |
+84 |
100人以上 | 545 (3.3) |
260 (1.3) |
277 (1.3) |
+17 |
合計 | 16668 (100.0) |
20204 (100.0) |
20843 (100.0) |
●運営主体と開設場所
運営主体は表3の通りです。私立保育園や父母会等がつくるNPO法人などが増えました。2006年に指定管理者制度が発足してから、これを導入するところが増え続けていましたが、今年の調査では、導入している市町村数も、導入されている学童保育数も減少しました(7自治体減、33か所減)。なお、民間企業の運営は323か所に増えていますが(前年比58か所増)、大半は自治体からの業務委託や指定管理者制度による運営で、公的資金にもとづかずに運営している企業運営は30か所程度で、あまり増えていません。開設場所は、学校施設内が増えています(表4)。
全国学童保育連絡協議会は、今回の調査結果をふまえて、国や自治体に学童保育の量的・質的な拡充をさらに求めていきます。
運営主体 | か所数 | 割合 | 前年比 |
公立公営 | 8366 | 40.2% | -0.3% |
社会福祉協議会 | 2203 | 10.6% | +0.1% |
地域運営委員会 | 3864 | 18.5% | +0.3% |
父母会・保護者会 | 1404 | 6.7% | -0.4% |
法人等 | 4666 | 22.4% | +0.6% |
その他 | 340 | 1.6% | -0.3% |
合計 | 20843 | 100.0% |
開設場所 | か所数 | 割合 | 前年比 |
学校施設内 | 10797 | 51.8% | +0.5% |
児童館内 | 2700 | 13.0% | -0.3% |
学童保育専用施設 | 1622 | 7.8% | -0.2% |
その他の公的施設 | 1944 | 9.3% | ±0 |
法人等の施設 | 1332 | 6.4% | -0.3% |
民家・アパート | 1381 | 6.6% | +0.2% |
その他 | 1067 | 5.1% | +0.1% |
合計 | 20843 | 100.0% |
※2011年調査には、岩手・宮城の沿岸部および福島の原発30キロ圏内にある34市町村は含まれていません。また、2012年調査には、福島県内の浪江町・富岡町・双葉町・大熊町・楢葉町・広野町・飯舘村・葛尾村・川内村の9町村は含まれていません。そのため、34市町村の学童保育数・入所児童数の増加数は、2010年調査の結果と比較した数字としました。そのため、今年度の調査の前年比は441か所増、2万5111人増としています。
子ども・子育て新システム関連三法案の民主党・自民党・公明党の三党による修正法案は、2012年6月26日に衆議院で可決され、現在、参議院で審議が行われています。
三党修正案では、学童保育に関わる児童福祉法改正案などに修正はありませんでした。衆議院での可決の際に、「子ども・子育て支援法案」の付則に、放課後児童健全育成事業に従事する者の処遇改善に資するための施策について検討を加え、所要の措置を講ずるとしています。
学童保育の担当課である厚生労働省育成環境課が、「放課後児童クラブの主な改正事項(案)」との資料を作成しましたので、紹介します。
現行 | 新制度施行後 | |||||||||
対象児童 | おおむね10歳未満の留守家庭の小学生 | 留守家庭の小学生 ※保護者の就労だけでなく、保護者の疾病や介護なども該当することを地方自治体をはじめ関係者に周知する(衆・附帯決議) |
||||||||
設備及び運営の基準 | 特段の定めなし | 国が省令で基準を定め、市町村で条例を制定 [従事する者及び員数…従うべき基準] [施設、開所日数、時間など…参酌すべき基準] |
||||||||
市町村の関与 | 開始後1ヶ月以内に事後の届け出など [届け出先:都道府県] |
事業開始前の事前の届け出など [届け出先:市町村] |
||||||||
事業の実施の促進 | 特段の定めなし | 市町村の公有財産(学校の余裕教室など)の貸付け等による事業の促進 | ||||||||
計画の推進 | ・「市町村行動計画」の策定 ・計画推進の努力義務 |
・「市町村子ども・子育て支援事業計画」の策定 ・区域ごとの事業量の見込みや提供体制の確保について法律上に規定 ・計画推進の責務 |
||||||||
費用負担割合 | ||||||||||
保護者負担 | 事業主拠出金 (国)1/3 |
保護者負担 | 事業主拠出金 (国)1/3 |
質の改善にかかる 費用については、 税制抜本改革による 財源確保を前提 (公費) |
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都道府県 1/3 |
