■◇■ ある理不尽の肖像 ■■■■

 --- すべてのカナコファンに捧ぐ ---

▽ 褒められて:(2000/09/25)

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 カナコからメール。ゴンタの jpeg ファイル付き。

 >おはよー。
 >デジカメを買ったのでゴンちゃんの撮影会をしました。
 >てし君ゴンちゃんのこと好きって前に言ってたから
 >写真送ります。壁紙にしてね。

 うざい。まこと申し訳ござらんがうざいです。鬼のようにうざいです。許されるならばここでゴンタの写真をアップして皆に披露してあげたいけど、1枚のデータ量がばかみたいに多くて重くなること必死なのでひかえます。

 それにしてもメールを読む限り、カナちゃんは俺がゴンタのことを好きだと勘違いしているようだ。はっきり言って犬はすごく好きだけどゴンタの写真は別に見たくないのに。例によって帽子をかぶっているゴンタの絵、限りなく無理矢理かぶらせているような可哀想な絵。それは動物虐待にも見えなくもない残酷な写真なのである。
 だいたい他人の家の飼い犬を壁紙にするあほうがこの世の中のどこにいるというのだろうか。動物アイドルとか言われるくらいのかわいい写真なら全然問題ないけれど、職場仲間の飼い犬(とてつもなく普通の写真)の壁紙を自分のパソコンで使ってる男、そんなやつ僕だったら友達になりたくないと思う。そこまでの価値は残念ながらゴンタにはない。
 ただこういう写真をもらえばたいていの場合、犬好きな僕は「かわいい!」と思うけど、カナちゃんのゴンタにだけは何故かそんなふうに思えない。きっとこれは飼い主の影響がかなり強いのだろうと推測する。何故ならもしもゴンタがうちの犬だったら相当かわいいだろうと思うからだ。もしくはカナちゃんがもっと素直でかわいらしい女性だったらそれなりにゴンタかわいく見えると思う。毎日毎日ばかみたいに「かわいいでしょ?」と犬の写真なぞ見せられたら誰だって反発してかわいくねーよ!と心の中でつっこみをいれるようになるはずだ。

 あとやたら友好的なメールを出してくるのは良いんだけれど、激しく不安を覚えるのはただでさえ僕のことを財布扱いしているくせに、それだけで飽きたらず奴隷級の話し相手として、ただカナコをほめたりおだてたりする役割を僕に与えているのではないだろうか、というあたりである。カナちゃんはとにかく自分のことを褒めて欲しいひとなので、ゴンタにかかわらずカナちゃんの身につけているものや自分のことを褒めてくれといわんばかりのフリを僕にする。例えば、洋服や靴なんかはその典型である。何かにつけて「これかわいいでしょ?」と僕に聞いてくるのだ。
 本音を言うと、それらに関して僕はまったく興味ゼロなので「かわいいとも思わなければ、かわいくないとも思わない」というが正解で、それ以上でも以下でもない。なので「かわいいでしょ?」と聞かれると非常に回答に困ることが多い。冷静に「別になんとも」などと言えば理不尽ギレが炸裂することは目に見えているし、「かわいいですね!!」なんておだてればカナコが余計にオチョーシに乗って今度は僕の気分が悪くなること間違いナシだ。だいたいどうして僕がそんなことに気を遣わなければいけないのだろうか。自分の彼氏にでも褒めてもらえればそれで満足じゃないのだろうか、まったく不思議な行動である。そのくせ僕の持ち物やいでたちをカナちゃんが褒めてくれたことなんてまったく皆無で、よく文句を言われる。特に「おやぢくさい」という言葉は頻繁にカナコの口から聞かされるものである。
 まぁ僕自身、来ている服やネクタイなんかを特に褒めて欲しいわけでもないので別に構わないが、それにしても奴隷扱いは御免被りたい。できればあまりにフレンドリィなメールに飼い犬の画像ファイルを添付して送りつけてくるのも止めていただきたい所存である。

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