ホーム>WEB版協議会だより>2009年1月号〜2010年3月号協議会だより
2009年12月末、2010年度の国の学童保育(放課後児童クラブ)の予算(案)が発表され、1月15日には補助単価等も発表されました。
学童保育の予算は、「総合的な放課後対策(「放課後子どもプラン」)の着実な推進」との位置づけのもとで組まれています。「放課後児童クラブを利用できなかった児童の解消を図るため、受入れ児童数の増加等に必要なソフト面及びハード面での支援措置を図る」と説明がありました。
●総額 274億2000万円(前年比39億6700万円増)
(1)運営費補助(ソフト事業)
・234億8500万円(前年比58億6300万円増)
・対象か所数の増加2万4872か所分(前年比719か所増)
補助単価は、児童数により異なります。その区分に変更がありました。これまでの「36人〜70人」のランクは、「36人〜45人」「46人〜55人」「56人〜70人」とさらに細かく区分され、「望ましい人数規模への移行促進」をめざして、「放課後児童クラブガイドライン」で示している「40人程度まで」の規模に移行するよう、「36人〜45人」の区分の補助単価を大幅に引き上げています(60万円増)。国が予算で「40人程度にしていく」という方針を打ち出したのは初めてです。
一方で、2010年度から廃止する予定だった「71人以上」の補助金は2010年度も継続されることになりました。しかし、「放課後児童クラブガイドライン」では「70人までを限度とする」としていること、早急に大規模解消を図る必要があるとした方針は変わっておらず、71人以上の学童保育への補助単価は大幅に減額(前年比65・6万円減)されることになりました。
また、補助単価の積算のもとになっている指導員の人件費相当分の単価が1割増となりました。そのため、障害児受入推進事業(指導員1人分を加算する)、長時間開設加算の単価も、一定程度、増額されています。人件費相当分が引き上げられたのは、指導員の「処遇の改善」の必要性が社会保障審議会少子化対策特別部会などでも指摘されていたためです。また、補助単価の積算に、児童のための傷害保険と賠償責任保険の保険料が組み込まれました。
さらに、「開設日250日未満」の学童保育への補助金は2010年度から廃止する方針でしたが、土曜日の利用についてニーズ調査を行ったうえで、ニーズがない学童保育であれば開設日が250日未満でも補助は継続されることになりました。
以上の内容を表1にまとめます。
2010年度予算の特徴は、運営費が従来よりは大幅に増額されていることです。施設整備費は、前年比で減額されているものの、「安心こども基金」にも設置促進費が計上されていることもあり、設置目標に応えられると見込まれています。
(2)施設整備費(ハード事業)
@創設費補助(学童保育専用の施設の建設費) 補助単価2112万円
A放課後子ども環境整備事業費
・放課後児童クラブ設置促進事業(余裕教室等の既存施設改修費) 補助単価700万円
・放課後児童クラブ環境改善事業(設備整備費) 補助単価100万円
・放課後児童クラブ障害児受入促進事業 補助単価100万円
施設整備費の種類と補助単価は前年度と同じです。これまで施設整備費の対象は、新たに学童保育をつくったり、大規模学童保育を解消するために分割を行う場合などに限定されていましたが、2010年度からは、既存の学童保育の「設備の更新、追加的な備品購入も補助対象とする」ことになります。
2009年度 (250日の基準開設日数) |
2010年度 (250日の基準開設日数) |
増額 | 2010年度290日の場合(注1) | ||
児童数区分 | 10〜19人 | 995,000 | 1,041,000 | 46,000円増 | 1,561,000 |
20〜35人 | 1,630,000 | 1,885,000 | 255,000円増 | 2,405,000 | |
36〜45人 | 2,426,000 | 3,026,000 | 600,000円増 | 3,546,000 | |
46〜55人 | 2,873,000 | 447,000円増 | 3,393,000 | ||
56〜70人 | 2,719,000 | 293,000円増 | 3,239,000 | ||
71人以上 | 3,222,000 | 2,566,000 | −656,000円 | 3,086,000 | |
特例分 | 開設日数 200〜249日 |
児童数20人以上 1,814,000(10〜19人は対象外)(前年比163,000円増) | |||
長時間開設加算 | 平日分 | 1日6時間を超え、かつ18時を越えて開設する場合 215,000円×18時を越える時間数(前年比13,000円増) |
|||
長期休暇等分 | 1日8時間を超えて開設する場合 97,000円×1日8時間を越える時間数(前年比6,000円増) |
||||
市町村分 | 放課後児童クラブ支援事業 | (1)ボランティア派遣事業(4事業) 1事業当たり年額463,000円×事業数(前年比9,000円増) |
|||
(2)放課後児童等の衛生・安全対策事業 1市町村当たり年額584,000円(前年比同額) |
|||||
(3)障害児受入推進事業 1クラブ当たり年額1,472,000円×か所数(前年比51,000円増) |
|||||
都道府県分 | 放課後児童指導員等資質向上事業費 | 都道府県・指定都市・中核市 1か所当たり950,000円(前年比同額) |
(補助金交付要綱をもとに全国学童保育連絡協議会が作成)
(注1)開設日数に応じて加算があり、1日増える毎に1万3000円加算される。300日が限度。実施調査で最も多い「290
日開設」だと、40日×1万3000円=52万円が加算される。
(注2)放課後子どもプラン実施支援等事業(「放課後子どもプラン」未実施市町村に取り組みを促すための補助、1市町
村当たり年額75万円)は2010年度からなくなりました。
2007年度 | 増減 | 2008年度 | 増減 | 2009年度 | 増減 | 2010年度案 | |
総額 | 158.49億 | 28.45億増 | 186.94億 | 47.59億増 | 234.53億 | 39.67億増 | 274.20億 |
運営費 | 138.45億 | 22.87億増 | 161.32億 | 14.90億増 | 176.22億 | 58.63億増 | 234.85億 |
施設整備費 | 18.14億 | 5.50億増 | 23.64億 | 33.04億増 | 56.68億 | 18.57億減 | 38.11億 |
*総額には「運営費」「施設整備費」のほかに「放課後子ども教室推進事業(文部科学省)との連携促進」のための額も含まれています。
2009年12月25日、厚生労働省の社会保障審議会少子化対策特別部会(以下、部会)の事務局(少子化対策企画室)から、「少子化対策特別部会におけるこれまでの議論のポイント(事務局整理)」が出されました。
学童保育については、「育児休業〜保育サービス〜放課後対策への切れ目のないサービス等が保障」されるために、「放課後児童クラブの量的・質的拡充」という視点でまとめられています。
その具体的な内容については、「質の確保を図りつつ、量的拡充を図ることが重要。小学校の活用とともに、財源保障を強化し、人材確保のための処遇改善が必要」「市町村の実施責任、保障の仕組みの強化、質を確保するための緩やかな基準の必要性、人材確保のための処遇改善等を検討」と記されています。
これまでに出された「論点整理」のなかで私たちが大きく危惧している点(@量的な拡大を図るために、整備水準を低くするような仕組みを考えていること。A事業の安定性・継続性が損なわれ、市町村の責務を「提供体制確保」にとどめるものになってしまう「介護保険制度」と同様の仕組みを考えていること。B就労家庭の子どもか否かにかかわらず、すべての子どもに共通するサービスを提供する制度も考えていること)について、厚生労働省としての考えは必ずしも明らかにはされていません。
引き続き、厚生労働省および部会に、私たちの要望である学童保育制度の拡充を求める声を届けていきます。
厚生労働省は、保育士試験の受験資格に学童保育(放課後児童クラブ)での勤務経験も新たに追加すると決めました(2010年4月から)。「児童福祉施設」での勤務経験はすでに対象になっていましたが、「児童福祉事業」である学童保育も同等の扱いとなります。具体的な内容は次のとおりです。
「学校教育法による高等学校卒業+勤務経験(放課後児童クラブにおいて2年以上の勤務で、勤務時間総数が2880時間以上、児童の保護に従事した者)」「勤務経験(放課後児童クラブにおいて5年以上の勤務で、勤務時間総数が7200時間以上、児童の保護に従事した者)」
社会保障審議会少子化対策特別部会は、2009年11月27日の部会で、7月28日と9月1日に行われた学童保育制度の見直しについての審議状況を整理した資料(厚生労働省が提案した論点整理に対する参考人や委員の発言のまとめ)を発表しました。