都道府県 1/3 |
+ | ||||||||
市町村 1/3 |
市町村 1/3 |
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※総事業費の1/2程度を保護者負担と整理のうえ 予算計上している |
※質の改善にかかる費用について、事業主拠出金は充当しない。 (平成24年3月2日少子化社会対策会議決定) ※放課後児童健全育成事業に従事する者の処遇改善に資するための施策について検討を加え、所要の措置を講ずる。 (子ども・子育て支援法附則第2条第3項) ※子ども・子育て支援の量的拡充及び質の向上を図るための安定財源の確保に努める。 (同法附則第3条) |
2012年6月6日、厚生労働省は地方自治体に、「小規模な放課後児童クラブにかかる特別交付税制度について」という事務連絡を出しました。これは、年間開設日数や年間平均児童数が国庫補助要件を満たさない、市町村が単独事業として実施している小規模(児童数10人未満)な学童保育に対して、総務省から特別交付税という補助金があることを知らせるものです。
2012年5月31日に国会で衆議院議員が、この補助金について取り上げて、こうした補助金があることを周知徹底するよう要望し、厚生労働大臣が「周知を図る」と答弁したことから出されました。
「特別交付税」とは、地方交付税総額の6%相当分を財源の範囲とし、国庫補助対象となっていない事業などに対して、「普通交付税の補完的機能」として、「基準財政需要額の算定方法によっては捕そくされなかった特別の財政需要がある」場合に出される総務省の補助金です。1996年度から出されていましたが知られておらず、全国学童保育連絡協議会でも、こうした補助金があることを把握できていませんでした。
「特別交付税に関する省令」第5条の5には、「単独事業として実施する小規模学童保育を受ける児童数として総務大臣が調査した数に51000円を乗じて得た額」と明記されており、10人未満の小規模な学童保育に一人当たり年間51000円の補助が出されます。2011年度は、沖縄県以外のすべての都道府県から申請があり、総額4億3981万4千円が補助ざれました(定額補助で、市町村の負担などはありません)。
市町村では、財政担当がこの交付税についての事務作業を担っており、学童保育の担当課が知らない場合も少なくないようです。学童保育の担当課に、こうした補助金があることを知らせ、小規模学童保育の運営に役立てていきましょう。
2012年5月14日、大阪市内で、学校から学童保育への来所途中に子どもが交通事故で亡くなるという痛ましい事故が起きました。
翌5月15日、厚生労働省は、地方自治体に、「放課後児童クラブにおける来所・帰宅時の安全確保について」の通知(事務連絡)を出しました。これは、こうした事故が起こらないよう、安全確保を徹底することを地方自治体に求めるために出されたものです。
通知には、いくつかの府県で、登下校中の子どもが被害に遭う痛ましい交通事故が発生していることにもふれ、学童保育への来所・帰宅時の子どもの安全を確保するために、厚生労働省が2005年に作成した安全確保のためのチェックリスト(*)の再点検や、地域の関係機関等と連携した見守り活動の実施などを依頼しています。
行政や運営者などがそれぞれの役割や責任を明らかにしながら、保護者や指導員とともに、学童保育への子どもの来所・帰宅時の安全対策の徹底を図っていくことが必要です。
*課長通知「放課後児童クラブ(児童館)への児童の来所・帰宅時における安全点検リスト」(2005年12月14日発)
2012年3月30日に国会に上程された「子ども・子育て新システム関連3法案」は、民主党・自民党・公明党の3党による修正協議の結果、6月15日、修正の確認書が交わされました。総合こども園法案の撤回と、認証こども園法の一部改正法案の提出などが主な内容です。学童保育に関わる法案(本誌2012年6月号「協議会だ
より」参照)については、修正はなされませんでした。
*修正された法案は6月26日に衆議院で可決されました。
2012年6月、福島県学童クラブ連絡協議会が発足しました(詳しくは本誌78ページ参照)。
2012年4月には、宮崎県放課後児童クラブ連絡協議会、2011年6月には和歌山県学童保育連絡協議会が発足しており、これで、全国の都道府県の学童保育連絡協議会は、40に広がりました。
都道府県の連絡協議会は、県内の学童保育関係者や市町村連絡協議会等が集まり、都道府県への要望を取りまとめたり、各市町村ごとの学童保育施策の違いを超えて情報交換したり、研究集会や指導員研修会を開いたりしながら学び合っています。学童保育の発展には欠かせない組織です。
