第83話(09.01.19)
2009.06.25 Over Drive Special スタックの図
2010.08.05 I様Over Drive Specialその後(ダンブルレーター内蔵)
essai82で紹介したキャビネットを使用して、Over Drive Specialを4台作成する。
なので、実はessai82の他に2台のキャビネットと1台のスピーカーキャビネットを追加で作成している。
今回の仕様:
1台目:60’s仕様
これは、シルバーのシャーシで見た目から違う。オリジナルのつまみはFENDER ROHDSピアノの物を使用しており、これを探すのに苦労した。
また、キャビネットの作成のところでも紹介しているが、オリジナルはどうやら皮を使用しているらしいが、加工が大変そうだったので、人工のバックスキンを使用した。
また、Power段はオリジナル通り50Wの仕様。
また、このモデルにはマスターボリュームがついていない。それと80’sについているミニスイッチが60‘sではスライドスイッチになっている。
私のオリジナルアイディアとして、ミニスイッチの場合はON-OFF-ONのスイッチを使っており、「強-OFF-弱」の様に使用できるが、なかなかスライドスイッチで見つからず、オリジナル通りのON-OFFスイッチを使用することにした。
2台目:80’s仕様
これは、essai76で紹介しているOver
Drive Specialと同じ仕様であるが、パワー段は50Wにする予定。
3台目:80’s仕様
これも、essai76で紹介しているOver
Drive Specialと同じ仕様であるが、パワー段は18Wにする予定
また、依頼によって、スピーカーキャビネットも同時に作成する。
SPの仕様は10インチを2発で4Ωの予定。SPはWaverのBlue Alnicoを使用。
4台目:80’s仕様
これは、essai76で紹介しているOver
Drive Specialと同じ仕様であるが、パワー段は6V6のパラレルプッシュプルで18Wと36Wの切り替え式にする予定。
4台目は当初作成する予定にはなっていなかったが、黒トーレックスの80‘sを見ていると、どうしても自分用にも欲しくなって、作成を決意した。
基板作成
いつもと同様、メインの基板はベークで作成。リレー基板は蛇の目基板を使用。今回は、Dumbleの基板構成にならって機能ブロックごとに基板を分けて配線で接続する考え方。リレー基板も機能毎に種類の違う基板を作成。まずは4台分の基板作成を行った。
ほとんど同じ仕様なので、基板の仕様もほぼ同一。しかし、さすがに4台分ともなると、作成の時間がかなりかかって、なかなか進捗しない・・
前回と同様に黒いベークでハンドワイヤリングであるが、今回は2重構造として、線材の引き出しをベーク板とベーク板の間から引き出し、見栄えをよくする。
このため、配線の前にワイヤーを適当な長さに切っておく必要があるので、結構無駄かもしれないが、見栄え重視で作成。
今後の作業効率化の為、当初2台分は作成していたスタンドを増産し、4台分作成。
やはり、だんだんと工房が手狭になってきた・・・
シャーシにボリューム、スイッチ、作った基板を取り付けてゆく。
追加工も結構あり、シャーシを削りながらの作業となり一番時間がかかるが、段々とアンプの形になってくる作業なので、楽しい作業である。
トランスは取り回しが大変になるので、ある程度進んでからの取り付け予定。
電源系の配線が4台とも終了。やはり4台ともなると進みが非常に遅くなっている。普通の感覚なら、すでに終了している位の時間を費やしていると思うのだが・・・
まずは、電源系の配線が終了したところで、一回目の火入れ式を行う。各部の電圧を確認して、以上のないことを確認するのだが、今回は負電源で問題が発生してしまった。しばらく考えて見たのだが、なかなか解決策が見つからず、きっぱり諦めて別部品を追加して解決することにする。
あまりくよくよ考えてもしょうがないので、作業を先へ進めることを優先することにする。
負電源以外では、特に問題も出ず各部の電圧も異常なく、ヒーターに灯が灯った。工房の電源を消してしばし鑑賞のひと時・・・
また、作成時はあまり考えていなかったFET INPUT(ダミーにしようと思っていた)だが、少し工夫をしてみたいと思い出した。本物はFETのバッファが入っており、低インピーダンスで初段にギターの信号を送り込むようになっており、あまり意味がないな・・と思っていた。(エレアコなどの入力に使用する為らしいが・・)
ここを、ブースターの入力にしてみたら面白いかも・・・
他のモデファイなどもあって、なかなか進みが遅いが、ようやく、4台とも、電源の確認が完了し、大まかな配線が完了した。
リレー基板は4台とも共通に作ってしまっていた・・60‘Sを配線していて「Master Volに接続される先がない??」 Oh、NO!60’Sはマスターボリュームレスでした。
まあ、マスターボリュームとプレゼンスは必要なコントロールだしリアパネルにつけることにしてしまった。(軟弱だったかな?)