9月1日に座長が「各委員のご意見は、これ一本に絞るというよりは、揺れた意見が多かったと思います」とまとめたように、部会には相反するさまざまな意見が出されています。今後は、厚生労働省が議論をふまえた「制度体系案」を作成し、部会でさらに検討をして、2010年度早々に最終まとめが出される予定です。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、12月4日に厚生労働大臣等に要望書を出しました。厚生労働省が提案する「制度体系案」では、私たちが大変危惧している三点(@量的な拡大を図るために、整備水準を低くするような仕組みを考えていること。A事業の安定性・継続性が損なわれ、市町村の責務を「提供体制確保」にとどめるものになってしまう「介護保険制度」と同様の仕組みを考えていること。B就労家庭の子どもか否かにかかわらず、すべての子どもに共通するサービスを提供する制度も考えていること)の方向の見直しを求め、学童保育が質と量の両面で拡充されるよう要望しています。
全国連協は、2009年12月4日、厚生労働省、文部科学者、財務省、内閣府、与党三党、国会議員(厚生労働委員)等に、学童保育制度の抜本的な拡充と予算の大幅増額を求めて要請を行いました。
厚生労働省育成環境課への陳情・懇談では、特別部会の論点について次のような説明がありました。
「児童クラブがなかなか増えない、地方がついてこない要因に、場所・人材の確保ができないことがある。それを打開するためにどうするかを考えている」「介護保険制度の仕組みの導入は一例としてあげている。現行制度上は努力義務しかないので、責任を強化する方向性で検討している」「放課後対策を抜本的にどうするかについて検討しているが、一般児童と留守家庭児童とが同じでいいとの認識はない」。さらに、2010年度予算については、「放課後児童クラブの予算は、『事項要求』になっている。児童手当は廃止されるが、まだ具体的な話は決まっていない。放課後児童クラブは重要な施策で、国として伸ばしていくと考えているので、一般財源化していいものとは考えていない」などの説明がありました。
2010年1月に、内閣府は新しい少子化対策大綱「子ども・子育てビジョン」を策定します。そのため、内閣府はホームページで広く国民から意見を募集しました。2009年2月に公表された結果では、「保育所・幼稚園・放課後対策」への要望が最も多かったことが明らかになっています。
11月18日の衆議院内閣委員会では、学童保育の拡充を求める議員の質問に対して福島少子化対策特命大臣が、「意見募集をしましたが、とても多かったのが保育所・学童クラプヘの支援でした」「貴重な国民の税金を、子ども手当とともにしっかりと保育所・学童クラブにも振り向けたい」と答弁しました。
政府が行っている2010年度予算編成作業のなかで総務大臣が、「子ども手当の財源確保のために、私立保育所の補助金約5000億円を廃止して一般財源化する」と述べたとの報道がありました。
全国連協も含め、保育所関係団体は、2009年12月10日に補助金継続の緊急要望書を福島少子化対策特命大臣に直接手渡しました。福島大臣は、「補助金は必要なので一般財源化には反対」と表明しました。
全国連協では、12月4日に提出した厚生労働大臣宛の要望書のなかでも、「学童保育の補助金についても絶対に一般財源化しないでください」「児童手当廃止でも、学童保育の補助金は確実に確保し、大幅な増額を図ってください」と要望しています。
全国学童保育連絡協議会は、12月4日、厚生労働省や関係省庁、政党・国会議員などに、「公的責任による学童保育制度の拡充を求める要望書」を提出しました。要望点は次の通りです。
1 市町村の実施責任を明確にして、安定性・継続性を保障する制度にすること
(1) 国および地方自治体の「公的責任」を明確にして、学童保育の「最低基準」を定め、財政措置が法的に明確になるように、児童福祉法および関係法令を改正してください。その際、現在の児童福祉事業(第6条の2)としての位置づけを見直し、児童福祉施設(第七条)に位置づけることを要望します。
(2) 市町村の実施責任を明確にし、「利用の促進の努力義務」ではなく、「必要としている児童が入所できるよう条件整備を図ること」を義務づける制度を要望します。実施形態を問わず、必要としている子どもすべてが入所でき、安全で安心して生活できるように、国および自治体が責任をもって学童保育を保障する仕組みを要望します。定期的に指定先を見直す指定管理者制度の導入や、倒産・閉鎖という事態がありうる民間企業の参入など、事業の安定性・継続性が確保できない制度にはしないでください。
(3) 厚生労働省が、社会保障審議会少子化対策特別部会で検討しようとしている次の考え方(以下に要旨のみ
紹介)は撤回してください。
@量的な拡大を図るために、整備水準を低くするような仕組みを考えていること。
A「介護保険制度」などでも採られている仕組みを考えていること。事業の安定性・継続性が損なわれ、市町村の責務を「提供体制確保」にとどめるものになってしまう。
B就労家庭の子どもか否かにかかわらず、全ての子どもが身近に利用可能な一定の場所、共通のサービスを提供する制度も考えていること。
(4) 国の補助金は、現在の奨励的な補助ではなく、財政保障の強化を図るようにすることを要望します。具体的には、国として市町村に対する国庫負担金とすることとあわせて、市町村に条件整備を義務づける制度を要望します。
(5) 国の補助方式は、運営が不安定になってしまう「利用者に対する個別補助(個人給付)」にしないでくだ
さい。
(6) 学童保育の対象児童を現行規定の「おおむね10歳未満」から、「学童保育を必要とする小学生」としてください。
2 学童保育の質の確保のためには「最低基準」を定めること
(1) 国が最低基準を定め、どの学童保育でも質の確保と向上が図られる制度を要望します。
(2) 最低基準の制定にあたっては、現在の学童保育が切り捨てられるのではなく、底上げされて質的な拡充が図られるようにすることを要望します。
(3) 質の確保のために、学童保育の保育指針の策定を要望します。
3 施設や人材の確保のためには財政措置と公的資格制度を創設すること
(1) 学童保育の施設は、「生活の場」にふさわしく、適正規模の設置基準を定め、また、学童保育の専用施設の設置を基本として、児童館や余裕教室、その他の公共施設など地域の社会資源を活用して施設を確保できる制度を要望します。
(2) 指導員の確保のためには、人数配置・勤務体制・勤務時間・待遇などについて、現在の劣悪な条件の抜本的な改善が必要です。「地域ボランティア」「定年退職者」などの活用ではなく、専任・常勤の指導員を常時複数配置できるよう、指導員にかかわる配置基準を定め、常勤配置ができる財政措置を伴った制度を要望します。
(3) 指導員を継続的・安定的に確保できるよう、指導員の公的資格制度の創設と、養成機関の設置を要望しま
す。
4 「放課後子ども教室」等との「一体的運営」をやめること
学童保育と、「放課後子ども教室推進事業」または「全児童対策事業」は、法的根拠が異なり、それぞれに目的・役割や内容も異なります。二つの事業を同じ場所で同じ職員で行う「一体的な運営」は、学童保育の廃止を意味しています。「一体化な運営」を行う事業を制度として位置づけるのではなく、それぞれ独自の事業として拡充させて連携していくことを要望します。
5 学童保育への補助金の確保と増額を
民主党連立政権が誕生し、現在、マニフェストに基づいて予算編成や法整備が検討されていますが、次の二点について、あらためて強く要望します。
(1) 児童手当が廃止されても、学童保育の補助金の確保と抜本的な増額をお願いします。(以下、略)
(2) 学童保育の補助金は「廃止・一括交付金」化はせずに、固有の予算措置を図ること。(以下、略)
10月24日、25日の両日、第44回全国学童保育研究集会を滋賀県で開催しました。42都道府県から約4600名の保護者・指導員などが参加し、学童保育や働きながらの子育てについて学習や交流を行いました。全体会には、滋賀県知事、副知事、大津市副市長、内閣府大臣政務官、国土交通大臣政務官から、ご挨拶をいただきました。
開催地・滋賀県では、すべての自治体と教育委員会から後援をいただくことができました。また滋賀県内からは1900名を超える参加があり(目標1500名)、滋賀県の学童保育の発展にとっても、大きな意義がある全国研究集会となりました。
*本誌2010年2月号の特集で、当日の模様をご報告します。
10月23日、全国学童保育連絡協議会の2009年度総会を大津市内で開催しました。総会では、2008年度の活動報告、決算報告、会計監査報告が承認され、2009年度の活動方針、予算が討議の後、決定されました。
活動方針では、次の点を今年度の重点課題として取り組むことを確認しました。
@ 学童保育の量的・質的な拡充と制度の抜本的拡充を
政府が決めた利用児童の三倍化目標の着実な実現、国の学童保育制度の抜本的な拡充の実現に取り組む。特に、大規模学童保育を解消して適正規模の学童保育を「必要な小学校区には複数設置」の実現をめざす。また、国の学童保育制度が「公的責任を強める」「最低基準をつくる」「財政措置を図る」ものとなるよう、厚生労働省と社会保障審議会少子化対策特別部会へ強く働きかける。
A 指導員の仕事・役割を明確にし、体制の確立と労働条件の改善に取り組もう
指導員に関わる制度の抜本的な拡充に強力に取り組む。特に、専任の常勤指導員の常時複数配置や公的資格制度の実現を求めていくこと、劣悪な指導員の労働条件を改善すること、継続的な学習・研修・実践の拡充と地域の指導員組織の育成・強化に取り組む。
B「放課後子どもプラン」では「一体化」ではなく、学童保育の拡充を
「放課後子どもプラン」は、学童保育の量的・質的な抜本的拡充をめざして取り組む。一部の自治体で生まれている「全児童対策事業」や「放課後子ども教室」との「一体化」には反対していく。児童館の拡充も含めた総合的な放課後対策の拡充を求める。
