▽ 雑 文 

#022 正義のヒーローミラクルマン ACT2。 1999/7/13(2001/8/20改訂)

 夜の首都高速。眠ることを知らない都会のネオンたちを横目に男と女を乗せた車は都心へと向かって走っていた。男の名は富永おかず。しかし、おかずとは世を忍ぶ仮の姿。彼こそは地球の平和を日夜守り続ける正義のヒーロー、ミラクルマンなのだ。

 「うさこ。愛してるよ。」
 「わたしもよ。おかずさん。」
 うっとりとした目で耳長うさ子はおかずを見つめる。愛のメロディが今にもバックから流れてきそうなほど今、二人の愛は高まっていた。
 その時である。二人が乗る車の右の前輪がどうもおかしい。ぱんっという激しい音と共にタイヤがはじけ、ついに車はバランスをくずしてスピン。首都高速上で大きく1回転し、やがて車は道路のど真ん中に止まった。唖然とする二人だったが、とりあえず無理矢理車を路肩にうつすことにする。幸いにも他に車がいなかったため、二人ともけがをすることはなかった。どうやらパンクのようだ。
 「パンクしたみたいだよ。うさ子。」
 「こわいわ。こわいわ。おかずさん。」
 おかずはとりあえず車からおりると、右側の前輪をのぞきこんだ。疑う余地なくパンクである。非常用のタイヤにつけかえ、なんとか付近のガソリンスタンドにでもいけばいい。おかずはふっとため息をひとつついて、両手を上げて困った顔をした。

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 「フン。今夜の獲物がきやがったか。」
 近頃、ここら一帯で首都高を荒らすカップルハンターと呼ばれ恐れられている、爆走ギャングこと河合ヒカルは、今日も朝からがんばって仕掛けていた罠にまんまと獲物がかかったことを喜んでいた。首都高をドライブするカップルどもを狩るのが彼の至高の楽しみだった。今夜もどうやら一組のカップルが引っかかったらしい。これからまたあの最高の瞬間が訪れるかと思うと、爆走ギャングこと河合ヒカルは、ヒヒヒといやらしい笑いをした。

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 予備タイヤをトランクの奥底から引っぱり出すと、富永おかずはさっそくパンクしてしまったタイヤをとりはずそうとした。ジャッキを車の底にセットし、ぐるぐるとハンドルを回してジャッキアップしていく。油圧式のジャッキでもあればもっと素早くジャッキアップできるのだが今はない。これではタイヤをはずせるくらいに車を持ち上げるには時間がかかる・・・。途方に暮れたおかずは、ううむ。と頭をひねった。
 と、その時。無情にも天は二人にさらなる試練を与えたのだ。ごそごそとジャッキアップをしているおかずを車の中で待つうさ子の目の前に真っ黒の革ジャンに真っ黒のジーンズをはいたサングラスの男が現れた。彼こそが近頃ここら一帯で首都高を荒らす(中略)爆走ギャングこと河合ヒカルであった。
 「おまえらは俺の罠にかかったのさ。もう逃げらんねーぜ。ヒヒ。」
 舌をペロリと出して、ヒカルはうさ子をいやらしそうに眺めた。
 「コイツは上物だ・・・。」
 うさこに聞こえるようにそうつぶやくとイキナリ爆走ギャングこと河合ヒカルは彼女に襲いかかる!ビリビリビリっと服が引き裂かれ、露わになる両肩。(こんなんばっかり。)

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 その頃、こりゃ時間かかるなぁ。などとブツブツ言っていた富永おかずはある異変に気がついていた。生まれながらのヒーローであるが故に危険信号をはっきりと感じ取っていたのだ。
 「よし。こんな時は変身だ!!」
 富永おかずは、左の腕についた特性のミラクルウォッチのスイッチを入れた。ミラクルウォッチから、7色の光がほとばしり、彼の体を包み込む。ミラクルウォッチはそのスイッチをいれることによって、大気に含まれるさまざまな成分を集め可視光線すなわちレインボーシャワーに変換するのだ。そしてレインボーシャワーをあびた富永おかずはわずか1000分の1秒でミラクルマンに変身するのである!

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 あわれ、うさ子は気を失いかけていた。ああ。おかずさん。とおかずの名を呼びながら、だんだんとうすれていく意識の中でにっくき暴走ギャングこと河合ヒカルの顔だけは忘れまい。いつか復讐してやろうと心に誓うのだった。しかしその時だった。ドン!!という激しい音と共にうさ子に覆いかぶさっている暴走ギャングこと河合ヒカルの動きが止まった。ヒカルは完全に意識を失っていた。 何者かがヒカルの頭に必殺の一撃をお見舞いしたのである。
 たすかった、とうさ子は思った。やがてうさ子の上でのびている暴走ギャングは何者かに車の外にひきづり出され、ポイと首都高に捨てられた。
 「あ。あなたは・・・。」
 うさ子を救ったその人こそ、白いスーツに全身をつつみ、赤い一輪のバラを口にしたエレガントな戦士ホワイトスーツマン。かくして、ホワイトスーツマンの活躍によって、すんでのところでうさ子は救われた。
 ありがとう!ホワイトスーツマン!!僕らのヒーロー、ホワイトスーツマン!!

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 その頃、ミラクルマンに変身した富永おかずは、タイヤ交換に必死だった。
 「ミーラークール、ジャーッキアーーーップ!!」
 ミラクルマンはその卓越した能力によって、普段の1.2倍の速さでジャッキアップすることができるのだ。せっせとジャッキアップするミラクルマン。そしてついに彼はジャッキアップを完了し、タイヤ交換を完成させたのだった。オメデトウ。ミラクルマン。でも大事彼女のことを忘れてるぞ。

 かくして、地球の平和は続いていくのだった・・・。

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