1.はじめに
浸食の輪廻からすると、富士山は幼年期の地形で、その山腹は原地表面に覆われている。しかし、詳細に見れば富士山斜面には、多くの浸食谷が発達しはじめている。集中豪雨や台風の流水、、雪崩などが生じると下方浸食、側浸食が行われている。また、大沢崩れや御殿場岩屑なだれのように、噴火や地震の振動が原因で発生する大きな崩壊もある。
2.大沢崩れ
大沢崩れは富士山の西側にある最も発達した谷である。大沢崩れの土石流堆積物に含まれた木片の放射性炭素年代の測定から、約950年前、大きな崩壊があり、それを引金として、大沢崩れの崩壊は始まったようである。大沢崩れの谷頭は中央火口の近くまで迫っている。大沢崩れの斜面の傾斜は、多くの侵食谷のなかで、最も大きく、崩壊も激しい。崩壊した砂礫は豪雨によって上井出北東の大沢扇状地に運ばれる。今後、数千年にわたって浸食作用のみ働くならば、中央火口は切り開かれ、山体には吉田大沢をはじめ、多くのV字谷が発達するに違いない。しかし、富士山は若い活火山であり、宝永の噴火が大きかったためか、今は静かだが,やがてまた噴火し、富士山がどのような形になるか予想出来ない。
図1. 大沢崩れと扇状地の説明図 Valley and alluvial fan of the Osawakuzure |
富士山 中央右の深い谷が大沢崩, 1999年11月21日朝霧高原付近より撮す。 |
図2.御殿場岩屑なだれ、 黒い点は「流れ山」。 町田/白尾 1998年、「火山の自然史」より。 御殿場岩屑なだれの堆積物は扇状に分布する。中心付近の水土野、滝ヶ原では堆積物の厚さが約30mある。 細い実線は現地形を示す等高線、太い破線は崩壊前の推定等高線である。等高線の細い実線と太い破線は標高約1150m付近で一致する。約1150mより低いところでは、等高線の分布から、岩屑なだれの堆積物が扇状に分布しているのが分かる。しかし、約1150mより高いところには、あるはずの崩壊による凹地形が存在しない。これは約2200年前の降下テフラ(湯船第2スコリア)によって埋め立てられたと考えられている。 |
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