青森・秋田・山梨・福井・島根・山ロ・大分の7県には、まだ県連協がありません。全国学童保育連絡協議会は、指導員の研修会の開催などを通して、県内の学童保育関係者のつながりを築きながら、県の連絡協議会づくりを支援していきます。
現在、国会に、「子ども・子育て支援法案」「児童福祉法改正案」が上程され、今後の国会で審議が行われます。全国学童保育連絡協議会は、「国の学童保育制度の拡充と児童福祉法改正に対する要望」をまとめ、私たちの要望の実現を求めて、国会議員に要請します。要望内容の要点は、次の通りです。
1 学童保育に対する市町村の実施責任を明確にし、運営の安定性・継続性を保障する制度になるような児童福祉法の改正を要望します。
(1)学童保育の「公的責任」「最低基準」「財政措置」を明確にし、学童保育を児童福祉施設として位置づけた国の制度としてください。
(2)市町村の実施責任を明確にした制度としてください。
現在は市町村の責任は、「利用の促進の努力義務」(児童福祉法第21条の10)にとどまっています。また、誰でも学童保育を実施できるとなっていて、そこでの市町村の実施責任があいまいです。
このたびの児童福祉法改正案では、第21条の10は改正されず、第34条には「市町村は放課後児童健全育成事業を行うことができる」となっており、市町村の実施責任が依然としてあいまいのままです。「子ども・子育て支援法案」では、学童保育は「市町村事業」として位置づけられ、「市町村は、……事業計画に従って、地域子ども・子育て支援事業として、次ぎに掲げる事業を行う」ことの一つとなっています。児童福祉法でも、学童保育の実施に関わる市町村の実施責任を明確にした法改正をしてください。
(3)国の財政措置が強化される制度としてください。
「子ども・子育て支援法案」では、国による学童保育の財政措置について、学童保育の量的拡大・質的向上を確実にする=抜本的な財源確保(国庫補助金の大幅引き上げ)となるのかどうかおおいに懸念されるところです。
学童保育の量的拡大・質的向上のために確実に財源が確保され、消費税増税の議論の進捗に関わらず、一刻も早く大幅に財政措置が引き上げられる制度としてください。
2 学童保育の質の確保のために、「最低基準」を含めた制度としてください。
学童保育の質の確保、住んでいる地域の区別なく、良質な学童保育に入所できるようにするためには、国としての最低基準が必要です。
児童福祉法改正案は、厚生労働省令で基準を定めるとされていますが、その基準に市町村が従わなければならないのは「従事する考及び員数」だけであり、施設・設備(広さや備えるべきもの)、開設日・開設時間、指導員の常勤配置や勤務時間等については、「参酌」するものに留まっています。
国が決める拘束力のある基準が、「従事する者及び員数」だけでは、全国どの地域でも良質な学童保育を保障していくには不十分です。以下のように、それ以外のものについても「児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な水準を確保」するために拘束力のある基準としてください。
(1)学童保育施設は、最低基準を決めて「生活の場」にふさわしく整備してください。
(2)指導員の配置基準を決めて、常勤配置ができる制度を要望します。
(3)指導員の公的資格制度を創設し、養成機関を整備してください。
(4)「最低基準」を定める際は、現在ある学童保育の切り捨てや切り下げがないよう、全体の底上げを図るものとして定めてください。
2012年5月12〜13日、全国学童保育連絡協議会は、さいたま市にて、「市町村の設置・運営基準をつくらせていく運動の課題と連絡協議会づくり」をテーマに全国合宿研究会を開催しました。
現在、政府が提案している「子ども・子育て新システム」においては、学童保育は市町村に実施責任がある事業として位置づけられ、市町村が事業計画を立て、それにもとづいて、財政措置(包括的交付金)が行われること、国が決めた基準をもとに、「市町村が条例で基準を定める」こと、などが提案されています。また、市町村の担う仕事や役割が大きくなる方向で「地方分権改革」「地域主権改革」が進められています。
こうした状況をふまえて、学童保育を拡充させていくために、市町村に対する働きかけの重要さを確かめ、どのように取り組みを進めていくのかを学びあいました。また、市町村への働きかけを進めるうえで重要な役割を担う「市町村の学童保育連絡協議会」の役割の重要性や、市町村連絡協議会つくりの課題についても確かめ合いました。
当日は、全国学童保育連絡協議会事務局から、現在の学童保育をめぐる国や自治体の動向、「子ども・子育て新システム」で、学童保育の国の制度や自治体の施策がどのように変わっていく可能性があるのか、市町村への働きかけにおける課題を提起しました。続いて、さいたま市と滋賀県近江八幡市から地域における運動の報告を受け、議論を行い、課題を深め合いました。