C 父母会(保護者会)、連絡協議会の組織強化に取り組もう
学童保育の発展の原動力である父母会(保護者会)の強化、結成に取り組む。市区町村と都道府県の学童保育連絡協議会の組織づくりと組織強化に取り組む。この課題と結びつけて、『日本の学童ほいく』の昨年度以上の購読者数増をめざす。
また総会では、第45回全国学童保育研究集会を千葉県で開催することを決定しました。千葉県学童保育連絡協議会の井上隼人事務局長は「千葉県内の学童保育の発展と結びつけて、一年間かけて準備し、たくさんの方をあたたかく迎えたい」と決意を述べました。
さらに、2009年度の全国役員が選出されました。総会で決定した2009年度の全国役員は次の通りです。
会 長 山本博美(指導員・再任)
副会長 池谷 潤(神奈川・保護者・再任)
出射雅子(京都・保護者・再任)
上垣優子(大阪・指導員・再任)
江尻 彰(東京・保護者・再任)
片山恵子(埼玉・指導員・再任)
嘉村祐之(岩手・指導員・再任)
賀屋哲男(愛知・保護者・再任)
河野伸枝(埼玉・指導員・再任)
鈴木美加(千葉・指導員・再任)
竹中久美子(石川・指導員・再任)
永松範子(神奈川・指導員・再任)
平野良徳(兵庫・保護者・新任)
古谷健太(三多摩・保護者・再任)
事務局長 木田保男(三多摩・保護者・再任)
事務局次長 真田 祐(職員・再任)・志村伸之(職員・再任)
お悔やみ
全国学童保育連絡協議会副会長の坂口正軌さん(61歳)が2009年10月13日、心筋梗塞で突然亡くなられました。心から哀悼の意を表します。
学童保育制度のあり方を検討している社会保障審議会少子化対策特別部会(以下、特別部会)では、7月28日に続いて9月1日の部会でも、学童保育について論議を行いました。
冒頭に、厚生労働省が、「第一次報告の内容」の説明を行い、「放課後の子ども対策の基本的視点について」「量的拡大について」(7月28日の部会での説明と同じもの)「質の確保について」「人材の確保について」「利用方式、利用者負担について」「財源・費用負担について」「放課後子どもプランの推進について」の論点整理を提案しました.この提案をふまえて、各委員から意見が出されました。
厚生労働省が提出した論点整理の「2.放課後の子ども対策の基本的視点について」では、「就労家庭の子どもについては、……生活の場を提供する必要性がある……」としながらも、「……子どもの健全育成の観点から、就労家庭の子どもか否かにかかわらず、全ての子どもが身近で利用可能な一定の場所、共通のサービスの提供を充実し、新しい制度設計上もそうしたことを考慮して制度的な位置づけを行うことが考えられるのではないか」と述べられています。これをふまえて各委員からも、「就労家庭の子どもか否かにかかわらない制度の必要性」や、「多様な活動メニューの提供を地域の実情に応じてできるような制度がよいのではないか」などの意見が多数出されました。
また、論点整理の「8.放課後子どもプランの推進について」でも、「……就労家庭の子どもか否かにかかわらず、全ての子どもが身近で利用可能な一定の場所、サービス提供を充実していくことの重要性」からみて、放課後子ども教室と学童保育の「より一層の両事業の一体的実施」も考えられるのではないかと述べられており、たいへん危惧される内容となっています。
前号でも紹介したように、「3.量的拡大について」の論点整理では、学童保育の継続的・安定的な運営ができなくなる恐れや、市町村の責務が「提供体制確保」にとどめられる恐れのある内容となっています。
「4.質の確保について」の論点整理でも、「一定の基準を設定する必要があるのではないか」「実態について十分把握しながら、具体的な基準設定の検討を行う必要がある」とするものの、内容は問題の多いものです。指導員の継続的な就労が可能となるよう「処遇改善が必要」としていますが、指導員の確保については公的資格制度の創設にはふれず、「研修の充実」にとどめていたり、「地域ボランティア、定年退職者など、多様な人材の参画を求めていくことが必要ではないか」などと述べています。
このように、厚生労働省の論点整理は、改善につながる点がいくつか出されているものの、全体としては、量的な拡大を図るために、「場所の確保、予算、人材確保などの事情によって基盤整備が抑制されることのない仕組み」(つまり整備水準を低くすること)の検討があげられていたり、「介護保険制度」などにおいても採られている仕組みも考えられるなどとしており、事業の安定性・継続性が損なわれたり、市町村の責務を「提供体制確保」にとどめるものになりかねない、大きな危惧を抱かせるものとなっています。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)では、あらためて厚生労働省や関係省庁に、学童保育制度の抜本的な拡充を求めていきます。
総選挙の結果、民主党・社会民主党・国民新党の連立政権が誕生しました。全国連協では、これまでと同様に、政府・与党、野党を問わず、学童保育の拡充を求めていきます。
特に、特別部会での検討がすすんでいるもとで、公的責任による学童保育制度の抜本的な拡充を強く求めていく必要があります。量の拡大を早急に図る必要があるとしても、安易な形ではなく、質の拡充も図られる制度となることが必要です。
こうした点もふまえて、全国連協では、2009年9月28日に厚生労働大臣に、次の4点に絞った要望書を提
出しました。
〈学童保育制度の抜本的拡充のための要望点〉
1 市町村の実施責任を明確にして、安定性・継続性を保障する制度とすること
2 学童保育の質の確保のためには「最低基準」を定めること
3 施設や人材の確保のためには財政措置と公的資格制度を創設すること
4 「放課後子ども教室」等との「一体的運営」をやめること
今後、関係省庁や連立政権与党をはじめとするすべての政党、国会議員への働きかけとともに、各地域や各学童保育で「私たちが望む学童保育(制度)とは」を話し合いながら、国や自治体への働きかけをすすめていきます。
*要望書の全文は、全国学童保育連絡協議会のホームページに掲載しています。
2009年8月27日、厚生労働省の2010年度の概算要求が発表されました。概算要求は、各省庁が来年度に必要な予算額を財務省に示すものです。毎年、8月末に発表され、年末の財務省査定を経て政府予算案となり、1月から始まる国会審議を経て決まります(今後、見直しが行われたり、大幅に削られてしまうこともあります)。学童保育関係の予算は、「総合的な放課後対策(「放課後子どもプラン」)の着実な前進」を図るために、総額281億円300万円が計上されました。内容は次の通りです。
◆総額…281億300万円(前年度比46億5000万円増)
◆補助内容と補助額
(1)放課後児童クラブ運営費(ソフト事業)
・233億1600万円(前年度比56億9400万円増)
・要求か所数…2万7793か所(前年度比3640か所増)
(2)放課後児童クラブ整備費等(ハード事業)
・46億1800万円(前年度比10億5000万円減)
(3)放課後子ども教室推進事業(文部科学省)との連携促進
・1億6900万円(前年度比600万円増)
学童保育に関わる厚生労働省の予算は、厚生労働省と文部科学省と連携して推進する「放課後子どもプラン」の「着実な前進」と、「『新待機児童ゼロ作戦』を踏まえ、引き続き、ソフト面及びハード面での支援を図る」内容となっています。
補助対象か所数は前年比3640か所増と、整備か所数を大幅に増やしています。これは、「新待機児童ゼロ作戦」が、2007年度から2017年度までの10年間に学童保育の利用児童を新たに145万人増やす計画であるため、1年間に14万5000人増、40人規模の学童保育で3625か所増が必要だという考えにもとづいています。
82ページの表にあるように、運営費が2009年度予算と比べて大幅に増えているのは、「新待機児童ゼロ作戦」や社会保障審議会少子化対策特別部会の議論のなかで「指導員の処遇改善を含めた質の向上」が課題とされていることをふまえ、指導員の配置人数や人件費単価などの上乗せを計上したためです。ただし、運営費の補助単価はまだ明らかにされていません。
施設整備費は、前年度比10億5000万円減です。これは、2008年度・2009年度の補正予算で組まれた「安心こども基金」(合計2500億円。2010年度までの期間限定の基金)のなかに、学童保育の施設整備費が組み込まれているからです。
これまで設備費補助では、新設や大規模クラブ解消のための分割の場合にしか、補助対象になっていませんでした。しかし今回は、「既存の放課後児童クラブの設備の更新、追加的な備品購入も補助対象とする」と対象を広げています。
2010年度から開設日が249日以下の学童保育と、児童数71人以上の学童保育への補助金を打ち切るという厚生労働省の方針は変わっていません。補助金を打ち切ることが本意ではないため、2009年度中に開設日数増、分割の促進をすすめてほしいと厚生労働省は説明しています。ただし、2010年度になっても基準開設日数を下回っている学童保育や71人以上の学童保育があった場合、その対処については、年末までに対策を検討するとのことです。
文部科学省の「放課後子ども教室事業」の概算要求も8月28日に発表になりました。「放課後子ども教室事業」は、前年度予算では「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」(総額142億6100万円)のなかのメニューのひとつとされており、実施目標は1万5000か所ですが、「放課後子ども教室事業」のみの予算額は示されませんでした。2010年度の概算要求でも同じく、前述の事業(総額148億2300万円)のメニューのひとつとされています。実施目標数も同じく1万5000か所です。
