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▼伊藤たかみ「アンダー・マイ・サム」(青山出版社)
しゅんすけには天から授かったものがふたつある。ひとつは左手の、人差し指の第二間接ぐらいまで届く長い親指。その親指があれば、女を快楽で夢中にさせることができるとからかう友人。ローリングストーンズの「under my thumb」という曲があるが、語義通りなら「親指の下に」だが熟語訳では「言いなりにする」という意味があるから。とりあえずしゅんすけは携帯のメール打ちで才能を発揮することにする。メール相手は主に東京在住のケイさん。出会ったことはない。
もうひとつの才能。「自分が自分から外れてしまう」こと。女友達のみゆきにその現象を打ち明けると、嬉しそうに「幽体離脱」「ドッペルゲンガー」などの諸説を述べる。だけどいまいち釈然としない。かつて抱き合ったこともあるみゆき、そして親友の清春を巡って、ふたつの才能が思わぬところで発揮され……。
しゅんすけ自身が「僕の嫌いな十七歳」のごく一部分を、現代の諸相を交えて語られる。他者によって……というより何者かわからない存在によって自分の肉体性をえぐり取られて、それでもまだ抵抗している性懲りのなさがある。性懲りなくては生きていけないこの素晴らしき世界だけど。
長い親指、俺も欲しいぞ。さすがに携帯メールは指が攣って。(私情)(2001/07/24)
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