2012年3月31日、政府は、「子ども・子育て支援法案」「総合こども園法案」「子ども・子育て支援法及び総合こども園法施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」(児童福祉法一部改正など)の三法案を国会に上程しました。
児童福祉法改正案のなかで、学童保育(放課後児童健全育成事業)に関わっては、次の案が示されています。
〈小学校4年生以上も対象とした*1〉
児童福祉法第6条の3
Aこの法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。(下線は『日本の学童ほいく』編集部)
〈市町村が学童保育を行うことができること、市町村以外が行う場合には市町村に届け出をするものとした*2〉
第34条の8 市町村は、放課後児童健全育成事業を行うことができる。
A国、都道府県及び市町村以外の者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、厚生労働省令で定める事項を市町村長に届け出て、放課後児童健全育成事業を行うことができる。
〈質を確保する観点から、法令上の基準を新たに児童福祉法体系に設定した〉
第34条の8の2 市町村は、放課後児童健全育成事業の設備及び運営について、条例で基準を定めなければならない。この場合において、その基準は、児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な水準を確保するものでなければならない。
A市町村が前項の条例を定めるに当たっては、放課後児童健全育成事業に従事する者及びその員数については厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとし、その他の事項については厚生労働省令で定める基準を参酌するものとする。
B放課後児童健全育成事業を行う者は、第1項の基準を遵守しなければならない。
また、「子ども・子育て支援法案」において、学童保育は「市町村事業」として位置づけられ、市町村が策定した事業計画に沿って実施する旨が条文に明記されました。
○「子ども・子育て支援法案」
第4章 地域子ども・子育て支援事業
第60条 市町村は、内閣府令で定めるところにより、第62条第1項に規定する市町村子ども・子育て支援事業計画に従って、地域子ども・子育て支援事業として、次に掲げる事業を行うものとする。(以下、抜粋)
4 児童福祉法第6条の3第2項に規定する放課後児童健全育成事業
これらは、私たちがこれまで要望してきた制度の抜本的な拡充からすれば不十分な内容です。全国学童保育連絡協議会は、「公的責任」「最低基準」「財政措置」が明確にされた制度が実現されるよう、引き続き、政府や国会議員などに要望していきます。
「『放課後子どもプラン』等の推進における学校と連携した防災・安全体制の整備等について(依頼)」という事務連絡が、厚生労働省と文部科学者から、2012年3月30日付で各自治体の「放課後子どもプラン及び学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業主管部課長」(学童保育と放課後子ども教室それぞれの担当部課)宛てに出されました。
文部科学省は、「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」を作成し、2012年3月16日、各自治体の学校安全主管課等に通知しましたが、その中で、学校と学童保育の連携については言及されていませんでした。また、文部科学省の中央教育審議会が「学校安全の推進に関する計画の策定」を検討し、3月21日に答申を出しましたが、そこでも学童保育との連携についてはふれられていません。
2011年3月11日の東日本大震災発生直後には、子どもの帰宅や引き取り等に際し、学校の対応や学童保育との連携について様々な問題が生じました。全国学童保育連絡協議会は、学童保育と学校との連携が図られる内容のマニュアルや手引きが作成されるよう厚生労働省に要望してきました。
先に紹介した2012年3月30日付の通知は、各学校が作成する「学校防災マニュアル」に学童保育との連携・協力体制の強化等を盛り込むよう、市町村の学童保育担当課や教育委員会等に配慮を依頼しています。通知の抜粋は次の通りです。
「平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、東日本を中心に未曾有の被害をもたらしました。また、このような災害は今後いつどこで発生するか正確な把握は困難であり、放課後・週末等を通じた子どもたちの健全育成に資する施策を展開する上では、従前にも増して、日頃からの安全面への配慮や学校との連携・協力体制の構築が重要となります」