なお、「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」には、@放課後子ども教室推進事業、A学校支援地域本部事業、B家庭教育支援基盤形成事業、Cスクールソーシャルワーカー活用事業、Dスクールカウンセラー等活用事業、E地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業、Fスクールヘルスリーダー派遣事業という七つのメニューがあり、市町村が地域の実情に応じて選択して実施します。
2007年度予算 | 2008年度予算 | 2009年度予算 | 2010年度概算要求 | ||
総額 | 158.57億 | 186.94億 | 234.53億 | 281.03億 | |
前年比 | 46.76億増 | 28.37億増 | 47.47億増 | 46.50億増 | |
か所数 | 2万か所 | 2万か所 | 2万4153か所 | 2万7793か所 | |
前年比 | 5900か所増 | 同数 | 4153か所増 | 3640か所増 | |
運営費 | 138.45億 | 161.32億 | 176.22億 | 233.16億 | |
前年比 | 26.64億増 | 22.87億増 | 14.9億増 | 56.94億増 | |
施設整備費 | 18.14億 | 23.64億 | 56.68億 | 46.18億 | |
前年比 | 18.14億増 | 5.50億増 | 33.04億増 | -10.50億 | |
その他(注) | 1.98億 | 1.98億 | 1.63億 | 1.69億 |
(注)放課後子ども教室推進事業〔文部科学省)との連携促進事業(主に研修費)
現在、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会少子化対策特別部会で、学童保育の制度のあり方の検討が始められています。先月号の「協議会だより」でも紹介しましたが、2009年7月28日に行われた部会では、厚生労働省から「量的拡大について」の論点整理の資料が出されました。
そこには、学童保育の量的拡大を図るうえでの基盤整備のために、「場所の確保、予算、人材確保などの事情によって基盤整備が抑制されることのないような仕組み」の検討をあげています。量的拡大を理由に、場所、予算、人材などの条件が切り下げられる懸念があります。さらに、「潜在需要も含め、個々のニーズに対応した提供が保障される仕組み」を検討する必要があるとして、市町村の責務を介護保険制度などにおいても採られている「提供体制確保」にとどめる方策、「費用を支払う仕組みとして、客観的に一定の基準を満たす事業者については、対象とする仕組み」などが示されています。さらに、「個々人に対応する給付を行う仕組み」*なども検討課題としてあげ
られており、たいへん危惧される内容となっています。
全国学童保育連絡協議会は、2008年12月19日に厚生労働省と社会保障審議会少子化対策特別部会に対して、学童保育の制度改正に際しての市町村の実施責任や補助方式のあり方などについて、下記の点(囲み内)を要望してきました。国と自治体の公的責任で学童保育の量的・質的の拡充が実現できる制度となるよう、今後も強く働きかけていく必要があります。
*その場合、市区町村が放課後児童クラブに係る給付の必要性・量を判断
**要望書全文は全国学童保育連絡協議会のホームページで掲載しています
◆次世代育成支援の「新たな制度体系」の検討にあたっての要望書(抜粋)** く市町村の実施責任、サービス利用(提供)、補助方式のあり方の要望点〉 @市町村には保育園と同等の実施責任があります。市町村には、「利用の促進の努力義務」ではなく、「必要としている児童が入所できるよう条件整備を図る」ことを義務づける制度を要望します。 A市町村は、実施形態が公営・委託・補助を問わず、必要とする子どもすべてが入所でき、安全で安心して生活できるように学童保育の条件整備を行うことも含めて、行政が責任をもって学童保育を保障する仕組みを要望します。定期的に指定先を見直す指定管理者制度や倒産のある民間企業など、事業の安定性・継続性が確保できないような制度にはしないでください。 B国の補助方式は、運営が不安定になる利用者に対する個別補助ではなく、施設・事業の安定性・継続性に欠かせない実施主体・運営主体に対する運営費の補助とする制度を要望します。 |
「次世代育成支援の新たな制度体系」を検討してきた社会保障審議会少子化対策特別部会(厚生労働大臣の諮問機関)では、2009年7月28日から学童保育(放課後児童クラブ)についての検討を始めました。検討するのは、2009年2月24日に出された「第一次報告」で示された課題です。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)では、2008年12月16日に社会保障審議会少子化対策特別部会宛に要望書を出し、「行政責任の強化」「最低基準等による全国的水準の確保」「安定的財政措置」「指導員の常勤配置や公的資格制度の創設」などを強く求めてきました。
7月28日の部会には4人の参考人が出席し、それぞれの立場から学童保育の制度のあり方についての意見・要望を述べました。全国連協にも参考人としての出席依頼があり、事務局次長が出席して発言しました(※2)。
その他の参考人は次のとおりです。日本総合研究所主任研究員・池本美香氏、全日本自治団体労働組合保育部会・檜山順氏、淑徳大学教授・柏女霊峰氏。
部会では、厚生労働省から、「第一次報告におけるとりまとめ内容」も示されました。そこでは、
「放課後児童クラブについては、就学前の保育と並んで、小学校就学期の両立支援系サービスとして不可欠なものであり、地域格差を生じさせることなく、全国的に実施していくべき」
「質の確保を図りながら、低学年を中心としつつも小学校全期を対象として量的拡大を図っていくことが重要」
「量的拡大を図っていく上では、まず、場所の確保が欠かせず、小学校の積極的活用を図っていくことが必要」
「大幅な量的拡大を図っていくためには、人材確保が重要な課題であり、財源の確保と併せ、人材確保のための職員の処遇改善等を図っていくことが必要」
としたうえで、今後の検討課題として次の2点をあげています。
「サービスの質の維持・向上を図っていく必要があり、財源の確保と併せ、そのための基準の要否、そのあり方、担保の方法を検討していくべき」
「質・量両面からの充実を図っていくため、必要となる制度上の位置づけ(市町村の実施責任、サービス利用方
法、給付方式等)及び財源のあり方を、さらに検討していくべき」
また、「量的拡大について(1)」「量的拡大について―(2)基盤整備について」「量的拡大について―(3)提供の保障について」という資料(※3)も出されて、「量的拡大について」の論点が示されました。
部会では、次回(8月〜9月にかけて開催)から「量的拡大について」の検討をはじめ、「質の確保について―(1)人員配置基準等」「質の確保について―(2)担い手の質の確保」「人材確保について」「利用方式、利用者負担について」「財源・費用負担について」「放課後子ども教室との関係について」を順次検討していくとしています。
全国学童保育連絡協議会では引き続き、学童保育制度の抜本的な拡充を求めていきます。
独立行政法人・国民生活センターは、一昨年度、昨年度と2年続けて学童保育に関する調査研究を行い、提言をまとめてきました。
2008年度の「学童保育の安全に関する調査研究」では、学童保育での安全確保のために「事故等の情報の共有」「安全を守る空間の確保と人数の適正化」「指導員の専門職化」「格差解消のための財政措置」「災害共済給付制度の適用」などを提言し、厚生労働省と文部科学省に要望書を提出しています。厚生労働省は、この要望を受けて、各自治体に「事故等の適切な対処」を求める事務連絡を出しました。国民生活センターの調査研究と提言はマスコミでも数多く取り上げられ、大きな反響が寄せられています。
そして2009年度も、子どもの傷害予防、社会福祉、学童保育の各専門家、法律家で構成される研究会を設置し、「学童保育サービスの環境整備に関する調査研究」を行うことになりました。これまでの集大成という位置づけです。
都道府県に焦点をあて、「国の緊急整備施策一年後の予算措置状況」「管内市区町村との連携体制」「質・量の確保にみる充実度」「契約の適正化」「安全面の取り組み」などについての調査を行い、それをもとに、子育てと就労支援に資する学童保育サービスの環境整備のあり方についての提言を行う予定です。
全国連協からも役員が委員として参加します。2010年2月頃には調査研究報告書がまとめられる予定です。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)が毎年行っている、学童保育数の調査結果がまとまりました。概要は以下の通りです。
●学童保育数1万8475か所
施設数は昨年と比べて980か所増えましたが、小学校数に対する設置率はまだ8割にとどまっています。小学校数以上に学童保育がある市町村は、全体の45%でした(表1)。高い設置率の自治体は、さいたま市152%、高知市153.5%などで、横浜市55.8%、秋田市59.6%など、低い自治体と大きな格差があります。