80‘sはこんな感じ
FET INPUTにはブースターを取り付けることにした。・・がまだ、その基板は出来上がっていないので、INPUTもFET INUTも同じ音になるはず。
そして、音出しを待つアンプたち!
時間が経ってしまいましたが、4台を順次火入れを行っておりました。(その間に公私の公が色々ありまして・・・)
まずは、テスト用の真空管を挿して、バイアスを適当にあわせて音出しです。
・・・・無音・・・・ん?・・・・無音
音も出ないが、火も噴かない?ということで、測定器があるお部屋へ緊急入院。音がどこまで通っているかを確認します。
プリ段は正常値、オーバードライブ段も正常、、、フェーズインバーター段、あら?出力が出てないわ。
うーん・・考えてみましたが、速攻で分かりました。いつもNFBは必ずといって良いほどPFBになってしまうため、一番最後に配線を行うことにしていたのですが、今回の配線図上はPOTに部品を実装することになっていたので、片側がオープンの状態になってしまうのです。これでは音が出ませんね。
というわけで、暫定で片側のグリッドに抵抗を介してGNDへ接続します。
もう一度、電源ON、STAND BY ON。
おおお!音が出ました。
さっさっと、色々な機能を試しておかしなところを検証します。
今回で、ダンブル系のアンプは通算何台だろ?10台以上は作っているわけで、さすがに少しは学習しているらしく、そこそこの出来のようです。
音も悪くは無い。しかし、不具合は2箇所ありました。
1、オーバードライブ段で若干発振があるようです。これは、GAINを上げていくと「ヒーン」と発振してしまいます。そのためか、高域に少し癖が出ています。
2、Trebleの配線が逆
2は簡単に修正してしまいましたが、1の発振はなかなか厄介ですが。まあ、気を取り直して、ここら辺で一度録音をしておきます。
悪くは無いのですが、クリーミーな感じがあまり無く、クランチさせたときに、歪んでいるかどうかが良く分からない・・という感じではないようです。
発振と、音質についてはしばらく悩みました(かれこれ1週間以上は発振と格闘)ようやく、発振がすっきり無くなり、GAINを最大にしても発振がなくなりました。
ここでも、かなりのノウハウが得られました。発振対策と思っていた部品が実はLPFになっていた・・とか、分かっていたつもりの配線の取り回しの問題。
また、オリジナルのオーバードライブスペシャルのオーバードライブ段の半固定抵抗は100kなのですが、前回作った経験上、クリーンチャンネルでゲインを最大にしたときのクランチ(これがまた、すごく良い音なのですが)からオーバードライブを入れると途端に音が小さくなってしまうので、RATIOは250k、LEVELは1Mに内部抵抗は500kにしていました。
しかし、やはりこの値ではGAINが高すぎで、発振を誘発してしまいましたので、LEVELの1Mは譲りませんが、その他の値は交換し何とか収めました。
また、歪みの質ですが、どうも弾いていると、イメージするダンブルサウンドになっておらず、歪んだ音が「バシャー」とバラけている感じがします。
私がイメージしているダンブルの歪みは中、低音の歪みはクリーミーでサウンドに固まり感があり、高域は少しバラけてジャリッという感じが残って存在感を出しているサウンドです。
これに近づけるため、定数変更を行ってゆきます。
まずは、やはり全体的にバジーであることが一番の原因だと思いますので、オーバードライブ段の低域の改善を行います。
この結果、ずいぶん歪みはマイルドにすっきりした感じが出てきました。しかし、以前に比べ、低域の迫力がなくなってきた印象があります。
低域の補正はパワー段で行いました。そうすると、イメージにかなり近づいてきましたが、ご存知の通り、ダンブルは1CHANNELのアンプですので、クリーンも影響を受けてきます。
この状態でクリーンの音を出すと、バジーさが残っておりましたので、ここも修正。
そうすると、最終的にオーバードライブ段も再度調整・・・・ああああ、、段々面倒になってきますが、こうして全体の音を調整するため、少しずつ定数を入れ替えてゆきます。
そんなこんなで大分よくなってきました。
さて、最後に近づきました。まだNFBを欠けていなかったので、NFBの配線を行います。
やはり、お約束のPNBになって盛大に発振しました。・・・が、これは想定内なのですぐに修正し、PRESENSEの回路を組み込みます。
するとどうでしょう!イメージ通りのダンブルサウンドになったではありませんか!