「各地域の実情に応じ、学校との連携・協力体制の強化や安全管理体制の点検・充実など、防災・安全面に今一度ご配慮いただきますようお願いいたします」
2012年3月2日、政府の少子化社会対策会議(関係閣僚出席)が開かれ、基本制度ワーキングチームの「とりまとめ」を政府決定しました。また、「子ども・子育て新システム法案骨子」も決定されました。
政府はこれにもとづき、「子ども・子育て支援法案(仮称)」「総合こども園法案(仮称)」「子ども・子育て支援法及び総合こども園法施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(仮称)」の三つの法案の作成作業を急ぎ行い、税制抜本改革とともに今国会への法案提出を行うとしています。
法案骨子には、「放課後児童クラブ」について、次のように記されています。
「小学校4年生以上も対象となることを明記し、4年生以上のニーズも踏まえた基盤整備を行う」「質を確保する観点から、職員の資格、員数、施設、開所日数・時間などについて、国は法令上の基準を新たに児童福祉法体系に設定する」「国が定める基準を踏まえ、市町村が基準を条例で定める。職員の資格、員数については、現行の事業実態を踏まえ、『従うべき基準』とすることも含め、法案提出までに整理する」。
また、学童保育を含む「子ども・子育て支援事業(仮称)」における国と地方の負担割合は、現行と同じ1対2とされ、国庫補助金(裁量的経費)に位置づけられています。さらに、学童保育の国庫補助の国負担分は事業主の負担とするとされています(現在の学童保育への国庫補助金の国負担分も、厚生年金特別会計児童手当勘定の事業主の拠出金から出されています)。
超党派の国会議員が2012年2月14日に発足させた「公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟」は、2月29日に第2回総会を開きました。その中で、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)からの意見・要望についてヒアリングが行われました。全国連協は、2011年12月に厚生労働省に提出した要望内容を述べ、その実現を要望しました。
この総会では、厚生労働大臣宛てに「放課後児童クラブの抜本的拡充に係る緊急要望」を提出することが確認され、総会終了後、小宮山洋子厚生労働大臣に直接届けられました(厚生労働省育成環境課、全国連協も同席)。
要望内容は次のとおりです。
「1 放課後児童クラブの質の確保の観点から、資格、員数、施設、開所日数・時間などについて、児童福祉法体系に基準を設けること」「2 1の基準について、特に資格、員数については事業の根幹であり、国の基準を『従うべき基準』とすること」「3 1の基準の作成により、従前の補助対象であった放課後児童クラブが排除されないよう配慮すること」。
全国連協は現在、「か所数調査」(学童保育数や入所児童数等をすべての市区町村に問い合わせる調査で、毎年実施)と合わせて、学童保育についての詳細な実態調査を行っています(前回は2007年実施)。当初は2011年に実施する予定でしたが、東日本大震災があったために、1年延期し、2012年に行います。
調査項目は、「条例や要綱」「基準」「開設場所」「施設の広さ」「遊び場、設備」「待機児童数」「障害のある児童の受け入れ」「指導員の人数と体制」「勤務時間」「労働条件」「おやつの有無」「保育料、おやつ代」「運営経費」「補助金額」など44項目にわたり、依頼先は、すべての市区町村です。また同時に、くわしい実態を把握するために、無作為に選んだ学童保育(対象か所数約3400か所)を対象に、「個別調査」を行います。
この結果を通じて学童保育の現状と課題を把握し、年度内を目途に報告書も刊行して、今後の拡充に活かしていく予定です。
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第47回全国が研究集会(埼玉)分科会会場が決定しました 第47回全国学童保育研究集会は、2012年10月6日(土)〜7日(日)に埼玉県内で開催します。全体会場、分科会会場が決定しましたのでお知らせします。 全体会 10月6日(土)13:00〜16:30 さいたまスーパーアリーナ(さいたま市) 分科会 10月7日(日)9:30〜16:00 獨協大学(草加市) 18年ぶりに埼玉県での開催です。現在、埼玉県学童保育連絡協議会は、埼玉県内から3500人の参加を目標に、集会準備と参加者の呼びかけ等に取り組んでいます。一人でも多くの皆さんの参加をおまちしております。リーフレットは本誌6月号に掲載予定。また、全国学童保育連絡協議会のHPにも5月上旬に掲載する予定です。 |