設置率 | 2008年調査 | 2009年調査 | 2008年比(%) |
---|---|---|---|
200%以上 | 33(1.8) | 40(2.2) | +0.4 |
150%〜199% | 53(2.9) | 78(4.3) | +1.4 |
101%〜149% | 216(11.9) | 265(14.7) | +2.8 |
100% | 418(23.1) | 427(23.7) | +0.6 |
75%〜99% | 249(13.7) | 217(12.1) | -1.6 |
50%〜74% | 322(17.8) | 297(16.5) | -1.3 |
25%〜49% | 221(12.2) | 208(11.6) | -0.6 |
25%未満 | 112(6.2) | 89(5.0) | -1.2 |
学童保育なし | 187(10.4) | 179(9.9) | -0.5 |
合計 | 1811(100.0) | 1800(100.0) |
●入所児童数は80万1390人
この間、入所児童数の激増が続いていましたが(表2)、今回は、昨年比で1万4507人増にとどまりました。
理由として考えられるのは、2010年をもって71人以上の学童保育への国の補助金が打ち切られるため、入所基準を厳しくするなど、受け入れを抑制する市町村や運営主体が増えていること、同じ校区に「全児童対策事業」ができたことで入所児童が減ったことが影響していると考えられます。また、大規模学童保育の現状をよいと思わない保護者が、入所をためらっていることも予想されます。
いずれにしても、学童保育の必要性が弱まったのではなく、必要としている子どもが入所しにくくなっていることが原因と考えられます。
年 | 学童保育数 | 入所児童数 | 学童保育数と入所児童数の増え方 |
---|---|---|---|
1993 | 7,516 | 231,000人 | |
1998 | 9,627 | 333,100人 | 1997年児童福祉法改正、1998年施行 1993年からの5年間で学童保育数は2,100か所増加し、入所児童数は10万人増加(年平均2万人増) |
2003 | 13,797 | 538,100人 | 1998年からの5年間で学童保育数は4,200か所増加し、入所児童数は20万人増加(年平均4万人増) |
2006 | 15,858 | 683,476人 | 2003年からの3年間で学童保育数は2,000か所増加し、入所児童数は15万人増加(年平均5万人増) |
2007 | 16,668 | 744,545人 | 入所児童数は1年間で6万1000人増加 |
2008 | 17,495 | 786,883人 | 法制化後10年で7,800か所増加し、利用児童は45万人増加 |
2009 | 18,475 | 801,390人 | 自治体などの入所抑制で潜在的な待機児童が増加 |
●規模別の学童保育数
相変わらず、大規模学童保育は少なくありません(表3)。71人以上の学童保育は前年に比べて344か所減ったものの、まだ2137か所あります。2009年度中に分割の予定がある所は792か所でしたので、2010年度にも1345か所が残る可能性があります。年度中の新設・分割(厚生労働省の補助金は年度途中でも出される)などによって大規模学童保育を解消することは、緊急の課題です。
児童数 | 98年調査 | 03年調査 | 2007年調査 | 2008年調査 | 2009年調査 | 07年比 | 08年比 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
9人以下 | 3.3% | 4.2% | 593(3.6) | 636(3.6) | 630(3.4) | +37 | -6 |
10〜19人 | 12.7% | 11.8% | 1900(11.4) | 1925(11.0) | 2078(11.3) | +178 | +153 |
20〜39人 | 50.0% | 40.2% | 5636(33.8) | 5807(33.2) | 6314(34.2) | +678 | +507 |
40〜70人 | 30.9% | 35.3% | 6185(37.1) | 6646(38.0) | 7316(39.6) | +1131 | +670 |
71〜99人 | 2.7% | 7.3% | 1809(10.8) | 1890(10.8) | 1667(9.0) | -142 | -223 |
100人以上 | 0.4% | 1.2% | 545(3.3) | 591(3.4) | 470(2.5) | -75 | -121 |
合計 | 100.0% | 100.0% | 16668(100.0) | 17495(100.0) | 18475(100.0) | +807 | +980 |
●運営主体と開設場所
運営主体は表4の通りです。私立の保育所や父母会NPO法人などが運営する所が増えています。指定管理者制度は1722か所の学童保育で導入されていました(前年比229か所増)。民間企業が運営している所は146か所でした(前年比32か所増)。
開設場所は表5の通りです。学校施設内が増えています。
全国連協では、今回の調査結果をふまえて、国や自治体に、学童保育の量・質両面での拡充をさらに求めていきます。
運営主体 | か所数 | 割合 | 07年比 | 08年比 |
---|---|---|---|---|
公立公営 | 7,769 | 42.1% | -2.1% | -0.5% |
社会福祉協議会 | 2,018 | 10.9% | -0.4% | -0.4% |
地域運営委員会 | 3,415 | 18.5% | +1.7% | +1.2% |
父母会・保護者会 | 1,429 | 7.7% | -1.3% | -0.7% |
法人等 | 3,480 | 18.8% | +2.4% | +0.3% |
その他 | 364 | 2.0% | -0.3% | +0.1% |
合計 | 18,475 | 100.0% |
開設場所 | か所数 | 割合 | 07年比 | 08年比 |
---|---|---|---|---|
学校施設内 | 9,220 | 49.9% | +2.3% | +1.3% |
児童館内 | 2,631 | 14.2% | -1.6% | -0.8% |
学童保育専用施設 | 1,378 | 7.5% | +0.1% | +0.1% |
その他の公的施設 | 1,886 | 10.2% | -0.7% | -0.6% |
法人等の施設 | 1,267 | 6.9% | +0.2% | 0 |
民家・アパート | 1,284 | 6.9% | -0.4% | -0.2% |
その他 | 809 | 4.4% | 0 | +0.1% |
合計 | 18,475 | 100.0% |
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、5月27日、学童保育の制度の抜本的拡充および来年度予算の大幅増額を求めて厚生労働省に陳情を行いました。
今、学童保育については、量・質両面での拡充が大きな課題となっています。政府は「新待機児童ゼロ作戦」(2008年2月発表)で、2017年度までに学童保育の利用児童を3倍に増やす(新たに145万人増やす)目標を決めています。また、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会では、次世代育成支援の「新たな制度体系」の検討を行っており、学童保育を保育所と同じ「両立支援系サービス」
として位置づけ、児童福祉法改正も含めた制度体系の見直しを検討しています。
こうした状況をふまえて、厚生労働省に次の五点(概要)を要望しました。
1国の学童保育に対する抜本的な拡充、集中重点的な取り組みに関する要望
@学童保育の入所児童を「10年間で3倍化する」が着実に実現できるように、国としての方針と財政措置を具体化してください。A次世代育成支援の「新たな制度体系」づくりには、2008年12月19日に全国学童保育連絡協議会が提出した要望内容が実現されるよう検討してください。B「放課後子どもプラン」の推進は、学童保育と「放課後子ども教室」が「一体化」「統合」されないよう、学童保育に必要な要件(留守家庭児童の家庭に代わる「生活の場」に必要な「専用施設(室)」「専任指導員」「固定した子どもの生活集団」)を明確にし、国の学童保育制度を抜本的に拡充してください。C国が決めている「集中重点期間」(2010年度まで)に学童保育の抜本的な拡充が図られるよう、「安心こども基金」の活用も行い、適切なスピードと規模で整備を図ってください。
2 国の学童保育制度の見直しに関する要望
@学童保育に対する国および地方自治体の「公的責任」を明確にし、「最低基準」を定め、財政措置が法的に明確になるように児童福祉法を改正してください。A学童保育を児童福祉施設(第七条)に位置づけてください。B対象児童を「おおむね10歳未満」でなく、「学童保育を必要とする小学生」としてください。C国として、学童保育の設置・運営基準(最低基準)を定めてください。児童数71人以上の学童保育の解消にとどまらず、「適正規模(40人まで)」の実現に早急に着手してください。D「放課後児童クラブガイドライン」を改定し、かつ実効力を持たせるような手立てをとってください。E学童保育が「災害共済給付制度」の対象となるようにしてください。
