■◇■ ある理不尽の肖像 ■■■■

 --- すべてのカナコファンに捧ぐ ---

▽ 理不尽オア小生意気 (2000/09/12)

-----

 私の後輩の「さかぼう」こと坂田くんとコーヒーを飲みながら会話など。
 どうやらさかぼうもカナコのわがままぶりがようやく骨身にしみてきたらしくボソボソとぼやきが入ってきた。以前の職場での私の担当業務はカナちゃんと打ち合わせながら進めていくモノが多く、現在その業務をさかぼうが引き継いでいるので、当然のように直接カナちゃんとの会話が大量に発生するのだ。
 精も根も尽き果てたような様子で、さかぼうは私にこう語った。

 「カナコさん、なんとかしてくださいよ〜。毎日毎日疲れますよ、マジで。」
 「お姉さまと付き合うのも仕事のうちなんだよ。ちゃんと相手してやりな。俺なんて部署かわった今でも時々引っ張られてるんだぜ。」
 「はぁ…、そう言えばこの間なんて、アレですよ。」

 以下は坂田くんの話をまとめたモノである。
 カナちゃんが夏休みに入る前日のこと。我々は夏期休暇といって、7月〜9月の3ヶ月のうちに3日間だけ連続した特別休暇をもらうことができる。それを通常夏休みと呼んでいるが、職場のひとと打ち合わせてなるべく夏休みが同じ部署内でかぶらないようにバラバラに休む。そのため自分は夏休みでもその他の人は通常業務をしており、休んでいる間にも続々と仕事は舞い込んでくることになり、たいていは夏休みに入る前と後が忙しくなるのである。
 したがって夏休みをとる職員の多くは、休む前にできるだけ多くの仕事をこなし、休みが終わってからの負担を減らそうとするが、カナコの夏休みも例外なくそれにあてはまるので当然休み前は激務になるはずであった。
 しかしさかぼう曰く、カナちゃんはこともあろうか「休み中にやっておくこと」と命名された一冊の業務プラン書を作成し、それを坂田くんに渡したのだそうだ。しかも

 「坂田くん、ハイこれ。」

 とたった一言だったらしい。何をいわんとするかはカナコと付き合いの長いひとならすぐにわかる。非常に簡単なことである。つまり「オマエやっとけ。」というのである。
 これにはさかぼうもキレて、カナちゃんに文句を言ったらしい。どんな口調でカナコに文句をたれたかは実際聞いてない。だがあの小生意気なさかぼうのことだ。カナちゃんの神経を逆なでするにふさわしい口の訊き方をしたことは用意に想像できる。おそらく、
 「それくらいカナコさんやってから休み入って下さいよ。」
 「それくらいならカナコさんでもできるんじゃないですか。」
 「何で僕がやらなくちゃいけないんですか。カナコさんの尻拭いなんて嫌ですよ。」
 あたりだろうと思う。これにカナちゃんが理不尽ギレしなくて、いつするというのか。それで大喧嘩になったようである。かの職場には残念ながらカナちゃんと敵対しようとするエライ人はいないので、結局、課長直々に坂田くんに指令がでたようである。すなわち「オマエやっとけ。」と。

 カナコ節健在である。私はさかぼうには申し訳ないが、このエピソードを聞いたとき、心底カナコと同じ職場でなくてよかったと思ったものである。できれば仕事以外でも私にメールを送って欲しくないな、とさえ思っているのだからそれも仕方のないことと思う。思い起こせばちょっと前まではまさにさかぼうの役を私が担っていたのだと思うと余計に感慨深くなるというものだ。
 さかぼうよ、そうして男の子は強くなっていくのだ。そうしてカナコに飲み込まれていくのだ。

 追伸:できればついでだからお昼もおごってやってくれ。

Library. ▽ Top. ▽ Back. ▽ Next.


Entertained by Teshi.