良かった点としては、今回は、裸GAIN(NON
NFB)でずいぶん追い込みを行いました。その上でNFBを掛けたので、音質的にはずいぶん追い込んでいけたと思っています。
裸GAINの状態で妥協して、NFBに頼ってはいけないという事でしょうか。
ともあれ、最終的はサウンドが以下です。
ああ、しかし、暫定で取り付けた部品がいくつかありますので、ちゃんとした(ん?)部品を発注して、最終的に、支配的な場所が大分分かりましたので、スポット的に同じ定数で違う部品をいくつか試してみます。
真空管もテスト用から、本チャン用に載せかえてテストしたのが、下の音です。相変わらずへたくそなのは、ご勘弁ください。
録音はROLAND R-1で取りっぱなしです。
大分マイルドな歪みで、かといって埋もれない音のイメージに近づいてきたように思います。
後は4台同じ定数にあわせこんでいきます。
弾いていてすごく気持ちが良い音になってきたと思っていますが、このHome Pageに上げた音サンプルを客観的に聞いていても、修正前の方が良く聞こえてしまって・・・もう少し修正を加えることにします。
今までの基準はスピーカーはElectro Voice EVM12Lを使用して、
「セミアコのネック側でブーミーにならない」
「テレキャスのブリッジ側で耳が痛くならない」
を基準にしてそれに合わせ込んで来ました。もう少し基準を緩めて、
「セミアコのネック側で若干ブーミーになる」
「テレキャスのブリッジ側で多少耳が痛くなる」
位に変更し、断間コンデンサ、カソードコンデンサ等をあれこれいじりまわします。
トーンコントロールがまあまあ効くほうなので、気になればカットすれば良いので、考えてみればあえて削ってしまうこともないか・・・
ボトムと高域側が出るようになってきたので、リアにしたときの低音の迫力が出てきてMIXのトワンギーさも加わってきたように思います。あまり使わなかったクリーンモードの音にも張りが出てきて使えるクリーンになってきました。
フロントでも高音弦が暴れる感じがでて、オーバードライブさせた時も音が潰れなくリアのハジける感じも丁度良いと感じるところまで着ました。
というわけで、完成です・・・が、まだ最終的にキャビネットが2台しか出来上がっていないので、まずは2台の写真と音のサンプルです。
下が60‘Sのマスターボリュームなし(リアパネルにマスターとPRESENCE追加)50W。キャビネットはバックスキンのイメージで仕上げました。桟のアルミも少し薄めにしてエレガントなイメージに仕上げてみました。
上は80‘Sの50W。パイロットランプはオーダーされた方のご希望で青にしています。やはり黒トーレックスの感じは精悍で男らしくてすきですねえ。特に後姿がいかにもマシンといういでたち。
80‘Sはバックパネルの台形を上側を極限まで薄くしたかいがあって、いかにもD×××LE!