3学童保育指導員に関わる課題に対する要望
@指導員の専任・常勤・常時複数体制が実現できる制度的確立と財政措置を図ってください。A指導員の公的資格制度の創設を行うとともに、養成機関を整備してください。B国の指導員の研修制度の創設と自治体への研修費補助を増額してください。C指導員の望ましい配置と体制を明確にさせるために、「放課後児童クラブガイドライン」を改定してください。D指導員の実態・ニーズ調査を行ってください。
4 2010年度の厚生労働省予算に関する要望
@現在の国の補助金の補助率「三分の一」を「二分の一」に拡大してください。A児童数に見合った人数の常勤指導員を複数配置できるよう、運営費の補助単価を大幅に引き上げてください。B施設整備費の補助単価と予算総額を大幅に引き上げてください。C経済的な困難を抱えた家庭のために、保育料減免措置ができるよう国として経済的支援を行ってください。D障害児の受け入れ促進のために、障害のある子どもの数に応じて指導員配置ができる補助制度にしてください、ほか。
5「放課後子どもプラン」の見直し等に関する要望
@「放課後子どもプラン」の基本的枠組みを、「(学童保育と「放課後子ども教室」の)それぞれの拡充と連携」としてください。また、二つの事業だけでなく、生活圏内での児童館・児童センターの整備も含めて、地域の状況に応じた多様で豊かな放課後児童対策が実施できるようにしてください。「放課後子ども教室」については、固定した施設(場所)と専任職員が配置できるように拡充を図ってください。A教育委員会・学校関係者に学童保育への理解を求める手立てを講じてください。B学童保育を、さまざまな子育て支援ネットワークに位置づけるための措置を講じてください。
5月27日は、このほかに文部科学省「放課後子どもプラン」連携推進室、財務省、内閣府(少子化対策推進室、男女共同参画局、地方分権推進委員会、規制改革推進室)、地方六団体、政党、国会の厚生労働委員会所属の国会議員などにも、要望の実現を求めて陳情・要請に回りました。
*要望書全文は、全国学童保育連絡協議会のホームページに掲載してあります。
政府は、2008年度補正予算で保育所や学童保育の施設整備費に活用するために「安心こども基金」1000億円を予算化しました。さらに、2009年度の補正予算でも、追加的経済対策として「安心こども基金」を1500億円上積みする予定です。合計2500億円が、保育所と学童保育の施設整備に使えることになります。
しかし、2008年度の「安心こども基金」については、学童保育の施設整備費(補助単価1000万円)では「倉庫」の設置が要件となっており「使いづらいので申請しない」という自治体の声が少なくありませんでした。2009年度に上積みされた1500億円の使い方や要件等はまだ示されていませんが、学童保育の新設・分割のためにおおいに活用できます。
市町村によっては、「保育所整備にしか使わない」(国の保育所整備費はこの基金しかない)というところもあります。学童保育の整備費にも活用してもらえるよう、市町村へ働きかけていきましょう。
政府は2009年3月31日に、「規制改革のための三か年計画」を閣議決定しました。
この計画の〈重点計画事項〉には、「放課後子どもプランの見直し等」の項目があり、二点が盛り込まれています。その概要を紹介します。
(ア)「放課後子どもプラン」の推進と見直し
余裕教室など学童保育の実施場所の確保が難しい現状に対して、「関係者の意識改革や、地方公共団体における関係者間の連携に資するよう、関係各所の協力を得ながら、学校諸施設について、更なる利用の拡大が可能かどうか調査するなど、実施場所の確保のための有効策を早急に実施する」。また、「プランについては、引き続き二つの事業の連携を深め、一つの事業として展開することの是非も含めて検討し、事業の改善を行う」としています。
(イ)放課後児童クラブの体制整備
「待機児童問題を解消し、大規模クラブの環境を改善するため、クラブの設置・分割を迅速かつ効率的に進めなければならない」とし、厚生労働省の予算措置等では十分とは言えないとして、「クラブ数の増加に向け、小学校の余裕教室、児童館、幼稚園等、既存施設の有効活用を一層促進し、クラブ分割を行い、大規模クラブの解消を速やかに行う」ことをあげています。
また、10年後に学童保育の利用児童数を今より一四五万人増加させるという新待機児童ゼロ作戦の目標について、「実際のクラブ運営には、実施場所等の物理的資源や指導員等の人的資源の確保が欠かせない。そのため、新ゼロ作戦の実現に向け、量の拡大とともに質の向上を図る観点から、場所と人材の確保も含めた具体的な対応策について検討を行い、早急に結論を得、措置を講ずる」としています。
政府の地方分権改革推進委員会は、文部科学省の「放課後子ども教室」と厚生労働省所管の学童保育について、「両事業の統合も含めたさらなる一本化」の方向で実施することを両省に強く求めています。
地方分権改革を推進している同委員会は、2008年5月28日に「第一次勧告」を出しました。
そのなかで、「放課後子どもプラン推進事業は、平成19年度に文部科学省と厚生労働省の事業の国庫補助金交付要綱を一本化して創設されたが、両事業には対象児童、最低実施日数などの差異があり、現場における円滑な事業実施に支障をきたしている」と指摘し、「文部科学省の『放課後子ども教室推進事業』と厚生労働省の『放課後児童健全育成事業』について、両事業の統合も含めたさらなる一本化の方向で改善方策を検討し、平成21年度から実施する」と述べていました。
これに対して、全国学童保育連絡協議会は、同委員会および両省に「場所も職員も同じくする両事業の一本化は、学童保育の廃止であり、強く反対する。両事業のそれぞれの拡充と連携を求める」という内容の要望書を出しました。
文部科学省と厚生労働省は、同委員会の指摘に対して、両事業は「対象者、目的、実施内容及び実施期間が大きく異なっている」ことから、「それぞれの事業を所掌しつつ、両省で連携して取り組むことで、事業を効率的・効果的に実施し、両事業の内容の充実を図る」「まずは両事業の実施状況を把握するための実態調査を実施し、それを踏まえ、地方自治体が取り組みやすく、子どもにとって最善のものとなるよう、両省が一体となって改善方策について検討」すると回答しました。
これを受けて、地方分権改革推進委員会は、2009年3月25日に「第一次勧告」がどれだけ実施に移されたかを調査するために、両省に対するヒアリングを行い、両事業のさらなる一本化を求めました。
全国学童保育連絡協議会では、引き続き、政府および同委員会に対して、「一本化ではなく、それぞれの事業の拡充と連携を」と強く求めていきます。
国は、2003年7月に次世代育成支援・子育て支援のための次世代育成支援対策推進法をつくりました。この法律は、すべての自治体に、2005年度〜2014年度までの10年間の間の子育て支援のための行動計画(前期と後期、それぞれ5年間に分かれている)をつくることを義務づけたものです。自治体は、この計画にもとづいて保育所や学童保育の整備を行ってきました。そして、2009年度末までに、「前期」の計画(2009年度で終了)を見直し、新たに「後期」の行動計画を立てることになっています。
後期の行動計画の策定にあたって、国は2008年10月に次世代育成支援対策推進法を一部改正し、保育所と学童保育の整備における「自治体の目標数」を決めるうえで参考にすべき「国の目標数」(以下、「参酌すべき標準」と表記。法律では「国は……参酌標準を定める」となっている)を示すことにしました。
この「参酌すべき標準」は、2009年2月27日に開かれた厚生労働省主催の全国児童福祉主管課長会議で初めて示されました。その内容は、2008年2月に出された「新待機児童ゼロ作戦」に掲げられた目標数に沿ったものでした。
「新待機児童ゼロ作戦」における学童保育の目標数は、2017年度までの10年間で利用児童数を現在の19%から60%に増やす(145万人増の218万人に)というものです。このたび発表された「参酌すべき標準」では、後期行動計画の最終年度である2014年度までには、その目標達成にふさわしい目標数を設定することが示されました。また、「新待機児童ゼロ作戦」の集中重点期間の最終年度である2010年度までに利用児童数を32%に増やす(43万人増の116万人にする)との目標も示されました。
2009年度末までに、すべての都道府県と市町村は「参酌すべき標準」をふまえて目標事業量を決めていくことになります。学童保育がまだまだ不足している状況の中で、質が確保された学童保育の整備を早急に行うことが求められます。
国の法律にもとづいて設置されている独立行政法人・国民生活センターは、2009年3月5日、『学童保育の安全に関する調査研究』(A4判274ページ)を発表しました。
国民生活センターは2007年度にも「学童保育の実態と課題に関する調査研究」を行い、提言を発表し、報告書を出しています。その時の調査研究の中では、子どもたちが狭い施設に詰め込まれ、過密な生活環境の中でケガや事故が年間1万件近く発生していたこと、事故の時や事故後の対応に問題があることが明らかにされました。全国にある消費生活センターに、学童保育での保育中に起こったこんにゃくゼリーによる窒息死亡事故や骨折事故などの重大な事故の報告や相談も寄せられていたことなどから、国民生活センターは、2008年度も学童保育の安全面に焦点をあてた調査研究を行いました。
