■◇■ ある理不尽の肖像 ■■■■

 --- すべてのカナコファンに捧ぐ ---

▽ パソコンを買おう2:(2001/10/27)

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 「で、どんなパソコンが欲しいんですか?」

 僕が車を走らせながらカナちゃんにそうたずねると、カナちゃんはこっちを見ずに窓の外を眺めたまま、声だけこちらへよこした。

 「えっとねぇ、プーさんメールのやつが欲しいな。」(???)
 「…………。」
 「なによ。その反応は…。
 プーさんって歳でもないだろ、ってこと!?(被害妄想)

 「い、いえ、そういう意味じゃなくてですね……。(ある意味正解だけど。)もっとこう…。なんつったらいいのかなぁ、ノートパソコンがいいな、とかデスクトップがいいなぁとか。マックでもいいかな。とかそういう回答を求めてたんですけど…。」
 「あぁ、そういうことね。えっとね、いまんとこノートパソコンを買うつもり。」
 「ノートですか。どこのやつ?」
 「うー。そんなのわかんないから、見ながら考えるわよ。職場で使ってるパソコンと同じくらいの性能がいいな。」
 「そうですか。で、予算は?」
 「今日はとりあえず3万円持ってきたよ。」

 って、ノートパソコン3万円。やすっ!!

 普通に仕事できるくらいのスペックの新品ノートでそんなのあったら俺も買いたい。つーかたくさん買って売りさばくよ。いやはや3万円でパソコン買おうというその浅ましい根性といい、プーさんメール必須と言い放つその根性といい、さすがはカナコである。

 「ノートパソコンはさっすがに3万じゃ無理だと思いますよ…。」
 「えーそうなの。友達がこの間3万で買ったって言ってたけど?」
 「え?ホントですか?ノートパソコンで?」
 「うん。友達に譲ってもらったんだって。」

 (へぇ〜安いですねぇ。って、いいかげんにしろや。

 「…。新品買おうと思ったら桁がひとつ違いますよ。せめて10万くらいにしましょうよ。」
 「10万?アタシそんなにお金持ってないよ。今日。」
 「カード持ってますよね?とりあえずカード使えば?」
 「そうね。じゃパパのカードつかおっと。」

 カナちゃんの家はお金持ちなので、このあたり実はけっこ余裕である。なのにいつも僕にたかってくるのはちょっと矛盾が生じる気がするのだが、そのへんの事情は僕にもよくわからない。でも僕が唯一カナちゃんのことを関心するのは、カナちゃんは自分の給料だけで自分のことはこなして、金持ちお嬢様にありがちなパパママのお金をあてにするといった類のことはしないところだ。とはいえ、パパママをあてにしないだけで、僕に払わせていれば事は同じなのだけれど。ってゆうか僕よりもパパママあてにした方がまだマシだな。人間として。

 さて、そんなこんなで店に到着。商品棚にならぶ数々のノートパソコンを見てまわる僕ら。まぁはじめっからわかっていたことだけど、カナちゃんはまるっきりパソコンの性能なんかのことは頭に入れてなくて、プーさんメールが入っているかとか、インターネットはできるかとか、そういうことしか考えていなかった。今時のパソコンはたいていネットに簡単接続できるような環境が整っているし、プーさんメールだって別で買って入れればいいだけの話なので、僕はカナちゃんに見た目で選びなさいとアドバイスをしておいた。第一、メールで遊ぶか、ウェブで遊ぶかくらいしか使い道がないのにそんなにすごいスペックのパソコンを買う必要がないし、そんなパソコンを買ったところでカナコが使いこなせるわけがない。
 なにしろ僕は早く帰りたかったので、適当なものを選んでこれにしろ、とすすめた。が、カナちゃんの長い買い物ぶりにかなうはずもなく、一軒目ではやはり決まらなかった。つーかどこ行ってもそんなに変わらないんだけど、それを言ったところでカナちゃんが納得するわけがなくて、2,3軒店回りをする羽目に。

 で、結局買ったのは vaio とかいうコナマイキなノート。しかもプーさんじゃなくて、ポスペ。だいたいカナちゃんの目移りの速度は尋常じゃない。見てるモノが欲しくなる体質なので、次から次へとこれがいい、あれがいい、とわがままの言い放題。そのたびに僕は「どうせメールくらいしかすることないんだから。」となだめるのだが、言うこと聞かずにハイスペックマシンをチョイス。
 なんつっても PentiumIII ですよ。

 イマドキ、ペン3搭載マシンでポスペなんて当たり前。
 モモ超高速で配達!!!みたいな。
(配達の早さは関係ないか。)

 まぁともかく、こうしてカナコはパソコンを手に入れた。しかしその後当然のごとく僕はカナコのおかかえパソコンマンとして動くことになる。てゆうか最初のセットアップからしてひとりでやらない。(やらないってゆうか、やろうとしない。ただ画面の指示とマニュアルに書いてあるとおりの手順を実行するだけなのに。)こんな横柄でこの先カナちゃんは大丈夫なのかと時折心配になるほどだ。いつかカナコが専業主婦になっても(いや専業であるなしに関わらず)何もせずに旦那に任せっきりになること間違いなしだ。
 そして舞台はカナコ宅にうつる。

 つづく。

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