一方60‘Sはほぼ中心に穴を持ってきました。
最終的な内臓です。オレンジドロップの朱色が映える。また、奮発してマスタードコンデンサも入れています・・
最終的な音源です。80‘Sで録音しました、録音はいつものR-1にて。そろそろ弦を換えないと・・・
オーダーされた方に発送する次期になってしまいました。長かった作成でしたが、今回はキャビネット作成も自分で行うという当初の目標も達成できました。
でも、発送前にどーしてもやっておきたかった事があり、発送直前まで大慌てをしておりました。
やっておきたかったのは、昔マーシャルのスタックを初めてみて、「すごい」と感じた時の気持ちを抑えきれず、どうしてもスタックの写真を撮っておきたかったのです。
なので、残り2台も早急に組み上げました。しかし、キャビ作成が途中で終わっており(相当時間が経ってしまったのでどこまで済んでいたのかも失念・・・)2台分のフロントパネルの作成を行わなくてはなりませんでしたので、あわてて作成しました。
何とか発送に間に合い写真を撮ることができました。
構想通りの80‘sスタイル 50W、80’sスタイル18W、80’sスタイル18Wと36W切り替え、80’sスタイル50Wの4台です。
それに、前回作の100Wで総勢5台のダンブルとSOUL BREAKERで記念写真
アンプの上にあるのはハードウッドで組み上げたオーバードライブスペシャル用のフットスイッチです。
我ながら、壮観。
お次は、スピーカーキャビネットの作成になります。
更新が長らくありませんでしたが、ようやくオーダー分を発送する事が出来ました。調整に時間がかかっていたのと、ちょっとした家庭の事情がありまして・・(汗)
T様の仕様は80年代の50Wの仕様。
一度、SPキャビネットを送っていただき、スピーカーとの相性を確認し、調整しました。(しかし、時間が無くて、フットスイッチをまだ送れていません・・・・すんません)
T様はレスポールフリークで、これまではSOLDANOを使用されていました。
インプレが届きましたので、ご紹介します。
今回は素晴らしいアンプ有難う御座いました。友人と半日インプレしましたが最高としか言えません
クリーンからクランチは正に絶品 歪系はミッドの太いSOLDANOのよりさらに太くビックリしました
本当に正直なアンプで木の鳴りやギターの性格、弾き手のテクニックまでそのまま出てしまう誤魔化しの効かないシビアなアンプです。
今回は音量的な制限が有る中でのインプレでこれだけ凄かったので 次回のスタジオでのインプレが楽しみです。
I様の仕様は80年代の18W仕様。
I様は50Wの本物のダンブル・オーバードライブスペシャルを所有されており、発送までは相当なプレッシャーがありました。
スピーカーは小ぶりの10インチを2発のキャビネットにし、アンプと横幅をそろえて作成しました。
こちらも、かなり気に入っていただいたようで、私としては一安心しております。(調整も大変お待たせしてすいませんでした)
18Wというチョイスが正解だったようで、50Wのオーバードライブスペシャルよりも使いやすそうです。
Over Drive Specialに空間系のエフェクトを入れるのに、私は、今まで、マイクで拾った出力音をMIXERに入れ、MIXERのBUSからリバーブとディレイをかけたものを別のスピーカーから鳴らしていました。
この方法は、原音をまったく弄らないので、すばらしく良いのですが、何せ、システムが大きくなりすぎるし、持ち運びは不可能です。
今回、ダンブルレーターを真空管1本で、しかもアンプに内蔵する検討を行いました。真空管が1本なので、位相がひっくり返らないようにするのが大変でしたが、回路を工夫して、結果としては、かなり良い出来だったので、お勧めしたところ、I様のODSに搭載することになりました。
使用するのは12AX7でプリ管と同じです。ソケットを仕込みます。ベーク板を切り出して・・・(今回は2個分作成しています)
設計通り穴あけを行い、その穴にハトメを打ち込んでいきます。
出来上がった基板に部品を実装します。(同じ基板なのですが、1台は訳あって別のコンデンサを使用しています。)
出来たアンプにEffect Loopを仕込むには、覚悟はしていましたが、結構大変です・・・・今回はメイン基板を外すために配線を一度外し、コントロールボックスと基板を繋ぐ線を通します。 orz・・・
配線が終了したら、今度はコントロールボックスの作成を行います。
今回はHPF(フィルター)、SEND LEVEL、RETURN LEVEL、MIXのコントロールをつけました。
塗装を行ってからシルク印刷を行い、ボックスを作成しました。
アンプの裏側から見て、この位置にコントロールボックスを取り付けます。
測定して、動作確認を行います。どうやら、無事動作完了です。
キャビネットに組み上げたところです。
真空管が1本増えています。
これで、ダンブルレーターの内蔵手術が終了しました。
早速、送り返したところ、ご感想をいただきましたので、紹介します。
ODSは、ダンブレータを内蔵してから、とても暴れるアンプになりました。
以前所有していた50wのDumbleのように、素人ではなかなか使いこなせない、
どんどん一人で前へ前へと突き進んでいく、そんな感じです。
一段とオリジナルに近づき、玄人にも十分満足のいくアンプだと思います。
作っていただいたアンプは、ワットを抑えてあるので扱いやすく、
57年レスポールの高出力でフィードバックの効いた、またその一方で、
61年335の繊細な音使いに素直に反応する優れたアンプと評価しております。
うらやましい、ギター軍です・・・(笑)
6台程度Over Drive Speccialを作成しましたが、どのアンプもMIDDLEが太く、音抜けも良い感じがします。
ハンドワイヤリングで手造りアンプとしてはかなりの安値で作成します。仕様変更も色々相談可能ですので、オーダーお待ちしております。(m_ _m)
長らく、お付き合いありがとうございました。