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▼山田太一「見なれた町に風が吹く」(中央公論社)
香子は三十七歳、大手町の商社総務局広報室の室長代行独身……だけど七ヶ月前は営業部繊維第二課の主任だった。十二指腸潰瘍になって自主的に今のポストへ。まわりは派遣ばかりで午後五時退社の毎日に生活が早変わり。張り合いもないのでカルチャースクールの映画講座へ。そこで出会った映画プロデューサーの中川から、「映画のメイキングを作るライターをやってもらえないか」と話を持ちかけられる。かつてバイプレイヤーの俳優として(一応の)活躍をした小杉が、私財を投資して、映画監督関根の元へ映画を撮る話を持ちかける。そこでひと波乱あり、香子もその波にゆっくりと揉まれていく……。
会話部分がやけに多い。まるで山田太一の脚本を読んでいるようだ、と思っていたら、この小説はもともと「婦人公論」の連載だった。婦人にとっつきやすいように会話を多くしたのでしょうかねえ。そのために会話があんなに多くても映像が浮かんできて、危うく既存の役者さんで配役まで考えそうな誘惑にかられる。……つうか、上に書いたあらすじだけで、いかにも三十代以上のご婦人の興味をそそりそうでしょ? ほんとにこの辺の匙加減が山田太一はうまいから。
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