■◇■ ある理不尽の肖像 ■■■■

 --- すべてのカナコファンに捧ぐ ---

▽ 無い物ねだり根性 :未公開ボツ原稿に修正を加えました。 (2000/07/15)

 元の話は「カナちゃんに仕事を与えないと僕がたいへんになるよー」というような話だったんだけれど、ちょっと書いたらすぐに飽きたのでボツにしました。今回随分書き足していったらなんか思っていたのと違う話になっちゃいました。わはは。

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 カナちゃんは基本的に「無い物ねだり」な性格なので、いつも自分に無いモノが欲しい。今の時期(※6月頃)仕事は比較的忙しくなく、締め切りに追われるようなことがないので、ゆったりと落ち着いて過ごすことができる。反対に年末から年明けて3月末までは、それまでの落ち着きムードが嘘のように激務に襲われることになる。我々が季節労働者と言われる由縁である。
 カナちゃんはアルバイト職員なので、忙しいと言っても残業もほとんどしないし(給料が払えないのでやりたくともできない)休日もサービス出勤などということは全くない。それでも勤務時間はやはり忙しいので、年末時期になるといつもカナちゃんのヒステリーに付き合わされなければいけなくなる。
 忙しいと言ってはキーと怒り、電話の相手が無礼だと言ってはムキーと僕に八つ当たりをするのだ。カナちゃんが忙しいのならばたいてい僕も忙しいと相場は決まっているので、その仕事をこなしながらさらにカナちゃんの相手もしなければいけないとなると2重にうっとおしいものだ。仕事は淡々と進めていけばいつかは終わるものだが、カナちゃんの場合はいつヒステリーが始まって、いつ終わるのかまったくわからない。予想がつかないものほど恐ろしいことはないのである。そのような時期にはカナちゃんは「暇が欲しい、暇が欲しい」と口癖のように連呼するが、夏場、仕事が忙しくなくなると、やることもやってないくせに「暇だ暇だ」とブツブツ文句を言い出す。
 忙しければ、暇が欲しいと怒り、比較的楽な時期は仕事が欲しいと怒るのだから、隣に座る僕としてはたまらない。まったく勘弁して欲しい。

 しかし、どちらかというと忙しい方が良い。何故ならカナちゃんに暇を与えると、僕にちょっかいをかける確率が高くなるからである。ひとりで大人しく遊ぶことのできないカナちゃんは、何かと隣に座る僕に話しかけてくる。しかも死ぬほどくだらない話。ピンクのスカートを買ってどうの、とか最近彼氏が冷たくてどうの、等々。仕事に集中している僕にとってこれがどれほど邪魔なものか想像に難くないと思う。
 だが容易に「無視」をしてはいけないことも僕は知っている。そんなことをすれば一気に逆ギレモードにスイッチが入るのだ。そうなると後々処理がめんどくさくなって、余計に手間をとられるためそうなる前に適度にあやしてやる必要がある。聞いているフリをしながら、上手にまとめるのである。

 まったくあんな我が侭な娘がいていいのだろうか。僕はカナちゃんの彼氏を尊敬する。おそらく僕だったら3日ともたないだろうと思う。しかもカナちゃんの彼氏はカナちゃんよりも3つも歳下なのだそうで、歳のわりにずいぶんと大人びたヒトなんだろうと思う。(そうでなければ耐えられるわけがない。)それにしても、カナちゃんにはまいる。ひょっとしたら彼氏といるときは猫をかぶっているのか。彼氏といるときのカナちゃんを一度拝見してみたいと思う。

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