政府の「子ども・子育て新システム検討会議」基本制度ワーキングチームは、2012年2月13日、「子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ」を決定しました。その中で、学童保育(放課後児童クラブ)は「市町村事業」に位置づけられ、以下の方向で検討を進めていくとしています。
○小学校4年生以上も対象となることを明記し、4年生以上のニーズも踏まえた基盤整備を行う。
○放課後児童クラブについては、市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施する旨を法定する。市町村は、市町村新システム事業計画(仮称)で需要の見込み、見込量の確保策を記載し、提供体制を計画的に確保する。
○質を確保する観点から、職員の資格、員数、施設、開所日数・時間などについて、国は法令上の基準を新たに児童福祉法体系に設定する。
○国が定める基準を踏まえ、市町村が基準を条例で定める。職員の資格、員数については、現行の事業実態を踏まえ、「従うべき基準」とすることも含め、法制的に整理する。
○利用手続きは市町村が定める。ただし、確実な利用を確保するため、市町村は、利用状況を随時把握し(事業者は市町村に状況報告)、利用についてのあっぜん、調整を行う。
4点目の国が定める基準については、2012年3月下旬の法案提出(「子ども・子育て支援法(仮称)」「児童福祉法改正」等)までに、「『従うべき基準』とすることも含め、法制的に整備する」とされています。
全国学童保育連絡協議会は、国のしっかりとした基準を定めてほしいという立場で、厚生労働省等に対して、「市町村の実施責任の明確化」「最低基準の明確化」「十分な財政措置」について引き続き、要望していきます。
2012年2月27日、厚生労働省が、都道府県・政令市・中核市の児童福祉主管課長を集めて全国児童福祉主管課長会議を開催しました。学童保育については、厚生労働省育成環境課長から、「放課後子どもプラン」の推進、「子ども・子育て新システム」の検討、国庫補助、放課後児童クラブの運営、安全確保等、耐震化などについて説明がありました。
新システムについては、「とりまとめ」で示された前項の5点を紹介し、「全体の議論の中では、放課後児童クラブについては底上げをする必要があるということが述べられた。さまざまな実施方法で行われてきた経緯があるので、基準を設けて排除される放課後児童クラブが出ないように留意しながら、底上げをはかっていく」との説明がありました。会議の中では内閣府からも、「放課後児童クラブについては非常に底上げをはかりたい事業の柱になりますけれども、地域で現状さまざまでございますので、今回、市町村事業ということでぜひ底上げをはかっていきたい」と説明がありました。
また、育成環境課長は国として初めて学童保育の耐震化の状況を調査(*)したことにふれ、「耐震化率は74.2%に留まっており、社会福祉施設等全体の耐震化率81.3%を下回っている」として、耐震化を進めるよう、自治体に要望しました。また、賃貸等の民間施設の耐震化を診断するための費用は、国土交通省の「住宅・建築物安全ストック形成事業」から補助が受けられること、市町村が設置する施設の耐震工事については、「安心こども基金」や「学童保育の施設整備費」を活用できるが、民設の施設は既存の補助金も含めて市町村で考えて対策をとってほしいと述べました。
*二階建て以上、延べ床面積200u以上の施設のみ調査
2012年2月14日、超党派の国会議員による「公的責任における放課後児童クラブ(学童保育)の抜本的拡充を目指す議員連盟」が発足されました。設立趣意書には、次のようなことが述べられています。「子どもたちの健全な育成環境を充実させるとともに、家族の働く権利を守る。両者の並存は、私たち国会議員の責務であり、急速に進む少子高齢化や労働人口の減少を担保する上でも、非常に重要と考えるものである」「1940年代より保護者や地域住民の自主的な取組みで行われてきた放課後児童クラブ(学童保育)活動は、そのための大きな任を担ってきた制度である」「1998年の児童福祉法における法制化以降も、不安定な制度での運営が続いている」「児童福祉法の一部改正の早期成立を目指すとともに、同制度の抜本的拡充と子どもたちの健全育成環境のいっそうの充実に向けて、不断の活動を続けるものである」。
会長には前厚生労働大臣の細川律夫議員(民主)、幹事長には馳浩議員(自民)、副会長や事務局長、事務局次長などには民主党・自民党・公明党・共産党・みんなの党の議員が就任し、現在、約70人の国会議員が入会しています。
全国学童保育連絡協議会はこれまで、各政党・各国会議員に学童保育の拡充を要望してきました。今後は議員連盟に対しても要望を届けていきます。