■◇■ ある理不尽の肖像 ■■■■

 --- すべてのカナコファンに捧ぐ ---

▽ 別れは突然に その1 :雑文7 を一部改訂 (2000/07/23)

 カナちゃんとのお別れの話です。これでお別れになったはずだったんですけどねぇ。どうして今もなお苦しめられなければいけないんだろう、と疑問が残る毎日です。

-----

 この4月で職場がかわった。異動というヤツだ。この異動で特筆すべき点は3つ。ひとつは、情報処理関係の部署にかわったということ、これは今までいた部署とは全くの異系列で、3年間で積み重ねたノウハウがまったくの無になり、また一から仕事を覚え直さなければいけないことを意味する。
 2つ目は、職場の理不尽アルバイターと呼ばれるカナコちゃんと離れることができたこと。ある意味寂しい感もなくはないが、これはネタ的に寂しいというだけであって、個人的な感情は全くない。
 そして3つ目は、後輩の坂田くん(通称さかぼう)に手を煩わされることがなくなること、というこの3点である。
 この際ひとつめの話など蛇足に過ぎないことは賢明な読者諸君ならばお分かりだろう。そう、問題(いや問題ではなく逆に喜ばしい点である)なのは、2つ目と3つ目の話だ。ついに私はこの名トラブルメイカーの両名から逃れることができたのである。それではこの喜びをより確実に皆さんに伝わるよう、いくらか前置きをさせてもらう。まずカナちゃんとさかぼうを知らない方のために今一度彼らについておさらいをしておこうと思う。

 カナちゃんこと宮下加奈子(一部仮名)28歳は、私の勤める職場のアルバイト娘のひとりである。理不尽、我が侭、かつ世間知らずのお嬢様は、ことある毎に私と衝突し、結果数々の功労を納めてきた。彼女と向き合うと私は敗北を余儀なくされる。そう、抵抗すら出来ぬままに。それほどの危険な娘である。
 一方、さかぼうこと、坂田くん20歳は職場の後輩である。最近の新人らしく清く正しく小生意気なのである。まさに若気の至りを全身で表現するアーティストで、我々の格好のイジメの的である。生意気と呼ぶにはあまりにマヌケなのであえてコナマイキと呼ばせていただいてはいるが、なにしろ彼に接触する人は皆彼のことを第一印象「ムカツク」と言うのであった。
 詳しくは act.14act.15 及び該当するニッキ(とにかく先生もすわって下さい。)を参照していただきたい。

 次にもうひとつみなさんの耳に入れておきたいことがある。これは直接異動の話とは関係ないが、とりあえず誰かに言いたくて仕方がないのでここに書かせていただく。
 これはカナちゃんがまだアルバイトの来てすぐのころの話である。カナちゃん曰くそのころは、ビデオの予約録画も出来なかったころのこと、ある日カナちゃんは課長に頼まれて、ある資料をコピーすることになった。することになった、と言ってもそれほど困難な仕事ではない。いや、仕事と呼ぶことすらおこがましい。
 まったく理解不能なカナちゃんの説明を要約すると、課長の指示は、A4サイズ2枚の資料を2枚並べて、これをA4サイズに縮小して1部コピーしてくれ、というものだったようである。ところが当時のカナちゃんは、コピーの仕方と言えば、紙を置いて、スタートボタンを押すというその動作だけしか知らなかったようで、この指示のうちすでに何点か意味不明の単語が混ざっていたらしい。
 すなわち、「A4」「縮小コピー」の2つである。「A4」というのは、もちろん現在の国際標準と言って良いサイズの紙である。こんなことは世界の常識、中学生だって知っている。なぜにA4がわからないんだカナコ!!いいのかそんなんで大学卒業を語っても!
 コホン。少し興奮した。ともかく彼女はA4が2枚並ぶとA3サイズということはおろか、そもそもA4というのが何なのかすら知らなかった。そして追い打ちをかけるように「縮小コピー」である。縮小という言葉はおそらく知っていたのではないだろうかと想像する。いや、知っていてもらわなければ困る。さすがにそれすら知らないようではまずい。いくらカナちゃんでもそれはないと思う。
 わけのわからない仕事を頼まれたカナちゃんのその時の心境は伺い知ることはできない。何故なら、「そんなことも知らなかったんですか?どんな気持ちでした?そんとき?」などという無謀な質問をするほど私は愚かではないからである。そんな質問を浴びせたらどうなるかは十分にわかっているつもりだ。
 結局、カナちゃんはA4を2枚並べて、コピースタートボタンを押したようである。まぁその程度が限界であろう。A3サイズのコピーを1枚課長に手渡し、唖然とされたのは言うまでもないが、この時、カナちゃんが「縮小コピー」というのは、「2枚の紙を1枚の紙にコピーすること」と理解したあたりがカナコがカナコたる由縁である。

 さて、そんなことはさておいて異動の話に戻そう。この度異動となってついにカナコとさかぼうの両名と離れることが許された私は、異動の内示の日、歓喜に打ち震えた。新しい部署での新生活に対する不安はもちろんあったが、それよりもなによりも彼らから逃れられる喜びが勝った。彼らは私にとってそれほどの存在感だった。これは、3年目にして初の勝利と言って良かった。ついにカナコに勝ったのだった。

<< つづく >>

Library. ▽ Top. ▽ Back. ▽ Next.


Entertained by Teshi.