■◇■ ある理不尽の肖像 ■■■■

 --- すべてのカナコファンに捧ぐ ---

▽ カナコとバレンタインデー:(2001/02/20)

 カナちゃんがバレンタインデーにチョコレートケーキを持ってきてくれた。いったいどういう風の吹き回しか。

「はいハッピーバレンタイン!」(満面の笑み)
「……あ、ありがとうございますぅ。」(少し警戒しながら)
「ナニ?その訝しげな顔は?」
「い、いえ、な、なんでもないですよ!!いやぁうれしいなぁカナコさんがチョコレートくれるなんて!」(危ういぞ!そのドモリが!)
「まぁいいわ。とりあえず食べてみてよ。」
「え。ココでデスか?」
「うん。」
「今すぐ?」
「うん。」
「……なんか企んでます?」
そんっっっっなにアタシのこと信用できないの!!!???」(眉毛つり上がりまくり!!)
「そんなワケないじゃないですかぁ。えっと、い、いただきますぅ!!」

 仕方なしに僕はその場で包みをあけた。包みといっても非常に簡素で環境に優しいものだ。いやいい加減と言い換えても良いか?(そもそも包みと呼べるかどうかすら定かでない。)
 しかしまぁケーキの見た目は概ねマトモ。これほどマトモなモノとは想像していなかったので少しカナちゃんを見直した。そして一口チョコレートケーキを口に含む。口の中に異様なまでの甘さが広がる。広がるっつーか甘すぎて喰えないくらい!!!!
 しかし僕はその思いを必死でこらえた。そのまま感想を言うことは如何に相手がカナコと言えどもはばかられた。何しろカナちゃんが僕のために真心込めて作ってくれた入魂のケーキだ。ここで笑顔で「おいしい」と言わなければ男じゃない!

「おいしいじゃないですか。こんなの作れるんですねぇ!」
「ナニびっくりしてんのよ!?」
「またそうやってつっかかるぅ。褒めてンじゃないですかぁ。」
「ふ〜ん、まぁいいわ。とにかくおっけーなのね?」
「うん、おっけー。」
「そっか!じゃ大丈夫ね。これで彼に渡せるわ!!!」
「?」
「ちょっと心配だったのよねー、甘すぎる気もしないでもなかったから。ホラ男のひとって甘いのダメなひと多いじゃない?」
「……ってことはアレですか。いわゆる毒味ってカンジ?」
「そ!」(会心の微笑み!!)

 まったくこんなことじゃなかろうかと思っていたが、彼氏のためのチョコレート(の余り)を僕に食べさせて毒味をさせようとするなど男心を弄ぶにも程がある。わざわざ気を使って褒めた意味まるでナシ!
 いやまてよ。逆に考えればあそこで「甘過ぎ」とか言っていたらそれこそカナコの思うツボだったのか、とすればお世辞を言った甲斐はあったのか。真の勝利者はこの僕なのだ。(それにしても寒い勝利者だな)
 僕は心の中で小さなガッツポーズをつくり、程良い勝利の余韻にひたった。(といいつつも小馬鹿にされた感は拭えない!)

 ちなみにカナちゃんの彼も同じく「おいしい」と言ってくれたようで、さすがそのあたりはチョコレートをもらって文句言うような男の子はいないようでありました。つーかそこでカナコに「甘過ぎ」と言えるような男は、相当な神経の持ち主だろうと思う。

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