■◇■ ある理不尽の肖像 ■■■■

 --- すべてのカナコファンに捧ぐ ---

▽ カナコン:(2001/06/06)

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 カナちゃんとその友達数名とコンパ。カナちゃんのおそるべし変わり身に体中の毛穴が開いた。冷や汗ダラダラ。

 どうやらカナちゃんは僕の友達の吉田くんのことを気に入ったようで、コンパ中ずっと吉田くんの横に座って攻め続けていた。あれほど従順でかつ攻撃的(おそらく吉田くんは攻め込まれているとは感じていないと思うが)なカナちゃんは初めてみた。僕は終始冷静にカナちゃんを観察していたのでわかるのだが、携帯電話の番号とかも自分から聞くのではなくて「ワタシの着信音かわいーよ!」とかなんとか言って、さりげなく吉田くんにカナちゃんの携帯に電話を掛けさせるというような手口でゲットしていた。
 話を聞くともナシに聞いていると、どうやら会話のネタに僕の話を使っていて、僕がいかに使えなくて苦労しているかとか、カナちゃんが僕の世話をどれだけ焼いてあげているかとかそういう話をしていた。いったいいつ僕がカナコに世話をかけたというのか。僕はその時ホントにジャロに電話をしてやろうかと思ったくらいだった。しかもカナちゃんから吉田くんに向けられた言葉の語尾には必ずと言って良いほど、(はあと)とかつきそうなカンジでとてもウザかった。
 それにしてもカナちゃんのその変わり身技はかなりのレベルに達していると思う。普段のカナちゃんの姿を見ている僕だからそれが仮面であるということに気付くが、もしも僕がそのとき初めてカナちゃんと出会ったとしたら、なんてかわいいひとだろうと思ったと思う。実に小狡い女だ。
 僕が最初聞いていた話ではカナちゃんの友達のみほさんがコンパをして欲しいと言っていたということだったのだが、どう見てもイチバン乗りに乗っているのはカナコだった。しかも早々にターゲットを決めてそこから動かないのだからやっかいだ。本来僕とカナちゃんは幹事なので、イチバン下手の席で大人しく幹事に徹するべきなのに、カナちゃんはまったくそういうことは無視で仕切る役などすべて僕にやらせていた。そのくせ飲み会が終わったアトで僕に「仕切りすぎ」とかワケのわからないことを言ってくるのだから誠にどうしようもないと思う。

 でもまぁせっかくの機会だったので僕もカナちゃんの友達のあゆみさんとわくわく状態に突入しようと思ってちょっとだけ会話を弾ませてみた。あゆみさんはどっちかというと強引にカナちゃんに誘われて付いてきたみたいで、彼氏もいると言っていたけど、僕も別に彼女を捜そうとしていたわけではなかったのでソコソコ楽しく話をした。するとそれを見ていたカナちゃんはここぞとばかりに僕に睨みを入れて「離れろビーム」を送ってきた。ちょっと恐ろしいのを我慢して見て見ぬフリをしていたのだが、しばらくするとカナちゃんがトイレに立った帰りに僕のところに来て、ボソリと「あゆは彼氏いるんだから、もっと離れなさい。」と言うのだ。
 「待て!オマエも彼氏いるだろう、カナコ!」と僕は咄嗟に思ったけど、カナちゃんのことだからそれを言うとソッコーでブチキレルこと間違いなしなので仕方なく黙ることにした。しかし、この時僕の脳味噌にキラリと光るアイデアが浮かんだ。
 今カナコは吉田くんをゲットしようとしている最中である。つまり、かわいいカナコを演じている今なら僕がちょっとくらい無茶をいったところでキレルことはないだろう、と思ったのである。なんて聡明なんだ僕は、と正直そのとき思った。

 「カナコさん、今日はなんだかいつもよりしおらしいですね。いつもはもっと凄味があるのに、どうしたんですか?風邪でもひいたんですか?」

 だが現実はそう甘くなかった。しばらくして僕はカナちゃんに呼ばれてふたりで席を外すハメになった。これではまるでヤンキー上級生に呼びつけられて震えながら校舎裏へ行くかわいそうな下級生である。そしてかわいそうなことにカツアゲされたのである。要するに何故かはわからないけど僕だけ会費が倍になったのだ。みんなには幹事だから余分に払うとかワケのわからない理由が告げられ(そのくせ女性側の幹事であるカナちゃんは他のひとと同額)僕はこの超金欠時期に哀れにも倍額会費をとられたのである。
 こんなことが許されてもいいのか!しかも僕は十分にコンパを楽しんでいないのにだ。ひとの恋路を邪魔して、かつ自分も幹事のくせに僕にたくさん会費を負担させる、こんなことがまかりとおっても良いモノなのか。今こうして文字にしていると余計に腹が立ってくる。だいたいカナちゃんはいつもこんな風に僕だけ陥れようとあの手この手を使ってくるのだ。それで自分はちゃっかり吉田くんの携帯電話の番号もゲットしてるし、またやろうねとか約束しているのである。
 このような悲惨な目に毎回のようにあっているのにカナちゃんの要求を拒みきれないと言うのは非常に良くないと思う。今後もしこのような催しをカナちゃんが要求してきても絶対に受け入れないぞ、と僕は改めて思った。(毎回失敗するたびに思うことなのだが)

 というわけでカナコとはもう二度とコンパなんてしないと心に誓う僕であった。

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