3.生活の面から


(1)多くの人と接して,多くの友人を作ろう
 在宅生活は,入院生活のような制約や不自由さはないが,対人関係が家族だけに狭められる傾向があるといわれています.学校へ通っているうちは多くの学友に恵まれるが,卒業してしまうと行き場所がなくなり,家の中に閉じ込もる生活に陥りやすい.しかも,高卒後という青年期は,親から精神的に自立しようとする自我が芽生え始め,精神的に不安定な時期です.この不安定な時期を乗り越えるには,友人の存在が重要であるといわれています.友人(親友)を持つことにより,親と同等な心理的支えを得ることになり,これが親から精神的に独立しようとする自立心を育てるのです.
 それでは,どのようにしたら友達を作れるのでしょう.

(2)生きがい活動を見つけて,病気に打ち勝つ精神力や意欲を育てよう
 筋ジスという病気をなぜ自分が背負わなければならないのか.なぜ,自分がその病気に苦しめられなければならないのか.患者さん自身はもちろん,保護者の方も,必ず一度は自問し,悩まれたことでしょう.このような苦悩を和らげたり,病気に向かい合う精神力や意欲を伸ばしてくれるのが生きがい活動です.生きがい活動になる活動として,

(3)筋ジスの専門施設である国立療養所(デイケア)を活用しよう
 在宅療養の患者さんが筋ジス専門医療機関である国立療養所に受診する割合は,まだ低いのが現状のようです.国立療養所には四半世紀にわたる筋ジス医療・療育のノウハウが蓄積されています.近年,著しく進歩した呼吸不全対策などをはじめ,機能訓練・生きがい活動・作業療法・生活援助のありかたなどの知識や技術が蓄積されています.これらの知識・技術を活用することにより,在宅療養の生活を豊かで充実したものにできるのではないでしょうか.具体例を紹介します.
 Tさんは当院筋ジス病棟に17年間入院生活を送った後,病院近くに市営住宅で自立生活をはじめました.厚生省運動機能障害度がステ−ジ7で生活はほとんど全面介助の状態でした.入院生活のように決められた日課はありませんでしたが,その反面,生活のすべてを自分で組み立てそれに必要なボランティアやヘルパ−を自分で確保しなければなりませんでした.生活の自己管理能力(生活を自分で組み立て管理していく能力)が必要だったのです.Tさんはこの能力を入院生活の自治会活動の中で培っていきました.自治会活動では,行事をはじめ様々な活動の計画・立案・準備・必要物・介助人数・場所の図面など細かい点まで患者さんに考えさせるように指導しています.Tさんは長い間自治会のリ−ダ−的存在であり,そこでの体験が在宅生活に生かされていました.
在宅療養では,生活の自己管理能力が弱いと,自由時間をもてあまし.テレビばかり見ていることが多くなります.この能力を高めることにより,在宅療養をより豊かで充実した生活にできるのです.生活の自己管理能力は,親子を中心とした在宅生活だけでは伸ばすのが困難であり,集団生活の中で様々な活動を体験しながら伸びていきます.
 そこで,5〜6年くらいの中期間の入院生活を体験させることが良いのではないかと考えられます.入院時期を高卒後にすれば,筋ジス病棟にある趣味活動や作業療法を活用できるし,デュシェンヌ型ならば呼吸不全に対する医療を受けることもできます.同じ病気の友人もできるかも知れません.入院期間中は,親が面会に来て悩みや心配事を聞いて職員に相談するのが大切です.患者さんが入院しますと,保護者の方はは職員に対して世話してもらっているという気兼ねがあるのか相談してこないことが多いようです.在宅生活と入院生活には大きな違いがあり,保護者の心理的な支えは重要です.
 筋ジス患者に対するケアは,在宅療養と入院療養の二つに分かれますが,相互の関わりが少ないのが現状です.それぞれに利点もあり欠点もあります.二つの利点をうまく組み合わせた療養生活が大切なのではないかと思われます.

(長谷川 守)

   

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