この調査研究は、国民生活センター内に設置した「学童保育の安全に関する研究会」(全国学童保育連絡協議会事務局次長も委員として参加)として、1年をかけて行われました。研究会では、保育中のケガや事故への適切な対応と未然防止に資することを目的に、市区町村行政には安全確保の取り組みや具体的な事例と対策等を、運営主体にはケガや事故の記録と対応、未然防止策について調査しました。そして、これらの結果をもとに学童保育サービスの安全対策の課題やあり方を検討し、次の五点の提言をまとめました。
@ケガ・事故情報を収集し、事故予防へむけて検討、共有化を図るA子どもの安全を守る生活空間(施設・設備)を確保し、人数の適正化を図るB指導員の配置、雇用条件、研修制度、専門職化にむけての改善等が必要であるC条例・規則等において安全面での規定を設け、格差の解消にむけ財政支援を拡充するD災害共済給付制度を学童保育にも適用する
国民生活センターは、3月4日、厚生労働省と文部科学省にこの提言の実現を求める要望書を提出しました。厚生労働省の育成環境課(学童保育の担当課)は、3月13日、自治体と運営主体に対して、「放課後児童クラブにおける事故等に係る適切な対応について」という事務連絡を出し、国民生活センターの調査研究の概要を紹介して、安全確保のいっそうの推進を依頼しました。
*報告書(定価1000円)は全国学童保育連絡協議会または国民生活センターで入手できます。また、提言を含めた調査結果の概要および厚生労働省の事務連絡は、全国学童保育連絡協議会のホームページで見ることができます。
次世代育成支援のための新たな制度体系を検討してきた社会保障審議会少子化対策特別部会は、2009年2月24日、第一次報告をまとめました。
保育制度についてまとめた内容に対しては、「これまでの公的保育制度を崩してしまう」との批判が保育関係団体から出されています。
学童保育については、本誌2009年2月号の「協議会だより」で紹介した第一次報告案のままです。
全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)では、この報告案(2008年12月16日発表)に対して、私たちの求める学童保育のあり方を述べた要望書をまとめ、同年12月19日に厚生労働省に届けました。この要望書は、2月24二四日の部会で厚生労働省から部会委員に資料配付されました。
この部会は、2009年度も継続して開かれることになっており、学童保育について本格的に検討される予定です。全国連協は、今後も私たちの要望書を取り入れた検討が行われるよう、要望していきます。
全国連協の要望書は、ホームページで見ることができます。
なお、2月24日の部会で配布された第一次報告[概要・ポイント版]には次のように述べられています。
〈放課後児童クラブについて〉(抜粋)
◆現行制度の課題
○制度上の位置づけも、市町村の努力義務にとどまっており、利用保障が弱い。質の確保はガイドライン等で対応している。
○財源面についても、裁量的補助であり、国庫補助基準額と運営費用の実態の乖離が指摘。従事者の処遇も厳しい状況。
◆新たな制度体系における方向性
○質の確保を図りつつ量的拡充を図ることが重要。
○基準の必要性やあり方等、制度上の位置づけ(実施責任、利用・給付方式等)、財源面の強化について、さらに検討が必要。
(傍線は原文のまま)
2009年1月18日、本誌をより多くの保護者と指導員の方々に読んで活用してもらうための方策を交流・検討する場として、「普及拡大推進会議」が開催されました。本誌は、働きながらの子育てと学童保育の拡充に役立つことを願って全国連協が編集・発行している、日本で唯一の「学童保育の専門誌」です。
会議では、今年度の普及拡大目標(7月号で4万9000部達成)を確認し、各地の取り組みを交流しました。
「父母会でみんなで読むようにと呼びかけている」「指導員会で仕事の向上のために活用している」等々の発言があり、本誌の魅力を語りながら、積極的に購読を呼びかけていくことの大切さを確認し合いました。
*見本誌・チラシ・ポスター・「普及の手引き」など、普及拡大に役立つグッズを用意しています。詳しくは地域の連絡協議会または全国連協にお問い合わせください。
今年も全国学童保育指導員学校を全国七会場で開催します。本誌5月号と7月号に案内を掲載します。詳しくは全国連協にお問い合わせください。
会場 | 開催日 | 開催場所 |
東北会場 | 7月5日(日) | 福島市・福島市市民会館 |
北関東会場 | 7月5日(日) | 宇都宮市・栃木県教育会館、コンセーレ、とちぎ青少年センター |
南関東会場 | 6月14日(日) |
東京都板橋区・大東文化大学 |
西日本・三重会場 | 6月14日(日) | 津市・三重大学 |
西日本・兵庫会場 | 6月14日(日) | 神戸市・神戸学院大学 |
四国会場 | 6月28日(日) | 香川県高松市・高松テルサ |
九州会場 | 9月27日(日) | 福岡県春日市・クローバープラザ |
学童保育に対する2009年度の国の補助金の補助単価が示されました(表参照)。なお、総額等は、2009年2月号の82ページで紹介しました。
運営費が1万8000円、長時間開設加算とボランティア派遣事業の単価がわずかですが、引き上げられました。運営費の増額は、積算内訳の指導員1人分の「諸謝金」の単価が引き上げられたためです。
また、創設費(学童保育専用施設として整備)の補助単価が前年度の1250万円から大幅に引き上げられて2112万円になったことについて厚生労働省は、「補助率は変えられなかったが、補助単価を大幅に引き上げたことで市町村の負担はかなり少なくなる」と説明しています。
これまで、専用施設の建設費は補助単価が1250万円に抑えられていたため、実際にかかった費用との差額分は市町村が負担していました。
例えば、実際の建設費が2100万円かかる場合について考えてみましょう。1250万円の補助単価は国と都道府県、市町村がそれぞれ3分の1ずつ負担しますので、市町村の負担分は416万円になります。それに加えて、2100万円との差額の850万円も負担しなければならず、合計1266万円を市町村が支出してはじめて、2100万円の施設が建設できることになります。
しかし、補助単価が2112万円になると、2100万円の施設を建てる場合、市町村は3分の1の700万円を負担するだけですむことになり、負担は半分程度になります。なお、「市町村負担分も地方交付税に計算して市町村に渡される(地方財政措置)」そうです。
このことを力に、2009年度中に71人以上の学童保育を解消し、40名規模の学童保育にしていくために、大いに補助金を活用していきましょう。ただし、都道府県の負担は補助単価が上がった分だけ増えるので、都道府県にも予算化してもらうことが必要です。
入所児童数 | 年間開設日数 | 備考 | |||
250日(基準開設日数) | 290日の場合(開設日数加算は、1日につき13000円) | 特例分(240-249日)(2010年度廃止) | |||
児童数区分 | 10人〜19人 | 995,000 | 1,515,000 | なし | 年間の平均入所児童数で申請する |
20人〜35人 | 1,630,000 | 2,150,000 | 1,651,000 | ||
36人〜70人 | 2,426,000 | 2,946,000 | |||
71人以上(2010年度廃止) | 3,222,000 | 3,742,000 | |||
長時間開設加算 | 平日分 | ※1日6時間を超え、かつ18時を越えて開設する場合、202,000×18時を越える時間数 | |||
長期休暇分 | 91,000×「1日8時間を超える時間数」 | ||||
市町村分 | 放課後児童クラブ支援事業 | (1)ボランティア派遣事業 1事業当たり年額454,0000×事業数 (2)放課後子どもプラン実施支援等事業 1市町村当たり年額750,0000 (3)放課後児童等の衛生・安全対策事業 1市町村当たり年額584,0000 (4)障害児受入推進事業 1クラブ当たり年額1,421,0000×か所数 |
|||
都道府県等分 | 放課後児童指導員等資質向上事業費 | 都道府県・指定都市・中核市 1か所当たり950,0000 |
(補助金交付要綱をもとに全国学童保育連絡協議会が作成)
政府は、2008年度第二次補正予算で、都道府県に総額1000億円の「安心こども基金」をつくり、保育所と学童保育などの緊急整備に活用します(2010年度まで期間限定措置)。
厚生労働省は、1月8日に全国児童福祉主管課長会議を開き、その内容を説明しました。また、会議では、各都道府県に出される基金の総額とあわせて、2009年3月中に市町村が申請を行い、4月上旬には各市町村への交付が決定するというスケジュールも示されました。
この基金からは、学童保育の設置促進事業として、学校施設等を学童保育に転用する際の改修費が出されます。1か所当たりの補助単価は1000万円を予定しているようです。通常の補助金から出される余裕教室等の既存施設の改修費(補助単価700万円)に加えて、倉庫の設置分として300万円が組み入れられています。この基金を使って改修する場合は、あわせて倉庫をつくることが条件となります。
これは、普通教室として使用しておらず教材や荷物の置き場になっている教室を、学童保育に転用しやすくするためには、倉庫も必要になるだろうということから予算に組み込まれました。厚生労働省が、学童保育の新設・分割のためには学校施設等の活用が欠かせないと考えているからです(学校施設に限らず、既存施設の改修を行う場合もこの基金の対象になります)。
