2.食事の特徴

 はじめに
 筋ジス患者は,咬合障害,肥満,るいそう,便秘,貧血,感染症,心肺不全等がしばしば合併しますので,これら疾患を予防する食事を工夫することが最適です.そこで,食事の特徴は,各人の病状に応じたカロリーでなおかつ,肉・魚・卵・牛乳・乳製品・大豆・大豆製品等の良質の高たん白食を各人の嗜好にあわせて献立を進めることが良いでしょう.そのために,次に上げる栄養特性をよく理解しておいて下さい.


(1)栄養の特性(1)

  1. デュシェンヌ型の患者は筋萎縮の進行に伴って,開咬と咬合圧の低下から咀嚼能力が,
    著しく低下することが多い.いわゆるよく「噛む」ことが下手になる.

  2. 患者は便秘傾向の頻度が高くその予防と対策が必要である.いわゆる便秘になる.

  3. 患者の基礎代謝は亢進しているが,甲状腺ホルモンは正常で代謝亢進は筋萎縮による身体保持のための無駄なエネルギーと推定される.すなわち,体はよく燃えている.

  4. 同位元素標識による栄養素の呼気テストの結果,患者の脂肪酸の分解が亢進し,糖質の利用が低下していることが明らかになった.すなわち,体内の脂肪など油を良く燃やし,糖など米の使用が減っている.

  5. 筋ジス患者は肥満とやせの発症頻度が共に高く,栄養の過不足が,障害度,体力,寿命にまで影響している.いわゆる「栄養が命」といえる.

  6. 患者の栄養状態の個人差は大であるが,体格と心肺機能,障害度,血液性状はそれぞれ有意な相関関係にある.いわゆる見かけ上「丈夫そうな人は内容も丈夫」と言えます.


(2)食事の工夫について
 筋ジス患者の開咬は咬合障害そして咬筋,舌の巨大化等がみられて食品をよく噛むことが不得手になります.そこで食形態を工夫してあげなくては充分量のカロリーを摂取ができなくなります.

  1. 食形態
     食形態は,一口大切り.刻み食.ミキサー食等があります.注意しなくてはならないのは元の食事を患者さんによくみせて食品や調理方法を確認させてあげることです.これらのことが患者さんの食欲増進に大切なことなのです.噛むことが非常に不得手ですから口腔内での働きを器具,すなわち,包丁できったりミキサーですったりすること等で助けてやるのです.年寄りや歯の悪い人が細かく刻んだものを好んで食べるということと,同じことだと理解して下さい.また,病状が進行して流動食などでも「飲込み」が悪くなった時には,トロミアップといったような増粘調剤を加えてミキサー食や刻み食にとろみをつけると上手に嚥下出来るようになります.現在ではいろいろな種類が発売されていますのでそれを利用されるとよいでしょう.

  2. メニューのいろいろ
     嗜好は年齢によって左右されるのが一般的な傾向で,学童から若年層には洋風系統の料理が好まれ,壮年層には和食系統が好まれる傾向にあります.好まれるメニューとしては,カレー,ラーメン,寿司,刺身,とりのから揚,サラダ,ハンバーグ,うどん,焼そば等で,好まれないメニューとしては,野菜煮付け,酢の物,煮魚,和え物,お浸し等です.次頁へ献立例をかかげ摂取すべき食品群を判かり易くしました.患者さん自身の栄養所要量を計算したうえでこの献立を参考にして下さい.

  3. 食欲の増進策
  1. 食べ方の工夫
     筋ジスを疾患ととらえ、医食同元の理論に基づき「筋ジス食」を食べるのです.筋ジス食とは,適カロリー,高たん白,そして疾患特有な合併症の予防をするために,それぞれ早期より食塩の制限(心不全),繊維の多い食事(便秘),鉄の多い食事(貧血),カロリーの制限(肥満),高カロリー高たん白食,栄養補給(やせ),朝食の栄養補給(呼吸不全),消化の良い食事(胃腸疾患),繊維の少ない食事(下痢),柔らかい食事,刻んである食事(虫歯),滑らかな食事(嚥下困難)等に注意して食事をすることが好ましいのです.

 


参考文献

  1. 木村 恒:筋ジストロフィーの栄養と体力.厚生省神経疾患研究筋ジストロフィーの療養と看護に関する総合的研究班,1992,p2

(三谷美智子)

   

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