東伊豆単成火山群( West Izu group of monogenetic volcanoes .2001/2記)

 伊豆半島東部の陸地に分布する約70個の単成火山群を東伊豆単成火山群と呼び、この単成火山群の東方海底に分布する約40個の単成火山群を東伊豆沖海底火山群と呼んでいる。2つの単成火山群は噴出する岩石も似ており、本質的な違いはなく、北西ー南東方向に長軸を持つ、長径約33kmのだ円形に分布する独立単成火山群と見ることが出来る(図1)。気象庁は、2つの単成火山群をまとめて伊豆東部火山群と呼び、活火山としている。1989年の手石海丘(基底の直径450m、周囲からの高さ10m、火口の直径200m)は海底噴火であったが、次の噴火は、このだ円形内のどこかで起こると考えられる。

伊豆東部火山群の分布図 沈み込んだフィリピン海プレートの上面の等深線図

 独立単成火山群は中央海嶺などプレートが開くような引張りの場に典型的にみられる。日本のような島弧では東伊豆(静岡県)、阿武(山口県)、五島列島(長崎県)など局地的に引張りの場が生じ、限られた地域にしかみられない。
 東伊豆に独立単成火山群ができるのはどうしてだろうか。
(1)西相模湾断裂を想定する。
 伊豆半島の北東沖に南北走向・高角西傾斜の、フィリピン海プレート自身の裂け目を想定し、西相模湾断裂と呼ぶ。この西相模湾断裂によって分けられた伊豆半島側は伊豆内弧(伊豆・小笠原弧の内弧)と呼び、火山弧のマグマで暖められ浮揚性をもっている。西相模湾断裂の東側の伊豆外弧(伊豆・小笠原弧の外弧)は火山フロントの外側で冷たく重い性質を持っている。軽く、浮揚性のある伊豆内弧は沈み込めず衝突している。重い伊豆外弧は北北西に沈み込んでいる。この両者の運動差によって断裂(裂け目)ができたという考えである。西相模湾断裂の方向へ地殻は拡大し易いので、東伊豆が引張の場になっている。引張りの場では割れ目ができ易く、火山噴火は古い火口を使うことなく、新しい火口を作って噴火が行なわれ、単成火山になる。(石橋克彦1988年、小山真人)。
(2)マグマの供給量の多少に原因を考える。
 動くプレートの内部には微小地震が発生する。図3は伊豆半島の北部を東西方向に横切る鉛直断面での微小地震の分布図である。図3の矢印の動きは東西方向の成分である。PHS SLAB はフィリピン海プレート(沈み込むとスラブと呼ぶ)で、厚さが30〜40kmある。赤の矢印はフィリピン海プレートの動きを示している。また、青の矢印はPAC SLAB(太平洋プレート)が急傾斜でPHS SLABの下へ沈み込んでいる様子を示している。このときPHS SLABに加わる力は、傾斜角が大きいので鉛直下方の成分の力が大きく、PHS SLABは鉛直下方へ引張られている。図4はトラフに直角方向の鉛直断面上の震源分布である。石田瑞穂はこのような震源分布の調査から、PHS SLAB上面の等深線分布の図2を作成した。図2は伊豆半島付近のテクトニクスを考える上で重要である。図2の赤矢印はPHS SLAB上面の等深線に直角な最大傾斜の方向、すなわちPHS SLABの運動の方向と考える。これらの運動は、伊豆半島付近が引張りの場であることを示している。北西に移動してきたフィリピン海プレートは衝突して動かない伊豆半島の両側へ分かれて沈み込んでいる様にみえる。火山フロントである伊豆半島から南へ延びる伊豆マリアナ火山弧は海嶺に似た拡大の場で多くの火山が並んでいる。 伊豆東部火山群、富士山、大島などは岩脈や側火山の北西ー南東の方向性が一致し、伊豆半島付近は広く、同じような引張りの場と考えられる。同じような引張りの場で複成火山になるか、単成火山になるかの違いはマグマの供給量の多少に原因があるのではなかろうか。(相原 淳 2001)。火山へ多量のマグマが長期にわたって供給されると、立派な火道ができ、複数回の噴火が行なわれ、複成火山になる。マグマの供給量が少なければ1回の噴火で終わり、次に噴火するときは前の岩脈はすでに固結し、新しい岩脈の貫入が行なわれ、単成火山になる。
 島弧の火山フロントにおけるマグマはどのようにして供給されるのだろうか。海洋性プレートは水など揮発性成分を含んだ堆積物をのせて島弧の下へ沈み込んで行く。次第に温度を上げながらマントルに達する。揮発性成分を含んだ海洋性プレートの岩石は、ソリダス(融点)が低いため融解を始める。生じたマグマは浮力を受けて上昇流となり、島弧へマグマを供給し続ける。(1 富士山の地形と地質 マグマの発生を参照)

伊豆半島を中心とする東西方向の鉛直断面上に投影された地震の震源分布図 相模トラフに直交する鉛直断面上に投影された微小地震の震源分布図