なお、2008年11月28日に、文部科学省と厚生労働省の連名で、「普通教室として使用しなくなった教室の『放課後子どもプラン』への活用について」(局長通知)が出されており、学校施設のいっそうの活用を自治体に呼びかけています。
2008年12月20日、学童保育関係の来年度予算案が発表されました。
●総額 234億5300万円
(前年比47億5900万円増)
●運営費補助 176億2200万円
(前年比14億9000万円増)
対象数2万4153か所
(前年比4153か所増)
●施設整備費 56億6800万円
(前年比33億400万円増)
対象数 創設費 394か所
(補助単価2112万4000円に増)
改修費等5268か所
(補助単価前年同額)
8月に発表された概算要求額と比べると、43億9700万円が削られています。その理由は、第二次補正予算案に組み込まれている「安心こども基金」(1000億円、2010年度までの期間限定)に学童保育の整備費を入れているためです。
運営費の補助対象か所数は、概算要求では2万3600か所でしたが、さらに553か所上乗せされています。この理由も、「安心こども基金」により整備か所数が増えることを見込んだためです。なお「安心こども基金」の具体的な内容はまだ示されていません。
施設整備費の創設費(学童保育専用施設として整備)の補助単価は、前年度1250万円から862万4000円増額されています。
また、文部科学省の「放課後子ども教室」事業の補助金は、54億6800万円となりました。前年比約23億円減で、概算要求額よりも約14億円少ない金額となりました。
次世代育成支援の「新たな制度体系」づくりのなかで学童保育のあり方を検討している社会保障審議会少子化対策特別部会は、2008年12月9日の部会で、「第一次報告案」を示しました。
その中で学童保育(放課後児童クラブ)については、「放課後児童クラブについては、保育所を利用していた子ども等に対し、小学生になった後においても、切れ目なく、保護者が働いている間、子どもが安全に安心して過ごせる生活の場を提供する基盤となっている。一方で、全小学校区のうち、約3割が未実施となっている。こうした状況を踏まえ、放課後児童クラブについては、次世代育成支援のための新たな制度体系においても、両立支援系のサービスとして不可欠なものの一つとして位置づけるべきであるが、現状については、関係者の意見を踏まえると、以下のような点が課題となっている」として、厚生労働省が第16回検討会で示した6点の「検討の視点」をそのまま「現行制度の課題」として示しています(『日本の学童ほいく』2008年12月号参照)。これにもとづいて、「新たな制度体系における方向性」が提案されました(要点を紹介します)。
○放課後児童クラブは、就学前の保育と並んで、小学校就学期の両立支援系のサービスとして不可欠なもの。就学前の保育から切れ目のないサービス利用が可能となるよう、質の確保を図りながら、低学年を中心としつつも小学校全期を対象として量的拡大を図っていくことが重要。
○量的拡大を図っていく上では、まず、場所の確保が欠かせない。引き続き、小学校の積極的活用を図っていく必要がある。
○大幅な量的拡大を図っていくためには、人材確保が重要な課題である。現在、従事者の勤続年数が短い、指導員の処遇が厳しい状況にあるという指摘も踏まえ、財源の確保と併せ、人材確保のための職員の処遇改善等を図っていく必要がある。
○現在の国の補助基準額とクラブ運営に係る費用の実態とに乖離があるという指摘などを踏まえ、サービスの質の維持・向上を図っていく必要があり、財源の確保と併せ、そのための基準の要否、そのあり方、担保の方法を検討していくべき。
○量・質両面からの充実を図っていくため、必要となる制度上の位置づけ(市町村の実施責任、サービス利用方式、給付方式等)及び財源のあり方を、さらに検討していくべきである。
○放課後児童クラブと放課後子ども教室との間の関係については、連携を一層進めていく必要があるが、一体的運営については、放課後児童クラブを利用する子どもは保護者が働いている間は家に帰るという選択がないことに十分配慮する必要がある。一方で、一体的運営に利点がある場合も考えられ、放課後子どもプランの実施状況などを十分踏まえながら、対応すべきである。
以上の検討課題は、2009年度にも引き続き、具体化のために検討が行われる予定です。
なお、社会保障国民会議座長が経済財政諮問会議に出した資料「社会保障の機能強化の工程表」には、2010年度までに「新たな制度体系の制度設計の検討」を行い、2011年度に児童福祉法などの法改正、2012年度以降に「新たな制度体系の下での給付・サービスの整備」というスケジュールが示されています。また、これらのスケジュールは、「安定的な財源確保」(消費税率引き上げなど)の課題とセットですすめるとされています。
2008年11月25日、全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)は、学童保育の施策拡充・予算増額を求め、厚生労働省や財務省などの関係省庁、政党、国会議員に要請行動を行いました(12月末に来年度の政府予算案が決まるため、毎年、この時期に行っています)。
厚生労働省育成環境課への陳情・懇談では、1万2800人の保護者・指導員が記した声(要望)もあわせて届けました(くわしくは『日本の学童ほいく』31ページ参照)。
厚生労働省への全国連協の要望は次の4点です。
@「10年間に利用児童を3倍」にする目標が着実に実現できるよう、抜本的な手立てと財政措置を
<要望>政府の重点戦略、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」、「新待機児童ゼロ作戦」で立てられた、学童保育(放課後児童クラブ)の利用児童数を「10年間で3倍にする」という目標が着実に実現できるよう、もっとも大切な基盤となる施設整備と指導員確保についての手立てと財政措置を講じてください。特に、「特別重点期間」である今後の3年間で抜本的な対策を講じてください。とりわけ深刻化している大規模学童保育を早急に分割して、「適正規模」にしてください。
Aガイドラインに実効力をもたせ、質的な拡充を
<要望>厚生労働省が策定した学童保育(放課後児童クラブ)のガイドラインが、実際の学童保育の質的向上に役立つものになるように、抜本的な財政措置を図り、実効力のあるものとしてください。
B専任で常勤の指導員が配置できる予算措置を
<要望>子どもたちの毎日の生活と健全な育成に直接責任を負っている学童保育指導員が常勤配置されて、継続的・安定的に勤務できるよう、公的責任による条件整備を求めます。また、そのための抜本的な予算措置を求めます。
C「放課後子どもプラン」は、学童保育拡充を
<要望>「放課後子どもプラン」は、2つの事業の「一体化」ではなく、「それぞれの事業の拡充と連携」が図られ、学童保育が拡充されるように推進してください。
厚生労働省は、要望に対して次のように説明しました。
・『新待機児童ゼロ作戦』は、保育園と同じように学童保育を整備していきたいというもの。指導員の確保も含めて、今後どういう仕組みをつくれば良いのか、いま社会保障審議会少子化対策特別部会で課題を検討している。
・来年度予算では、集中重点的に受け入れ児童を増やすことと、71人以上の学童保育の分割を緊急重点課題として財務省に要望し、折衝している。
・ガイドラインは、周知していくことが必要だと考え、毎年の実態調査もガイドラインで示した項目で行うこととした。各自治体で自己点検してもらい改善につなげてほしい。
・「放課後子どもプラン」については、放課後児童クラブ(学童保育)と「放課後子ども教室」は主旨が違うと説明している。実施回数も違う。実施要綱には、「いままでの放課後児童クラブの質を低下させない」と書いてある。「一体化では事故が心配だ」という保護者の声も届いている。
文部科学省に対しては、「放課後子どもプラン」では、2つの事業の一体化ではなく、それぞれの事業を拡充し、連携していくことを要望しました。
内閣府少子化対策推進室には、少子化対策としては学童保育の拡充が必要であり、国が決めた「(利用児童を)10年間で3倍に増やす」目標が実現されるよう要望しました。
財務省には、厚生労働省からの来年度予算の要求額(278億円、前年比1.5倍)を削ることなく、さらに増額をと要望しました。
政党・国会議員にも、厚生労働省に出した四点の要望の実現を訴え、協力を求めました。すべての政党が、時間をとってくださり、学童保育の実態と課題、私たちの要望に対して理解を深めていただくことができました。
政府が次期国会に提出する予定の第2次補正予算(案)には、「追加経済対策」が盛り込まれています。そのなかの「生活安心確保対策」には、「『安心こども基金(仮称)』創設による子育て支援サービスの緊急整備」があり、約1000億円の予算支出が計画されています。これは、「2010年度までの緊急措置として都道府県に基金を創設」し、「新待機児童ゼロ作戦」の前倒しの実施を図るものです(基金の運用は、第2次補正予算が国会で決議されてからです)。
この基金は、@保育所の緊急整備、A新たな保育ニーズヘの対応、B保育の質の向上のための研修の実施、に使われるもので、Aには「放課後児童クラブの設置促進」が含まれています。
つまりこの基金は、学童保育の新設・分割のために使うことができるのです。厚生労働省の担当者は「71人以上を分割するなどの緊急整備に使ってほしい」と説明しています。