2003 アイドラーズ・もてぎ12時間+1分耐久レース

49号車を積んだ積載車、スペアパーツや工具を満載したワンボックス、総監督の代車ブルーバードの3台で常磐道を北上する。&のミニセンで行っても良かったのだが、とりあえずレース前のリスクを最小限にとどめるべく(笑)。途中同じくミニを積んだ積載車達を見つけてどんどんテンションが上がっていく。

午前3時頃にはツインリンクもてぎの北ゲートに到着。参加車両はまだ数台しかいない。本来南ゲートの方が正面なので、多くはそちらにいるのだろう。直前のコンビニで買ってきたビールを飲んで、暫く車内で眠る。

午前5時。周囲から聞こえる大型車のアイドリング音と人々の声で目が覚める。起きあがって外を見てみると、積載車に乗った色とりどりのレーシングミニ達が見える。一瞬で目が覚めた&はとりあえず敵状視察?に周囲を一回り。何だか誰もが速そうに見える。やはり色とりどりでスポンサーステッカー一杯のレースカーは迫力がある。でもどんなにカリカリに仕上げても所詮はあの可愛いミニのシルエットなところが憎めない(笑)。

5時30分。ゲートオープン、そのままパドック/ピットへクルマと荷物を運ぶ。今日のドライバーやスタッフの皆さんも続々到着。ようやく届いたスポンサーのカッティングシートをピット内で貼る。霧吹きやスキージなんて持っていなかったから、気泡入りまくり。

6時半頃、いかにもアイドラーズ的なユルーいブリーフィングが始まる。もの凄い量のテントと椅子が用意されていたが、鬼の様に縦長な上、まともなPAも設置されていないので我々が座った席からは始まったことさえ判らなかった(だってマイク繋いでたの、ちっちゃい家庭用ギターアンプだぜ!)。

天気はすこぶる良い。日差しは強いが湿度は低く、風が冷たくて心地よい。絶好のレース日和だ。

7時過ぎから車両をコース場に入れ、グリッドに付く。朝8時頃、いよいよローリングが開始される。

撮影:JARAさん

ピット内のモニターには現在の順位とコース上の様子が映し出される。不安な表情で見守るチームの面々、心配でモニターを見る余裕も無いAOKIさん(笑)

隊列がなかなか整わず、3周ほどのローリングラップを終えた朝8時19分・・・

スタートライン上でグリーンフラッグが振られ

スタート!

待ちに待った12時間が始まった。ミニ68台、フェローズ(ミニ以外のクラス)27台、計95台のマシンが一斉にフルスロットルでストレートを駆ける。

第一ドライバーの大島さん。3分を切るペースで順調に周回を重ねる。しかしフェローズは別としても(911とかクリオV6とか、反則?ってくらい速いもん)、トップ集団のミニ達はホームストレートの速度からして速い!試しに測ってみたら2分30秒台。まるでスプリント並のペースだ。こんなペースで12時間耐えられるのだろうか?

淡々と周回を重ねれば、ひょっとしたら・・・?と淡い期待を抱いていた我々の前に立ちはだかった現実。

約1時間が経過し、予定通りのピットイン。給油とドライバー交代。第2ドライバーはフォーミュラ・ニッポン参戦経験もある藤澤選手。序盤に飛ばしてマージンを稼いでおこうという作戦だ。

早速ピットで大島さんにクルマの様子を伺う。2週目から急激に水温も高く、油温も120℃近くまで上昇してしまっていたらしい。大排気量過給器付きチューニングエンジンならまだしも、ミニでこの油温は・・・。一同に不安の表情が。

時を同じくしてホームストレートを通過する藤沢選手もメーターを指差し、ピットに入ると伝えてきた。これは、何かが起きた・・・(滝汗)!

撮影:JARAさん

翌周、ピットに戻ってくる49号車。止まった瞬間、エンジンからもの凄い勢いで白い煙が立ち上る。完全なオーバーヒートだ。

急いでラジエーターにWAKO'Sのレース用クーラントを補充するが、瞬時に大量の水蒸気となってしまう。エンジンも始動しない。ヘッドとシリンダーブロックの間からも水蒸気が吹いている。ヘッドガスケットが抜けた様だ。

グリルを外すと外れた圧着端子が目にとまった。電動ファンの配線だ。恐らく振動で外れてしまったためにファンが回らず、横置きのラジエーターでは風も当たらず瞬時にオーバーヒートしてしまった様だ。とりあえずコネクタを繋ぎ直し、ガムテープで固定する。まず間違いなく原因はコレだ。ブラブラしてたから、ちゃんと固定しておけば良かったと後悔しても後の祭り。

ここからが早かった。即座にピットにマシンを入れるとインジェクター/エキパイを取り外し、ヘッドを降ろす。これまでの疲れも何のその、走行直後のあまりに熱いエンジンにも関わらず非常に手際よく作業を進める。&らは周りで言われた工具を渡すくらいの事しか出来ない。あまりに歯がゆい。

ヘッドが外れ、シリンダーを覗き込んだ一同の表情が一斉に沈んだ。高熱で2番シリンダーのピストンの上端が溶けて変形、軽く焼き付いている。ギヤを4速に入れてタイヤを回してみると非常に堅い。無理矢理回すとイヤな音がした。

でもここで諦める訳にはいかない。直ぐにAOKIさんが応急処置を始める。再始動後の負担を減らすためにガスケットを2枚重ねて圧縮を下げる(恐らく10:1くらいだろうとの事)。プラグホールからオイルを入れて手回しすると少し軽くなった。更にオイルを追加してセルを回してとりあえずアタリをつける。ヒート対策で燃調も濃いめに設定。落ちた圧縮と燃調でパワーは明らかに落ちるが(恐らくノーマルよりも落ちているのでは?、との事・・・オイラは1300のノーマルがどんなもんなのかよく知らないが・・・)、これが最善策だ。

熱膨張によりロッカーアームのクリアランスも綺麗に戻す事はできないが、出来る限り元に戻そうと微妙な調整を繰り返すAOKIさん。緊急ピットインから既に2時間が経過していた。インジェクターとエキパイも組み付けて、WAKO'Sのオイルとクーラントをたっぷり補充。プラグを取り付けてセルを回す・・・

・・・ブォン!

数秒間のクランキングの後、息を吹き返したエンジン。思わず言葉にならない声を上げる。自然にガッツポーズが出る。周囲のみんなからも一斉に拍手と歓声が沸き上がる。いやマジで嬉しかった。鳥肌立ちましたよ全く。

その後も気を抜くことなく補記類をチェック。ヒート対策のため、不本意ではあるがフロントグリルを撤去。とりあえず様子見のためにまず3周ほどコースに出ることに。

ここで&にお声が掛かった。当初の予定では7番目のドライバーだったが、チームの中では数少ないミニ乗りだったこともあるだろう。慌ててフェイスマスクを被り、シューズのヒモをきつく縛り、ヘルメットを被る。三上さんに「頑張れ!」と激励を受けて、慌ただしくシートに座る。

撮影:JARAさん↓→

緊急ピットインから2時間40分を経過して、チームM1、49号車はコースに復帰する。

いやホント、エンジンまるごと載せ替えとかとは訳が違います。ヘッドガスケットの交換とレースで走行出来るまでに調整しなおす作業をたったの2時間40分でこなしてしまうとは、AOKIさんと高橋さんの技術力にはただただ脱帽、頭が上がりません。胸が一杯になりながらクラッチを繋ぎ、ピットを出る。

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